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ロックマンXセイヴァーⅠ 第参章~過去~

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第一話

「よし・・行くぞ!」
エックスは、掛け声と共に目の前の扉を、
問答無用のチャ-ジ・ショットで破壊した。
そして、そのまま煙に紛れてのダッシュで内部に突入する。
エックスは屈んでバスタ-を、
セイアは直立してサ-ベルを構えた。
ゆっくりと晴れていく煙の先から、確かな人影が見えた。
そして、数秒後には、その人影は完全に二人の視界に入った。
「・・!」
「なっ・・。」
白衣を着用し、頭髪は白髪。
白衣には”W”の文字を入れた、老人型レプリロイド。
そして、老人の隣には、頭一つ分ほどの小さなカプセルが設置されている。
カプセルは、何かの液体で満たされており、コポコポと泡が立ち上がっている。
中には、何やら脂ぎった豆腐の様な物体が浮かんでいる。
「フフフ・・待っていたぞ、ROCKMAN。」
驚愕する二人を尻目に、老人は静かに口を開いた。
「お前・・か!・・VAVAを復活させたのは!」
エックスが叫んだ。
その額には、異常なまでの冷や汗が浮かんでいる。
それは、この老人の発する、妙なプレッシャ-のせいだ。
わけのわかない“何か”。
まるで、何度倒しても復活してくる、あのシグマを前にしているような。
「ククク・・ロックマンが二人・・。ついにこの時が来た。」
「っ・・質問に答えろ!!」
プレッシャ-を跳ね返すように一喝するが、
老人は全くと言っていいほど動じていない。
不意に老人は右手を上げた。
すると、小さな光が現れ、一枚のリングへと姿を変えた。
そして、それをエックス目掛けて投げつけた。
「っ!?」
リングはエックスに着弾すると共に、そのサイズを急激に変え、
エックスの身体を拘束した。
避ける間もなかった。
「兄さん!・・・この野郎ぉぉぉ!!」
サ-ベルを振りかぶり、勢いよく斬り掛かる。
が、老人は高出力の光剣を、何ごとも無いようにアッサリとかわした。
そして、歳を感じさせない回し蹴りで、セイアを吹き飛ばした。
「ついにこの時が来た・・ワシの敵・・ワシのライバル・・ワシの天敵。
ROCKMANに復讐するこの時がな!!」
復讐・・?
天敵・・?
ROCKMAN・・?
セイアの頭の中に次々と疑問符が飛び交う。
何を言っているんだ?

第二話

そして、エックスの脳裏には、ユ-ラシア墜落事件時にシグマが言っていた、
“素晴らしいパ-トナ-”と言う言葉が蘇った。
「まさか・・貴様・・あの時・・シグマに・・!!」
「フフフ・・その通りじゃ。シグマを使って貴様を殺し、
ゼロを覚醒させようとしたんじゃがな。
所詮はオモチャ。余興に過ぎない。
ただの役立たずじゃった。」
そう言って老人はニヤリと笑った。
その目には、あのVAVAをも凌ぐ狂気が宿っている。
「じゃが・・奴の全デ-タはコピ-済みじゃ。
もう少し役に立ってもらおうか?出るのじゃシグマ!!」
老人が右手を振り上げると同時に、背後の暗闇から、
一体の人影が出現した。
印象的なスキンヘッド。
目から鼻にかけての青いアザ。
「これが・・シ・・グマ・・?」
話しには聴いていたが、その余りの威圧感に緊張を隠しきれていない。
でも・・倒さないと。
セイアは咄嗟に身構えた。
しかし、その瞬間には既にシグマは、セイアの視界から消え去っていた。
「っ!?」
危なかった。
途轍も無い速さで繰り出されたシグマの攻撃を、
なんとかサ-ベルで受け止めることが出来た。
しかし、それがやっとだった。
余りの重さに両手がブルブルと震えてしまう。
「くぅ・・うぅ・・はぁぁぁ!!」
直ぐ様バランスを崩させ、超高速のパンチラッシュを浴びせ掛けるセイア。
しかし、次の瞬間には、セイアの腹部に鈍い衝撃が走っていた。
気がつくと、エネルギ-の宿ったシグマの拳が、
セイアのみぞおちに直撃していたのだ。
「ぐっ・・・げほ・・。」
力無く膝を突き、咳き込むセイア。
ア-マ-の上からだとは言え、内臓にかなりのダメ-ジがあったのか、
口元を抑えていた掌が、真っ赤な血の色に染まっている。
今のセイアは無防備だ。
しかも、シグマがこの隙を逃す筈などない。
シグマは、背中に装着されていた、大型の斧を抜き、
大きく振りかぶった。
-やられる・・。
恐怖の余り、目を瞑った瞬間。
「あぁぁぁぁ!!」
「ほぉ・・。」
バチィィンと、エネルギ-の中和された音が、辺り一面に響いた。
エックスは、自らを拘束していたリングを、無理矢理に引き剥がしたのだ。
「マグマ・ブレ-ド!!」
肩に収納してある、ゼット・セイバ-を抜くと、
その刃は、いつもの蛍光色のエネルギ-ではなく、
灼熱の焔に変わっていた。
シグマは、標的をエックスに変え、バトル・アクスを振り下ろした。

