ロクノベ小説保管庫 双星深海(エピローグ)
※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

エピローグ
「グレープ。夕日がきれいだぞ。見にこんか?」
 ギルド長からの電話で誘われ、
グレープはエレベーターで屋上へと昇っていく。
 2つの、違う星で生まれた魂が、
太陽の光すら届かない深海で出会ってから、1ヶ月が過ぎた。
 今でも、彼女を助けに来た時のモーラスたちの、
涙と笑顔でくしゃくしゃに満たされていたあの表情を思い出すと、
くすっ、と微笑が湧きあがってくる。
 遺跡から帰ってきてから、それまで見つづけてきた夢たちの代わりのように、
様々な思いが、飛行機の窓からの景色のように、
彼女の頭をよぎっていった。
 その中から、1つだけ、彼女は自分の答えを探し出したのだ。
 エレベーターの扉が開き、グレープは黒い上着とスカートをかすかに揺らしながら、
ゆっくりと歩いて、屋上への扉を開ける。
「わぁ…」
 とても絵では表せない鮮やかな朱い(あかい)空と太陽が、
グレープの頬に当たり、その全身を照らし出した。
 ギルド長は、モーラスと一緒に正面から夕日を眺めていた。
「グレープ、そろそろ、何があったのか教えてくれないか?」
「…内緒」
 顔をしかめるモーラスを見て、グレープはクスクスと小さく笑う。
「…たぶん、良い経験だったのじゃろう。
目が、あれからイキイキしとるわい」
「2人とも。女の子の心を探索(たんさく)するのは、野暮(やぼ)ですよ…」
 そう言いつつ、グレープは、夕日へ向かって身を乗り出した。
これから、夕日が沈んで、様々な輝きを放つ星空がやってくるのだろう。
(ロックマン・トリッガーとリヴェラの住んでいた星は、見えるかしら…)
 グレープは、朱い風に髪をなびかせながら、これからの未来へ思いをはせる。

―この体が、どんな心を昔に宿していたのだとしても、
今、私の心は、こうして風と光、私の心の流れを感じているのだ。
これからも、数え切れないほどの経験に私は出会っていくのだろう。
しかし、どんな事があっても、
私は、私と同じ時間を生きている人々と共に、私の心のままに生きて行こう―

 彼女が見上げる空には、彼女を見守るかのように一番星が輝き始めた。