ロクノベ小説保管庫 第4章~ターゲットは…~

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

『・・・次のニュースです。 昨夜11時頃、バルク州ビーノタウンで子供が何者かに襲われ、重傷を負うという事件 がありました。 襲われたのは、ビーノタウンに住む会社員ウォルク・キャットさん(45)の長男 ガフムス・キャット君(15)です。

 ガフムス君は全身を鋭利な刃物で斬りつけられていますが、意識ははっきりしていると いうことです。 現場は自宅から2kmほど離れた丘で、大きな引っ掻き傷が幾つも見つかっています。 なぜガフムス君がその時間にそこにいたのかは不明ということです。

 状況や手口が似ている事から、地元警察は同一犯の可能性が極めて高いとしています。 夜中に子供ばかりが襲われる謎の傷害事件の犠牲者数は14人となり、周辺住民からは 不安の声が・・・』


「ガフムス・・・」
朝から何度も流れるニュースを聞いていたジュノは、被害者の名を再び思い浮かべていた。
それと同時に、ボロボロになって帰ってきたフレッドの姿が目に浮かぶ。

フレッドの話だと、ケンカを仕掛けてきたのはこの辺りを仕切る3人組。
その内の一人の名がガフムスだと、ジュノは聞いていた。
同姓同名ということもあり得るが、同じ町内となると滅多にありそうにない。
やはり本人・・・

「ジュノ、どうしたの?」
「あ、いえ。別に・・・」
後ろから、両手いっぱいのジャンクパーツを持ったフレッドに声をかけられ、ジュノはさっきまでの思考を止めた。
「フレッドこそどうしたんです?そんなにパーツを持ってきて・・・」
「ん、ちょっとね・・・」
フレッドはそう言いつつ、自分の部屋の大きな机の上にジャンクパーツを置いた。
いつも散らかっているフレッドの机だが、今日は特に散らかっているように思える。
「もう寝よう。今日は疲れたし、後は明日ってことで」
「そうですね。無理すると身体に悪いですし・・・」
ジュノも同調した。

下段のベットに潜り込むフレッド。それから3分もしないうちに寝息を立て始めた。
「・・・しかし、この寝付きの良さは何なんでしょう・・・」
明かりを消し、半ば呆れつつ上段のベットに潜り込むジュノ。
睡魔は、あっという間にジュノの意志を闇の中へと引きずり込んで行った・・・

何もない真っ白な空間に、ジュノはいた。
辺りは静かで、何も聞こえない。何も感じない。
まるで、体が煙のようになってしまったような、不思議な感覚・・・


少し遠くに、紺色のフードをかぶり、紺色のマントを羽織った誰かが見えた。
見覚えは、ない。
「(あなたは・・・誰です?)」
その人を呼んだつもりが、声が出ない。息がヒュウヒュウと漏れるような音を出すだけ。
「・・・・・・」
紺色のマントが、何も言わずにゆっくりと振り向く。
フードの奥に、生気のない、ルビーのように赤く澄んだ瞳が光った。
「(え・・・)」
絶句するジュノ。なぜか、背筋が寒くなってきた。

その人は、マントの中から何かを取り出し、ジュノに向けた。
それは、見たこともない、黒いアーマーのハンドパーツだった。
腕や指は異常に細く、指先は鋭く尖っている。
手の甲には、リーバードの瞳のような半球型クリスタルが光っていた・・・

その人はそれを右手に取り付け、ジュノを指さす。
途端、青白い光球がジュノ目掛けて飛んできた。
防ごうとするが、体が動かない。
光球は、もう目前にまで迫っている。
ジュノの意識は、そこで途切れた・・・


ジュノは目を覚ました。
明かりの消えた部屋の中に、天窓から月明かりが差し込んでいる。
今夜は・・・満月らしい。


両手で肩を抱くようにして、ゆっくりと上体を起こす。
バクバクという鼓動が、月明かりの差す部屋に響いていた。
「・・・夢・・・」
ポツリと呟くジュノ。同時に、恐怖感がジュノを包んだ。

今のは、本当にただの夢だったのか?

