ロクノベ小説保管庫 ロックマンコードⅡ 第伍章~輝き~

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ロックマンコードⅡ 第伍章~輝き~

 私がいるから・・・あなたは傷ついてしまう

それは違う・・!

 今だって・・私がいなければ・・あなたは・・・

違う!違うんだっ!僕は・・!

 そうやっていつも・・自分の身を犠牲にするんだね

違う!俺は君がいるから闘ってるんじゃないんだっ!

 ・・来ないで・・もう・・

俺は!俺が闘うのは!!

 ・・お願い・・だからっ・・

俺が闘うのは・・俺が闘う理由・・それは・・・

君が・・・・

君が俺の諦めない理由だからっ!!


第一話

 頬を掠めた光の線。
そんなモノを気にも留めずに。ロックマン・コードは振り向きざまに、それを放ったトーチカを撃ち抜いた。
 蒼色の光弾を受けたトーチカは、その場で爆裂し、その機能を失う。
周りを見ると、それと同じ運命を辿ったメカニロイド、そして設置型砲台の姿が、一面に広がっていた。
 一つ息をついて、コードはそっと背後の壁に背を預けた。
 つつっと額から汗が滑り落ちてくる。
その量は、ここ-月基地に突入してからまだ一時間だというのに、今までに無かった程の量のメカニロイドと激突したのを、
一目で語ってくれる程だった。
 軽くメットを両手で挟んで、脱ぐ。
メットの中に詰め込まれていた蒼の髪がばさりと露出した。その輝きは、汗の所為だろうか。いつもよりも美しく映った。
「・・・」
 メットを両手で抱える形のまま、コードはしばし焦点の合わない瞳で、ボーッと自らのヘルメットを見詰めた。
 少し、疲れた。今までにあれ程の量のメカニロイドと対戦した事は無かったし、
何より、この戦いが始まってから、色々な事柄が、息付く暇もなく訪れた所為だろう。
 ふと、脳裏を掠めたモノ。
それは、いつも自分に向けてくれていた、少女の笑顔。
「・・・ヒカル」
 ここに来た理由は、二つ。
一つは、勿論ここでフェルマータ達との決着を付けて、地球を護るため。
 もう一つは、そう、フェルマータの生体ユニットとして奪われてしまった彼女を奪還する事だ。
 その二つの為に自分は今、ここにいる。
いや、もしかしたら、前者はただの立て前だったのかもしれない。
 確かに自分は地球を護るためにここにいる。
仲間のことが好きだ。人々やレプリロイドの事を護りたいし、地球の逆襲の際に、自然の緑を護りたいとも思った。
 しかし、本当にそれだけの為に自分はこんな所まで来たのか。
否。もっともっと大切なモノを護るためにここにいる。
 それは、地球だとか、自然だとかでは無くて-。
「・・!」
 無意識にボーッとしていた意識を、コードは慌てて覚醒させた。
 身体を起こして、辺りを見回す。敵の姿は無い。さっき、一体残らず撃破したからだ。
 情けないな-コードは自らの露出した額を、コツンと片手の拳で小突いた。
敵地の中でボーッとするなんて、今どきC級の新兵だって、命取りになる行為だと判っているのに。
 コードは、ぶんぶんと首を振ってから、手の中のヘルメットを深く被り直した。
ブラスト・アーマーを装備している時のヘルメットは、いつものスッキリとしたデザインの蒼色ではなく、
少しばかり突起物の増えた白色をしている。
