ロクノベ小説保管庫 第6章~魔女と悪魔と戦士達~

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「こいつぁひでぇ・・・」
「なんという事を・・・」
町の状況を見、愕然とするガルドとジュノ。

町は、完全に修羅場と化していた。
突然現れたカルムナバッシュに炎を浴びせられ、焼け落ちる家々。
爆発するガスタンク。乗用車。為す術もなく逃げまどう人々。
それを追い回す、無数のリーバード達。相手は、1体だけではなかった。


早速ハーレーを見つけ、襲おうと追い始める小型の狼型リーバード・オルフォン。
最高75km/時と移動速度はカルムナバッシュに劣るが、牙の鋭さはシャレにならない。
だが、その牙が効果を発揮する前に、オルフォンはジュノの赤い光によって鉄屑にされた。

十字路を右に曲がると、住宅地。
灰色のカルムナバッシュが家々に火を放ち、逃げまどう人々を爪や牙の餌食にしていた。
道ばたに、犠牲となってバラバラにされた死体が、血と炎にまみれ、幾つも転がっている。
「おのれ・・・よくも・・・」
赤い光がジュノの身体を包む。瞳が、殺気を帯びた灰色に変わった。
ジュノの怒りが・・・爆発する!

「ッノヤロォォォッ!」
フルスピードでカルムナバッシュに突っ込んで行くガルド。
10m程手前でハーレーから飛び上がるジュノ。
ガルドはハーレーを斜めに倒し、カルムナバッシュの足下にスライディング・アタックを打ち込んだ。
火花を散らし、吹き飛ぶ右前足。バランスを崩してよろけるカルムナバッシュ。
そこに、上空から光に包まれた「神の手」が降ってきた。
「ゲイザァ・スパイラルッ!」
ジュノの拳が大爆発を引き起こし、一瞬にして塵と化すカルムナバッシュ。
今までで最も強力な一撃だった。

爆発音を聞きつけ、近くにいたオルフォン達が集まってきた。
1・・・2・・・4・・・8・・・16・・・20匹を超える。
少し離れた所には、怪我をしているものの、まだ息のある町の人たちがいる。
ここで戦うのは・・・
「おい!飛び乗れ!」
ハーレーをとばすガルドがジュノに叫ぶ。
ジュノは軽く飛び上がり、ハーレーの後ろに乗った。


十字路をまた右に曲がり、町の商店街に向かう。
それを追うように、20匹近いオルフォンがついてきた。
住宅地から約300m。
「ここなら良いでしょう・・・あなた達も・・・消えなさい・・・!」
両手を向かい合わせ、スパークを生じさせる。
スパークは新しい光球を作り出し、光球はスパークを吸収して大きくなる。
それをオルフォンの大群目掛けて撃ち放った!
「レッドサンダー・クラスタァ!!」
大群の真ん中で大爆発を起こす光球。オルフォンはその爆風に呑まれ、全て消えた。

「何でこんな奴がここにいるんだよ!」
商店街の入り口で急ブレーキをかけ、ガルドが叫ぶ。
商店街は、厄介な連中の巣窟となっていたのだった。

中型の戦士型リーバード・シャルクルス。
全リーバード中最も攻撃的で、能力的バリエーションの豊富なリーバード。
両手にある刃物で斬りつけてきたり、アッパーを繰り出したりと、攻撃も多彩。
ディグアウターが苦戦するリーバードの代表格だ。

ガルドとジュノを見つけるなり、瞳をさらに明るく光らせるシャルクルス達。
ガルドは冷や汗をかいた。
「赤・青・緑・白・金・・・全色勢揃いだぜ・・・」
「たとえ揃っていても・・・破壊されればそれまででしょう・・・!」
そう言い放ち、空高く飛び上がって無数の光球を降らすジュノ。
ガルドもマシンパワーに任せ、フルスピードで一気にシャルクルス達をなぎ倒す!
あちこちで爆発が起こり、バラバラにされるシャルクルス。
しかし、まだ半分以上が生きている・・・
商店街の反対側の入り口についたジュノは、両腕に赤い光をまとった。
ガルドのハーレーが横を通過すると同時に、勢いよく右・左手を前に突き出す。
「ツヴァイ・ブラストッ!!」
赤い光が、商店街の通路を埋め尽くす程の光の束となって、シャルクルス達を呑み込んだ。

あちこちで爆発が起こる中、金色のシャルクルス達が、光の束を飛び越えて、ジュノに飛びかかってきた!
しかし、ジュノは慌てる事もなく、次の攻撃に移っていた。
軽く地を蹴り、シャルクルス達より少し高い所まで飛び上がるジュノ。
両足に赤い光をのばし、まとわせると、金色のシャルクルス達の中に降下して行く。
そして、かかとを上げ、振り下ろした!
「グラウンド・ゼロッ!!」
シャルクルスの首元に直撃するかかと。
ジュノは、反動を使って再び飛び上がり、他のシャルクルスにかかとを落とした。
落とされたシャルクルスは地面に叩き付けられ、爆発して粉々に砕け散った。

ッゴォォォォンッ!!