夢なら、ここに来てから何度も見た記憶がある。
だが、今のは今までのどの夢とも違う。何かが・・・

…ザッ・・・

不意に、窓の外で砂利を踏むような足音がした。
驚いて窓の外、足音のした方に目線を移すジュノ。
見慣れた金色爆発頭が、紺色の布を右手に、夜道を歩いて行くのが見えた。
…フレッドだ。
「(・・・こんな夜中に、一体何処に・・・?)」
フレッドの行動に疑問を持つジュノ。一瞬、先程の夢が目の前を横切った。
恐怖心を払いのけ、静かにベットを降り、足音をたてないようにドアに歩み寄る・・・

ガシャッ!
ビクッ!!

突然、ジュノの背後で何かが落ちる音に、驚いて振り向く。
床に落ちたジュノの白いアーマーのアームパーツ(右)が、月明かりに照らされ、闇に沈む部屋に薄い光の輪を作っていた。
「(・・・持っていけ、ということですか・・・?)」
アームパーツを拾い上げる。
手の甲にあるクリスタルが、ひときわ輝いて見えた。


…ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・
タタッ・・タタッ・・タタッ・・タタッ・・タタッ・・

ライトも持たず、普段歩くよりも相当速いペースで夜道を歩いて行くフレッド。
その20m程後ろを、右手だけに白いアームパーツを着けたジュノが、小走りで追っていた。

この道は、町の東側にある港に通じる一本道。
遠くに、コンテナやら倉庫やらが大量に並ぶ、ひとけのない港が見えている。
右手には、幻想的な光を放つ満月が、2人を見下ろすようにぽっかりと浮かんでいた。
「(・・・なぜこんな時間に、こんな所へ・・・)」
フレッドを追うジュノの疑問は、ますます深まって行った。


そのころ、港から少し離れた辺りを、一人の少女が何かに追われていた・・・


2人は港の倉庫街に入った。
誰もいない、夜の闇に沈む倉庫街に、フレッドの足音だけが異様に響く。
ジュノは、出来るだけ気付かれないように、今までよりも少し距離を置いて後を追った。
ジュノの追跡に気付いているのかいないのか、フレッドは黙々と歩いて行く・・・


道の両側にズラリと並ぶ、錆び付いた倉庫。そのうちの幾つものかはフォークリフトの駐車場として使われているため、両側に扉があり、倉庫を挟んで反対側の道に出られるようになっている。大抵、鍵はかけられていない。
キーのついていないフォークリフトくらいしか、盗まれるような物がないのだ。

フレッドは、その駐車倉庫を抜けて、臨海部の方へと向かっていた。
コンテナが並べられ、クレーンが海風に寂しいうなり声を上げる、臨海部へ。
ジュノも後を追って行った。波の音が、だんだん近くなってきた・・・


7つ目の駐車倉庫を抜けると、目の前の様子が一変した。
ズラリと並べられたコンテナ。その少し上には、潮風にうなり声を上げるクレーンが、鉄の爪をぶら下げている。
40m程先には、何処までも続く紺碧の海と、明るい満月が、コンテナの間に見えた。


だが、フレッドの姿だけは、何処にも見当たらなかった。


「(見失いましたか・・・)」
ジュノは軽く唇をかんだ。冬の潮風が頬に冷たく当たる。
諦めて帰ろうと振り返った、その時だった。

「きゃあああああぁぁぁぁぁ!!!」

港中に響くような悲鳴。それも・・・かなり近い!
ジュノは走り出した。悲鳴のした方に向かって。
鼓動がどんどん速くなって行く。フレッドが、何かしたのではないだろうか・・・

