ロクノベ小説保管庫 第3章~解き放たれし封印~

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遺跡の中は暗く、思ったより涼しかった。地下にあるのに、湿った空気などかけらもない。
どうやら、空調が働いているらしい。かなり遠くで風のうなるような音がする・・・
「えっと・・・これだったかな?」
入り口の近くの壁にフレッドが手を当てた。
と、突然「ポッ」という音と共に、壁の少し高い位置に明かりがついた。
壁に無数にはめ込まれた半球形クリスタルが、闇を照らしている。
炎とも電気とも違う。言うなればその中間のような、不思議な明かりだった。
その明かりに照らされる石壁には、複雑な幾何学模様が彫り込まれ、とても高い天井は、
闇に閉ざされて全く見えない。
床に幾何学模様はない。ごく普通の石床だった。


ジュノは、不思議な感覚にとらわれていた。
初めて来るはずなのに、なんだか、昔来たような気が・・・
…なんだか、懐かしい・・・


「ジュノ、どうしたの?行くよ!」
「・・え、ええ・・・」
フレッドの声で我に返ったジュノは、自分でもわけが分からない感覚を気にしながらも、
フレッドと共に遺跡の奥へと向かって歩き出した。


細長い通路を進みつつ、ジュノはフレッドにこの遺跡の事を訊いた。
この遺跡は、つい最近発見されたC級の遺跡だそうだ。
危険なトラップはなく、リーバードもそれほど強くはない。
構造も比較的シンプルな、地下二階までの遺跡。
それが、学者達が一般に公開した情報だそうだ。


この遺跡の地下二階で、フレッドは隠し通路を見つけたという。
学者達の発掘調査では、隠し通路は見つからなかった。
当然、隠し通路の先に何があるのか、誰にも分からない。
その隠し通路の奥を僕らの手で調べたいと、フレッドは拳を持って熱弁した。


パシュゥゥゥ!
熱弁が加速し始めたその時、細長い通路の角から、腰程の高さのリーバードが現れた。
小型の豆タンクに小さな足が4つ付いただけのような、見るからに弱そうなリーバード。
全リーバード中最弱とうたわれた汎用リーバード、ホロッコだ。
それを見るや否や、フレッドはバスターを撃ち放った。
「くらえっ!」
銃口が赤く光り、同じ色のバスターを飛ばす。
しかし、バスターは見事にホロッコの両脇をすり抜け、奥の壁にぶつかって消えた。
「あれ?」と首を傾げるフレッド。ホロッコも、一瞬呆気にとられた。
「ならば私がッ!」
フレッドの横からジュノが飛び出した。
ジュノの右手がもの凄い速さでホロッコに迫る。右手が一瞬、赤い光に包まれた。

ズゴァ!

鈍い音を立てて石床に当たるジュノの拳。ホロッコの目の前に落ちたのだ。
石床は小さくクレーター状にへこみ、周囲に石つぶてをまき散らした。
ギリギリの所で命拾いしたホロッコは、へこんだ石床、そして二人の姿へと視線を送った。
「ピキュゥゥゥルルゥゥ!」
謎の叫び声(?)を上げて、ホロッコは猛スピードで走り出し、曲がり角の奥に消えた。

「・・・にげた?リーバードが?」
フレッドが、信じられないというような顔で言った。
「不自然な事ですか?」
「うん。リーバードって言うのは、いわば遺跡の守り神なんだ。侵入者を排除する事以外、
 プログラムされていないんだよ。それが、逃げ出すなんて・・・」
やはり信じられないというような顔で、フレッドは考え込んでしまった。
ジュノは「とりあえず・・・」と前置きした上で、考え中のフレッドに言った。
「考えていても仕方ありません。先を急ぎましょう」
しかしフレッドは、なかなか諦めなかった。
可能な限り想像力をふくらませ、さっきの行動の理由を探そうとした。