地を揺さぶる振動、もの凄い爆発音と共に、巨大な火柱が立った。
町の中心地、ビジネス街の方だ。
「行くぞ!乗れ!」
そう叫び、中心地に向かうガルド。
ジュノはそれを追うように走り、後ろに飛び乗った。

一方ジェノ達は、町の上空から被害を見ていた。
住宅地や商店街はだいぶ片付いたようだが、他の所ではまだ火柱が立っている。
特に、工業エリアと呼ばれる工業団地は、火柱の数が尋常ではなかった。
30・・・50・・・70・・・いや、確実に3桁はある。
ビジネス街も、かなり痛手を受けていた。
「・・・ビジネス街と工業エリアのダメージがデカイ。メビウス、工業エリアに降ろせ!」
「了解。方位33、高度10フィート、工業エリアに降下します」
ジェノの指示を受け、ゆっくりと降下するメビウス。

ジェノは、黒い大鎌と1対の赤い手袋を取り出した。
鎌の頭には緑色の球形クリスタルが、手袋の甲には赤紫色の半球形クリスタルが付いている。
ジェノは、鎌をガフムスに、手袋をジェイスフォンに手渡した。
「・・・え?」
「お前達の武器だ。自分の身は自分で守れ。使い方は、念じながら言葉を唱えるだけだ。
 言葉は呪文として契約され、以後そいつはその呪文を合図に動き出すようになる。
 好きに使っていいが、くれぐれも無茶はするなよ」
前を向いたまま、ぶっきらぼうに応える。
ガフムスとジェイスフォンは一瞬顔を見合わせたが、何も言わずに準備に入った。

「高度10フィートクリア。降下して下さい」
「了解!俺達が降りたら、上空から援護しろ!」
メビウスに最後の指示を出し、ジェノはガフムスとジェイスフォンを抱えて飛び降りた。
その後を、紺色のマントを靡かせたフレッドが追う。
メビウスは一気に上昇し、上空から機銃掃射を始めた。


「・・・お前達は向こうを処理してこい。俺はこっちを処理する」
ガフムスとジェイスフォンを降ろし、そう言って走り去るジェノ。
その後ろ姿を見送り、辺りを見回して、フレッドは呟いた。
「・・・何なんだろ・・・」

シュ・・・

頭上で空気を斬るような音がしたのを、フレッドは聞き逃さなかった。
「!!!」
叫ぶ間もなく素早く地を蹴って、ガフムスとジェイスフォンを突き飛ばす。
銀色に光る2つの鎌が降ってきたのはその直後、それこそ刹那の差だった。

アスファルトの地面に突き立てられた鎌の奥を見据えるフレッド。
その視線の先には、中型のカマキリ型リーバード・マンティス(赤)がいた。
あの遺跡の中でフレッドやジュノに襲いかかってきた、あのリーバードである。
瞳は赤く光り輝き、鎌をガチャガチャと擦り合わせている。戦闘開始の合図だ。

「・・・来るよ、あいつ」
「では、手始めに僕が。この武器とやらの性能も、見てみたいですし・・・」
そう言って右手に大鎌を握りしめ、静かにマンティスに近づくガフムス。
熱い風が渦巻く中、10m程離れた辺りで立ち止まった。
「(念じながら言葉を唱える、でしたよね?)」
使い方を一人で確認し、鎌を振りかぶって目を閉じる。
「(・・・風よ、死神の鎌となりて敵を斬れ・・・)ウインド・デス・シザー!」
唱えると同時に鎌を振り下ろす!
直後、ガフムスの鎌から目に見えぬ無数の刃が飛び出し、火柱とマンティスを斬った。
赤茶色の装甲が炎と共に飛び散り、一瞬にしてバラバラにされる。
その光景を見、さらに手に握りしめた黒い鎌を見て、ガフムスは軽くため息をついた。
「・・・とんでもない・・・武器ですね・・・」

「それくらいの能力がないと、こいつらとまともに戦えないって事だよ」
フレッドが、別の方向から来たオルフォンを、青白い光の触手で串刺しにしながら言った。
青白い触手はどんどん伸びて、次から次へとオルフォンを突き刺していく。
串刺しにされたオルフォン達は、青白い光と火花を散らし、断末魔を残して消えた。
爆発と共に飛び散る青白い光が、まるで弔いの花のよう・・・

「あたしも始めようかな・・・」
そう言って、ジェイスフォンは一歩前に出た。
目標は、30m先にいる小型リーバード・ホロッコ(赤・緑)の大群。
全リーバード中最弱と謳われるホロッコも、50匹近い大群になれば話は別だ。
(道いっぱいに広がって突っ込んでくるホロッコの大群は、いろんな意味で迫力がある)
向こうもこちらに気付いたらしく、リーダーらしき赤いホロッコを先頭に、道いっぱいに広がって走ってくる。
ジェイスフォンは手袋をはめた両手を前に差し出し、目を閉じた。
「(光よ、道いっぱいに広がって、あの大群を呑み込め!)ライトニング・ウェイブス!」
赤紫色の光が辺りを包み込んだかと思うと、それは道いっぱいに広がり、津波のように大群を呑み込んだ。
津波の去った後には、残骸すら残されていなかった・・・

仲間の断末魔を聞きつけたのか、フレッド達を取り囲むようにリーバードが集まってきた。
空を飛ぶ人形のような小型リーバード・ミータン。
中型のカエル型リーバード・フロンゲル。
亀にワニの頭をつけたような外観のリーバード・クルグル。
盾を持った人型リーバード・ゴルベッシュ。
タルに4つ足をつけたような大型リーバード・ハバルール。
ワニのような中型リーバード・フィルシュドット。
マンティスやオルフォン、シャルクルス、ホロッコやカルムナバッシュもいる。
皆、瞳を赤く輝かせ、独特の殺意、戦意を漂わせていた。