ドン!
「うわっ!」
「キャッ!」

コンテナの角で、出会い頭に誰かとぶつかった。
すぐ立ち上がり、「ごめんなさい」と言いかけたジュノは、言葉を止めた。

ぶつかったのは、15歳くらいの少女だった。
細身の長身で、赤いバンダナの縁から赤髪がのぞいている。
血が抜けたように白い顔に、緑色の瞳が輝いていた。
ジーパン・ジージャンという比較的頑丈な格好だが、全身には鋭い切り傷が無数につけられ、赤い体液がポタポタと滴り落ちている。
誰かに追われ、何か刃物のような物で斬りつけられたことが、すぐに了解できた。


そしてその人の後ろには、その犯人と思われるモノが待ち構えていた。


中型の狼型リーバード・カルムナバッシュ。
暗青色の装甲板に、血のように赤い瞳が光る。
「中型」というのは名前だけで、実際の大きさは闘牛用の雄牛より2回りも大きい。
その素早さと凶暴性は、確認されているリーバードの中でもトップクラス。
特に素早さは、その体の大きさにも関わらず常時80km/時を越えるスピードで移動するので、ベテランディグアウターでも大苦戦する。
両足の鋭い爪と、口内に取り付けられた火炎放射器が最大の武器である、厄介な敵だ。


グルルルルル・・・ッ!

うなり声を上げ、低く身構える青狼・カルムナバッシュ。
次の瞬間、青狼は大きく飛躍し、ジュノと少女に向かって突っ込んできた。
爪が月明かりに照らされ、妖しい光を発する。

「あぶないっ!」
ズシャァッ!!

鋼鉄の爪がアスファルトをえぐり、引っ掻いたような爪痕を残す。
間一髪、ジュノは後ろに押し倒すように少女にかぶさり、爪の下をくぐり抜けた。
流石に恥ずかしい物があるが、今はそんなこと言っていられる状態ではない。


「・・・次にあいつが飛びかかってきたら、そこのコンテナの陰に逃げます。いいですね」
静かに立ち上がり、そう言いつつ肩越しに、青狼に冷たい視線をぶつけるジュノ。
青狼は、ゆっくりとこちらの方へ向きを変え、再び低く身構える。
次の瞬間、青狼は大きく飛躍し、再び2人目掛けて突っ込んできた。

「おっと!」
お辞儀するように前にかがみ込み、鋼鉄の爪の下をくぐり抜ける。
相手が着地するより早く、少女の手を引いて立ち上がらせ、コンテナの陰に送り込んだ。
「そのまま奥へ!」
ジュノの声が、コンテナ街に響いた。

ガルルルルル・・・ッ!!

低く身構え、うなり声を上げてジュノを威嚇するカルムナバッシュ。
ジュノは足下にあったアスファルトの破片を右手で拾い上げた。
右手の甲から赤い光が伸び始め、それは右腕全体を包んで行く。
ジュノに再び、あの遺跡の中で感じた、力に満ちた感覚が蘇ってきた。
ジュノの瞳が、殺気を帯びた灰色へと変わる。
「・・・さて、どう料理しましょうか・・・?」
うっすらと冷徹な笑みを浮かべるジュノ。
右手の光が、以前よりその強さを増していた。


ザシュッ!!
「遅い!」

身じろぎもせず飛びかかってくる青狼。
それに低く駆け込むようにしてその爪の下をくぐり抜け、振り向きざまに赤い光を帯びたアスファルトを放つ!
赤い光の矢が、夜の闇の中にまっすぐに伸びた。

ドグォ!

鈍い音を立てて青狼の腹部を直撃するアスファルト。
赤い光が、星のように飛び散る。
更にまた1つアスファルトの破片を拾い、赤い光と共に撃ち放つ!

ズグォァ!!

赤い光は青狼の右前肩に当たり、砕け散った。
火花と共に暗青色の装甲が飛び、暗い海に沈む。
着地と同時に、青狼は低くうなり声を上げた。


足下にあったアスファルトの破片を2・3個拾い、右手に持つ。
赤い光は、すぐにアスファルトの破片を受け入れて行った。
青狼はこちらへ向き直り、地を這うような低いうなり声を上げている。
右前肩から飛び散る火花が、コンテナを焦がしていた。


ズギュォォ!!
ザシュ!!