フレッドがようやく諦めて歩き出したのは、それから15分後の事だった。


「・・・で、隠し通路というのはどこにあったんですか?」
地下二階の巨大な振り子トラップの前で、ジュノはフレッドに訊いた。
「この先の部屋だよ。壁の一部がスイッチの役割を担っていたんだ」
振り子トラップのタイミングを見計らいながら、フレッドは答えた。
「と・・と・・と・・よっ!」
振り子が目の前を通過した瞬間、フレッドは振り子トラップの中へ飛び込んだ。
振り子はフレッドとは反対方向へ行き、フレッドが無事にトラップを抜けた頃にようやく
戻ってきた。
「よ~し!ジュノもタイミングを見ておいでよ!結構簡単だよ!」
トラップの奥からフレッドが叫ぶ。
ジュノは、トラップの前に立った。


目の前を、振り子が風を切りつつ走り抜けていく。
「振り子のタイミングを見て飛び込んで!」
フレッドが再び、トラップの奥から叫んだ。
振り子が目の前を通過した瞬間、トラップに飛び込む・・・
振り子の動きに、神経を尖らせる・・・
「(・・・今だっ!)」
目の前を振り子が通過した瞬間を、ジュノは見逃さなかった。
トラップに飛び込み、勢いに任せて奥に抜ける。
振り子が元の位置まで戻ってきた頃には、ジュノはすでに、フレッドの隣に立っていた。
「結構簡単だったでしょ?」
「ええ」
フレッドの問いに笑顔で答えるジュノ。
二人は振り子に背を向け、奥へと進んだ。


20m程進み、角を曲がる。奥に、幾何学模様の刻まれた、鉛色の扉が見えた。
まわりの壁とは違い、立派な金属製の扉だ。
真ん中あたりに二つ、緑色の半球形クリスタルが光っている。
フレッドは、その半球形クリスタルを片方を軽く押した。

ヴィィィィ・・・ガコン!

モーターのうなるような音と共に、金属製の扉が開いた。
スタスタと入っていくフレッド。ジュノは辺りを警戒しつつ、静かに入っていった。
扉の奥には、10m四方の何もない部屋が広がっていた。
壁には幾何学模様とクリスタルの明かりが、天井にはかなり昔の物と思われる絵画が描かれていた。

中心に「赤い目」のついた黒いボールが描かれている。
その隣には、体を黒く、髪を緑に染めたスフィンクスらしきものが描かれていた。
反対側には、青い鎧を身にまとった少年が、右手に光る剣を持って立っている。
さしずめ「邪悪な神に立ち向かう、青き光の戦士」といったところか・・・

「えっと・・・確か左側の・・・」
なにやら独り言を言いながら、部屋の左側の壁を調べるフレッド。
入り口から5mほど離れた辺りで立ち止まった。
壁の幾何学模様の一部が、妙にへこんでいる。
「これだ」と呟き、へこんでいる幾何学模様を押した。
部屋の左奥の壁が、音もなく消えた。


壁の奥には、また扉があった。
幾何学模様の刻まれた、銀色に光る扉。
真ん中あたりに、緑色に光る半球型クリスタルがはめ込まれている。
長年使った事がなかったらしく、埃まみれだ。
どうやらこれが「隠し通路」らしい。
フレッドが興奮している。
「こ、コレだよ!この扉!公開情報だと、この部屋は行き止まりって事になってるんだ!! でも、ちゃんと先へ続く扉がある!学者達でも見つけられなかった道を、僕らは見つけ たんだよ!!」
声に熱がこもる。
ジュノは扉に釘付けになった。


ここに入ってきた時に感じた感覚が甦る。
だが、今度は「懐かしい」ではなく「開けてはならない」だ。
自分でもよく分からないが、内部の「何か」がジュノに警告を発している。
「開けてはならない。進んではならない」と・・・


壁を離れ、埃まみれの扉の前に立つフレッド。
半球型クリスタルを軽く押し、扉を開いた。
扉の奥の闇の中に、火とも電気ともとれぬ明かりと、それに照らされた床が浮かび上がる。
明らかに、ここまでの通路や部屋と造りが違っていた。
異様な威圧感が、辺りを包み込んでいく・・・