第三話

鉄の焦げる匂いが鼻をつく。
エックスのマグマ・ブレ-ドと、
シグマのバトル・アクスが、正面から激突したからだ。
「くっ・・・そ・・。」
少しずつ、エックスのセイバ-が押し込まれていく。
完全に押しきられるのも時間の問題だろう。
「ぅ・・・・・っ!?」
キィンと言う甲高い音が響く。
それと共に、ゼット・セイバ-の柄が、勢いよく宙を舞った。
シグマのバトル・アクスは、そのままの勢いで、エックスに襲いかかったが、
咄嗟にエックスが避けたため、地面に叩き付けられた。
そして、エックスは直ぐ様バック転で間合を取った。
すると、跳んだ先では、既にセイアがバスタ-にエネルギ-を集中させ、
その銃口をシグマに向けて立っていた。
「喰らえぇぇ!!」
重い衝撃音と共に、銃口から、蒼いエネルギ-の塊が放たれた。
バトル・アクスを地面に叩きつけたことによって、バランスが崩れ、
シグマは今無防備な状況にある。
一瞬の轟音が耳を打つと共に、シグマは蒼いエネルギ-弾に呑み込まれた。
多量の煙が辺りを舞う。
「セイア・・油断するな。こんな程度でやられるような奴じゃない。」
落下してきたセイバ-を、パシッと受け止めるエックス。
そして、再び握り直し、その蛍光色の刃を発生させる。
「・・うん・・。」
セイアも肩のサ-ベルに手をかけた。
除々に煙が晴れていく。
それに比例して、中の人影がゆっくりと視界に入ってくる。
「・・・・来る!」
エックスが叫んだ。
地面を蹴る音と共に、シグマが大きく跳び上がった。
「っ!」
上昇していくシグマに向け、セイアはバスタ-を連発したが、
その全てはシグマのバトル・アクスに叩き落とされてしまった。
そして、シグマは直ぐ様アクスを振りかぶり、落下の勢いと共に振り下ろした。
「・・電刃!!」
すかさず電撃を帯びたライジングで迎撃するセイア。
甲高い激突音と同時に、サ-ベルとアクスが火花を散らす。
「隙だらけだぜ!!喰らえ!!」
その隙にエックスのフルチャ-ジ・ショットの蒼い閃光がシグマを包み込んだ。
しかし、甘かった。
「なにっ!?うぁぁ!!」
セイアが気がついたときには、バスタ-をものともしないシグマの豪腕が、
セイアの頭を鷲掴みにしていた。
落下の勢いに任せ、セイア地面に叩きつける。
「あぁぁぁぁ!!」
全身に激痛が走った。
押さえた口もとに、微かな赤い液体が付着している。

第四話

「うぉぉぉ!!」
怒りを露にし、エックスはセイバ-を抜き、降下様に振り下ろした。
しかし、その剣撃が、シグマの身体を斬り裂くことは無かった。
素早くバトル・アクスを手にしたシグマが、ゼット・セイバ-を柄ごと吹き飛ばしたからだ。
カラァンと言う乾いた音を立てて地面に落下するセイバ-の柄。
「くっ・・・。」
縦斬り・・横斬りと迫ってくるアクスを避け、
エックスはバスタ-を向け、連続的に放った。
ダメ-ジを与えるつもりは無い。
シグマの注意を、セイアから自分に向けさせるためである。
不意にシグマの眼部に光が宿った。
やばい!
思った瞬間には、それは一筋の光となり、エックスに迫っていた。
ギリギリで回避したものの、右肩のア-マ-を削り取られた。
次は躱せない・・。
エックスが覚悟を決めた瞬間、突然シグマが大きくバランスを崩した。
起き上がったセイアが、不意にシグマに足払いをかけたからだ。
一瞬の隙が生じた。
「「今だ!!」」
「滅閃光!」
「トライア-ド・サンダ-!!」
拳に宿したエネルギ-・・滅閃光と、
瞬間的にチャ-ジを完了し、出力を増したトライア-ド・サンダ-が、
直接的にシグマの身体に流し込まれた。
「やっ・・・っ!?」
ズン・・と言う、何とも言えない衝撃が、
セイアの背中を走った。
「なっ・・?」
激痛が走る。
鮮血が滲む。
セイアの背中に、シグマのバトル・アクスが突き立てられたからだ。
「くっ・・うぁぁぁぁ!!」
思い出したような悲鳴が辺り一面に響く。
セイアは、背中を押さえる姿勢で膝を突いた。
「シグ・・マ・・貴様・・!!」
エックスのバスタ-にエネルギ-が収束していく。
それを確認したシグマは、邪悪な笑みを浮かべると共に、
セイアの背中からバトル・アクスを引き抜いた。
「うぉぉぉ!!」
一直線に放たれた蒼い閃光。
一片の狂いも無い正確な射撃ではあったが、
それはいちも簡単にシグマに叩き落とされ、多量の煙を発生させた。
そして、その瞬間には、既にエックスの姿はなかった。

「っ・・くそぉ・・。」
出血は止まった。
幸い、ア-マ-が頑丈に造られていたため、軽傷ですんだが、
ノ-マル状態で受けていたら、命は無かっただろう。
サ-ベルを地面に突き刺し、それを杖にして立ち上がる。
そして、眼前の攻防に視線を向ける。
素早い剣撃、拳・・蹴り。
エックスにとって、接近戦は余り得意分野では無いはずだ。
しかし、そんな事はセイアも百も承知。
シグマのアクスの様な武器を持つ者に対して、射撃攻撃は無力に近い。
無論・・シグマの様な手練が相手の時の話だ。
しかし、接近攻撃ならば、その巨大さ、リ-チの長さゆえに、
どうしても隙が生じてしまう。
エックスは、そこを狙っているのだ。
「っ・・兄さ・・。」
セイアのバスタ-に、蒼と紅の光が収束していく。
そして、完全に膨張しきったバスタ-の狙いを、
シグマに定めた。