スキをついて撃ち放ったジュノの赤い光を、刹那の差でかわす青狼。
牙をむき、爪を妖しく光らせ、そのままジュノに飛びかかってきた。
間一髪、バック宙をして飛び退き、空中から赤い光を撃ち放つ!

ズギュォォ!!
ゴォォォォォゥ!!

突然はき出された紅蓮の炎が、闇を裂き、赤い光を呑み込んだ。
赤い光が見る見る小さくなって行き、青狼の目と鼻の先で、ついに・・・消えた。


「ほぉ・・・媒体のアスファルトを蒸発させて防ぐとは、考えましたね・・・」
近くのコンテナの上に降り立ち、感嘆の声を漏らすジュノ。
その顔には、焦りの色などかけらもない。
あるのは、氷の様に冷たい灰色の瞳と、辺りを包む、殺気にも似た重いオーラだけ・・・
彼を良さく知る人間が今の彼の姿を見たら、驚きと恐怖の余り、言葉を失うことだろう。
今の彼には、いつもの暖かさなど、かけらも残っていない・・・

「(・・・?!)」
突然、ジュノの表情が変わった。何かの気配を感じ取ったのだ。
ジュノの立っていたコンテナが青い光に呑み込まれたのと、ジュノがそこから飛び上がっ
たのはその直後、それこそ刹那の差だった。

ドキャァァァンッ!!

派手に火花を散らし、ただのガラクタと化すコンテナ。
青狼とガラクタから数m程離れた別のコンテナの上に降り立ち、謎の気配を感じた方へと目を向ける。

次の瞬間、ジュノは我が目を疑った。


月明かりに照らされ、冬の潮風に寂しいうなり声を上げるクレーン。
その鉄の腕の上に、潮風に紺色のマントを靡かせるあの人物が立っていたのだ。
紺色のフードの奥には、ルビーのように赤く澄んだ瞳が光り、右手にはあの黒いアーマーのハンドパーツがついている。
まさしく、あの夢に出てきた人物そのものだった。


『・・・おまえのような奴に計画の邪魔はさせない。悪いが、この場で消えてもらおう』
低くくぐもった声と少年のような声が、テレビの多重音声のように発せられる。
その多重音声に、生気などほとんど感じられなかった。


バッ!

満月を背に負い、高く飛び上がる紺色のマント。
紺色のマントは、そのままジュノ目掛けて降下してくる。
右手が、青白い光を帯びた。

ドドーーーンッ!!

紺色のマントが拳を振り下ろす。
それをわずかな差で飛び退きかわすジュノ。
拳は足下のコンテナに当たり、また1つガラクタを増やした。

ジュノが着地するより早いか、カルムナバッシュが真横から飛びかかって来た。
かかとでコンテナの角を蹴り、バック転して後ろのコンテナの上に飛び乗る。
カルムナバッシュはジュノの前ギリギリを通り抜け、コンテナの壁に激突した。


「これでも・・・食らいなさいっ!!」
手元に残った最後のアスファルトの破片を赤い光で包み込み、紺色のマントに向かって投げつける!
紺色のマントは避けることもなく、右手を前に差し出した。
指先から、青白い光が触手のように伸びて、赤い光を迎え撃つ!


ドゴォァァォォンッ!!

ぶつかり合い、紫色の光と火花を散らして爆発する両者の光。
その火花とコンテナの間を、牙をむいた青狼が走り抜け、そのままジュノに飛びかかってきた。

ザシュッ!

宙を舞い、空を切る牙と爪。
青狼はそのまま、倉庫街へと突っ込んで行った。
それを見て、10m程の高さまで飛び上がったジュノが、あざ笑うかのように言う。
「軌道がミエミエなんですよ」
『おまえもな』
突然、目の前に赤い瞳が現れたかと思うと、ジュノは胸部に青白く光る拳を受け、倉庫街へとたたき落とされた。

ズザァァァ・・・

アスファルトにぶつかり、土埃を舞わす。
そこに、右腕を青白い光で包み込んだ紺色のマントが、拳を振りかざし急降下してきた。

「くっ!」
ドゴオオオォォォン・・・ッ!!