フレッドもジュノも、金縛りにあったように、そこから動けなかった。

…何かイヤな予感がする。この先には、何かがある・・・

直感的にそう理解する。寒気がした。


「・・・行こう、この先に」
意を決し、フレッドが自ら闇の中へと入っていく。
ジュノは何か言いかけたが、フレッドを見て、結局何も言わずに闇の中へと入っていった。

ガコンッ!(・・・ヴォォォン・・・)

扉が閉まる。半球型クリスタルの色が、緑から赤に変わった。

闇の奥は、不気味な空間だった。
暗緑色の金属製の壁にはびっしりと幾何学模様が刻み込まれ、青白いクリスタルの明かり
に、薄暗い通路が続く・・・


二人は、目の前に続く通路を、真っ直ぐに進み始めた。
周囲にできる限り気を配る。いつ、どこから、どんなリーバードが出てくるか分からない。
フレッドもジュノも、臨戦態勢をとった。
目の前の通路は、遙か遠くまで続いている・・・


「・・・あれは何でしょう?・・・」
100mほど歩いた通路の一角に、青い扉がある。
この扉にも、緑色の半球型クリスタルがはめ込まれていた。
「入ってみよう・・・油断しないで」
フレッドがそう言いながら、扉のクリスタルをかるく押し、扉を開いた。

ヴィィィィ・・・ガコン!

同じような青白い明かりのある部屋が、奥に広がっている。
フレッドとジュノは、辺りの様子をうかがいながら、ゆっくりと部屋に入った。

ガコンッ!(・・・ヴォォォン・・・)

扉が閉まり、クリスタルの色が緑から赤に変わった・・・


部屋は意外と広かった。
壁に付けられた青白い明かりがコロシアム型に、50mほど先まで続いている。
その終点には、同じく青い扉が見えた。クリスタルは赤。
二人は、部屋の真ん中をゆっくりと歩き出した。周囲に気を配りつつ。

…ヒュッ・・・

頭上でかすかに風を切るような音がしたのを、ジュノは聞き逃さなかった。
フレッドの襟を持って後方に大きく飛ぶ。上から、銀色の「何か」が二つ降ってきた。

ガキィン!

ジュノとフレッドがさっきまでいた地点の床に、大きな銀色の刃が深々と刺さった。
着地と同時に構え、大きな刃の奥を睨み付ける。
刃のすぐ後ろに、体長3mはある「カマキリ」がいた・・・


緑色の装甲が、青白い明かりに浮かび上がる。コアはまさに「紅玉」と呼ぶにふさわしく、
赤く透き通ったクリスタルの中に、日の明かりを閉じこめたようだった。
鎌の刃渡りもゆうに一mを越している。どうやらカマキリ型のリーバードのようだ。
だが、こんなリーバードは今まで見た事も聞いた事もない。
という事は、こいつが最近出没している「見た事もないリーバード」か?!


深々と刺さっていた鎌を抜き、「ガキャガキャ」とこすり合わせる。
ジュノとフレッドを「侵入者」と認めたらしい。
それを見たフレッドが、一歩前に出た。こっちもやり合う気か・・・


「・・・ジュノ。上手くフォローしてね」
そう言うなり、フレッドはバスターを構えて走り出した。目標は、無論カマキリ。
カマキリも「待ってました」と言うように大きな鎌を振り上げ、フレッドを迎える。

キィンッ!

鋭い金属音がこだまする。バスターが鎌にはじかれ、フレッドのもとに戻ってきた。
それでも、かまわずバスターを連射する。
カマキリを中心に、円を描くように走りながら連射するバスターは、鎌の届かない背中や
足に当たり、砕けた。
しかし、それは全く無意味だった。
バスターの当たった装甲は、傷一つついていない。
全く攻撃が効いていないのだ。


フレッドがそれに気づいた頃には、もう手遅れだった。
カマキリは大きく飛躍し、バスターを連射するフレッドの頭部目掛けて鎌を振り下ろした。

ガキィン!

「おわっ!」
鎌が床に深々と突き刺さる。
間一髪、後方に飛び退いたフレッドは命拾いした。


しかし、すぐに追撃が来た。
片方の鎌だけを引き抜き、残った鎌で床をひっかいて前に飛ぶ。
その勢いに任せて、引き抜いた鎌を、アーマーの届いていないフレッドの腹部にぶつけた。

ドゴッ!