第五話

バトル・アクスをセイバ-で受け止め、素早く蹴りを放つ。
しかし、威力が足りない。
余った左腕で豪快に殴り飛ばされ、エックスは勢いよく後方へ吹き飛んだ。
シグマは、エックスを追う形で前方へ飛び、アクスを振りかぶった。
エックスは回避することが出来ない。
このまま振り下ろされれば、シグマのアクスが、エックスをモノの見事に真っ二つにする事だろう。
しかし、シグマのバトル・アクスが、エックスを真っ二つにする事は無かった。
「ハァ・・ハァ・・僕はまだ・・ハァ・・終わっちゃいない!!」
セイアの放ったプラズマチャ-ジ・ショットが、豪快にシグマを包み込んだのだ。
しかし、効果はない。
セイアの姿を確認したシグマは、標的をセイアに定め、
飛び込んできた。
「うぉぉぉぉ!!」
アクスをサ-ベルで受け止め、受け流しつつ、サ-ベルをアクスごと吹き飛ばさせる。
そして、直ぐ様拳の連撃を浴びせ掛ける。
「はぁぁ!!」
強烈な火花が両者の間でスパ-クする。
スピ-ドは僅かだが、シグマが上。
「がはっ!!あぁぁ!!」
一瞬の隙を突かれ、セイアはシグマの拳によって、
地面に叩き付けられた。
-身体が・・動かない・・。
立ち上がろうと、地面に手を突くが、力が入らず、
身体を持ち上げることが出来ない。
-やられる・・。
シグマは、足元に転がっていたアクスを拾い上げ、
ゆっくりとした動作で振り被った。
「っそぉ・・シグマぁぁ!!」
途中弟への攻撃を阻止しようと、エックスが飛び込んできたが、
その攻撃はいとも簡単に受け流され、続けざまのシグマの攻撃によって、
エックスはその場に平伏した。
シグマの冷笑に背筋が凍る・・。
逃げられない・・。
殺される・・。
セイアの頭の中で、二種類の文字が飛び交う。
「っ・・・うぁ・・。」
声が出ない・・。
このままやられちゃうのか?
このまま真っ二つにされてしまうのか?
    • しかし、シグマのアクスがセイアに到達することは無かった。
「・・えっ・・?」
その瞬間、現れた紅い影が、一瞬にしてシグマを吹き飛ばした。
「なっ・・まさか・・ゼ・・ロ・・兄さ・・?」
紅い影がゆっくりと振り返った。
全身真っ赤な鎧を着た、長い金髪の青年。
何故・・?
自分の兄であるゼロは、数十分前の闘いで、自分が葬ってしまったはず。
目を見開いたまま、立ち上がろうともしないセイアに、
ゼロと呼ばれた青年は、ゆっくりと歩み寄ってきた。

第六話

「大丈夫か・・?ロックマン・セイヴァ-・・セイア・・だったな?」
ゼロはセイアを優しく抱き起こし、そう言って微笑した。
「初めまして。オレはゼロ・・お前のもう一人の兄・・って事になるか?」
「あ・・ゼロ兄さ・・どうして・・?」
ようやく声が出た。
他にも色々と聞きたいことはあった。
しかし、今はなにより、彼がどうしてここにいるのかが知りたかった。
それに、ゼロについて、エックスは「ユ-ラシア墜落事件の時から行方不明」と聞かされていた。
「でも・・信じてるんだ。きっとゼロはどこかで生きてるって・・。」
そう言った兄の顔が忘れられなかった。
なんとか立ち上がったのか、エックスが小走りに走り寄ってきた。
「ゼロ!ゼロ・・!生きてたんだ・・。」
「当たり前だろ?大体・・シグマごときにやられてたまるかよ。
…まっ・・オレ自身どうやって復活したかなんてわからねぇよ。
気がついたら動けるようになってたんだ。」
ゼロは、そこまで言うと、肩のセイバ-を抜き放ち、
吹き飛んだシグマに視線を向けた。
「ゼロ兄さん・・?」
「感動の対面はここまでだ・・。シグマはオレが引きつける。
その間に、エックス・・セイア、お前達はあのジジイをなんとかしてくれ。」
ゼロは言い終わる前に、飛びかかってきたシグマに剣撃を浴びせ掛け始めた。
セイアとエックスは、深く頷くと、瞬間的なダッシュで、
部屋の隅に立っている、白衣の老人に立ちはだかった。

