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第6章~魔女と悪魔と戦士達~(3)

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ジェイスフォンとジェノ、メビウスが一行の隣に降り立ったのは、その直後だった。
風で煙が切れる。
すると、煙の中からメディアの上半身だけが現れた。
腰から下はもう無く、腕も右手だけしか残されていない。
血も流さず、ただ宙に浮いていた。
フルートを前に出し、シールドを解く。
「まったく・・・手加減してあげればこれだもの・・・」
赤い瞳が皆を見下ろす。
血のような光で濁った、邪悪な瞳で。

「もう手加減しないわ・・・今までの事、あの世で後悔なさい!」
そういって、唇にフルートをあてる。

フィルリラールーファーーラーー・・・

フルートの音が辺りに響き渡る。
遙か遠くで、再び青い炎が上がった。
ウォージーガイロンの残骸が、再び青い炎をまとい、メディアのもとへ集まってくる。
残骸はさっきとは異なる形で組み上がっていった。

長く細い腕。背骨を剥き出しにしたような細長い灰色の胴体。
全身に彫り込まれた、幾何学模様。胸に取り付けられた、黒い半球型クリスタル。
足はなく、代わりにトゲのような物が1つ、下向きに突き出していた。
首の部分には、中程度の穴が一つあるだけ・・・
(分かりにくい方は、ジュノの第2形態・灰色版を想像して下さい)

その穴に、メディアの残された身体が入り込む。
身体は内部にしまわれ、首が穴を埋める。


魔女が、悪魔と契約を交わした・・・。


「バラバラにしてあげる!!」
魔女の声が夜闇に響き渡る。いや、魔女と言うより、「鬼女」と言った方が正しい。
メディアは灰色の巨体をねじって飛び上がり、ジュノ達に飛び掛かって来た。
「散れ!」
ジェノの声が飛び、7色の光が尾を引いてその場から飛び退く。
巨体は、がれきの山と化したビルに落ちた。
「(水晶よ、大鎌となりて敵を切れ)クリスタル・オブ・シザー!!」
「(光よ、三日月形の刃となれ!)クレッセント・ブレイド!!」
研ぎ澄まされた緑色の水晶と赤紫色の三日月の刃が、メディアに襲いかかる。
同時に、別の方向から黄色い光が猛スピードで突っ込んできた。
「・・・ォォォォォオオオオオッ!!フルバーストッ!!」
ガルドの声が響き、ハーレーが黄色い光に包まれ、急加速する。
肉眼では確認できないようなハイスピードでメディアに突っ込み、右肩のジョイントを貫いた。
さらに、黒い光球が腹部に炸裂し、1本の青白い触手が左肩を貫き、赤い光を帯びた腕が胸部に火花と爆炎を散らす。
最後に、青白い光の刃がメディアの身体を両断した。

破損箇所や切断面から火花が散る。
体が大きく傾き、落ちかけた。
しかし次の瞬間、破損箇所や切断面から青白い炎が上がる。
炎は破損箇所を覆い、切断面をつなぎ合わせ、一瞬にしてダメージを修復した。
「ムダムダムダァッ!!その程度の能力じゃ、この端末はビクともしないわよ!!」
メディアのあざ笑う声が、辺りに響いた。
「・・・なら、コイツはどうだァッ?!」
一気に30m程飛び上がり、月にガイドアームをかざす。
月の光を浴び、銀色の腕が光りの輪郭を得る。
手の平の真ん中辺りから、月に向かって一筋の青緑色の光がのびた。
微かに笑みを浮かべるジェノ。
月の真ん中辺りで、何かが青緑色に輝いた。
「サテライト・キャノン!!」
ジュノの声に合わせて、青緑色に輝いていた何かから一筋の光がのびる。
それは近づくごとに太くなり、極太レーザーとなって、メディアに降り注いだ。

…光の柱が、闇を裂き、天と地をつなぐ・・・
…光の柱に、悪魔が縛り付けられる・・・

両腕をあげ、頭部をかばうメディア。
爆発を起こし、崩れる身体。
しかし、青い炎がパーツをつなぎ、再生していく。
ジェノは顔をしかめた。

「一斉攻撃だ!!」
ガルドが叫び、ハーレーを加速させる。
黄色い光がハーレーとガルドを包み、光の矢の如く飛んでいく。
ガフムスは黒い大鎌を構え、ジェイスフォンは目の前に赤紫色の光を集める。
ジュノとフレッドは両手を前に出し、大きなエネルギー球を作り出す。
メビウスは天高く飛び上がり、サービウスを上段に構えた。

…天と地をつなぐ光の柱に、6つの光が延びる・・・
…悪魔は、それを待っていた・・・

「フルバーストッ!!」
「クリスタル・オブ・シザーッ!!」
「クレッセント・ブレイドッ!!」
黄・緑・赤紫。3つの光がメディアに襲いかかる。
「レッドサンダー・クラスタァ!!」
「シー・クラッシャァ!!」
それと同時に、赤と青の大きなエネルギー球が、真っ直ぐに飛んでいく。
「擬炎斬!!」
青白い光の刃が赤い炎をまとい、紫色の光刃となって、真っ直ぐに落ちてくる。

