ロクノベ小説保管庫 RockmanX~Lumie´re Princesse~ chapitre1 光の王女、覚醒

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1話

西暦21XX年、人間とレプリロイドが共存する時代。

数ヶ月前にレプリフォース大戦の余波を受けて損傷した
スペースコロニー群は、1つを残して修復を完了し、
徐々に大戦前の暮らしを取り戻しつつあった。
その残った1つである「ユーラシア」は、
老朽化のための改修工事で修復が遅れていたのである。

修理の進むユーラシア市街を歩く人影が2つ・・・
イレギュラーハンターのエリーとエックスであった。
「もう少しで元どおりになりそうですね、エックス先輩」
「ああ、大戦でさんざん破壊された割には、意外と早く直るみたいだな。
でも、ここはまだ治安がいいとは言えん。
いつどんなイレギュラーが発生したって不思議じゃない・・・」
2人はユーラシアの警備のためにここに来ているのだ。
巨大なスペースコロニーには、イレギュラーによるコロニージャック
(コロニーを乗っ取って落とす行為)という危険が常につきまとう。
本来ならばコロニー駐留のレプリフォースが警備に当たるはずなのだが、
その駐留軍は前回の大戦でイレギュラーハンターと戦って全滅してしまい、
やむなく彼らが派遣されることになったのである。
「このまま、何も起きないといいですね・・・・」
心配するエリーがそう呟いた瞬間、異変が起こった。
つい先ほどまで作業をしていた瓦礫粉砕用メカニロイド・クラッシャーNEOが
3体、猛スピードで突っ込んでくる!
「きゃあっ!!」
辛うじてそれをかわすエリー。
「予感的中だぜ!当たれぇっっ!!」
エックスは素早くクラッシャーの下をくぐり、無防備な3体にバスターを見舞った。
しかし、爆散するクラッシャーの後ろから、すぐにもう一つの影が出現する。
暴走した無人タクシーだ。
「あぁっ!!」
エリーが撥ねられそうになる。カチンときたらしいエックスは、
「何すんだよっ!!」
と怒りの一撃を暴走タクシーに叩き込むと、彼女を振り返った。
「大丈夫か!?エリー!」
「は、はい・・・何とか」
「何か嫌な空気が立ちこめてる・・。
センサーでとらえたわけじゃないが・・・これはきっとシグマの邪念だ・・!
気をつけてくれよっ!!」
2人は、先ほどから何かを「感じ」ている。
それが間違いなく近くにいるとも。
「えっ!?」
そのとき、エリー達の不意をついて・・

2話


グオォォォォォォンッ!!!

目の前に立つ建設中の女神像が崩れ、中から異様な風貌のレプリロイド
―――首だけしかない巨大なシグマが現われたのである。
「ふはははははは・・・愚かなハンターども!死をもって、真のイレギュラーの姿を知らしめてくれるわ!!」
「シグマ・・・シグマなの?」
恐怖に震えおののくエリーを見てエックスが怒鳴る。
「下がっててくれ!シグマ、ここは俺が相手だっ!!」
「ハハハハ・・!やってみるがいい、
再び甦った私に貴様の力がどこまで通用するか!!
リグレット・ティア!!」
シグマの目から緑色の光球が発射された。
近くの壁を使い、エックスは難なくそれをよける。
「この程度でっ!!」
「ほほう、やるな・・・デッド・ストーム!!」
続いて大量のエネルギー弾がエックスを襲うが、これも敵の背後に回りこんで回避。しかし・・・
「これでどうだっ!!ウィルスレイ!!」
最凶最悪の破壊プログラム・シグマウィルスを束ねて作った、巨大なビームが迫ってきたのだ。
「ちぃっ、よけきれないかっ!!」
その時であった。

「先輩、危ないっ!!」

バァァァァァァァァァァァ・・・!!