「こんなに歓迎してくれなくてもいいんですけどね・・・」
鎌を構え、リーバード達を牽制しながら、ガフムスがこぼした。
すると、フレッドがそれに答えた。
「でも・・・歓迎されないよりは、歓迎された方が楽しいよ」
青白い光を右手にまとわせ、リーバード達に見せつける。
ジェイスフォンも両手を前に差し出し、臨戦態勢をとった。


一瞬の刹那


リーバード達が一斉に群がってきた!
右手の触手を最大限に伸ばし、襲い来る者を打ち返し、払いのけ、串刺しにするフレッド。
5本の触手はそれぞれフレッドの意のままに動き、リーバード達を次々と破壊していく。

右から飛び掛かってきたカルムナバッシュの頭を打ち砕いたかと思うと、その上から飛び
降りてきたシャルクルスを一突きで串刺しにし、さらに反対側から突っ込んできたクルグルを一撃の下に粉砕する。
後ろから飛び掛かってきたフロンゲルとハバルールをボールのように打ち返し、そのまま近くのゴルベッシュにぶつける。
クルグルのこうらの真ん中を貫き、そのままフリスビーのように投げつけ、ミータン達を誘爆させる。
上から鎌を振り下ろしてくるマンティスを一撃のもとに破壊し、アッパーを繰り出してくるシャルクルスを一突き。ゴルベッシュと共に昇天させた。
さらに、触手を一つにまとめ、ハバルールの足下を突く!
「グラウンド・ブロウ!」
フレッドの声と共にアスファルトが爆発し、ハバルールをバラバラにした。

ガフムスも鎌を振り回し、敵を次々と破壊していく。

目の前のホロッコを横一文字に斬り払い、勢いを殺さずに隣のオルフォン達をなぎ払う。
上から飛び掛かってくるシャルクルスを振り上げた鎌で両断し、鎌をマンティスの大群に向けて振り下ろす!
「(水晶よ、無数の刃となりて敵を斬れ)クリスタル・シックル!」
途端、ガフムスの周囲に鋭く研ぎ澄まされた水晶が浮かび、マンティスの大群に襲いかかった!
水晶が間接を砕き、装甲を貫き、銀色に光る鎌をまげ、リーバードの瞳を砕く!
横から突っ込んできたカルムナバッシュを振り上げる鎌の刃で両断し、斜めに振り下ろしてゴルベッシュを盾ごと切り払う。
さらに腰をひねり、勢いをつけて鎌をブーメランのように投げた。
鎌は、まるで意志を持っているかのように微妙に軌道を変え、ハバルールやシャルクルス、フィルシュドット、ミータンと、次々とリーバードを裂き、ガフムスの手に戻ってきた。


ジェイスフォンも、両手のクリスタルをフルに使い、敵をバラバラにしていく。

左右から同時に突っ込んできたシャルクルスを、後ろに飛び退いて避け、目の前に並ぶ十数匹のリーバードに手をかざした。
「ライトニング・ウェイブス!」
赤紫色の光の津波が、一気に十数匹のリーバードを呑み込み、無に帰す。
今度は両側から来るマンティスに手をかざし、目を閉じた。
「(光よ、矢となって敵を貫け!)シャイン・アロー!」
手の平に赤紫色の光が集まり、矢の形になってマンティスを貫く。
ジェイスフォンが手をかざす方向を変えると、それに合わせて光の矢は軌道を変え、敵を貫いていく。
わずか30秒の間に、50匹を越えるリーバードが機能を停止した。

「くそっ!これじゃきりがない!」
カルムナバッシュを粉砕したフレッドが叫んだ。

敵の数が多すぎる。

倒したリーバードの数は3人でもう150匹を越える。
だが、目の前には数え切れない程のリーバードが迫っている。
いくら倒しても、後からどんどん現れてくる。
それに、ガフムスとジェイスフォンの体力にも限界が・・・
「くっ!・・・クリスタルの力を合わせたらどうですか?!」
マンティスの鎌を弾き返しながら、ガフムスが叫んだ。
「でも、どうやって!?」
ハバルールを津波に呑み込ませたジェイスフォンの声が響く。
ガフムスが、マンティスとつばぜり合いしながら叫んだ。
「3人で同じ事を考えるんです! クリスタルの色は違いますが、攻撃方法を見るとほぼ同等の物と思われます! つまり、恐らくどれも構造は同じ! もしそうなら、3人同時に同じ事を考え、同じ言葉を叫べば、互いに干渉しあい、増幅 しあって強力な技になるはず!おわッ!!」
鋭い金属音と共に、マンティスの身体が真っ二つにされた。
「それを試そう!高く飛び上がって!!」
そう叫び、触手をしまって高く飛び上がるフレッド。
ガフムスとジェイスフォンが後に続く。
クリスタルを前に出し、3人は目を閉じた。

「(光よ、裁きの柱となりて闇を浄化せん)」
「(光よ、裁きの柱となりて闇を浄化せん)」
「(光よ、裁きの柱となりて闇を浄化せん)」

「「「バベル!」」」

天空にのびる緑・青・赤紫の光の柱。
それは空の高い所で一つになり、再び地上に降臨する!

ズヴァァァァォォォォォッ・・・!!!!!