メディアは、全てを見切った。

メディアの瞳が赤く光る。
途端、身体を暗い光が包み込んだ。

…悪魔は『闇』を使い、光を葬る・・・

暗い光に突っ込む7つの光。
それらは全て光の中に吸収され、物理的コアとなったハーレーやサービウスの柄を弾き返した。
「ツメが甘かったわねぇ!」
メディアのあざ笑う声が、夜闇に響く。
次の瞬間、ジュノ達は無数の緑色の水晶と三日月形の刃に襲われ、ある者はアスファルトに叩き付けられ、ある者は遙か遠くまで弾き飛ばされた。
ジュノだけが真上に弾かれ、宙を舞う。
そこに、赤と青の大きなエネルギー球が飛んでいく。
それをこえ、青いアーマーがジュノとエネルギー球の間に・・・

光、爆炎、衝撃

爆炎に呑まれ、遙か遠くがれきの山に叩き付けられるメビウスとジュノ。
「リバース・ラーン・フィールド・・・あの野郎、最初からこれが目的だったのか・・・」
空中に制止したまま、後悔するように呟くジェノ。
上下左右から迫り来る水晶と刃を右腕だけで全てなぎ払い、ため息をついた。
「ったく・・・俺とした事が・・・」

「っ痛~~・・・何なのよ突然」
がれきの山の中から、ジェイスフォンが立ち上がった。
ジーパン・ジージャンはボロボロ。手袋に付いている半球形クリスタルがダメージを軽減してくれたらしいが、装甲となるものがただの革布ではそれ程効果も感じない。
…まぁ、0でない事だけは分かるが。
「今回は・・・一筋縄ではいきませんね」
ジェイスフォンの隣に、黒い大鎌を持ったガフムスが降り立った。
黒いコートは傷つき破れ、手袋やマフラーにはコンクリートの破片が付いていた。
…いや、突き刺さっているといっても過言ではない。
血こそ流れていないものの、手袋やマフラーにザックリと食い込んでいるような状態。
「おい、大丈夫か?」
2人の間に、赤いハーレーに乗ったガルドが降ってきた。
さすがのハーレーも、さっきの攻撃には耐えられなかったらしい。
所々傷が付き、エンジン音もどこかズレていた。
ガルドも頭や手に傷を負っていたが、本人はそんな事にはまるで無関心・・・
自分の事より、仲間の無事の方が気になるらしい。(いい親分だなぁ・・・)
「あんたよりは傷少ないけど・・・痛みはシャレになんないわね」
ジェイスフォンが無理に笑い、ガルドに言う。
よく冗談を言うジェイスフォンだったが、残念ながらこれは冗談ではなかった。
「・・・相手はこちらの技を学習し、それを数倍の出力で使用する能力があります。 しかも、自己再生能力でダメージを即座に回復することが出来ます。 倒す方法は2つ。再生できない程のダメージを与えて倒すか、再生速度を上回る速度で 攻撃し、なぎ倒す・・・」
ガフムスが鎌を構え、ガルドとジェイスフォンに告げる。
論理上確かに倒せるだろうが、実際に出来るかどうかは、ガフムス自身にも未知数だった。
「コイツはどこまで持つんだろーな?」
ガルドが自分の乗るハーレーを軽く叩く。
軽い金属音と、どこか歪んだエンジン音が返ってきた。
「さぁ・・・?無理すると、一瞬でバラバラにされるかもよ?」
「・・・マジで・・・?」
ジェイスフォンが服に付いた土埃を払いつつ、ガルドに言う。
さすがのガルドも、これには表情を曇らせた。
「一瞬で、というのは無いでしょうけど、気を付けないと確実にやられます」
「気を引き締めろって事だよな・・・要するに」
無理に笑い、前を見据えるガルド。
遠く、視線の先には、あの灰色のボディがあった。
月の光を背に浴び、闇の中に浮かび上がる、あの灰色のボディが・・・

ヴァァァォォォォゥゥゥッ!!

ハーレーが砕けたコンクリートの上を、滑るように走り出した。
後ろには、いつの間に乗ったのか、ガフムスとジェイスフォンがいる。
ガルドは体勢を低くして前傾姿勢になり、ハンドルの間から灰色の悪魔を捉えた。
「っけぇぇぇぇぇッ!フルバーストッ!!」
ガルドとハーレーを黄色い光が包む。
ガフムスとジェイスフォンが空高く舞い上がり、鎌と両手に緑と赤紫の光をまとう。
メディアは、含み笑いしてこれを見ていた。
避ける事など考えず、静かに右手を前に出す。
「(黒き心、殺戮の刃となりて悪を滅ぼさん)ブラッディー・ブレイド!!」
「(赤き月の光よ、聖なる矢となってあいつを貫け!)セント・ムーン・アロー!」
黒い衝撃波と赤い光の矢が、真っ直ぐに飛んでいく。
メディアの右手が、微かに暗い光を帯びた。