 しっかりとヘルメットが固定された事を確認して、コードは「よしっ」と誰に云うでも無く呟いた。
「後少し」
 根拠は無かった。しかし、なんだかそんな気がした。
 すぐ近くにフェルマータがいる。
すぐ近くに、ヒカルがいる。
 後少しで、彼女の所まで届く。
 不思議とそんな感覚を疑うつもりにはならなかった。
根拠だとか理論だとか、今はもうそんな事、どうでもいい。
 待ってて-コードは、心の中で小さく呟いた後、ゆっくりとその場を歩み出した。
 先程とは打って変わって静寂に包まれている廊下。
無駄に長い造りになっているのに、もうメカニロイドの大群等は襲ってこなかった。
 ただ、床とアーマーのブーツがぶつかる音だけが、その中で唯一音を感じることの出来るコードの耳に、飛び込んでくる。
 暫く歩く。不意に視覚に侵入したのは、Fの刻印が刻まれた大きめの扉。
さっきまでのご丁寧な自動式では無い。軽く押しても、全くその扉は開こうとはしてくれなかった。
 自分の手で破れって事か-コードは、片手をバスターの状態へ移行させると、その銃口をピタリと正面に向けた。
 一瞬のチャージの後、放たれた閃光は、真っ直ぐに飛翔していき、
軌道上の扉を、まるで氷でも溶かすかのように蒸発させた。
 閃光が完全に扉を破ったのを見届けてから、コードはゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた。
 首は動かさない。視線だけで部屋の全貌を見渡す。
何も無い、殺風景な部屋だ。ただし云えるのは、馬鹿に広い。
 ここなら、どの特殊武器を使っても問題は無いだろう。
相手にとっても、思い切り暴れられる丁度良い部屋だ。
 次に発見したのは、向かい側の壁にペイントされた『Welcome』の文字。
コードはそれを見て、まるで暴走族の悪戯書きみたいだな-と、心の隅で呟いた。
「ようこそ」
 不意に響いた声。いつの間にか、向かい側の壁を背に、銀色の男性型レプリロイドが、片手でビーム・ダガーを弄んでいた。
 コードは、視線を注ぐ方向を変えないままに、少し目付きを鋭くした。
現れる度に厄介なモノをプレゼントしてくれる奴の名を、いつもより低く押し殺した声で云う。
「ミュート」
「パーティー会場へはもう少し。よく頑張ったな」
 そう云いながら、ミュートは可笑しそうに喉で笑った。
 あくまでフェルマータの云う『パーティー』とやらを演じようと云うのか。
「ロックマン・コードよ。パーティーに参加する為のチケットは用意してあるか?」
「チケット・・・」
「そう、チケット。そのチケットとは」
 ミュートは、掌の中で弄んでいたダガーをパシッと握ると、
そこから高出力のエネルギー・ソードを発生させた。
 腰からももう一本、同じ物を取り出して、同じように展開する。
もう既にお馴染みになってしまったかもしれない。ミュートの二刀流ダガーだ。
「ここで私を撃破する事だ」
「俺は・・!」
 ザッと足を開き、背中のバックパックに収納してあるオルティーガを、勢いよく抜き放つ。
 キッとミュートの瞳を睨み付け、同時にオルティーガの柄に蒼色の光剣を収束させた。
 負けるわけには、いかない!-
「何がなんでもここを通るっ!!」
「その意気だよコード。しかしこの間の様に上手く行くとは思うなよ」
 コードとミュートの刃が激突したのは、ミュートが含み笑いと共に放った台詞がコードの耳に届いた、
僅か0.三秒後だった。