隅で縮こまっていたエリーが、
手から眩しいほどの光の帯を出現させ、ウィルスレイをかき消したのである!
「何だと!?」
「今だぁぁっ!!」
怯んだ隙に、エックスはシグマの口の中めがけてチャージバスターを炸裂させた!
「ぐわっ、この小娘めが・・。だが・・・・くくく・・・・
ファ―――ッハッハッハッハッハ!!掛かったな!!貴様らはこれで終いだ―――――っ!!」
「何のつもりだ、シグマ・・・・うわっ!!!」
「きゃあっ!!!」

3話


猛烈なシグマの爆発で、エリーとエックスは100メートルほど吹っ飛ばされてしまった。
もし2人が人間であったら、衝撃に耐えられずに即死していただろう。
「くそっ、奴は何をするつもりなんだ・・・うっ!力が・・出ない・・・?」
「あ、あの、大丈夫ですか、エックス先輩!?
これは・・・・シグマウィルス・・・!
先輩、身体からウィルスの反応が!!急いでハンターベースに帰ってワクチンを注射しないと!!」
「そ・・そうか・・、だがそういうエリー、君はどうなんだ?」
「えっ・・・はい、何ともないです・・・」
事実、エリーは全くウィルスに感染していなかった。
どんなメカでもたちどころに侵されてしまうほどの感染力をもつシグマウィルス。
いったい、彼女の身体はどうなっているのだろうか?
エックスがエリーの手をとって立ち上がろうとした時、緊急通信が入った。
声の主はイレギュラーハンターベースのオペレーター、エイリアである。
『2人とも、すぐユーラシアから戻ってきて!!
奴の爆発でユーラシアのみならず・・・地球全体にウィルスが広がってる!!』
どうやら、あの爆発はシグマウィルスを拡散させるために仕組まれたものだったらしい。つまりシグマはわざと負けたのだ。
2人はしばし顔を見合わせたが、やがて無言で頷くと、
乗ってきたシャトルの方へ脱兎の如く駆け出していった。
また数多くの破壊と殺戮が繰り返されるのかと、何度も心の中で呟きながら・・・・

4話


地球は大混乱に陥っていた。
ありとあらゆるコンピューター、ネットワークが狂い、
機械という機械のほとんどが暴走していたのである。
その上、レプリロイドによっては我を失い殺し合いを始めているという、
目を背けたくなるような有り様だ。民間人に犠牲者が出たという報告も
矢継ぎ早に飛びこんでくる。
ベースに帰還した2人はゼロと合流し、総監シグナスから状況の説明を受けていた。
「ユーラシアはもはやシグマウィルスの塊だ。しかも16時間後には地球と衝突、
最悪の場合双方が消し飛んでしまうかもしれん。エイリア、緊急会議があるから後を頼む」
シグナスを受けてエイリアが続ける。
「コロニーの衝突を避けるためには、コロニーそのものを破壊しなければならないの。
でも、対抗し得る武器は、古くなった粒子ビーム砲エニグマだけ・・・。
そこで、各地をまわってエニグマを補強できるパーツを集めてきて欲しいんだけど、
ハンターもほとんどイレギュラー化して残り少ないわ。
今出撃できそうなのはあなたたちぐらい。お願いね!」
このとき「あなたたち」という言葉を聞いたエリーは、思わず動揺してしまった。
「あ、あの・・・私も・・ですか?」
「う~ん、オペレーターもちょっと足りないから・・・エリーさんにはそっちをお願いしようかしら?」
「は、はい!」
戦いを嫌う彼女の心中を察し、エックスが言う。
「俺達のことなら心配するな。必ずパーツを集めて戻ってくる!エリーも無茶はしないでくれよ!」
「エックス先輩・・・くれぐれも・・・気をつけて下さいね」

5話


「で、具体的にはパーツはどこにあるんだ?」
と、それまで黙っていたゼロが口を開いた。
「これから説明するわ。エックス、あなたもよく聞いといてね」
エイリアの話のここから先は、実際に戦地に赴く者にしか関係がない。
その間、エリーはただひたすらエックスが生還してくることを祈り続けていた。
「・・・というわけで、この4人がパーツ所持者よ。場所、もう一度確認する?」
「いい。作戦は了解した。さぁエックス、出るぞっ!!」
「おうっ!」
ブリーフィングを終え、2人は慌ただしく出ていく。
「今回はパーツを保持する人物と交渉、決裂すればイレギュラーと認定しこれを撃破、パーツを手に入れるってことだけど・・・・
つまり、ほとんど強盗に近いことをやるんだよな。
ゼロ、俺は後ろめたさを拭い切れないんだ・・・。」
とエックス。
が、任務に関してはどこまでも冷徹なゼロである。
「地球の存亡がかかってるんだ。生き延びるためなら何だってやるし、倒すべき奴は倒す。そんなことを言ってる場合じゃないぞ!」
「・・ああ、すまない・・」
謝りはしたものの、エックスにはまだやるせなさが残っていた。
やはり、戦わずして物事を解決することなど、叶わぬ理想にすぎないのだろうか・・・