…光はそれでも力を合わせ、闇を葬ろうとする・・・
光、壁、衝撃

メディアの目の前に暗い光の壁が現れ、矢と衝撃波を呑み込んだ。
赤紫と緑色の光が破片となって散っていく中を、黄色い光がもの凄い速さで走り抜ける。
そのまま、暗い光の壁に突っ込んだ。

衝撃、火花

壁に頭から突っ込み、空中で制止するハーレー。
エンジン音が辺りに響き、壁と光の接点で激しく火花が散る。
ガルドは、一気にアクセルを入れた。
「根性見せろやぁぁッ!!」
エンジン音が一気に高鳴り、火花がさらに激しくなる。
マフラーの下から、銀色に光る円筒形の物体がもう1対出てきた。

…光の信念は、奇跡を起こす・・・
キィィィィィィィ・・・・ッ!!

ハーレーのエンジン音とは別に、ジェット旅客機がテイクオフする直前のような甲高いエンジン音が響き渡る。
一瞬「壊れた?!」と後ろに視線を送るガルド。
と、次の瞬間!
ズヴァァァァァォォォォォッ!!

円筒形の物体が勢いよく光を噴いた!
急加速し、火花どころかガラスのきしむような音さえ聞こえる。
ガルドは表情を明るくしたが、メディアは一瞬表情を曇らせた。
「力だけじゃ勝てないのよ・・・」
冷たく言い放ち、右腕を斜めに傾けるメディア。
暗い光の壁が傾き、ハーレーが斜め上を向いた。
光の壁が滑走路になり、力の向きを変えられたハーレーが戦闘機のように飛び立つ!
ガルドの絶叫にも似た悲鳴が、辺りに響き渡った。

次の瞬間、空へと飛び立ったハーレーが、黄色い光に包まれた。
前輪・後輪は横倒しになり、赤いカバーがのびてそれを覆う。
マフラー4本は外向きに微妙な角度を付け、勢いよく光を噴く。
2つあるヘッドライトの間に黄色い半球形クリスタルが光り、電子表示型のメーター類の真ん中に高度計と人工水平儀が追加され、速度計の表示にも「Mach(マッハ)」が入る。
ハンドルにトリガーらしきスイッチが3つ追加され、正面に照準が付いた。

光から解放されたハーレーは、もう「バイク」とは呼べなくなっていた。
「赤いバイク」と言うより、「赤いライドチェイサー」と呼ぶ方がふさわしい。
ただ、大きさが一回り程大きいのだが。(知らない人、ごめんなさい!)
突然の事に、ガルドの顔には、焦りの表情が・・・
「ぃやっほぅ!!」
…かけらもなかった。焦るどころか、楽しんでいる。
ガルドにしてみれば、新しいバイクを手に入れ、乗り回しているだけの事なのだ・・・

ガルドはハンドルを右にひねり、メディアの方へと向きを変えた。
-30位の角度で降下しつつ、照準の真ん中に灰色の悪魔を捉える。
カーソルが赤く点滅し、照準の右上に「lock on」の表示が出た。
ガルドはハーレー(?)をわずかに左に傾け、右側にあったトリガーを引く。
黄色いクリスタルが、強く光を帯びた。

衝撃

黄色い光が弾頭となり、悪魔の前に立ちはだかる光の壁に食らいつく。
さらに、黄色い光に包まれたハーレーが悪魔の横ギリギリをかすめていく。
一瞬反応が遅れた悪魔に、後方から赤紫と緑の光が食らいつく。
光の壁は、全方位に向いている訳ではなかったのだ。
しかし、破損した箇所は青い炎で瞬時に修復され、ダメージとして残る事はなかった。

突如、赤い光がメディアに炸裂した。
それに続くように青緑色の光の柱が悪魔に落ち、さらに紫色の炎が叩き込まれる。
ジェノとジェノ、メビウスが加勢したのだ。
「チマチマ攻撃してたんじゃラチがあかねぇ!一気に落とすぞ!!」
青い炎の横スレスレを通り過ぎつつ、ガルドが叫ぶ。
その声に反論する者は、誰一人として存在しなかった。

銀色に光るリーバード形態へと姿を変え、空高く飛び上がるメビウス。
もの凄い速さで突っ込んでくるハーレーに飛び乗り、一気に上昇するジュノ、ガフムス、ジェイスフォン。
天高く飛び上がり、右手の平に青緑色の光をため、メディアを真正面に捉えるジェノ。
ジェノの左右を、銀と赤が走り抜け、青・緑・赤紫の光をまとった3人をおろし、自らも急降下する。
3人は星の瞬き、わずかに欠けた満月の浮かぶ夜空に、3色の光の雨を降らせた。
「「「光よ、矢の雨となりて闇を裂け!ジャベリン!!」」」