一つの光の柱がフレッド達を包み、その直径を増していく。
あっという間に工業エリア全体を包み込み・・・消えた・・・


光が消えた後は、全て元通りになっていた。
リーバードの残骸はなく、工場やタンクも元通りになっている。
アスファルトの地面も、火柱の立っていた所も、全て・・・


「・・・すごいですね」
「こんなになるとは・・・思っても見なかったよ」
辺りを見回して、ガフムスが驚嘆の声を漏らした。
これ程の力になるとは、ガフムスも予想していなかったのだろう。
フレッドも驚きを隠せない。
ジェイスフォンに至っては、硬直して何も言えない始末であった。

「・・・無茶はするなと言っただろうが」
突然、背後から声がした。
驚いて振り返る。
そこには、なにやら巨大な残骸を持ったジェノが立っていた。
幅、高さ共に4m近いその残骸には、遺跡にあるような幾何学模様が彫り込まれている。
ジェノは、その残骸を3人の前に降ろし、疲れたような声で言った。
「・・・小物ばかり処理していてもきりがないだろう。
 こんな風に、ちゃんと親玉を潰さなければ・・・」
カンッと残骸を右手で叩く。
すると、やたらとデカイ格納ハッチが転がってきた。
「な・・・ガイニー・トレーン?!」
それを見て、思わずフレッドが驚嘆の声を上げる。

ガイニー・トレーン。
列車のような大型のリーバードで、シャルクルスやホロッコ等を無限にはき出す、厄介な奴だ。
移動速度は人が走る程度とそれほど速くないが、装甲が厚く、並の攻撃では装甲を貫く事は出来ない。
そのため、リーバードをはき出す時に開けられるハッチを狙い撃ちする必要がある。

だが、この残骸がガイニー・トレーンだとしたら、これは普通の倒され方ではない。
装甲が最も厚い格納部分に大きな穴が開けられ、格納部分同士をつなぐジョイントは粉々。
頭の部分に至っては全く原形をとどめておらず、ただのガラクタと化している。
こんな倒し方をするには、並以上なんて問題ではない、「化け物」並の破壊力が必要だ。

「これ・・・ジェノさんが?」
「・・・当たり前だ。他に誰がやる?」
普通に返すジェノ。フレッドは、背筋がゾクゾクした。


ッゴォォォォンッ!!


地を揺さぶる振動、もの凄い爆発音と共に、火柱が立った。
中心地の方だ。
「チッ!思ったより手が早いな・・・メビウス!ビジネス街へ行くぞ!」
天を仰ぎ、銀色に光るメビウスを呼ぶ。
メビウスはジェノの頭上を通過し、Uターンして来た。
「飛び乗れ!」
そう言ってさっさと飛び上がるジェノ。
慌てて後を追うフレッドとガフムス。一瞬出遅れたジェイスフォンは、ギリギリの所でフレッドの触手に掴まり、難を逃れた。

「な、なんでこんな奴がここにいるんだよ!!」
そう叫びながら、「奴」の足下をくぐっていくガルドとジュノ。
話題の「奴」はゆっくりと振り向き、右手で高層ビルを叩き折っていた。

全リーバード中最大サイズを誇る超大型人型リーバード・ウォージーガイロン。
火炎系攻撃を得意とし、炎を体内に取り込む事で体力や攻撃力を高める事が出来る。
身長10mというのが普通だが、こいつはゆうに60mを越している。(つまり特大!)
そこら辺の高層ビルサイズという化け物リーバードが、島の中心地であるここを襲撃していたのだった。

勿論、一人ではない。

身長4m強のドラム缶のような人型リーバード・ガルドリデン。(以下全て目測)
体長3m弱のカエル型リーバード・ガルガルフンミー。
身長3m弱の丸っこい人型リーバード・ジャイワン。
ホーミングミサイルを撃つ体長3mのリーバード・ジャンフォーデン。
身長2.5mの人型リーバード・ハムンルドール。
どれもこれも、身体のサイズと攻撃力の高さがウリの「ボスクラスリーバード」だ。


「どんなに巨大でも、所詮リーバードはリーバード!砕こうと思えば砕けます!!」
そう叫んで、ハーレーから思いっきり飛び上がるジュノ。
一気に10mも上昇したかと思うと、近いビルの壁を蹴って+30m、反対側のビルの壁を蹴ってさらに30m飛び上がり、右腕に赤い光をまとって一気に降下してきた。
狙いは・・・特大の獲物、ウォージーガイロン!
「ゲイザァ・スパイラルッ!!」
ジュノの拳が轟音と共に炸裂し、爆炎と赤い光をまき散らす。
しかし次の瞬間、ジュノはとんでもない光景を目の当たりにしていた。

ウォージーガイロンが、その巨大な右手でジュノの攻撃を受け止めていたのだ。
赤い光は分散し、右手に傷すら付けられずに消えていく。
今までの戦いで砕け散らなかった者はいない程の強力な攻撃だったが、今砕け散ったのは、ジュノの「自信」だった。

キュァァァォォォゥゥッ!!

油圧バルブが素早く動き出すような音と共に、巨大な腕がジュノの身体を叩き落とす。
勢いを抑えきれず、近くのビルの壁に激突するジュノ。
コンクリート壁に見事なクレーターを作り、アスファルトの地面に落ちて動かなくなった。
それにとどめを刺そうと、ハムンルドールが、ジャイワンが近づいて来る。
ハムンルドールはジュノの、ジャイワンはガルドの前に立って腕を振り上げた。。
「おい・・・嘘だろ?」
真っ青になるガルド。今まで感じなかった「恐怖心」が、にわかにわいてきた。

ドキュアアァァァォォォンッ・・・!!