第二話

 ロックマン・カイトとロックマン・フラットは、まるで海のように押し寄せてくる大量の敵メカニロイドの大群を、
あくまで無表情で見詰めていた。
 メカニロイド達が動き出したのは、コードが月へと飛び立ってから数時間後の事だった。
 カイト達宛に届いた二通目のメールの中に、
コードがパーティーへ参加すると同時に、催しも開始する-と書かれていた。
 余興好きだな-そう思ったのはカイトもフラットも一緒だった。
「ようやく開演か」
「ったく待ちわびたぜ」
 べきりと両手を鳴らしつつ云うフラットに、カイトは場違いに微笑しつつ、云った。
 ゆっくりと屈伸をし、その後首を左右に動かす。
コードとの対戦によって受けたダメージが完全に回復していないのか、筋を伸ばした際に、小さな鈍痛が全身を駆け巡った。
 だが、カイトもフラットもそんな痛みを、顔にすら出さずに、
同時におのおののの光剣を構えた。
 ぴたっとお互いの背に背を合わせる。視界の中に入るのは、もはや敵、敵、敵、敵の海だ。
「でっ?どう思う」
「うん?何が」
「コードが決めるまでここを護りきる覚悟はあるか?」
 珍しくそんな事を聞いてくるフラット。
いつもなら、「当たり前だろう」で済ませてしまう筈なのに。
 やはり少なからず不安なのだろうか-カイトは、フラットのそんな面に小さくクスリと笑った後、
自信タップリに返した。
「フラットはねぇのか?」
「さぁな」
「俺は、あるぜ。少なくともさ」
「へぇ」
 グングンと迫ってくるメカニロイド達。
もう会話をしていられる時間も長く無いだろう。
 二人は、チラリと横目で自分達が属する組織、ネオ・イレギュラー・ハンターのベースを掠めた。
中では、きっと必死に自分達をサポートしようと、数多くの隊員がてんてこ舞いだ。
「・・・やれるだろうか」
 夕方になって、薄らとそのフォルムを見せ始めた、頭上の月。
あそこでは今、自分達の兄弟が、最後の闘いへと臨もうとしている。
「・・・やるさ。アイツなら」
「だな」
 信じている-その言葉は、二人ともとうとう発さなかった。
だが、もはや云う必要も無かった。
 カイトもフラットも、ハンターベースで自分達を見守るブリエスも、ルビウスも、イリスも、
そして数多くの隊員も、彼の事を信じて疑わない。
 一年前、絶望的と云われた闘いにたった一人で臨み、見事にやり遂げた彼を。
いつも誰かの為に戦って、いつも別の隊員達を気遣ってくる彼を。
笑っている者がいれば一緒に笑って、泣いている者がいれば、一緒に泣いて、慰めてくれる、彼を。
 そんな誰よりも強い、そして、誰よりも脆い彼を、皆信じていた。
「さて・・」
 紅い光を銃口に灯したフラットは、チャキっとその銃口を、眼前で二人に銃口を向けるメカニロイド達に向けた。
 カイトも同じように、フラットとは丁度反対側のメカニロイド達に、紺色の光が宿るバスターを向けた。
「ド派手な催しの始まりだ」
「あぁっ!存分に弾けようぜフラット!」
「行くぞっ!へばるなよカイト!」
「そっちこそっ!!」
 紅と紺の閃光は同時に放たれた。
 それは、たった一発で軌道上のメカニロイド達を大量に蒸発させていく。
しかし、その撃破数とは裏腹に、見た目的に敵の数は全く減っていない。
 熱りが冷めるよりも早く、大量のエネルギーがカイトとフラットに殺到していく。
 二人は、それを体術で避けつつ、エレクトリック・アートで躱しきれない分を相殺した。
ルビウスに限界までエネルギーを注入してもらった特殊武器。
 バスターにかかる負担さえ無視すれば、それは常識の範囲での使用料なら、ほぼ無限に放てると云っても過言では無かった。
最も、二人ともそれを信じきっているわけでは無いが。
「はぁぁぁ!!」
 メカニロイドの大群の中に跳躍で侵入し、片っ端からアルティーヴで微塵に斬り裂いていく。
 次々と爆裂していく、心を持たない機械達。
しかし、幾ら剣を振るっても、その数は一向に減ろうとはしなかった。
 再び自分目掛けて集中放火されたエネルギーの雨を、カイトはソニック・アーマーの機動力を活かし、
空中へと跳び上がることで躱した。
 対角線上のメカニロイドは、味方が放ったエネルギー弾を受けて、虚しくも破壊されていく。
だが、そんなものは気休め程度にもなりはしない。
 カイトは、ブラスト・レーザーに出力を変えると、
空中から足元のメカニロイド達目掛けて、それを一斉に掃射した。
 通常のバスターを連射するよりも、こちらの方が射程・威力共に上だ。
「雑魚は幾ら集まっても雑魚だ。消えろ」
 タップリとエネルギーを集中させたバスターの閃光を、目の前に向かって大きく解放する。
 クラッシュ・アーマーの影響で大幅に威力を増した極太の閃光は、
轟音を響かせながら、メカニロイド達を飲み込んでいく。
 しかし、煙の中から生き残ったメカニロイド達が放ったエネルギー弾が大量に戻ってきて、
フラットは小さくぎりりと歯軋りをした。
「こりゃ思った以上に楽しめそうだな」
 フラットは、エレクトリック・アートの壁を通して見える、未だにその数を減らないメカニロイド達に、
皮肉混じりにそう呟いた。