…光の雨が、闇を洗う・・・
光、衝撃、爆炎

うす緑色に光る無数の矢が、メディアに落ちる。
同じ場所に黄色い光が炸裂し、青緑色のエネルギー球が爆発を起こし、紫色の髪を靡かせ炎をまとう刃が右腕を斬り落とす。
刃は角度を変え、メディアの胴体を斬り、さらに胸部を斬り上げる。
一瞬ズレた切り口を修復しようと、青い炎が上がる。
だが、その炎に黒い大鎌と赤いレーザーが食らいつき、修復を妨害する。
さらに赤紫と青緑の光が刃となって左腕を斬り落とし、足を斬る。
そこに上がる青い炎に、紫色の刃が襲いかかった。

「こざかしい・・・」
メディアが呟いた。
体中を攻撃されているというのに、その表情からは焦りどころか痛みすら感じられない。
もはや、痛みや苦しみといった感情は、完全に排除されてしまったのか。
今のメディアは、文字通り「悪魔」と化している・・・

直りかけの右腕を大きく振り、大鎌とレーザーの主を弾き返す。
そのまま振り子のように右腕を振って、足下にいる紫の刃をゴルフボールのように弾いた。
さらに、まだ不完全な左腕を掲げ、赤い光を放つ。
赤い光は上空から攻撃してくるジェノとジェイスフォンに当たり、翼を失った飛行機のように2人を落とした。
「力だけじゃ勝てない。スピードだけでも勝てない・・・」
そう呟き、落ちてくる赤紫の光を追撃する。
落下運動に入ったジェイスフォンの身体は、メディアから逃れる術を持っていなかった。
青い炎に修復された右腕が爪に青い炎を集め、ジェイスフォンの身体を貫こうとのびる。
青い炎と光が、闇を裂いた。

…だが、闇はそれに反抗する・・・
衝突、火花

青い炎の爪と青白い触手がぶつかり合い、盛大に青い火花を散らす。
しかし、青い触手は青い炎に圧され、火花を散らしながら徐々に押し戻されていく。
触手の主・フレッドは、辛そうな表情をしている。
対するメディアは、実に愉快そうな表情を浮かべていた。

「B-キャノンッ!!」
突如、メディアの背後に青緑色のエネルギー弾が炸裂し、火花と爆炎を散らした。
一瞬メディアの身体が傾く。
その瞬間を、戦闘になれた3人は見逃さなかった。

刹那

赤・青・青緑の3色の光が、闇を裂く。
傾きを大きくするように方向をコントロールした赤いエネルギー球が、メディアの手前で爆発し、爆風でメディアの傾きを大きくする。
傾きが大きくなり、青い炎をまとった爪が、フレッドの触手からわずかに離れ、ずれる。
そこを狙い、青緑色の刃がメディアの右腕を切断し、青い触手がメディアの顔面と胸部を強打する。
大きく仰け反り、仰向けに倒れ込むメディア。
青い炎が、まるで血のように弧を描いて飛んだ。

「打ち砕かれ、もがき苦しむがいいッ!!!」
ガイドアームをメディアに向け、叫ぶように言うジェノ。
次の瞬間、ジェノは光となって真っ直ぐ飛んでいき、起き上がったばかりのメディアを思いっきり殴り飛ばしていた。

ガガァァァン・・・

土煙を巻き上げ、がれきの山に沈むメディア。
土煙の中で、青い炎が踊り出した。
「呆れたな・・・あれでもまだ生きてる・・・」
舞い踊る青い炎を見て、ジェノは呟いた。



突如、青い炎の奥から光が漏れ、空中に散った。
暗く、冷たく、血みどろの光。
見ているだけでも十分気持ち悪い。
光は徐々にその強さを増し、辺り一帯を包み込んでいく。
(虚数回路をエサに・・・覚醒を・・・始めた・・・?)
「いかん!避けろ!」
ジェノが慌てて叫ぶ。
次の瞬間、目の前に血みどろの光が見えた。

ズガアアアァァァォォォッ・・・!!!

極太の暗い光の帯が、一行に向かって飛んでくる。
それをギリギリで回避し、飛ぶ。
ジェノは空中で体勢を立て直し、青い炎に青緑色の矢を放った。
うなりをあげ、真っ直ぐに飛んでいく青緑色光の矢。
それは青い炎を貫き、炸裂した。
爆炎と共に、パーツが飛び散る。
しかし、それは地面に落ちる前に青い炎に回収され、修復された。