突然、ジュノとガルドの目の前に紫色のエネルギー球が落ちてきた。
それは軽い爆発を起こし、ジャイワンをガルドから遠ざける。
銀色に輝く翼が、二人の上を飛んでいった。

「・・・ッッッォォォォォオオオオオオッ!!!」
突如、上から銀色の何かが降ってきたかと思うと、それはジャイワンを一撃の下に粉砕し、
ジュノをたたきつぶそうとするハムンルドールの両腕をねじ単位までバラバラにした。
「・・・俺の作った端末を、そう簡単に潰させるか」
ハムンルドールの前に立ちはだかり、銀色に光る右腕を構える。
ジェノの瞳に、暗い光が宿った。

「・・・ガイドアーム。コード26を許可する。ブレイク・デバイスを立ち上げろ・・・」
ハムンルドールを睨み付けたまま、銀色に光るガイドアームに指示するジェノ。
ガイドアームが甲高いモーター音を発し、指先を光で包む。
ジェノはガイドアームを突き出し、ハムンルドールに向かって、もの凄い早さで疾走した。
「打ち砕かれ、もがき苦しむがいいッ!!」
一瞬、ジェノの身体が光になった。

刹那

大音響を響かせてハムンルドールの胴体を貫く。
そのままの勢いで近くにいたガルドリデンの胴を貫通し、後ろにいたガルガルフンミーを一撃で吹き飛ばした所で止まった。
ハムンルドールやガルドリデンは一瞬でねじ単位まで分解され、その場に崩れ落ちる。
ガルガルフンミーは吹き飛びながらバラバラになり、そこら中にパーツを散乱させる。
リーバードの部品が、激しく降る雨のような音を立て、車道を埋め尽くした。


「な、なんだぁ?!」
驚嘆するガルド。すると突然、背後で聞き慣れた声が答えた。
「亜光速分解術、別名「神の手」だよ。どんな物でも一瞬でバラバラに出来る特殊な技術。 でも、並の人間ではその威力を制御できないから、特定の許可を取ったメカニックだけ が使う事を許されてるんだ。それが使えるなんて・・・」
お化けに出もあったように驚いて振り返るガルド。
そこには、いつの間に来たのか、紺色のマントを羽織ったフレッドの姿があった。

「ジュノは?ジュノはどこにいるの?」
静かに問うフレッド。
ガルドは何も言わず、少し離れた所にいる白いアーマーに目を向けた。
フレッドもつられてそちらを見る。
フレッドの顔色が、一気に青くなった。
「うそ・・・ジュノッ!!!」
駆け寄るフレッド。急いでジュノを抱き起こした。

ジュノは、完全に意識を失っていた。
アーマーに入った幾筋もヒビが、衝撃のもの凄さを物語っている。
これでは、内部も無事ではないだろう。
「・・・かせ。修理する」
いつ戻ってきたのか、フレッドの背後でジェノが腕を伸ばした。

ガイドアームをジュノの右手の甲に当て、目をつぶる。
ガイドアームが、聞き慣れない合成音声を発した。
『全体損傷率48%。胸部ユニット損傷率68%。思考回路稼働率0%。
 リアクター出力45MV(メガボルト)。MP出力12%。Dドライブ、出力0%。
 リミッターNo3まで稼働確認。リミットマネージャ正常稼働中。
 改修可能です』
「胸部ユニットを中心に改修する。作業の準備をしろ。
 回収作業終了後、思考回路を、エマージェンシーの使用を許可して再起動する」
目をつぶったまま、ガイドアームに指示するジェノ。
ガイドアームは低いうなり声をあげた。

ガイドアームからのびた青緑色の光が、ジュノの身体を包み、宙に浮かす。
その光とガイドアームを幾つもの光の線が繋ぎ、ジュノとガイドアームを固定した。
『各セットポイント異常なし。改修作業を開始します』
合成音声が報告したかと思うと、ジェノの目の前に緑色のレーザーディスプレイが現れた。

【改修レベル 8
 総合改修率 ●○・・・・・・・・ 20%

 頭部ユニット改修率 ●○・・・・・・・・ 20%
 胸部ユニット改修率 ○・・・・・・・・・ 10%
 腕部ユニット改修率 ●●○・・・・・・・ 30%
 脚部ユニット改修率 ●○・・・・・・・・ 20%】

どうやら、作業の進み具合を示すらしい。
胸部ユニットの進み具合が、他のユニットよりもかなり遅かった。
「少々時間がかかる。作業が終わるまで、他の仲間とあいつらの相手をしていてくれ。
 ・・・作業が終わらないと、俺は動けんのだ」
ジェノはそう言って、肩越しに後ろへ視線を送った。ガルドもそちらを向く。
視線の先には、長い腕を振り回すジャイワンと、大鎌で対抗するガフムスの姿があった。
少し離れた所では、ジェイスフォンがジャンフォーデンと戦っている。
「で、でもよぉ、俺武器も何もないぜ?!どうやって相手しろと?」
視線をジェノに戻し、腕を組んで問うガルド。
ジェノは空いている左手で無傷のハーレーを指さし、笑いながら答えた。
「じゃぁ、今お前が乗っているそれは何なんだ?」
「これって・・・俺自慢のハーレーだけど・・・まさかこれで戦えっての!?」
ジェノの答えに「マジかよ!?」とでも叫びそうな顔をするガルド。
それを見て、微かに含み笑いしながら、ジェノが言った。
「妙だと思わないか?普通のハーレーなら、今頃ズタボロだぞ?普通のハーレーなら」
ガルドの頭上で疑問符が6つも飛び交う。
しばらくして、ガルドはようやくジェノの言った「冗談」の意味を理解した。