第三話

 横薙ぎのダガーをオルティーガで受け止め、
時間差で上から振り下ろされたもう一本は、咄嗟にミュートの胴にバスターを打ち込む事で躱す。
 一瞬怯み、後退したミュートのダガーを素早く振りほどき、
同時に地面を蹴り、擦れ違いざまにオルティーガを一閃する。
 入った。完全に隙が出来ていたミュートの胴に、オルティーガの刃はざっくりと斬り込まれた。
 しかし、コードはその勢いを止めずに、そのまま反対側の壁まで走り込むと、
ガンっと壁を蹴って、その反動を利用して、スピードを保ったまま再びミュートの懐へと飛び込んだ。
 オルティーガによる二撃目。
だが、目の前の強敵が、二度もクリーンヒットを許してくれる筈も無かった。
「また腕を上げたな」
「っ・・・!」
 二本のダガーにガッチリと受け止められた。
 思い切り押し込んでも、腕力がほぼ同等なのか、全く刃は進んでくれない。
しかし押し負けるわけにもいかない。
 コードは、思い切り地面に足を踏ん張りながら、オルティーガの柄に込める力を、更に込めた。
 今の一瞬に斬り込んだオルティーガの傷。それは、既に無くなっていた。
今更驚くことでも無い。フェルマータの細胞とやらを植え付けられて得た、異常な自己再生能力。
 それは心無しか、前に対戦したときよりも、回復の速度が増しているような気がした。
「しかし強くなったのは君だけでは無い」
「・・・くっ・・・!」
「私も更に力を付けたのだ!」
 ブンッと二本のダガーを強引に薙ぎ払われて、コードの身体は宙に浮いた。
 そのまま後方の壁まで吹き飛ばされて、慌てて体制を立て直し、着壁する。
だが、コードが三角蹴りで反転するよりも前に、ミュートは既に着壁したコードの間合に飛び込んできていた。
「っ!」
 慌ててバスターを連射するが、それは直撃と同時に回復されてしまって意味が無い。
 突き出されたダガー。コードが身を捩ると、それはコードの肩アーマーを、大きく削り取っていった。
生身にまで刃が掠められた痛みに、コードは小さく呻きつつ、そのまま無理矢理に三角蹴りを実行し、
ミュートへと身体ごと激突した。
 勢いに身を任せ、ミュートと共に床に落下する。
「うぉぉぉぉっ!」
 床に激突する際、落下のスピードを利用して、フレイム・ストライクをミュートの胴へと叩き込む。
 抉り込むようにして放った拳は、灯された焔の威力も手伝って、ギリギリとミュートの腹部に減り込んでいく。
コードは、そのままもう片方の腕でミュートの顔面に肘打ちを叩き込み、
腹部に突き刺さっている拳で、一気に連撃を畳みかけた。
 ミュートの俗に言う美しい顔に、紅を通りすぎて蒼色に燃え盛る焔の拳を連続的に叩き込んでいく。
要は回復し切る前に押し切ってしまえばいい事だ。
 全身くまなく拳を浴びせれば、流石のナノマシンも破壊される、筈だ。
「くっ!」
 ガシっと手首を掴まれた。
それと同時にコードの攻めがピタリと止んだ。
 ぎりっと、その異常な握力に、手首が悲鳴を上げる。
次に攻撃を受ける羽目になったのは、そんな激痛に顔を顰めるコードの方だった。
 投げ技で床に叩き付けられて、コードがしたのと同じように、胴に深々とミュートの拳が減り込んだ。
「かはっ!?」
 コードが噎せ返る暇もなく、ミュートのダガーが、コードの左胸目掛けて垂直に振り下ろされる。
だが、それは寸前でコードが全身をコートしたエレクトリック・アートによって、ギリギリで阻まれた。
「上手いな」
 コードは、押さえ込まれた体制そのままに、チャージしたバスターを爆裂させた。
 至近距離に接近していたのだ。その余波は少なからず自分にも還ってくる。
だが、そんな物はもはや承知の上だった。
 抑えが緩んだミュートに、アッパー・カットの形で拳を叩き込んで後退させ、
自身も起き上がると共にバック転で間合を取り直した。
 アレだけ瞬時に高速戦闘をしたと云うのに、意外にも息はそんなに切れてはいなかった。
ただ、それとは別のもう一つ焦りがある。
 この勝負、早めに決めなければならない。
こんな所で無駄なエネルギーとダメージを食うわけには、いかない。
 フェルマータとの直接対決に備えて、なるべくベストの状態でいなければならないと云うのに。
このミュートと云う敵は本当に厄介な所で出てきてくれるな-コードはわざと表情に出して苦笑した。
「驚いたな。前に闘った時とはまるで反応が別人じゃないか」
「負けるわけにはいかないんだ・・!」
「しかしその力の入りすぎている肩は相変わらずだな。ロックマン・コード」
 そう云ってる間にも、ミュートに叩き込んだダメージの跡が消えていく。
 コードは、表情の傍らで歯軋りをしつつも、
ミュートに斬り込む隙が見つけられないでいた。
 それ程にミュートの構えには隙が無い。
最初の一瞬に攻撃を打ち込むことが出来たのが疑わしいくらいに。
「だがその戦闘力の高さと根性は評価に値するぞ。本当の所、一撃で君を倒せるものだと思っていた」
「そんな簡単に負けて溜まるか」
「いい目だな。この前に闘った時よりも更に」
 キッと瞳を凝視してくるミュートの瞳。コードは、それを精一杯の威圧感で睨み返す。
 ミュートの口元に薄らとした嫌らしい笑みは崩れない。
こうしていると、まるで精神面で負けているようだ。