6話


こうして、エニグマによるユーラシア迎撃作戦が開始された。

エックスらが出撃してから1時間後、ベースのコンピュータに突然、
一人の男がアクセスしてきた。続いて映像が映し出される。
「ども、ハンターのみなさん。ダイナモっちゅうもんです。
恨みはないんですが、わけあって近いうちにベースを攻撃させてもらうんでよろしく~。
そうそう、エックスやゼロってヤツはいますか?是非とも戦ってやって下さいよ」
話し振りなどから、人間で言うと20代後半のレプリロイドであろう。
「誰なんだこいつは!?よりによって、こういう時にこんなふざけたヤツとまで戦わなければならないのか?」
会議から戻ったシグナスが、恨めしそうに呟いた。顔をしかめるエイリア。
「困ったわね、肝心な戦力が欠けているときに・・・・」
「あ、あの・・・これからどうするんですか・・?」
依然強張っているエリーは、おずおずと尋ねてみた。
「エックスかゼロを呼び戻すしかないわ。もう、アイツの言うこと聞くみたいで嫌ね!」
エイリアはかなり悔しそうだ。自分とAI年齢の近そうな男に、
侮辱されたような気がしているからである。

しかし、そう時間の経たないうちに非常警報が鳴った。
「ハンターベース敷地内に侵入者!あれは・・ダイナモ!!」
奴が予告どおり攻めてきたのだ!
「どうする!?このままでは・・・」
慌てるシグナスに向かって、なんとエリーが発した言葉は・・・・
「わ、私、あの人を何とか説得してきます・・!」
これには流石にシグナスもエイリアも驚きの表情を隠せない。
「無茶だ!!やられてもいいのか!?」「犬死にするわよ!」
「わかりません・・・でも、何だか私がやらなきゃいけないような気がするんです・・!」
まだ戸惑っているエイリアだったが、エリーの苦悩と決意の混じる瞳を見て、
「・・・わかったわ。でも、危なくなったら必ずここまで戻ってくること!!」
出撃を承認せざるを得なかったのであった。

7話


粒子砲エニグマ
―――何年も前に使用されて以来、
老朽化が進みほとんど使い物にならなくなっていた大型の砲台である。
そのそばで、エリーとダイナモが対峙していた。
「あれ、結局エックスもゼロもお留守で、お嬢ちゃん一人?こりゃどうなってんのかねぇ?
ひょっとして、ハンターの連中は俺をなめてんのか?」
「お、お願いします!今すぐ攻撃を中止してください!!」
「なんだ、何が言いたいのかと思ったらそんなこと?やだね」
「どうして、どうしてですか・・・?」
「俺はね、今シグマの旦那のもとでお仕事中なんだよ。殺したりしないからさ、
邪魔しないでくれるかなぁ?そんじゃ今度はこっちから聞くぜ。
お嬢ちゃんはなんで戦うんだい?」
「!・・・そ、それは・・・・」
答えに窮するエリーの胸に、様々な思いが去来する。
戦うのが嫌いなのに、私はこうしてイレギュラーハンターを続けている・・。
なぜ?それは、いつも自分を助けてくれる、いつも自分を励ましてくれる、
あの人がいるから・・・・だからやってこられたんだもの。でも今は・・・・
「ま、放っといて俺はのんびりこのポンコツ砲台を潰させてもらうとしますかね」
エニグマを見上げるダイナモの銃口が、まさに火を噴こうとしていた時!
「やめて―――――――っっ!!」
「んっ!?」
バァァァァァァァァァァァ・・・!!
再び、エリーの手から目映い光の帯が放たれたのだ。
それは今にもダイナモを飲み込まんとする勢いである。
「グッ、やばっ!!じゃあなっ!!」
自らの危険を察知したダイナモは、身を翻すと、どこかへ走り去っていってしまった。
「わ、私は・・・何を・・・」
暫く立ち尽くしていたエリー。
だが、芽生えつつある勇気という感情を、彼女はまだ自覚してはいない・・・