「絶対おかしいですよ。再生能力を連続して使っているのに、全く損失がないなんて」
「確かに、ここまでくると異常だ・・・」
ジュノとジェノが呟くように言う。
すると天からの声が、落ち着き払った様子で、誰にともなく言った。
(虚数回路からのエネルギーを使って能力の覚醒を始めたんだ。
 メディアの最大のエネルギー源は「負の感情」。怒りや悲しみ、憎しみといった虚数回 路の作り出す感情、マイナスエネルギーが、メディアの最大の原動力。
 今までの破壊で、町の人達の虚数回路が大量に開いてしまっている。
 虚数回路の作り出す負の感情を、メディアはずっと吸収し続けていた。
 だからいくら攻撃されてもすぐに修復出来る。エネルギー源は星の数ほどあるんだから、 連続使用にも耐えられる。あいつを倒すには、まずエネルギーの供給を止めなきゃな。
 そのためには、エネルギー源となるものを切り離すか、取り除くかしないと)
「そんなの無理です!人の心から負の感情を取り除くなんて・・・」
ガフムスが暗く閉ざされた夜空を見上げて言った。
(悪い知らせがもう一つある)
天からの声は、今度は少し引きつったような声で言った。
(この島全体が偽装空間で閉鎖された。それも、ミラーとアンプを搭載した偽装空間の壁 にな。つまり、プラスマイナスによらず、エネルギーがこの壁に当たると、アンプによ って倍くらいに増幅され、ミラーによって内側に戻ってくる。そして別の壁にぶつかり、 また倍ぐらいに増幅され、内側に戻ってくる・・・これを繰り返す事になる。
 マイナスエネルギーである負の感情はこの空間から脱出する事が出来ず、最終的に吸収 元であるメディアに取り込まれる・・・何倍もの大きさになってな)
「それって・・・」
フレッドが何かを言いかけ、天からの声がそれにつなげた。
(そう・・・エネルギー保存の法則、熱力学のエントロピー、相対性理論・・・この世界 を構成する理論をことごとく覆す代物。言い換えれば「矛盾の壁」っていうとこだ。
 論理上絶対にあり得ないこの壁は、通常この世界には存在できない。
 空間を歪め、偽装空間を作り出し、この世界から切り離した一端でのみ存在出来る。
 だが、空間を歪めているが故、物理的な攻撃はいっさい通用しない。
 エネルギー兵器も倍くらい増幅・反射され、発射元に戻ってくる。
 従って、壁に対しては全く効果を発揮出来ない。
 壁を壊す方法は、壁を作り、支えているメディアの本体を破壊するしかない・・・)
「しかし、そんな事は不可能です!相手は無制限度のエネルギーソースを持っているとい う事になるんですよ?!供給されるエネルギーを止める事も・・・」
ガフムスが、天を仰ぎつつ叫んだ。


ガフムスの言うとおりだった。
人の心から憎しみや悲しみ、怒り、おそれ・・・そう言った負の感情を取り除く。
そんな事、たとえ天地がひっくり返っても出来ないだろう。
人の心はプラスとマイナスがあって初めて存在出来るのだから・・・
おまけに、ぶつかるだけで増幅と反射を繰り返す厄介な壁に囲まれている。
無制限のエネルギーソースを持つ敵・・・状況は最悪だ。
そうなると方法は・・・
「くそっ!排気ガスみてぇに減らす事も出来ねぇのかよ!」
ガルドが悔しそうにハーレーを叩いた。

排気ガスを・・・減らす?

フレッドの頭の中で、何かが動き始めた。
ガルドの一言を中心に、フレッドの思考回路が急速調で論理を展開していく。

排気ガスとは、エンジンを駆動させた後に残った気化した不要物。
最近のバイクや車は、これをそのまま出さないようにいろいろと工夫している。
その代表例がフィルター。フィルターは不純物が大量に大気中に放出されないようにするため、不純物を吸着するもの。
これがあるのとないのとでは、その不純物の放出量がかなり違う。

もし、エンジンを虚数回路、排気ガスをマイナスエネルギー、大気をメディアに置き換えられるなら、
虚数回路とメディアの間にフィルターを挟む事でエネルギーの移動を制限でき、メディアに取り込まれるエネルギーを減らす事ができる・・・
移動するものがマイナスエネルギーなんだから、フィルターは相対するプラスエネルギーで構成すればいい。
プラスエネルギーなら、手元にあるMPは勿論、工業エリアにある発電所のディフレクターから調達が可能。
発電所からのエネルギーなら、不足する事はまずないだろう。

うまくいけば・・・100%カットできるかもしれない。

一筋の希望の光が、フレッドに差し込んだ。



「・・・って考えなんだけど、どう?」
フレッドが、今考えた「フィルター案」を皆に説明していた。

説明は比較的簡単だった。
まず、3人がかりでメディアの注意を工業エリアから遠ざける。
その間に、残り4人は発電所からのエネルギーをエリアの中央あたりに送れるよう、エリア内の配線を中央へまわし、バリアを作るように配線をコイル状に回す。
配線が完了したら、空中にMPの閃光弾を放つ。いわゆる合図だ。
それを確認したら、注意を引いていた3人は方向転換し、工業エリアへメディアを誘導。
コイルの中へ入ったと同時に3方向へ散る。
それと同時に残りの4人はコイルにエネルギーを送る。
コイルはエネルギーをもらい、真上にカーテンのように光の壁をのばす。
それを、さっき散った3人のMPで結び、袋状にしてメディアを閉じこめる。