鈍い音と共に、フレッドは大きく弾き飛ばされた。
それを追うようにカマキリも飛び上がり、大きな鎌をフレッドの首目掛けて・・・

カン!

突然横から飛んできた石が紅玉に当たり、体勢を崩し、鎌を振り下ろし損ねた。
石の飛んできた方にカマキリの紅玉が向けられる。
その先には、近くにあった石を片手に持つジュノの姿があった。
「・・・ほら、相手はこっちにもいますよ!」
そう言うが早いか、ジュノは右手に石を持ち替え、それを思いっきり投げた。

ガンッ!

鈍い音を立ててカマキリの胸部に当たる。
まるで攻撃が効いていないのが、見るだけで分かる。
それでもジュノは、なぜだか分からないが石を投げ続けた。

徐々にボルテージが上がっていく。ジュノの右手に、力がみなぎってきた。
右手が赤い光を帯びていく。投げつけている石も赤い光を帯び、うなりを上げている。
初めは何の変化もなかったカマキリの様子が、徐々におかしくなってきた。
少しずつだが、ジュノの投げる石に押されてきているのだ。
鎌で石を防ごうとしても、石の方が鎌を避けていく。
徐々に、石の速さが増していっていく。

ズガァ・・・!

石の威力に耐えきれず、後ろに飛ばされるカマキリ。
「ピシッ」と何かにヒビの入ったような音がした。
音の主は・・・カマキリの装甲か!


ジュノはまた石を拾い、カマキリに向かって思い切り投げつけた。
赤い光を帯びた石が、もの凄いうなり声を上げて飛んでいく。
もはや、肉眼で見えるような速さではない。

ズゴォォォォ・・・!!

大砲をぶっ放すような大音響を響かせて、カマキリの胸部にぶち当たる。
カマキリはもの凄い音を立てて、10m以上も後ろへ吹き飛ばされた。
「バキッ!!」と板の割れるような音が、部屋に響いた。

ゆっくりと立ち上がったカマキリの胸部から火花が飛ぶ。
カマキリの装甲が、ついに壊れたのだ。
「フレッド!火花の中心を撃て!!」
ジュノの声が響く。フレッドはバスターを構えた。
距離8m強。静止状態。目標を・・・ロックオン!
フレッドはバスターを撃ち放った。火花の中心を狙って。

ドギャッ!!

バスターは見事に火花の中心を撃ち抜き、中に赤い光を散らした。
火花がどんどん大きくなる。紅玉も、徐々に光を失い始めた。
二人とも「勝利」を確信した。


が、その時、信じられない事が起きた。
激しく火花を散らすカマキリが、突然フレッドに飛びかかったのだ。
あまりに突然の事に驚き、フレッドは反応できない。
カマキリは、その大きな鎌をフレッドの左右に深々と突き刺した。

ガコッ!

鎌が突き刺さった壁が砕ける。奥に、真っ暗な空間が・・・
「あっ!」と叫んだ頃には、フレッドとカマキリの姿はそこに吸い込まれていた。
「わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
壁の奥にフレッドの悲鳴が消えていく。壁の奥には床がないらしい。
どんどん悲鳴が遠ざかっていく・・・
「フレッドォ!!」
ジュノの叫びが部屋中に響き、壁の奥に消えていく・・・

…シュッ・・・

突然ジュノの頭上で、風を切るような音がした。
反射的に飛び退く。
目の前に、さっきのカマキリの物より二回り程大きな銀色の鎌が降ってきた。

ガキィン!