今の冗談はかなりきついが、よく考えてみると、これもおかしな話では無かった。

住宅街のカルムナバッシュに、右前足が吹き飛ぶ程の威力でスライディング・アタックを打ち込んだというのに、マシンには何のダメージもない。普通ならタイヤが逝ってしまう。
あれだけたくさんいたシャルクルスの中を突っ切ってきたのに、ハーレーには傷一つ付いていない。普通なら、あの両手の刃でズタズタに切り裂かれているはずだ。
そして、それに乗っていたガルドにも、傷らしい傷は見あたらない・・・

どれも、今までガルドが乗ってきた「普通のハーレー」なら、絶対にあり得ない事だ。
そう、「今までの普通のハーレー」なら。

単刀直入に言おう。
このハーレーは、ジェノに手を加えられた「特殊なハーレー」となったのだ。
並以上に頑丈かつ強力になり、機能も充実したが、本人は違和感なく乗り回せる。
「手を加えた」と言わなければ、乗り手はまずその事に気が付かないだろう。
ガイドアームを自在に操れるジェノだから出来る「神業」だった。
(なんと好都合主義な小説なんだ!)


「俺の腕は過信してもいいが、自分の力は過信するなよ」
含み笑いして、再びディスプレイを見る。
総合改修率がやっと30%になっていた。(やはり、胸部ユニットのグラフの伸びが悪い)

ッゴォォォォォンッ!!!

突如響き渡った爆音と共に、巨大な火柱が立った。
ウォージーガイロンがその火柱に首を伸ばし、口から炎を体内に取り込む。
その足下で、緑と赤紫色の火花が散っていた。
ガフムスとジェイスフォンの作り出す火花である。
「フレッドを連れて早く行け!仲間が死んじまうぞ!」
ジェノのその一言に駆り立てられ、ガルドはハーレーをとばした。
フレッドを乗せて。



「フレッド!お前、あの青いの使えたよな?!」
走りながらガルドが問う。フレッドはガルドの肩に掴まりつつ「うん」とうなずく。
それを聞いたガルドは、一気にハーレーを加速させた。
「んじゃ飛び上がって、上からそいつを振り下ろせッ!!」

120km/時近い速度で突っ込んでいくハーレー。
フレッドは青い光をまとい、紺色のマントを靡かせて飛んだ!
青い光が1本の巨大な触手となり、火花の散る辺りに伸びていく。
それを追い越す程の速さで、赤いハーレーが火花の散る辺りに向かっていく。
ガルドの声が、ビルの建ち並ぶビジネス街に響いた。
「おい!乗れ!」

猛スピードで火花の真ん中を通り抜け、ウォージーガイロンの足下を駆け抜けるハーレー。
火花がやんだと思った瞬間、フレッドの青い触手がウォージーガイロンの足を直撃した。
青い光が青い火花に変わり、大爆発を引き起こす。
その直後、舞い上がる爆炎から、黒い少年と赤い少女、黄色い少年の3人組を乗せた赤いハーレーが、勢いよく飛び出してきた。
「ったく、無茶もいい加減にしろよな!」
ガルドが前を見ながら怒鳴る。
ガフムスが、落ち着き払って言った。
「ガルドも人の事言えませんよ。どこの世界にハーレーであんな化け物に突っ込んで来る 人がいるんですか?」
「とりあえず、そこに一人いるわねぇ。無茶するのを一番楽しんでいる人が」
ジェイスフォンが、ハンドルを握るガルドを肩越しに見て笑う。
ガルドは含み笑いしてハンドルを切り、誰にともなく言った。
「まぁな!」

右隣のビルにハーレーを向けると、一気に加速させる。
ハーレーはビルの一歩手前で軽く跳ね上がり、そのままビルの壁を駆け上った。
まるで壁に重力場があるようにぴったりとくっつき、安定した走りをする。
ビルの屋上付近まで来て、ガルドは思いっきりハンドルを切った。
壁を蹴るように飛び上がり、方向転換するハーレー。
目の前に、巨大なウォージーガイロンの背中が見えた!
「いっけぇぇぇ!!」
ガルドの声に合わせ、後ろの二人が飛び上がる。ハーレーが空中で急加速する。
黄色と緑と赤紫、3色の光の帯がウォージーガイロンに襲いかかる!
黄色は背中を駆け上がって頭部を一蹴り。
緑は大きな鎌で右腕を切り裂く。
赤紫は轟音と共に左肩を貫いた。
うめくような雄叫びをあげるウォージーガイロン。
次の瞬間、青い光の帯がウォージーガイロンの顔面を直撃した。
さらに、紫色の光がウォージーガイロンの後頭部に炸裂する。
銀色の翼が、すれ違いざまにもう1発、顔面に炸裂させていった。


雄叫びを上げ、後ろ向きにビルに倒れ込むウォージーガイロン。
道連れとなったビルの残骸に埋まり、動きが止まった。
空中で3人組を乗せ、キュッ!とタイヤをならして着地する。
そのすぐ横に、紺色のマントを靡かせたフレッドが降り立った。
「へっ!どんなもんでぃ!」
がれきの山に埋まったウォージーガイロンを見て自慢げに笑うガルド。
ジェイスフォンも、安心した面もちでがれきの山を見つめていた。
だが・・・ガフムスとフレッドは違った。
どこかに、引っかかる物があった。