第四話

「君は何を目的にここまで来た?」
 不意に問いかけられて、コードは少し驚いた様に瞬きを数回。
「何のために来た、と聞いている」
「それは・・・!」
 一瞬だけ見えたミュートの小さな隙。
 その本当に小さな隙から、コードは見逃さなかった。
 バスターを連射しながら突撃して、オルティーガを薙ぐ。
が、ミュートが真後ろに小さく跳躍した為、ミュートの装甲の端っこを、剣の先っぽが削るだけに終わった。
「護る!それだけの為だっ!!」
「なら君は何故そこまでして護ろうとする。一体何を何のために護ろうと云うのだ」
 瞬間的にチャージし、放ったバスター。
 その蒼い閃光が貫いたミュートは、僅かコンマ何秒前のモノだった。
 不意に頭を伏せると、その一瞬前にコードの頭が存在していた位置を、
ミュートのダガーが鋭く斬り裂いた。
 慌てて地面に掌を突き、それを軸にミュートの顎に打ち上げ蹴りを打ち込む!
「皆の事を失いたくない!今の平和を壊したくなんか無いんだっ!!」
 そのままクルリと空中で一回転してから、再び地面を蹴ってミュートの間合まで飛び込む。
 拳を放った時、ミュートがそれを受け止めようと掌を広げてきたが、それも強引に押し切った。
「ぬっ!」
「はぁぁぁ!!」
 ガリガリと両足が床を掻くミュート。
 彼の武器はダガーだけだ。
本当に接近戦専門の武器だけで、あれ程の戦闘力を誇るミュートに改めて感心しながらも、気付いたことは一つ。
彼の場合、瞬発力と反応速度が異常に高いために気付かなかったが、実はダガーの射程は極端に短い。
 だから、今のようにコードが放ったチャージ・ショットの様に、遠距離からの攻撃を放つことが出来ない。
一度間合を外してしまえば、後は彼が瞬時に懐に飛び込んでくるのを注意しながら、バスターを中心に組み立てていけばいい。
「ほぉ・・・」
 身体の左半分を完全に削り取っていったバスターの威力と、コードの狙いの正確さに、ミュートは小さく嘆息を漏らした。
 直ぐ様傷の表面がヌチャヌチャと蠕動し、傷を修復していく。
だが、それは一閃による斬り傷だとか、バスターの連射で受けた小さな傷とは比べ物にならない規模だったものだから、
その治りは極端に遅い。
 小さな傷なら瞬時に回復出来るようだ。しかし、四肢が消滅する様なダメージを治すのは、多少遅い。
強化された回復力は、どうやら小規模のダメージを回復する側に回された様だ。
この前粉微塵にした時よりも更に治りが遅い左半身が、それを物語っている。
「次は外さないっ!!」
 未だにもたもたとしているミュートにバスターの照準を合わせて、コードは叫ぶように云った。
 もう、コイツ相手に殺さずは通用しない。
コイツとの決着が付くとき。それは、ミュートが完全に消滅するか、或いは自分が死んだとき。それだけだ。
 コイツは幾らダメージを与えても回復させてしまう。だから、戦闘不能にして戦闘を途中放棄する事なんて出来やしない。
恐らくミュートは、死ぬまで回復し続け、自分に襲いかかってくるだろう。
 それに、もう自分は迷わないと決めたのだ。
あの時、あの最後の拠点を潰しに向かったとき、自分の迷いから、沢山の人を死なせてしまう結果になってしまった。
全て、アンデライトの裏側を読むことが出来なかった自分の責任だ。
 あれの二の舞はもうゴメンだ。本当にもう誰も死なせたくは無い。
 あの時、響が云っていた言葉が脳裏を掠めた。『お前の想いが通じない相手だっている』。
確かに、そうかもしれない。
自分が護るために闘うのに躍起になっている様に、相手には相手の信念がある。
自分がその考えを曲げないように、相手だって曲げられない何かがあるのだろう。
 自分は自分が殺してしまった人々の想いを背負ってここにいるんだ。
「ようやく吹っ切れたか。ロックマン・コードよ」