「ふん・・ゼロ・・か・・まさかオリジナルが生きているとはな。
まぁいい・・今ごろ奴など用済みなのじゃからな。」
老人は、視線の先で剣を振るう、紅き闘神に対して、
忌々しそうに呟き、口の端を上げた。
「まぁ・・今はそれよりも・・。」
老人の視線がセイアとエックスに向けられる。
充血したような赤い瞳からは、シグマを越える”何か”を感じとることが出来た。
「も・・もぉ逃げられないぞ!!」
セイアは叫ぶと同時に、足元に転がっていたサ-ベルの柄を拾い上げ、
光剣を発生させた。
「エックスの弟・・ロックマン・セイヴァ-・・。
そしてロックマン・エックス!・・ハッキリ言ってガッカリしたぞ?」
「なに・・?」
エックスは目を細めた。
「たかがシグマ程度にあそこまでてこずるとはな・・。
残念じゃよ・・ROCKMAN・・。」
「ロック・・マン・・?」
違う・・彼の言っているROCKMANは、
自分達の名前のロックマンじゃない・・。
伝説のレプリロイド・・ROCKMANの事・・。
「まだ判らないか?ふっ・・判らないじゃろうて・・。
記憶を封じたのか?まぁいい・・。
このままの貴様たちを殺すことも出来るが、
それではワシの気が済まん!
今・・貴様等の記憶を取り出してやろう・・。」
その瞬間、老人の両手から放たれたエネルギ-球が、
防御する暇もなく、二人を拘束した。
『なにっ・・?うぁぁぁぁぁ!!』
凄まじいエネルギ-の流れと共に、二人の頭にある映像が走った。

第七話

いつからだっただろう・・?
俺・・いや僕は、世界で初めて『心を持ったロボット』を生み出した天才科学者ト-マス・ライト博士によって、
家庭用お手伝いロボット『ロック』としてこの世に生を受けた。
博士や・・妹のロ-ルと一緒にくらす毎日は、とても幸せだった。
でもね・・そんな幸せも、長くは続かなかったんだ・・。
ある日突然・・僕の兄弟であるロボット達が、人類に反旗を翻し、街を破壊し始めた。
悪の科学者アルバ-ト・W・ワイリ-博士によって、兄弟は改造されていたんだ・・。
もはや軍や警察なんかが敵う相手じゃなかった・・。
どうすればいい・・?
僕はただ黙って見ているだけなのか?
ううん・・それは出来なかった。
気がついたら、僕はライト博士に、
「僕を戦闘用に改造してください!!」
と叫んでいた。
別に悔いはなかった・・みんなの平和を勝ち取りたかったから・・。
平和を象徴する蒼い鎧を着て、僕は戦地へと旅だった。
僕は「ロックマン」になったんだ。
闘いは辛かった・・。
何度挫けそうになったことか・・。
それでも僕は・・なんとかワイリ-の所まで辿り着いて、
彼の野望を阻止した。
やっとこれで平和になるんだ・・。
でも・・それで終わりじゃなかった。
それから幾度となく、僕はワイリ-と闘った。
何度も何度も何度も何度も何度も。
いつしか僕の名前は、家庭用ロボット「ロック」としてではなく、
戦闘用ロボット「ロックマン」として、世間に知れ渡っていた。
そして・・数えて十回にも及んだワイリ-の世界征服の野望を打ち砕いた後・・
一旦、世界は平和になったかと思われた。
でも・・ある日ワイリ-は、見たことも無い紅いロボットを連れて、僕に闘いを挑んできた。
ロボットの名は「ゼロ」・・世界初の「進化するロボット」。
僕は全力で応戦した。
最初は僕が優位に立っていた・・でも・・ゼロは闘えば闘うほど強くなっていった・・。
それでも僕は・・なんとかゼロを相打ちに持ち込んで・・。
悔いはなかった・・みんなの平和勝ち取りたかったから・・。

大破した僕は・・ライト博士に回収されて、新たな技術を持って生まれ変わった。
僕・・俺は「ロックマン・エックス」として・・。
後世で何かが起こったときの救世主として、俺はカプセルに封印された。

カプセルを見つけたのは、21世紀の天才科学者ジェ-ムス・ケイン博士だった。
封印状態のまま彼に発見された俺は、なんとかケイン博士の解析によって封印から醒めた。
その時、なんらかの理由で記憶を失っていたけれど・・。
思えば・・その時記憶を失ったからこそ、今の俺がいるんだと思う。
百年前の宿敵・・ゼロもまた、「赤いイレギュラ-」として捕獲され、
ハンタ-への道をたどった。
そして出会った俺達は・・自分達の生い立ちも知らずに、無二の親友となり、
その絆の深さによって、何度も世界を危機から救った。
…皮肉な話しだ・・。