間一髪、後転&飛び上がりでそれを避け、壁を蹴ってもう一段高く飛ぶ。
その直後、何処からか現れた青狼が、ジュノが蹴った壁に激突した。

『フフッ・・・。おやおや、逃げたと思ったらまだそこにいたか。 それとも、腰でも抜けたのかな?ジェイスフォン?』
あざ笑うように言い放つ紺色のマント。しかし、視線はジュノではなくジュノの背後に向けられていた。
振り返るジュノ。そこには、さっきぶつかった15歳くらいの少女がへたり込んでいた。
顔面蒼白。全身血まみれで、動くことすら出来ないらしい。
ジュノは大いに驚いていた。こんな所で例の3人組の一人に会えるとは!


『・・・手間が省けるというのは良い事だな。一人は死にかけ。一人は攻撃不可能か。 ・・・2人とも、今楽にしてやる・・・』
多重音声が冷たく言い放つ。
右手に、直径10cm程の青白い光球が浮かび上がった。
カルムナバッシュも口を大きく開け、火炎放射器をスタンバイ。

万事休す

さっきのように一気に10mも飛び上がればジュノは助かるかもしれないが、ジェイスフォンの命はまずない。
かといって、ジェイスフォンを持ち上げて飛ぶにも高さに限界があるし、持ち上げるスキに攻撃されるのがオチだ。
攻撃しようにも、媒体となる物が手元にないジュノは、遠距離攻撃が出来ない。
近距離攻撃にしてみても、近づく前にこちらが灰の山にされてしまう。
灰にされてはどうしようもない・・・

絶体絶命

その言葉が、脳裏によぎった。右手を握りしめる。
「(残りのアーマーでもあれば・・・)」
ジュノがそう思った時だった。彼の目の前で、信じられないような事が起きたのである。

ヒュゥ・・・ドドォォンッ!

大砲でもぶっ放したような音を立ててカルムナバッシュと紺色のマントにぶち当たる白い何か。それはゴムまりのように跳ね返ってきてジュノにぶつかり、白い光を発してジュノの身体に取り付けられた。

白い何か。それは、ジュノが部屋に置いてきた、白いアーマーの残りだった。
胸部も左腕も両足も、白いアーマーが装着されている。
遺跡に入ったあの時と、全く同じ状態・・・

『グッ・・・アーマーをインスパイヤー・モードに設定していたのか。油断したな・・・ だがどちらにしろ、媒体のないおまえに、勝ち目などないわ!!』
土埃を払い、天高く右腕を上げる紺色のマント。
その右手には、直径1m程になった青白い光球が浮かんでいた。


「それはどうでしょうね?!」
ジュノは両手を前へ差し出し、手の平を向かいあわせる。
両手の甲のクリスタルが光を増したかと思うと、両手の平の間で赤いスパークが生じた。
スパークはだんだん強くなり、中心に直径10cm程の赤い光球を生み出す。


紺色のマントは軽く5m程飛び上がり、右手をジュノ目掛けて振り下ろす!
『シー・クラッシャァ!』
青白い光球が、ジュノ目掛けて飛んで行く!!

ジュノは腰を右にひねり、勢いをつけてその赤い光球を撃ち放った!!
「レッドサンダー・クラスタァ!!」


ッゴオオオアアァァォォォォンッ!!!