「・・・おかしい。あまりに簡単すぎます」
ガフムスが口を開いた。視線はがれきの山に向けたままだ。
ハーレーの横に立つフレッドも、がれきの山から目をそらさずに言った。
「うん・・・。こんな大物なら、今ぐらいのダメージじゃビクともしないはずだよ・・・」
「じゃ・・・罠とか?」
ジェイスフォンが表情を曇らせる。
ガルドも、だんだん自信がなくなってきた。
「・・・もう少し離れて様子を見た方が良いでしょう。この距離では攻撃されかねません」
王に進言する側近のようにガルドに言うガフムス。
ガルドは一瞬考え込んだが、ハンドルを切り、がれきの山に背を向けた。
フレッドもがれきの山に背を向け、ハーレーを追う。

…フィー・・・

フレッドは突然足を止めた。
つられてガルドもハーレーを止め、フレッドを呼んだ。
「おい、どうした?」
「今・・・笛の音がしなかった?」
周囲を見回しながら答えるフレッド。
それを聞いたガフムスが耳を澄ます。
しかし、聞こえるのはビルの間を吹き抜ける風の音と、遙か遠くにいる消防車のサイレンだけだった。
「・・・空耳ですよ」
首を横に振り、そうフレッドに告げる。
フレッドは「そうかなぁ・・・」と呟きながら、走り出した。

…フィー・・・

「!ほら!また!今度は聞こえたでしょ?!」
今度はハーレーの横を走りながら言う。
だが、ガルドは「空耳だ空耳!」と言ってスピードを落とそうとはしなかった。
ガフムスも顔を横に振る。
仕方なく、フレッドは笛の音の事をあきらめようとした。
と、その時。

「!止まって!」
キキィィィィィィッ!

ジェイスフォンが突然待ったをかけた。
慌ててブレーキをかけ、「一体なんだ?!」とジェイスフォンに怒鳴るガルド。
ジェイスフォンは「シーッ!」とガルドの口を封じ、耳を澄ませた。
ガフムスとガルドも、つられるように耳を澄ます。
微かに、笛の音がした・・・

…フィー・・・ファー・・・ファラーラ・・・

「この音・・・木管楽器・・・フルートかしら?」
微かに聞こえる笛の音を聞いて、ジェイスフォンが呟いた。

―フルート―
木管楽器の一つで、主に主旋律(メロディ)を担当する横笛。
透き通るような高音を出せる、木管の花形的楽器である。
最近は金属製だが、昔は木で作られていたため、木管に分類される。
吹奏楽部などではやりたがる者が多く、競争率が高くなりがち。
値段は、安くて5万円程度。中には50万円クラスの高級品もあるとか。
(吹奏楽部出身で、やたらと楽器に詳しい作者でした)


微かではあるが、ガルドとガフムスにもフルートの音が聞こえた。
ほんの微かな音しか聞き取れないため、吹いている曲目は分からない。
だが、今まで地上で聞いた事の無い雰囲気を持つ曲であった・・・

…フィーファー・・・・・・

中途半端な余韻を残してフルートの音が消える。
と、次の瞬間!

ドッゴオオオオォォォォッ!!
ォォオオオオオオオォォォォォォ・・・ッ!!!

辺りの空気を全て振動出せるような咆哮と共に、がれきの山からウォージーガイロンが立ち上がった。
夜闇に光るリーバードの瞳は以前よりも輝きを増し、口から炎がほとばしる。
ウォージーガイロンは自ら両腕に赤い炎を吐き、まとませた。
炎はみるみるうちに手の形へと変わり、青い炎となる。
その青い炎の中に、普段は装甲で覆われているリーバードの内部構造が見えた。
炎が、ウォージーガイロンの腕を再生させているのだ。


「やはり罠だったようですね・・・」
黒い大鎌を持ち上げ、静かにガルドに告げるガフムス。
ガルドは「チッ!」と軽く舌打ちし、一気にハーレーを加速させた。
フレッドもそれを追うように走り出し、ビルの壁を蹴って上に昇り始めた。
右側のビルの壁に乗り上げ、地面に対し90°傾いた状態でウォージーガイロンに向かう。
ジェイスフォンとガフムスがハーレーを飛び出し、ビルとビルの間をムササビのように飛び、交錯する。
「ウインド・デス・シザー!!」
「シャイン・アロー!!」
すれ違いざまにウォージーガイロンに攻撃を放つ。
刃と矢は微妙に軌道を変え、ウォージーガイロンの胸と右肩に散る。
さらに、120km/時を越えるスピードでビルから飛び込んできたハーレーが左脇腹に突っ込み、肋骨を3本程失敬した。
一瞬よろけたウォージーガイロンの頭部に、10m程上から青白い触手が襲いかかる。
全てをまとめた1本でウォージーガイロンを突き飛ばし、空中で右腕を高く掲げる。
フレッドの右腕に、直径1m程の青白い光球が浮かび上がった。
「シー・クラッシャァ!!」
ウォージーガイロンに向けて振り下ろされる右手。
それに従うように、光球もウォージーガイロンに向かって飛んでいく。
ウォージーガイロンは炎をまとった右手をかざした。

閃光・爆音・大爆発

青い光と紅蓮の炎がウォージーガイロンの上半身を呑み込む。
断末魔のような叫びが、辺りにこだまする。
フレッドをはじめ、皆「勝利」を確信した。
だが、次の瞬間!

ズゴゥァッ!