第八話

未だに頭がボンヤリとしている・・。
過去と現代の自分は統合された。
過去の「ROCKMAN」としての自分と、現代の「ロックマン・エックス」
そして「ロックマン・セイヴァ-」としての自分。
「ふん・・ようやく思い出したようだな・・。
ROCKMAN・・。」
老人は、ブンブンと頭を振る二人に向かって、口の端だけを上げる笑みを浮かべた。
そして、エックスよりも先に意識を覚醒させたセイアは、一瞬の驚愕を覚えた。
目の前にいる老人と、蘇ったばかりの記憶の中の人物の姿が一致したからだ。
「ま・・まさか・・まさか貴様は・・。
Dr.・・ワイリ-・・?」
呟くように問うと、老人は答える代わりに、再び口の端を上げた。
「ワイリ-・・!!」
バスタ-を老人・・いやワイリ-に向け、戦慄するエックス。
「何故だ・・?何故・・!!
お前は・・お前は生きてるはずなんか・・。」
当たり前だ。
Dr.ワイリーは百年前の人物。
しかも、その時点で既にかなりの高齢だったはず・・。
なのに・・何故?
ワイリ-は、無言で自分の脇のカプセルを指さした。
「・・・?」
目を細め、改めてカプセルの中身に視線を走らせる。
緑色の液体で満たされたカプセル。
浮かんでいるのは、脂ぎった豆腐のような物体・・。
見たことがある・・。
いつだっただろう?
必死に記憶の端っこを掘り返してみる。
「・・なっ・・まさか・・!」
「なに?なに・・兄さん。」
「まさか・・貴様・・!!」
右手で口元を覆う。
その顔色は、セイアから見ても明らかに青い。
「そうじゃ・・ワシの・・脳じゃよ。」
『!!?』
「貴様と相打ちになったゼロ・・あやつを修理していたときじゃ・・。
ようやく修理が終わり、あやつを起こした瞬間・・ワシはあやつに・・。
死ぬ寸前・・以前造っていた、医者型ロボットに、ワシの脳を摘出させたのじゃ。
もはや!ワシの目的は世界征服ではない!!
ROCKMAN!貴様に復讐することじゃ!!」
明らかにおかしい・・。
セイアはそう悟った。
自分がロックだった時も、彼は悪の心を持っていた。
しかし、それ以上に非常に人間らしい一面もあった。
確かにワイリ-の立場から見れば、自分達は憎むべき敵だろう。
しかし、その異常な執着心はどこから来るのだろう?
「ワイリ-・・いいだろう!!来い!相手になってやる!!
そして・・総ての闘いを終わりにしよう・・!!」
エックスは静かに、それでいて確かな口調で、己のバスタ-をワイリ-へ向けた。
ワイリ-は、不気味に笑うと共に、サッと片手を上げた。
それに反応し、ワイリ-の背後から、ドクロの装飾品をつけた戦闘機が、
壁を派手に破壊し、出現した。
ワイリ-は、元人間とは思えないほどの跳躍力でそれに乗り込んだ。
戦闘機は、そのドクロの両目を不気味に発光させた。
「ワイリ-・マシン・パ-フェクト・・覚悟しろエックス!セイア!」
ワイリ-が叫ぶと共に、ドクロの両目から、超出力のエネルギ-弾が、
一発・・二発・・三発。
「っ・・レイ・スプラッシャ-!!」
セイアは、直進してくるエネルギ-弾を、ジャンプで飛び越え、
当然のように追尾してきたそれを、黄金のマシンガンで相殺した。
そして、その間にファルコン・ア-マ-を転送したエックスが、
既にチャ-ジしていたバスタ-を、ワイリ-・マシン目掛けて、一気に放った。
「喰らえぇぇぇ!!」

第九話

針のように鋭く、素早いチャ-ジ・ショットは、ワイリ-・マシンの装甲を撃ち抜くことは無かった。
着弾する寸前、ワイリ-・マシンの展開したバリアが、いとも簡単にバスタ-を弾き返したからだ。
セイアが続けて、スト-ム・トルネ-ドを放ったが、やはり直撃する寸前、拡散し、消滅した。
「フハハハ!!貴様等のパワ-程度で、このバリアが破られるか!」
マシンの上部に搭載されているマイクから、勝ち誇ったようなワイリ-の声が響く。
「なら・・これはどうだ!」
エックスの白い鎧は蒼い光に包まれ、次の瞬間には、滑らかな外装の黒い鎧に姿を変えていた。
忍者の様な外見に、フェイス・マスク。
そして、今まで蛍光色だったゼット・セイバ-が、その出力を大幅に増し、
黄金の光剣へと姿を変えた。
エックスが地面を蹴った。
セイアには、その姿が掻き消えたように見えた。
「えっ?」
「なんじゃと!?」
「円月輪!!」
エックスが出現したのは、ワイリ-・マシンの上部。
エックスは、瞬間的に跳躍し、天井に張りついていたのだ。
降下様に、エックスが振り下ろした黄金の光剣は、
容赦無くワイリ-・マシンのバリアを斬り付けた。
破れてはいない。
しかし、ほんの刹那の間、ワイリ-・マシンのバリアはグニャリと歪んだ。
セイアはそこを見逃さなかった。
「いっけぇぇぇ!!」
バチバチとプラズマを帯びたエネルギ-弾が、
歪んだバリアを突き抜け、マシン本体に撃ち込まれた。
直撃。
しかし、装甲が厚いため、ダメ-ジの程は全くと言っていいほど無かった。
「ふん・・やりおるわ・・。これはどうじゃ!」
「なっ・・?冷たい・・。」
ワイリ-・マシンの放つ、確かな冷気を、セイアは察知していた。
ワイリ-・マシンの周りの空気が、瞬時に冷やされている。
学校の理科の時間で習った、水分が凍結する温度は、確か零度だったから・・。
いや・・今感じる、この冷気は、零度なんて生暖かい温度では無い。
「気をつけろ!来る・・!!」
エックスが叫んだ瞬間、待っていたかのように、ワイリ-・マシンを周りを、
大量の氷弾が取り囲んだ。
二人がそれを確認した瞬間には、それは既に放たれていた。
「うぉぉぉぉ!!」
エックスは円月輪。
セイアはプラズマチャ-ジ・ショットで、氷弾を消しにかかるが、
その余りの量に、相殺しきることが出来ず、数発の氷弾が、二人の身体に撃ち込まれた。
飛び散る鮮血すら、その氷弾によって凝結し、塊となって床に転げ落ちる。
そして、セイアとエックスのア-マ-の持つ熱によって、
一瞬にして氷弾は溶け、辺り一面を水蒸気が満たした。
これでは視界が悪い。
エックスもセイアも、大したダメ-ジは受けていないが、これでは敵の動きを捕えることが出来ない。
無論、ワイリ-・マシンに赤外線スコ-プなどが搭載されていることは、
セイアでさえ察しがついた。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぬっ!?」
突然の咆哮。
それと共に、満たされた蒸気が、少しずつ歪み始めた。
そして、次の瞬間蒸気が晴れた。
現れたのは、目一杯のエネルギ-をバスタ-に込めた、セイアの姿だった。
放たれたプラズマチャ-ジ・ショットは、正確極まりない射撃ではあった。
しかし、やはり直撃の寸前、先程のバリアに弾かれた。
「ハァ・・ハァ・・。」
「ゼロとエックスの力を合わせ持つ・・ロックマン・セイヴァ-。
ふん・・ROCKMAN特有の諦めの悪さじゃの。じゃがな!!」
次に放たれたのは、先程の氷弾から一変し、灼熱の炎弾だった。
色から察するに、第三次シグマ大戦時に、シグマが放っていた炎など、足元にも及ばない火力だ。
「セイア、伏せろ!」
直ぐ様セイアを伏せさせ、炎弾に向けてバスターを向ける。
エックスを包む鎧は、既に先程のシャド-・ア-マ-では無かった。
白を基調としたカラ-リングの、エックスが第三次シグマ大戦時に使用した、
通称サ-ド・ア-マ-。
以前、エックスが破棄した残骸を、エイリアとゲイトが解析し、
フォ-ス・ア-マ-同様、完全ではないにしろ、復活させたものだ。
「フロスト・シ-ルド!!」
放ったのは、絶対零度の氷によって作られた、氷のミサイル。