肉眼で見えないような速さで青白い光球にぶつかり、大音響を響かせて炸裂する赤い光球。
爆風で近くの倉庫の屋根や壁が吹き飛び、街からでも見えるような爆炎が空を埋め尽くす。

紺色のマントはアスファルトにたたき落とされ、カルムナバッシュも全身にかなりのダメージを負った。
『・・・くっ・・・なぜ・・・』
紺色のマントが右腕をおさえ、立ち上がる。ポタポタと赤い体液が滴り落ちていた。
「媒体がなければ攻撃できませんでしたね?だから、エネルギーを凝縮したコアを作り、 それを媒体にしたのですよ。こうすれば、ぶつかった時の爆発力も増大します」
淡々と答えるジュノ。紺色のマントは、カルムナバッシュの方へと歩み寄りつつ、言った。
『フッ・・・エネルギーをエネルギーで包むとは、思いも寄らなかったな・・・ ・・・今回はこのくらいにしておいてやろう。だが、次はこうはいかないからな・・・』カルムナバッシュに乗り、そう吐き捨てて紺色のマントは去った。
ジュノの両手を包んでいた赤い光も、その強さを弱め、ついに・・・消えた。


「・・・・・・」
ジュノはその場に立ち尽くしていた。

さっきのは、一体何だったのだろう?
ジュノの頭に1つ、また1つと疑問が増えて行く。

また感じたあの力に満ちた感覚。何度も戦った事のあるような「慣れ」を感じる戦い方。
自分でも信じられないような早さでの移動、攻撃術。何処からか飛んできたこのアーマー。
最後にたたき込んだ、あの技。そして、あの紺色のマント。
あの人は、どうして媒体無しでは攻撃できない事を知っていたのだろう・・・
何が何だか、さっぱり分からない。

「・・・うっ・・・」
背後でうめくような声が聞こえた。
その声で我に返り、後ろを振り向くジュノ。
傷だらけのジェイスフォンが、壁づたいに立ち上がろうとしていた。
血の池の上に立つジェイスフォンの足取りはおぼつかない。
フラフラしていて、今にも倒れそうだ。

あわてて手をさしのべるジュノ。
ジェイスフォンはその手を取ろうとしたが、バランスを崩し、そのまま・・・倒れた。
「ウワァァァァ!しっかりしてください!まだ死なれては困りますよ!!」
(まだ死んだと決まったわけではないのだが)更にあわてるジュノ。
頭の中が真っ白になった。
と、その時。駐車倉庫の向こうから、天の助けが現れた。
「君!大丈夫か?!」
「さっきのは何なんだ?!」
「おい!怪我人がいるぞ!肩を貸せ!」
そう言って、懐中電灯片手に走り寄ってくる数人のおじさん。
港の西側にある町の住民達だった。さっきの爆炎を見て、駆け付けてくれたらしい。
2人がかりでジェイスフォンを持ち上げ、鉄パイプとジャンパーで作った即席タンカに乗せる。
ジェイスフォンはそのまま、近くの病院へと搬送された。


ジュノは今、フレッドの家に続く長い一本道を歩いている。
満月は傾き、山の陰に落ち込もうとしていた。
「・・・こんな時間に出歩いて、みんなさぞかし怒るでしょうねぇ・・・」
一人ため息をつく。

正直な所、今のジュノの気持ちは決していい物ではなかった。
ジェイスフォンを搬送したおじさん達に「一体何があったのか」と問いつめられ、かなりごまかしを入れて逃げ帰ってきたのだ。
真実は何1つ言っていない。1つでも言えば、自分の能力やあの紺色のマントの事も言わざるを得なくなってしまう。
あの出来事は、一夜の夢にしたい。
それがジュノの考えだった。
その上、こんな時間に勝手に出歩く・・・
早くゆっくり眠りたいのだが、みんなが何と言うか、と考えると、足取りはどんどん重くなって行く・・・


静まりかえったフレッドの家の前についた。
扉にはもちろん鍵がかかっている。
しかし、なぜかフレッドの部屋の窓だけは、この季節にも関わらず開け放たれていた。
かなり不自然な光景だが、今のジュノにはそんな事どうでも良さかった。
早くゆっくりと眠りたい・・・

窓の下から思いっきり飛躍するジュノ。
難なく窓のさんに飛び乗り、そのまま部屋の中へ。
そして2段ベットの上段へと潜り込み、深い眠りについた。

数分後、彼は悪夢にうなされる・・・