ベースでは、侵入者を撃退したエリーを、目を丸くしたシグナスとエイリアが迎えていた。
「あの光は・・・ただの目くらましではないようだが、いったい何なんだね?」
同じことを何度もシグナスに聞かれるが、それはなぜかエリー自身にもわからない。
兎に角、招かれざる来訪者がいなくなったことで、3人は胸をなでおろすのだった。

8話


数時間後。
エックスとゼロは、無事ハンターベースへと帰還した。
「言われたものはこのとおり、残さず集めてきた」
ゼロが、作戦会議用テーブルの上に
水素タンク、エネルギーカートリッジ、レーザー装置、オリハルコンを並べて見せる。
「よし、これで全部だ。メカニックの者達に渡して、至急エニグマに装備してもらってくれ」
シグナスの要請を受け、エックスとエリーが4つのパーツを2つずつに分担して運んでいく。
まだ時間的には少し余裕があるが、コロニー迎撃の準備はほぼ整ったことになる。
「エイリア、衝突には間に合いそうか・・・?」
「ええ、私達は作戦の成功を信じているのではなくて?」
という会話を交わす総監とオペレーターを横目に、
「信じていれば願いは叶う・・・・か。こういう状況にしては随分と安気なもんだな」
冷静なゼロは、あくまでそう考えていたのであった。

調整を終え、発射を目前に控えたエニグマ。
シグナスが皆を見渡して言った。
「現時刻をもって、地球の命運を賭け・・・
作戦最終段階を発動させる!!諸君、用意はいいか?」
「はい、エネルギーチャージ完了、角度OK。安全装置解除!いつでもいけます!」
「うむ。エニグマ、発射!!目標、ユーラシア!!」
「了解、エニグマ、発射しますっ!!!」

ゴワァァァァァァァァ・・・・・・・!!!!!

凄まじい大音響と共に、空に金色の帯がすうっと伸びてゆく。

「エイリア、どうだ!?」
シグナス、エックス、ゼロが口々に尋ねる。
「コロニー破壊率、86%!10分後には消滅するわ・・・!」
嬉しそうなエイリア。

「よかった・・・・・」

誰が口にしたのかはわからなかった。いや、誰でもよかった。
地球は、救われたのだ。

9話


「うっ・・・」
「どうした、ゼロ?」
「うおおおぉっ!!ロックマン・・・お前を倒す!!」」
ゼロが突如、暴走し始めたのだ!邪悪な雰囲気が漂っているのが嫌でも感じ取れる。
「こ、これは・・・・!?」
怯えるエリーの呟きに対し、エックスが答えた。
「これは、任務中にシグマウィルスを浴びたことによる、ゼロ特有の作用だ!
あいつは普通のレプリロイドと違ってウィルスでパワーアップしてるのさ・・。
以前からおかしいとは思ってたが、こういうことになるとはな・・!」
ゼロがベースを手当たり次第に壊す音に混じって、悲痛なエイリアの叫びが聞こえる。
「いけない、早くゼロを外に!!このままじゃっ!!」
「わかってる!!」
エックスはゼロの懐に飛びこむと、全力ダッシュで彼をエニグマのそばまで押し出していく。
度重なる非常事態で、もうエリーにはどうしていいかわからなくなっていた。
ただ、押し寄せる不安が彼女をエックスのもとへと向かわせていたのであった。