第十話

凄まじい回転を施したフロスト・シ-ルドと、灼熱の業火は、音を立てて空中で激突した。
最初は互角に思えた出力であったが、除々にフロスト・シ-ルドに亀裂が走り、
次の瞬間、砕け散ると共に蒸発してしまった。
「ショットガン・アイス!!」
勢いを緩めずに直進してくる炎弾に向け、避けきれないと判断したセイアは、
直ぐ様、氷の散弾で迎撃したが、
「なっ・・うぁぁぁ!」
何の障害もないとでも言うように、アッサリとショットガン・アイスを打ち消した炎弾は、
跳躍で回避しようとするセイアを尻目に、彼の身体をその灼熱の炎で包んだ。
「フロスト・タワ-!」
一方エックスは、炎に身体を包まれながらも、すぐに巨大な氷柱を発生させ、それを打ち消した。
「ハァ・・ハァ・・マグマ・・ブレ-ド!!」
ゼット・セイバ-を抜き、灼熱の刃を収束させる。
そして、持ち前の瞬発力で、瞬時にワイリ-・マシンの眼前に出現したエックス。
「無駄じゃと言うに!!」
ガチャリとマシンの一部に搭載されている、何かの射出機の様な機械が、向かってくるエックスに向けられた。
そして、一瞬の溜めの後、常識では考えられないほどの出力で、一本の巨大なレ-ザ-を放った。
「!?」
斬り付ける瞬間に、飛び上がっていたのが運の尽きだった。
空中では方向回避すらする事が出来ない。
いや・・もしこれが地上だとしても、この一瞬では、例えエックスでも回避できなかっただろう。
声を上げる暇もなく、エックスの身体は、緑色の閃光に包まれていた。
しかし、次の瞬間、閃光の中のエックスの姿が、瞬時にして掻き消えた。
「えっ?・・。」
エックスと同様、フロスト・タワ-で炎を打ち消したセイアは、突如として姿を消した兄に、
小さく声を上げた。
「なんじゃ!?」
「灯台下暗し・・ってね・・喰らえ!!」
強威力のバスタ-発射音が、セイアの耳を打った。
掻き消えた兄の姿を、軽く頭を振りつつ探索すると、エックスはワイリ-・マシンの丁度死角となる、
真下にバスタ-を上に向ける形で立っていた。
エックスは、レ-ザ-が放たれる直前に、ソウル・ボディによって創った自らの分身と、
密かに入れ替わっていたのだ。
放たれたバスタ-は、バリアの張られていない、無防備のワイリ-・マシンに直撃し、
先程、エックスに向けて放ったレ-ザ-の射出機を、モノの見事に粉砕してみせた。
「ぬぅ・・小癪な!」
スピ-カ-から響く、ワイリ-の声は怒気を孕んでいる。
次にマシンが放ったのは、バリバリと電撃を帯びたエネルギ-弾。
弾速が凄まじい。
「!?しまっ・・。」
「フルム-ンⅩ!!」
今まさに直撃しようとする電撃弾は、咄嗟に放たれたセイアのフルム-ンⅩが、
横に押し込む形で弾道を曲げてられていた。