二つの鎌が、大きな音を立てて床に深々と突き刺さる。
ジュノは肩の埃を払いつつ、その突き刺さった鎌の奥を睨み付けた。

鎌の奥には、赤茶色の装甲に身を包んだカマキリがいた。
さっきのカマキリとほぼ同じ型だが、サイズは二回りほど大きい。
こいつ、さっきのカマキリの強化版か。


「・・・そこを退きなさいと言っても、退くはずありませんよね・・・」
カマキリを睨みつつ、ジュノが呟く。
カマキリはそれを無視するように、突き刺さっていた鎌を引き抜き「ガキャガキャ」と
こすり合わせた。
戦闘開始の合図だ。
「・・・いいでしょう。3分で片付けてあげますよ!!」
ジュノの目が殺気を帯びた灰色に変わり、赤い光が右手を包んでいた。

薄暗い部屋で、フレッドは目を覚ました。
周囲にはクリスタルの明かりが、申し訳程度に灯っている。

起きあがろうと下に手をつく。鉄板のへこむような音が、手の下から返ってきた。
「え?」と手をついたあたりに視線をやる。見覚えのある緑色の装甲と、鎌が目に付いた。

フレッドの下には、さっき戦った緑色のカマキリの亡骸が横たわっていたのだった。
紅玉は完全に輝きを失い、鎌や間接はあらぬ方向に折れ曲がっている。
亡骸がクッション代わりになってくれたらしく、フレッドはほとんど無傷だった。


ゆっくりと下に降り、上を見上げる。
遙か上空に、豆粒ほどの大きさの明かりが見えた。


「・・・****」
不意に、背後で誰かの声がした。
驚いて振り向くフレッド。
部屋の奥の通路に、どこかで見たような白いアーマーが入っていくのが見えた。
「ま、待って!」
フレッドは、通路に入っていった白いアーマーを追った。


白いアーマーは黒い髪を靡かせ、車並みのスピードで通路を駆け抜け、角を左に曲がった。
フレッドがその角を曲がると、今度は50m程先の十字路を右に曲がる白いアーマーが見えた。

「(な、なんだよあの速さ~!いくら何でもこれは反則だろ!?)」
全速力で走りながら、フレッドは大いに文句を言っていた。

白いアーマーは十字路を右に曲がり、80m程先のT字路を右に曲がり、階段を下り、通路を60m程駆け抜け、大広間を横切り、再び階段を下り、十字路を二つ左に曲がる。
さらに30m程走り、角を左に曲がった。


「・・・あれ?」
最後の角を左に曲がった所で、フレッドは思わず首をかしげた。
さっきまで追っていた白いアーマーが見あたらないのだ。
代わりに、幅・高さとも3mを越す白い扉が立ちふさがっていた。

「・・・何だろこの扉」
白い扉の前で立ち止まるフレッド。
得体の知れぬ威圧感が、フレッドに重くのしかかる。
辺りの気圧が一気の高くなったように、息苦しい。

…この扉の向こうには何かある。何か、とんでもない物が・・・

直感的に理解する。一瞬、寒気がした。

『選バレシ者ヨ。コノ扉ヲ解キ放テ。封印ヲ解キ放テ』

どこからともなく、聞き覚えのない声がフレッドの頭の中に伝わってきた。
その声に圧されるようにフレッドは白い扉に手をふれた。

ピピッ・・・ピシュゥゥゥゥ・・・

軽い電子音の後、扉の両端からする空気の漏れるような音と共に、扉がゆっくりと開いた。
扉の奥から、青い光があふれる。

『選バレシ者ヨ。封印ヲ解キ放テ。「力」ノ封印ヲ解キ放テ』

さっきと同じ声が再びフレッドの頭の中に伝わってくる。
その声に圧され、フレッドは青い光の中へと消えていった・・・



ガキィィン!

ジュノ目掛けて勢いよく振り下ろされる、銀色の鎌。
だがその鎌は空を切り、大きく飛躍したジュノの足下に突き刺さった。
「パターンは・・・ほとんど一緒なんですね!」
カマキリの背後に着地すると同時に、右手に持っていた石を投げつける。
石は赤い光を帯び、弾丸のごとく、うなりを上げて飛んでいった。

ギィィン!

鋭い金属音と共に、赤い光は左右に分かれ、闇の中に消えた。
「な・・・」
絶句するジュノの視野に、銀色の鎌を構えたカマキリの姿が浮かぶ。
さっきの緑色のカマキリが手も足も出なかった攻撃を、このカマキリは鎌一つで易々と防いだのだ。
ガチャガチャと音を立てて向き直り、鎌を振り上げるカマキリ。
紅玉が、まるであざ笑うかのように揺らめいた。

ズヴァァァ!