残りの4人はメディアが攻撃を始める前にフィルター越しにエネルギー兵器で攻撃する。
再生を行おうとすればエネルギーを大量に消費するため、閉じこめながら攻撃すれば、いずれエネルギーが切れて身動きも取れなくなる。
そうなれば、こちらの勝ちは確定する。

「おし!俺は誘導に行く!速さだけは負けないからな」
ガルドが名乗り出る。それにつられるように、ジュノとメビウスも手を挙げた。
「なぜジュノが?」という疑問が残るが、これには大した理由はない。
ただ、メディアの言った一言が引っかかっているから。それだけである。

本当に・・・それだけ・・・のはず・・・
でも・・・なんだろう・・・何か違う・・・
それだけのはずなのに・・・何か違う・・・
メディアを・・・傷つけるのを・・・ためらってる・・・
今までの攻撃も全て・・・本気ではなかったような気がする・・・
最大の60%程度しか・・・実際には出していない・・・
そんな・・・まさか・・・

(ほら、急がないとメディアが攻撃を再開する!これ以上町を破壊されたら、元に戻らな くなるぞ!こっちはそんなに経済的余裕ないんだからな!)
どうでもいい天からの声で、(どうでもいいって言うな!)ハッと我に返るジュノ。
さっきまでの思考を止め、リーバード形態となったメビウスの背に乗る。
雑念を払い、全神経を覚醒させる。

そう・・・今は敵を誘導する事だけに専念すればいい・・・
今は・・・

自分にそう言い聞かせ、メビウスの背びれを掴む。
メビウスがゆっくりと上昇を始め、翼を開く。
ガルドも赤いライドチェイサーとなったハーレーにまたがり、エンジンをふかした。
「くれぐれも無茶はするな!危なくなったらとにかく逃げろ!」
「かしこまりました」
ジェノの言葉に、ジュノの代わりにメビウスが答える。
次の瞬間、銀色の翼と赤いハーレーは悪魔に向かって飛んでいった。

その時は、まだ誰も気付いていなかった。
フレッドの大きな誤算に・・・
これから起こる、さらなる災厄に・・・
ジュノの異変に・・・

「方位00、距離160。メディアを補足しました」
メビウスの声が風と共にジュノの横を流れていく。
前を見据え、ジュノは赤い光を解いた。
「・・・行きます!」
そう言って、メビウスから天高く舞い上がるジュノ。
赤い光が長く尾を引き、目を引く。
高々度から赤い光が弾丸のように飛び、メディアの脇のがれきを吹き飛ばす。
飛び散ったがれきがメディアに当たり、軽い金属音を響かせた。

こちらを振り向き、暗い光の束を放つメディア。
しかしそれは、背後から来たメビウスに掴まって飛び立ったジュノに当たる筈もなかった。
アスファルトをさらに砕き、がれきを増やしただけ。
そのがれきの上ギリギリを、ガルドの乗るハーレーが滑っていく。
メディアの横ギリギリを、すれ違いざまに黄色いエネルギー弾を放ちつつ、すり抜けた。
さらに、メビウスの口から放たれたチャージ弾とジュノのエネルギー弾が炸裂する。
幾つもの火花と光の破片が散り、メディアの灰色のボディを克明に映し出す。
「ザコが粋がるなぁぁぁッ!!」
叫びつつ、幾つもの暗い光を放つメディア。
ホーミングミサイルのように迫りくるそれを、回転をかけながら避けつつ誘爆させていくメビウスとハーレー。
光は幾つもの破片となり、宙に散った。
「ほら、私はこっちです!」
そう叫び、赤いエネルギー弾をメディアに向かって放つ。
エネルギー弾はメディアにぶつかる一歩手前で爆発を起こし、爆炎を散らした。
「おのれぇぇぇぇッ!叩き潰してくれるっ!!」
メディアは地上5m程度の高度を維持しつつ、メビウスとハーレーを追い始めた。

かかった!

MPが3人の意思を疎通させる。
後は合図がくるまで工業エリアから遠ざければ・・・




一方、工業エリア。
フレッド、ガフムス、ジェイスフォンの3人は、手分けして電線を中央付近に集めていた。
電線といっても、直径8cm前後のという極太の特殊加工線である。
流れるのは電流ではない。ディフレクターのプラスエネルギーが直接流れる。
普通の電線では1分も持たない。複雑に加工されたこの線だけが耐えられるのだ。
それを中央でつなぎ合わせ、直径5m程のコイル状に設置していく。

発電所ではジェノがエネルギーの供給を止め、中央に供給する準備をしている。
タービンを取り外し、ディフレクターからのエネルギーを直接2段組アンプに送り込む。
アンプで100倍程に増幅されたエネルギーはノイズキラーを通過してコイルに流されるという寸法だ。

この時、このコイルで作られるフィルターの電界強度は、多少の伝達ロスがあるにしろ、
電圧に換算して約970TV(970000000000000V)。メディアの攻撃に
耐えられるかどうか微妙な所だが、MPで上を袋とじにするとなると、これ以上は上げられない。
閉じこめた後はスピード勝負か・・・

「ジェノさん!こっち出来ました!」
ガイドアームから聞き慣れた少年の声がした。ガフムスである。
ジェノは最後に残った赤いパイプをはめ、それに答えた。
「こっちも出来上がりだ。上空に閃光弾を上げろ」

ドドドドドドドゥッ!!