第十一話

「Ⅹ・滅閃光!!」
間髪入れずに、エネルギ-を灯した己の拳を、思い切り地面に叩き付けたセイア。
次の瞬間には、ゼロの真・滅閃光を上回るほどの巨大なエネルギ-波が、
勢いよく、大破し地面の露出している床から噴出した。
当然、土煙が辺りに充満していく。
手応えがない。
恐らく、回避したか、バリアで防ぎきったか・・。
バスタ-のチャ-ジが完了したエックスは、自分とセイア目掛け、次々と放たれるワイリ-・マシンの攻撃を、
ゼット・セイバ-で撃ち落としつつ、蒼い閃光を帯びた銃口を、
目の前の土煙に向け、放った。
直撃はしなかった。
しかし、そのエネルギ-は、辺りの土煙を晴らすには充分すぎるほどだった。
「電刃Ⅹ!」
続けてセイアが、待っていたと言わんばかりに、エネルギ-を収束させたサ-ベルを、
思いきり左から右へかけて一閃し、蒼いエネルギ-波を放った。
放たれたそれは、回避しようとするワイリ-・マシンの右端の部分を、
まるで豆腐でも斬り裂くかのように、アッサリと切断してしまった。
「生意気な・・。」
ワイリ-・マシンの下部に搭載されている、巨大な銃口から、
ドス黒いエネルギ-弾が、次々と放たれた。
連続的に発射されたそれを、セイアは真月輪で撃ち落とし、
エックスはチャ-ジ版フロスト・シ-ルドで防ぎきった。
しかし、最後に放たれた特大のエネルギ-弾は、真月輪を粉砕し、
フロスト・シ-ルドを撃ち抜き、二人の身体を包んだ。
だが、次の瞬間、先程と同じように、エネルギ-弾の中の二人の姿は瞬時にして掻き消えた。
「ぬっ・・またか・・。」
「ソウル・ボディ・・そして旋墜斬!!」
「同じく・・ライジング・ファイア!!」
上空と足元。
既に二人は同時に入れ替わっていた。
セイアの滑空しながらの剣撃と、エックスの打ち上げる形の炎。
ワイリ-は、慌ててバリアを発生させるも、旋墜斬がバリアを歪ませ、
その歪みを突き抜けたライジング・ファイアが、ドクロの頭部部分に位置する、
バリア発生装置と思われる機器を、粉々に破壊した。
「なにぃぃぃぃ!?」
驚愕を帯びたワイリ-の声が響いた。
昔、何度も何度も聞いた、その声。
しかし、彼は今や人間ではない。
かといって、レプリロイド・・ロボットにすらなれていない。
セイアもエックスも、それが酷く悲しかった。
それでも・・撃たなければ・・。
セイアとエックス、二人はバスタ-の銃口をワイリ-・マシンに向け、
集中できるだけ、総ての力を注ぎ込んだ。
『これで最後だぁぁぁぁ!!』
「馬鹿なぁぁぁぁ!!」
次の瞬間、二人分の蒼い閃光が、放たれた凍結弾、炎弾、エネルギ-弾をものともせず、
完全にワイリ-・マシンを包み込んだ。

第十二話

「ハァ・・ハァ・・くっ・・。」
蛍光色のセイバ-を握りしめた紅い影。
巨大な斧を振りかざした紫色の影。
先程から、その二つの凄まじい攻防が、数十分に渡り繰り広げられていた。
しかし、総ての武装、ラ-ニング技を使用して立ち向かったゼロだったが、
戦況は未だに武装がバトル・アクスしか無い筈のシグマが有利だった。
「くっ・・うぉぉぉぉ!!」
荒い息を無理矢理に整え、ゼロは吠えた。
左手をバスタ-へ変形させ、目の前のシグマへ向けて、連続的に放つ。
シグマは、放たれたそれを、全て右手一本で掻き消し、
左手のアクスを振り下ろした。
リ-チは完全に届いていない。
しかし、アクスの振りが巻き起こした、エネルギ-の波、衝撃波と呼べるモノが、
ゼロのア-マ-を、バタ-の様にアッサリと斬り裂いてみせた。
「っ・・ぐぁぁ!!」
短い悲鳴を上げ、ゼロはその場に膝を突いた。
ア-マ-の胸部が、右肩から左腰にかけて斬り裂かれている。
余りの切れ味に、損傷はア-マ-を突き抜け、生身の身体にも及んでいる。
右手で傷口を抑えつつ、フラリと立ち上がるが、
闘いのダメ-ジと出血によって、意識が朦朧としてしまっている。
セイバ-を地面に突き刺し、左手のバスタ-を構える。
そして、エネルギ-を放とうとした瞬間。
ドン・・と鈍い衝撃が、ゼロの左手を走った。
左手のバスタ-が暴発したのだ。
当たり前だ。
この激戦の中、出力以上のエネルギ-を、何千発と放っているのだ。
その余りのエネルギ-環境に、例えゼロの身体とてついていくはずが無い。
「ぐぁっ・・くっ・・。」
カラァン・・と右手のセイバ-が滑り落ちた。
そして、代わりに、空いた右手で左腕を握りしめる。
シグマは、ゼロのその様子に、心底邪悪な笑みを浮かべ、
わざとゆっくりとした動作で歩み寄ってきた。
一思いにアクスで斬り裂けばいいモノを・・。
シグマは、それをせず、自身の拳でゼロを殴り飛ばし、倒れ込んだゼロを左足で踏みつけた。
既にダメ-ジが限界に達していたゼロのア-マ-に、
音を立てて亀裂が走る。
抵抗しようにも、もうシグマの足を振り払うことも不可能だ。

第十三話

---オレは・・オレは・・。
不意に意識が遠ざかっていく。
恐らく、次に気を失ったら、もう二度と目を覚まさないだろう・・とゼロは密かに確信していた。
---オレは・・何をしているのだろう・・?
一体自分は何のために生まれた?
それは・・ワイリ-が宿敵ROCKMANを破壊する。
それだけの為。
---一体オレに何が出来たんだ・・?・・アイリス・・。
記憶の片隅で頬笑む少女。
答えが返ってこないと判っていても、ゼロは自問し続ける。
---すまない・・アイリス・・オレは・・。
彼女との最後の時間が頭を過る。
彼女が絶命する寸前・・自分に呟いた言葉・・。
あれは・・一体何だったのだろう?
---オレは・・。