「ゼロ、君ならわかるはずだ!こんなことをして何になる!?」
エックスの呼びかけにもゼロは答えようとせず、
「俺の造られた意義をはっきりさせるためにも、お前を倒す!」
羽交い締めにしていたエックスの腕を振りほどくと、ファイティングポーズをとった。
普段の彼とは明らかに違う。その形相は「殺す」という欲望にとりつかれているかのように
引きつっており、それでいてどこか虚ろである。
何かがゼロに対し、破壊を示唆するメッセージを送っているのだろうか?
やがて、エリーが駆けつけてきた。何か言いたそうだ。
「エックス先輩!ゼロ先輩は・・・あっ!」
「おいっ、危ないぞっ!!早く戻るんだ!!」
「きゃああっ!!」
エックスが叫んだときには、既に彼女はゼロの一撃を食らっていた。
力なく倒れ伏すエリー。どうやら、そのまま気を失ってしまったらしい。
「エリー!! 
くっ・・・・・・わかった、受けて立つよ。
君と戦うことには、何か宿命のようなものを感じるんだ・・・。俺は戦って君を助ける!!」
エックスとゼロの、一騎討ちが始まったのである!!

10話


チャージショットと、電刃零――ゼロのゼットセイバーから放たれるエネルギー波――が
閃光を発してぶつかり合う。だが、すぐに電刃零が打ち勝ち、
かわそうとするエックスの脇腹をかすめた。
かすり傷程度では済まなかったらしく、アーマーがえぐれてしまっている。
あれをまともに食らえば生きてはいないだろう。
バスターでは出力不足と判断し突進したエックスは、ゼロと真正面で組み合った。
「ゼロ!・・・そうか、俺たちは戦ってこそ互いの存在を確かめられる・・・そう言いたいんだろう?」
「ふん、言うまでもないっ!!ロックマンを倒して、俺は・・・俺は・・?」
その一瞬、ゼロの力が緩んだのをエックスは見逃さなかった。
「おおぉぉぉぉ―――っ!!」
組んでいた右手を握りなおし、ゼロを吹き飛ばす。
胸のレンズ・ゼットハートが鋭い音を立てて割れた。
が、受身をとったゼロは、フルパワーで地面を叩きつける!
「そうだ、お前の潜在能力を見せてみろっ!!真・滅閃光!!」
「し、しまっ・・ぐわあああああああ―――――――――っっ!!!」
エックスの体が、大地を引き裂く衝撃波に飲み込まれていった・・・・・

エリーが気がついたのは、それから2時間ほど経ったころだった。
傍らにいるのはシグナスとエイリア。
彼女の意識を確認した2人は一瞬安堵の表情を浮かべたが、
すぐに顔を曇らせてしまった。
「あの・・・エックス先輩は・・?」
「そのことなんだが・・・彼はゼロともみ合ったまま、ポイント11F5646に向かったのだ」
「シグマウィルスが最も激しく集中している、極めて危険な地点よ」
「!・・そうですか・・・・」
エリーはしばし沈黙していたが、やがて意を決したように、
「私、行ってきます!」
はっきりと言った。
もう誰にも彼女を止めることはできまい。
用意してもらったエアバイクに跨り、エリーはそのポイントへと急行していった・・・・・

11話


もともと引っ込み思案な性格の少女である。
じゃじゃ馬と言われる最新エアバイク・アディオンなどは、
勿論乗りこなせるはずもない。
そこで旧型のチェバルに乗ることにしたのだが、やはりうまくいかないようだ。
車体のあちらこちらをぶつけながらも、彼女はどうにか目的のポイントへと到着した。

岩山の中央にぽっかりと穴が開いており、
その先に青白く光る空間が広がっているらしい。
傷だらけのチェバルを穴のそばに停め、
エリーはその中に身を躍らせる。
10メートルほど落下すると、細い通路に出た。
足場以外の空間では、何やら幾何学的な図形が、縦横無尽に動き回っている。
外部からの電波は遮断されたようで、ハンターベースとの通信は全くできない。
まさに、正体不明と形容するに相応しい場所だった。

だが、それよりもエリーが不思議に思ったことがあった。
覚悟していたにも関わらず、一向にイレギュラーが出てこないのである。
いや、もともと活動していたのだろうが、今は既に残骸の山と化し、
彼女の行く手に空しく転がっているだけだったのだ。
「これは・・・・?」
考えているうちに、最深部の扉へと辿り着いた。そこには・・・・・