無数の閃光弾がメディアの腕から放たれる。
「しっかり掴まって!」
メビウスがそう言ったのと、アクロバットが始まったのは、ほぼ同時だった。
メビウスは加速はせず、回転をかけたり、急に速度を落としたり、突然方向を変えたりと様々なアクロバット飛行を駆使してそれを避け、ぶつけ合い、誘爆させて煙幕にしていく。
ハーレーは急加速して距離をとり、宙返りして迎撃にかかった。
黄色い光がマシンガンのように無数・広範囲に飛び、閃光弾を文字通り閃光へと変える。
さらにスイッチを切り替え、マシンガンをチャージモードへ変更すると、メディアの胸のクリスタルに向けて黄色い光を放った。
光は弧を描いて飛び、メディアの右腕に砕かれる。
破片となって散った黄色い光の間を、同色の光に包まれたハーレーが疾走した。
「フルバーストォッ!!!」

ドドォォァァォォゥゥ・・・ッ!!!

黄色い光がメディアに突っ込み、爆炎をあげる。
次の瞬間、ハーレーがその中から飛び出し、ジュノ達にグッと親指を立てて見せた。

…囮だって事忘れてません?

ジュノは心の中でそう呟いた。どう見ても、本気で戦っているようにしか見えないのだ、仕方ない。
しかし、そんなに相手を攻撃したら・・・囮が墓標に・・・

「フレイアッ!」
突如、爆炎の中から無数の青い炎が飛び出し、ハーレーに襲いかかった。
慌ててアクセルを全開するガルド。
青い炎が、マフラーの端にしたたか当たった。
爆炎の中から飛び出し、逃げるハーレーを追うメディア。
無数の青い炎を放ちつつ、ジリジリと間合いを詰めていく。

「・・・援護します」
「分かりました。このままメディアの後ろへ!合図で軌道に沿って追い越して下さい!」
ジュノが言い、メビウスが飛ぶ。
メディアの後ろに向かい、跡をつけるように軌道をとった。
メディアが再び青い炎を・・・
「今です!サム・ギア!!」
放つ直前、ジュノの両手から、無数の青い光が飛び出し、ホーミングミサイルのように襲いかかる。
合図と共に今までとった軌道に沿うようにしてメディアを追い越し、ハーレーの横につく。
前後から同時に攻撃を受けたメディアは失速し、がれきの山に向かって落ちていった。
しかし、がれきの山にぶつかる直前、メディアは無理矢理体勢を立て直し、再び空へと飛び上がった。

彗星のようにメビウスとハーレーの間を抜け、上空の制空権を得る。
振り返り、両手をこちらにかざす。暗い光が、微かに波打った。
「ハイグラヴィティション!!」

グワッ!!

暗い光がざわめき、ジュノ達はもの凄い力で真上から叩かれたような衝撃を受け、地面に叩き付けられた。
アスファルトやコンクリートの破片をまき散らし、クレーターを形成する。
アーマーがビキビキとイヤな音を立てる。
起きあがろうにも、体中にもの凄い圧力が・・・

ドァォン!ドァォン!

突如、メディアの腕が青と赤紫色のエネルギー弾に吹き飛ばされた。
体中が軽くなる。ジュノは飛び上がるように起き、エネルギー弾の飛んできた方向、工業エリアへと視線を移した。
緑色の閃光弾が、高く上がっていた。
「準備完了・・・誘導ですね」

「危ないですよ!ちゃんと真上に撃たなくては!」
「だって、真上に撃つのって難しいのよ!まだほとんど経験無いんだから!」
「そう言う問題じゃないです!」
「まぁまぁ・・・」
ガフムスとジェイスフォンの間に入っていくフレッド。
工業エリアでは、さっきの閃光弾(+エネルギー弾)の事で一悶着起きていた。
ガフムスは真上に閃光弾を撃ったのだが、ジェイスフォンが大乱投してエネルギー弾を元ビジネス街に撃ったのだ。
フレッドの閃光弾は、ジェイスフォンのエネルギー弾にぶつかって軌道をそれ、同じく元ビジネス街に・・・