「オレ達レプリロイドは・・結局みんな・・イレギュラ-なのか!!?」
第四次シグマ大戦。後に「レプリフォ-ス大戦」と呼ばれる事件。
元凶のシグマを倒し、総監ジェネラルが命をかけて地球への攻撃を阻止したスペ-ス・コロニ-。
崩壊していくコロニ-の中から、なんとか脱出ポッドを見つけ出し、
地球へと帰る、冷たい宇宙空間で、ゼロは一人自問していた。
「なんで・・どうしてこうなっちまうんだよ!!?」
その問いに優しく答えてくれる者はもういない。
「結局・・誰も護れなかったんだ・・アイリス・・。」
数時間前、自らが葬った少女を想う。
---彼女が何をした?
ただ・・平和を望んでいただけ・・。
---なぜオレは殺すことしか出来なかったんだ・・?
あの娘がイレギュラ-だったから・・?
---そうか・・イレギュラ-なんだ・・。
そう言って納得させた。
誰でもない・・自分を・・。
---でも・・あの娘は誰も殺しちゃいないし、傷つけてもいない・・。
   オレに刃を向けただけ・・そうだろう?
彼女は最後・・なんて言ったのだろう・・?

---一緒に・・レプリロイドだけの世界で暮らしましょ・・?
そんなものは幻・・幻なんだ・・!
---ふふ・・そうよね・・でも・・信じたかった・・。
アイリ・・ス・・。
---ゼ・・ロ・・わた・・のぶ・・きて・・。

『ゼロ・・私と兄さんの分まで生きて・・』
それが、彼女の残した最後の言葉。
「あぁ・・約束するよアイリス。オレは・・。」
そっと呟き、ゼロは眼を閉じた。


第十四話

---アイリス・・すまない・・その約束は・・守れそうにない・・。だが・・。
グッと全身に強張らせる。
ギシギシと関節が悲鳴を上げるが、そんな事はどうでもよかった。
今は・・シグマを倒す・・それだけだった。
自分を踏みつけているシグマを、思いきり振り払い、
拾い上げたセイバ-で、連続的に斬り裂く。
シグマは、ゼロの突然の行動とダメ-ジによって、驚愕と悲鳴の声を上げた。
疾風を撃ち込み、シグマを後方へ押しやる。
---コイツだけは・・絶対に連れていく・・。大元はオレの責任だ・・。
不思議と身体中の激痛は無くっていた。
その代わりに、誰か暖かい腕に包まれているような、そんな感覚さえした。
---そしてオレ死んだら・・お前の所へ行って・・謝りに行くよ。
いつの間にか、ゼロの身体を、炎のような真紅のオ-ラが包んでいた。
それは覚醒を意味する。
しかし、それは前回の禍々しい赤紫色のオ-ラではない。
過去の破壊神としてのゼロと、現代の紅き闘神としてのゼロは、今統合された。
---すまない・・そして・・。
無言でセイバ-を頭上に掲げる。
蛍光色だったそれは、オ-ラに呼応するかのように、その色彩を真紅へと変えた。
そして、それに比例するかのように出力を増し、数秒後には天井に届いてしまうほどに巨大化していた。
途中、シグマのアクスが巻き起こした衝撃波が、ゼロを襲ったが、
その衝撃はゼロ本体に届く寸前に、真紅のオ-ラによって掻き消された。
それを見たシグマは、大きく目を見開いた。
そして、続けざまに走り込み、アクスを振りかぶった。
直接的にアクスを撃ち込むつもりなのだ。
しかし、その刃も同様に、オ-ラに触れた途端、粉々に砕け散った。
「幻夢・・零・・!!」
---ありがとう・・。
振りかぶったセイバ-を、大きく上から下へと振り下ろす。
そして、悔し紛れにシグマが張ったバリアを、無駄な抵抗とばかりに破壊し、
なんとか防ごうとするシグマ本体を、いとも簡単に真っ二つにした。
「消えろ・・シグマ!!」
セイバ-を横に放り捨て、右手をバスタ-に変形させる。
そして、二つに別れたシグマの身体に、容赦無くバスタ-を浴びせ掛けた。
轟音と共に、シグマの身体が完全に消滅してしまっても、ゼロはバスタ-を撃つのを止めなかった。

---判った・・お前が望むなら・・アイリス。
   オレはこの世と言う地獄の中を、這い蹲ってでも生きてやる。
   だが・・オレ自身が・・お前の望んだ平和の障害になってしまような事があれば・・。
   オレは・・。

静かにオ-ラが消え去った。
右手を素手に戻し、放り捨てたセイバ-を拾い上げる。
激戦の中で、メットの消失してしまった、金の髪を、軽く両手で上げ直した。
ゼロはこの時、ある決意を胸に抱いていた。



次回予告
ついにワイリ-を倒した!・・かのように思えたけど・・。
奴の怨念はこんな程度じゃ終わらなかった。
僕達は決着をつける・・百年前からの因縁に。
そして必ず帰るよ・・フレッドの・・クリスの・・みんなの所へ!
次回「ロックマンXセイヴァ-改定版最終章~別離・・そして・・~」
「お前が・・お前が全部悪いんだぁぁ!!」
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