12話


傷だらけのエックスと、大破したゼロ、そして、その向こうに・・・・シグマ。
「!・・・先輩・・」
ユーラシアで遭遇したときとは違い、完全な人の形をしたシグマは、
エリーの姿を認めると言った。
「身のほど知らずな小娘・・・ただでさえ小さい自分の力を過信してここまで来るとは愚かな」
シグマは、彼女の使ったあの不思議な能力のことを忘れているのだろうか?
あるいは、口に出すのを避けているのだろうか?
一方のエックスは動転している。
「エリー、どうしてこんなところまで来たんだ!?」
「何と言われても構いません!私がもう少しちゃんとしていたら
ゼロ先輩はあんなことにならなくて済んだのに・・・。私、エックス先輩を守ります!!
私にはわかるもの。ウィルスでゼロ先輩を目覚めさせたでしょ?シグマ!」
エリーは涙をいっぱいに浮かべていた。
ゼロが目覚めただって?
君は何を言ってるんだ?
エックスは更に困惑してしまう。
が、全てを知っているかのような彼女の口振りにも、シグマは全く表情を変えない。
「ご名答だよ。ユーラシア全域にダイナモを使ってウィルスを散布させ、
地球に落とすというのは当初からの目的だった。
だがそれ以上に、ゼロの真の姿を見たくてな・・・・」
「そのために沢山の人達を・・・。もうやめなさいっ!!」
エックスがこれまで目にしたことのない、激しい口調のエリー。
とうとうシグマは業を煮やしたらしい。
「戯言は聞き飽きたわ!!ヘル・スパークで消し炭となるがいいっ!!」
無数の電撃弾がエリーたちを包み込む!

13話


しかし次の瞬間、強い光がシグマの視界を奪った。
ヘル・スパークによるものではない。
光はその中心にいるエリーから発されているのだ。

収まったとき、エックスとゼロはいつのまにか
白っぽい防御フィールドに守られていたのだが、
光源の姿はどこにもなかった。
代わりに、赤と白の鮮やかなアーマーを
身に纏った一人の少女が出現していたのである。
茫然とするエックスに背を向けたまま、少女はゆっくりと言う。
「私は、エイル・・・ケイン博士によって、シグマを封印するために造られたレプリロイド・・・」
「エ・・リ・・・?」
振り返った少女が見慣れた娘であると気づくには少々時間がかかったが、
彼女は確かにエリーであった。
ただ、大きなツインテールになった髪型、
以前とイメージの異なるアーマーを除けば・・・・
「先輩・・いえ、エックスさん・・。ごめんなさい、これが私の本当の姿なの・・」
彼女は覚醒を果たしたことで、本来の自分の目的を思い出したのだ。
エリー、もといエイルは哀しげな目で満身創痍のエックスを見ていたが、すぐにシグマに向き直り、
「もう誰が傷つくのも見たくないもの・・。エックスさんも、地球も私が守るんだもの!!」
力強く言い切った。
「エ・・イルッ!シグマは君が戦って敵う相手じゃない!」
既にシグマやゼロとの戦いで著しく体力を消耗しているエックスは、止めようとした。
しかし、関節が激しく痛んで立ち上がることすら容易ではない。
「ふん・・・これで終わりだ!!ヘル・ブレイド!!」
巨大な衝撃波がエイルに向かって発射されるが、彼女はすかさずバリアでうち消す。
そして、またしてもあの光を放った。
「スュペルブ・エイル・レイヨン!」
覚醒時のリミッター解除により今度は今まで以上に強く、しかし優しい光だった。
その直撃を食らい、シグマは大きく仰け反る。
計4度復活しているイレギュラー総統に対してここまで効き目があるとは、
流石はロボット工学の権威ケイン博士の為せる技である。
博士はエイルの生みの親であり、同時にシグマの開発者でもある故に、
奴のことを(本人を除けば)誰よりも熟知しているからだ。
そして、エイルには最近開発したウィルスバスター、
ウィルスバリアの強化版が内蔵されているのである!