「・・・ねぇ、ケンカしてる場合じゃないよ」
フレッドがビジネス街上空を指さし、2人に言った。
つられてビジネス街上空を見る。
銀色の翼と赤いハーレーが、こちらに向かってきた。
無論、その後ろにはメディアの灰色のボディも・・・
「続きはこれ終わってからね!」
無理矢理ケンカを中断し、さっさとコイル近くの建物の陰に隠れるジェイスフォン。
ガフムスも一つため息をつき、近くの建物の陰に隠れた。
フレッドはコイルが見えるよう、メディアの死角となりそうな煙突の陰に隠れた。
「・・・ジェノさん?メディアがコイルに入ったら合図します」
「ああ。ジュノやメビウスが外に出るのを確認した後が理想的だ。頼むぞ」



「・・・見えた!」
ハーレーの照準越しに前を見ていたガルドが叫ぶ。
工業エリアの中央に、巨大なコイルが横倒しになっていた。
そのコイルの中に飛び込む。
メディアが入った瞬間、メビウスとハーレーは別々の方向に抜けた。
「「今です!」」
ジュノとフレッドの声が重なり、コイルがまばゆく輝き出す。
虹色の光のカーテンが、メディアを包み、天へとのびる。
そのカーテンを、赤・紫・黄色の3色の光の帯がまとめ、巾着袋のように口を閉じた。

チャーンス!

煙突の陰から青いエネルギー球が、近くの建物の陰から緑と赤紫色の光の刃が襲いかかる。
辺りに、光が満ちた。

ズギャァァァォォォォゥゥゥ・・・

3色の光は虹色のカーテンにぶつかり、その中に取り込まれていった。
さらに悪い事に、そのカーテンをメディアが何食わぬ顔で通り抜けてきたのだ。
一瞬、何が起こったのか分からず、呆然とするフレッド。
次の瞬間、彼は全てを理解した。


要するに、フィルターが強力すぎたのだ。
エネルギーを「減少させる」壁だったはずが、「完全にカットする」壁になってしまった。
マイナスエネルギーは中和し、プラスエネルギーはフィルター維持のために取り込まれる。
しかし、エネルギーのみで構成された壁であるが故、物理的な影響はほとんど及ぼさない。
エネルギー兵器は、物体に当たると爆発したり、ホコリなどのコアを加速させて圧力を生み出す等の方法でダメージを与えるが、コアも爆発もしないただの壁は、物理的影響力が皆無に等しい、という理屈だ。
フレッドの大きな誤算だった

(やれやれ・・・。変な所に変な落とし穴作りやがって・・・)
「おまえが作ったんだろーが!その落とし穴!」
騒ぎを聞きつけたのか、それとも長年のカンか、ジェノがコイルの方に走ってきた。
右腕に青緑色の光をため、飛躍と共に撃ち放つ。
それは見事にメディアの左腕を吹き飛ばし、カーテンの奥に消えた。
「結局、実力行使で止めるしかないのか。あまり気がのらんなぁ・・・」
一つため息をつき、銀色に光り右腕、ガイドアームをメディアにかざす。
ガイドアームが甲高いうなりを上げ、ジェノの身体が光となっていく。
「光は光へ、闇は闇へと還るがいいッ!!」

刹那

光となったジェノが、メディアの胴体に突っ込む。
メディアは両腕をかざし、それを食い止める。
両者の間で火花が散り、衝撃波が飛ぶ。
次の瞬間、両者の足下が砕け、2人は爆炎に呑み込まれた。

シュ・・・ザッ!

爆炎から飛び退くようにジェノが抜けてきた。
黒革のコートには傷1つ無く、ガイドアームにも損傷らしいものはない。
一方メディアは、右足を失い、動きが鈍っていた。
修復が思いの外遅い。何か細工でもしてきたのか。
(バベルを使え!光の3原色とその合色の6色がそろえば、最高の出力を発揮できる!)
「言われなくともそのつもりさ!メビウス!」
天からの声に答えつつ、メビウスの名を呼ぶ。
メビウスは天高く舞い上がり、メディアの真上で人型へと戻った。

サービウスを引き抜き、右手に持つ。
左手はその形を変え、何かの銃口のような形となる。
バスターと呼ばれる、銃型のエネルギー兵器である。
その銃口に引き抜いたサービウスをはめ、メディアに向けた。

「MPを壊しても構わん!最大出力をマークしろ!」
ジェノの声が響く。
皆は、それぞれの持つMPを高く掲げた。
赤・赤紫・青・青緑・緑・黄色。6色の光が天高く上り、雲よりも高い位置で1つになる。

…光は闇を葬る・・・
…太陽と同じ、無色の光の柱を持って・・・


「「「「「タワー・オブ・バベルッ!!!!」」」」」」
真っ白な光の柱が、メディアの元に降臨する。
同時に、メビウスがサービウスを撃ち放つ。
光の柱に包まれ、身動きも取れないメディアの左胸を、光の柱によって加速したサービウスが・・・

貫通

「ギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!」
断末魔の叫びを上げ、崩れ落ちるメディア。
灰色のボディは砂となり、青い炎は光となり、風にさらわれていく。
光の柱はどんどん広がり、島全体を包み込んだ。
闇を全て葬り去る、そんな勢いで。

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