次の瞬間、Xを書くように勢いよく振り下ろされる、二つの鎌。
その直後、ジュノは強い衝撃を受けて弾き飛ばされた。

ズザァ・・・

土埃の舞う床に落ちるジュノ。胸部に鋭い刃物で斬られたような切り傷がついていた。
それを追うように飛躍するカマキリ。
ジュノの首を狙い、鎌を振り下ろす!

「くっ!」
ガキィィンッ!!

間一髪、後転するようにして飛び上がり、難を逃れた。
着地して、カマキリを冷たい目で捉えるジュノ。
衝撃を受けた胸部に右手をあてる。
鋭い刃物で斬りつけられたような切り傷が一つ、深くついていた。

「(・・・こちらの遠距離攻撃は、もう通用しませんね。となれば残るは・・・)」
近くの石を一つ拾い上げ、右手に持つ。
そして再び、冷たい目でカマキリを捉えた。

カマキリが大きく鎌を振り上げる。
そのまま、Xを書くように勢いよく振り下ろ・・・

「(今だっ!)」

振り下ろされる瞬間、ジュノは右手に持っていた石を思いっきり投げつけた。
カマキリに向かって真っ直ぐ飛んでいく、赤い光を帯びた石。

ズゴォォォォ!!

二つの攻撃がぶつかり合い、火花と爆煙を散らした。
カマキリはその爆煙の奥にいるジュノ目掛け、再び鎌を振り下ろした。

ズヴァァァァ!!

目に見えない空気の刃が、爆煙を斬っていく。
次の瞬間、カマキリは恐ろしいものを見た。
斬り裂いた爆煙の遙か上空、地上10m程の高さまで飛び上がる白いアーマー・ジュノ。
その右手全体が、赤い光に包まれていた。
「ッッッぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!」
赤い光に包まれた拳を振りかぶり、カマキリに向かって一気に降下していく!
「ゲイザァ・スパイラルッ!!」

ッゴォォォォンッ!!

ジュノの拳が炸裂し、辺りを爆炎と赤い光の破片が包む。
その爆炎と共に、赤茶色の装甲が四方八方に飛び散った。

炎の真ん中に、ゆっくりと立ち上がり、己の右手を見つめるジュノ。
さっきまでの赤い光と力に満ちた感覚は、ほとんど収まっていた。
同時に、今までなかった疑問が脳裏に浮かび上がってくる。

あの感覚は、あの力は何だったのだ?

ここに入って来た時の不思議な感覚といい、今のカマキリとの戦いといい・・・
ここに来てから妙な事ばかり続く。特に、今のカマキリとの戦い方。
初めての実戦のハズなのに、まるで何度も戦ったような、圧倒的な・・・
だいたい、一気にあんな高さまで飛び上がる程の跳躍力を持つ人間なんて、まずいない。
一体どうしてしまったのだろう・・・


ヴィィィィ・・・ガコン!
部屋の奥、ジュノの背後の扉が、渋いモーター音と共に開いた。
反射的に振り向く。ジュノの視野に、赤に白のストライプを入れたアーマーが・・・
「フレッド!無事でしたか!」
「う、うん。何とかね・・・」
応えつつ、ジュノの元へ歩み寄る。その足取りは、思ったよりもしっかりしていた。


二人はそのまま、遺跡を後にした。
ここのリーバードは予想以上に強く、今の装備では危険だと、二人とも身をもって感じたからだ。

帰り道に、リーバードは一匹も出てこなかった。
幸いといえば幸いなのだが、ジュノはこれに不信感を募らせていた。

…おかしい。何かが違う。何かが引っかかる・・・

フレッドの家が見えてくるまで、ジュノは何度も後ろを振り向いた。


PM4:30
日が傾き、辺りが夕闇に包まれはじめた頃、二人はようやく帰ってきた。




翌朝、近所の子供が深夜に何者かに襲われ、重傷を負うというニュースが、食卓に流れた。