14話


「ぐっ、小癪な・・・何だ!?パワー出力が低下しているだと!?」
驚くのも無理はない。
先の理由でシグマとエイルはいわば反物質的関係にあるのだが、
今はエイルの放出するエネルギーの方が遥かにまさっているため、
全身のシグマウィルスを消去され、ほぼ無力化しているのだ。
エックスはというと、逆に力すら沸いてくる。
「よ、よぉぉぉし・・・残ってる俺の全てを・・・うおおおおぉぉぉっ!!」
「ケインが造っていたのはこういうことか・・・だ、だがまだだ、今度こそ消え失せろ!!」
「させるかっ!消えるべきはシグマ!!お前の方だぁぁぁぁぁぁ――――――っっ!!!」
反動でアーマーがボロボロに朽ちていくのも気に留めず、
エックスがシグマにフルチャージ弾をぶち込む!!

「ま、まさか、私がこんなことで・・・・馬鹿な―――っっ!!!」

ドゴォォォォォォォォォォォン!!!

予想以上に凄まじい爆発を起こし、シグマは消滅した。
無論エイル達を巻き添えにするためである。
激しい振動の中で、正気を取り戻したゼロが苦しそうに口を開いた。
エックスとの戦いの激しさを物語る、おびただしい傷を負っているにも関わらず・・・。
「よくやったな・・・俺はウィルスに魅入られてこのザマさ。
早く脱出するんだ・・そして、生きろ!」
「何言ってるんだ!!ケイン博士のところで直してもらえば助かるだろっ!
そういう君が生きることを諦めてどうする!?」
「わかってくれ・・・お前と戦うのが宿命なら・・
俺は始めからこの世に存在するべきじゃなかったのさ・・・いいか2人とも・・生き延びろよ・・」
「ゼロさん、そんなことないです!たとえ宿命であっても・・・あなたはまだ死んじゃ駄目っ!!」
「生き・・」
その言葉を最後に、ゼロの体は爆発の中へ消えていく。もう彼を助け出すことはできないだろう。
「ゼロさんっ!!!」
ところがエックスも、
「くぅ・・俺も、もうエネルギーがない・・・ここまでかっ・・・!」
「エックスさんまで!!」
エイルは崩れ落ちる彼の体を支えようとするが、彼女にとってエックスはかなり重たかった。
そこで自らに秘められた能力を使い、彼の体を光の球体の中に収める。
数分後、ポイント11F5646上空に2つの光球が出現し、
ハンターベースの方角へと飛んでいったのだった・・・・

15話


ハンターベース第一メンテナンスルームのベッドに寝かされたエックス。
心配そうな表情のエイルが付き添っている。
やがて、彼にゆっくりと意識が戻ってきた。
「・・・俺は・・っ!」
「よかった・・・エックスさんを救うことができて・・・」
思わずエックスの胸に、涙で濡れた顔をうずめる。
「ありがとう。君のおかげで、またこうして生きていられる・・・。
俺達はシグマだろうが何だろうが、どんな困難に遭ったって生き延びなくちゃならない!
そうだろう、ゼロ・・・そして、エイル?」
「はい、ゼロさんや命を落とした全ての人々の分まで・・私、生きます!」
今、生きていること。
大切な人がそばにいること。
それだけで嬉しかった。
「・・ところで、どうしてあの時危険を承知で俺を追ってきたんだ?」
よほど口に出したくないことを聞かれたためか、思わずエイルは頬を赤らめた。
「それは・・・エックスさんが好きだから・・
こんなにエックスさんのことが大好きだから・・・」
彼女の声はもうそれ以上、言葉にならない。
「エイル・・・もう離さない・・・・ずっと、ずっと一緒にいような・・・・」

…その頃、ハンターベース研究ブロック・カプセルルームで、異変が起きていた。
カプセルのケースに手をやる人影・・・・
誰にも気づかれることなく潜入した「彼」は、満足げに頷く。
「ほう、これが『究極のレプリロイド』ですか・・・。
探しましたよ、存分に活用させていただくとしましょう。
我らが復讐のためにね・・・」



次回予告
「かつてハンターたちに処分されかけ、追っ手を逃れた者たちが
集まり形成されたアンチイレギュラーハンター『ブリュレ』。
彼らはケイン博士をさらい、ハンターベースを火の海にする。
情け容赦ないブリュレの行為に激しい憤りを覚えるエイルたちが
目にした意外な敵とは?悲劇は、またも繰り返されるのであろうか?」