第五話

 バスターの銃口内に納まりきらなくなった閃光は、更にその規模を高め続ける。
 バチバチとスパークを始めても、尚膨張を続けるエネルギー。
ミュートに完全に止めを刺すのには、まだあともう少し、チャージを続ける必要がある。
 ミュートの左半身がもう少しで全快してしまう事は判りきっている。
だが、ここで焦ってバスターを放って、また回復を余地を残してしまい、エネルギーを無駄遣いする事は避けなくてはならない。
「そうだ。それでいい。今君は全力で私を倒すと決意している」
 完全に左半身が回復しきったミュートは、何度か左手の指を曲げ伸ばししつつ、笑みすら浮かべてそう云った。
 重いバスターの感覚に耐えながら、コードは肩眉を上げる。
目の前で再びダガーを構えるミュートの姿は、一瞬だけイメージとは違う者の様に見えた。
 今の一言で、彼に対するイメージが変わったかもしれない。
 前の彼のイメージ。それは、フェルマータと云う敵の総大将にかなり-いや最も近いと思われる位置にいる強敵で、
彼に対して、異常とも思える忠誠を誓っている。
そして、彼の命令とあらば、どんな事でも出来てしまう。それが例え、非戦闘員の、しかも少女に手を出す事だって。
 その為には手段を選ばないし、それの邪魔をしようと云う者は誰であろうと殺す。
それが、コードの中でのミュートのイメージだった。
 だが、今のイメージはなんとなく違う。
確かにフェルマータに対する忠誠は変わらないモノだし、ヒカルに手を出したと云う事実は変わらない。
 けれど、その他にもう一つ、純粋な戦士としての一面が見えた気がした。
「俺はフェルマータと闘わなくちゃならないんだ!」
「少し前の君とは大違いだな」
 今度、攻めに入ったのはミュートの方だ。
 さっきのバスターによって、一本になってしまったダガーを携えて、ミュートは大きく地面を蹴った。
 大型ビーム・セイバーのオルティーガに較べ、圧倒的に小回りの利くビーム・ダガーは、
右手をバスターの状態にしたままのコードにとっては、今更ながらの強敵だった。
 高出力のオルティーガの剣撃は、幾ら早いと云っても、実力が同等なら、ダガーの方が素早いに決まっている。
受け止めるのが間に合わなくなって、ミュートの薙いだダガーが、左肩から右の脇腹にかけて、ザックリと斬り込まれた。
「くっ・・!!」
 バスターを向けても、それを放つ前にミュートは照準から外れてしまう。
 傷口から駆け巡る激痛を無理矢理に噛み殺しながら、コードは再びミュートが薙いだダガーを、真横に側転する事で躱した。
 二度、三度、側転してから起き上がり、素早く起き上がって、今度はバック転。
そしてまた側転。その次は前転。
 幾ら避けても、ミュートの攻撃はしつこく追ってくる。
それをギリギリで躱す度に、コードの鎧には細かな斬り傷が増えていく。
「どうした。さっきまでの威勢はどこにいった!」
「・・っ!ミュートっ!!」