フレッドは突然伸びてきた青い炎に叩き落とされた。
炎は向きを変え、ガフムスをビルの壁に叩き付け、ジェイスフォンを殴り飛ばす。
さらにガルドのハーレーを弾き飛ばした。

ドガッ!

アスファルトに全身を強打するフレッド。アーマーを着けていたが、ダメージは半端ではなかった。全身を鈍い痛みが走る。
そんなフレッドの目の前に、全身を青い炎で包んだウォージーガイロンが立っていた。
リーバードの内部構造が、青い炎の奥に見え隠れする。装甲が全て吹き飛んだらしい。

普通のリーバードなら、こんな状態で戦えるはずがない。
こんな状態になる前に爆発し、戦闘不能になるのが普通だ。
だがこのウォージーガイロンは、現にこうして立ち、攻撃可能な状態にある。
「こいつはもう、リーバードとは呼べない」と、フレッドは確信した。


…フィファーラー・・・

微かにフルートが聞こえた。
と、それに合わせるように右腕を振り上げ、ハンマーのように勢いよく振り下ろしてくる。

間一髪、後転するようにして飛び上がり、ハンマーを避けた。
ハンマーはアスファルトを砕き、一瞬にして蒸発させる。
「おかえしだ!受け取れ!!」
そう言い、1本にまとめた触手を勢いよくのばした。
触手はウォージーガイロンの右腕に巻き付き、メキメキと締め付ける。
部品が炎と共に落ち、アスファルトを溶かした。

…ファラフィーリュー・・・

また微かにフルートが聞こえる。
ウォージーガイロンは触手の巻き付く右腕を振り上げ、近くのビルにぶつけた。
フレッドは鎖鎌の鎌の様に振り回され、触手と共にビルに叩き付けられる。
さらに反対側のビルにぶつけられ、またもとのビルに。最後に、アスファルトに叩き付けられた。
触手は光の破片となって消え、フレッドの意識も吹き飛んだ。
気を失ったフレッドを見下ろし、右腕を振り上げるウォージーガイロン。
悪魔の腕が、フレッドを捉えた。


突如、フレッドの前に、淡い紫色の光が現れた。
悪魔が拳をほどき、眼をかばう。
淡い紫色の光は徐々にしぼんでいき、見慣れぬ少女を現した。
腰までかかる紫色の髪。青を基調としたアーマーには遺跡の幾何学模様が刻まれている。
右手の甲には無色半球型クリスタルをつけ、背中にはビームサーベルと思われる物を背負っていた。

光刃

次の瞬間、青白い光の刃が、悪魔の腕を切り裂く。
さらに、少女の背後から飛んできた水晶の刃が、切り裂かれた腕をバラバラにしていく。
だが、瞬時に青い炎が切り裂かれた右腕を繋ぎ、元通りに再生した。
「・・・やはり、コアを破壊してコントロールを0にしなければいけませんか・・・」
愛用しているビームサーベル「サービウス」を構え、呟く。
メビウスの背後に、黒い大鎌が降り立った。
「あの・・・あなたは?」
鎌をおろし、ガフムスが問う。
少女はサーベルをしまって後ろを振り向き、微笑んだ。
「メビウスです。さっきまで、あなた方を乗せていたじゃないですか」
「・・・はい?」
メビウスの答えに、戸惑うガフムス。

「さっきまで乗せていた」って、自分達が乗ったのはハーレーと銀色の翼のリーバード。
この少女ではない。話が合わない。
それとも、この少女がそのどちらかなのか?
…いや、常識的に考えてみて、それはあり得ない。
となると、この人は・・・?

ガフムスの頭の中を、様々な思考が走り抜けていく。

…フィフリューリラー・・・

また、微かにフルートが聞こえた。
と、それに合わせるように後ろにのけぞり、ハンマーのように頭を落としてくる。
メビウスは慌ててフレッドを抱え、ガフムスとその場から飛び退いた。
ハンマーは刹那の差で3人を逃し、アスファルトを粉々にする。

「おい!乗れ!」
背後から、ガルドの声が響いてきた。
ガフムスはその場でバック宙をし、タイミングよくハーレーの後ろに乗る。
ハーレーはビルの壁をバンク代わりに急カーブ。
メビウスがハーレーの上を飛び越えつつ、フレッドをガフムスに渡す。
そのまま、ハーレーは120km/時近い速度でウォージーガイロンの足下をくぐり抜けた。

「・・・いてっ」
フレッドが衝撃でハーレーに頭をぶつけ、目を覚ました。
それを確認して、ガフムスが3人に言った。
「さっきの光の柱を使いましょう。通常攻撃ではまるで歯が立ちません」
「じゃ戻るぞ!準備しろ!」
再びビルの壁をバンク代わりに急カーブし、ウォージーガイロンに向かうコースを取る。
ウォージーガイロンはハーレーを見下ろし、口の中に炎をため始めた。
「いっけぇぇぇぇぇッ!!」
ガルドの号令と共にハーレーから飛び上がる3人。
各々のクリスタルを構え、ウォージーガイロンに的を絞る。
青・緑、赤紫の3色のクリスタルが、光の尾を引いた。

「「「バベル!!」」」

天空にのびる緑・青・赤紫の光の柱。
それは空の高い所で一つになり、再び地上に降臨する!

ズヴァァァァォォォォォッ・・・!!!!!

ウォージーガイロンを光の柱が包み込む。
断末魔のような咆哮が辺りにこだまし、光の柱の中に、青い炎が崩れ落ちる。
やがて光の柱は、一筋の光となって、空に消えた。