 オルティーガを思い切り斬り上げて、ミュートのダガーを強引に弾く。
 そして自らもオルティーガの柄を横に放る。
刃が展開したままのオルティーガは、そのままぐさりと傷だらけの壁に突き刺さった。
 丸腰と化したミュートの胴に深々とブロウを叩き込み、片手のラッシュに進展させる。
「はぁぁぁっ!!」
 拳による肉弾戦では、圧倒的にコードの方が上だった。
 ミュートが苦し紛れに放った拳を、掌底で受け止めて、
素早くそれを受け流し、今度は膝蹴りを叩き込む。
「ぐっ・・」
 小さく呻いて、ミュートはヨロリと体制を崩した。
 バスターを放つチャンスだ!
これを逃せば、また延々とした消耗戦に発展して、またエネルギーと体力を無駄遣いしてしまう。
決めるなら今しか無い。
「ミュート!!」
 思い切り蹴りを叩き込み、ミュートをバスターの間合にまで後退させる。
 コードは気付いていないが、ミュートの体力は落ちてはいなかった。
無限に再生を続けるミュートは、コードとは違い、戦闘を続けるごとに体力を消耗するなんて事は無い。
 寧ろ、実力が同等ならば、消耗する分コードの方が不利な筈だ。
だが、戦闘開始当時と較べ、戦況は完全に逆転した。
「これがロックマン・コードの、いや、君の力か・・・松浦 輝・・」
 コードの向けた蒼い閃光を灯した銃口に視線がぶつかった瞬間、ミュートは最後にそう呟いた。
 次の瞬間、部屋全体に蒼い光が散らばった。

第六話

 荒れてしまった街並みの中、彼は走っていた。
 向かうのは、今さっき耳に届いたばかりの悲鳴が発されたと思われる方向。
 角を素早く曲がる。
視界の中に飛び込んできたのは、彼よりも三回りは巨大な戦闘用メカニロイドと、
その標的にされ、動きを硬直させた茶色の髪をした少女。
 考えるよりも早く身体が動いていた。
足元に転がっている手頃な石を引っ掴んで、全力で目の前のメカニロイドへと投げつける。
勿論こんなものなどでアレにダメージを与えれるとは思っていない。
投げつけた事の本当の意味は、奴のターゲットを少女から自分へと変える為だ。
 何かを叫んだような気がしたが、もうその台詞が何だったのかは思い出せない。
 メカニロイドは、装備していた巨大なハンマーを彼目掛けて投げかけた。
だが彼は、それを寸での所で躱しきると、大きく跳躍し、メカニロイドの頭部に装備されているバルカンの銃口を、
全力の蹴りでひん曲げて、それを自滅に追い込んだ。
 発射口を失ったバルカンを発射した影響で怯んだメカニロイド。
彼は、思い切り拳を握りしめると、それに回転による瞬発的な破壊力を上乗せして、
その分厚い装甲を一気にストレート・パンチで貫いた。
 至近距離で爆発を始めるメカニロイド。
その爆風にあの少女が巻き込まれぬように、彼は素早く拳を引き抜き、近くの少女をそっと抱き上げ、跳躍した。
 数m先で着地し、ゆっくりと少女を地面に降ろす。
 その瞬間、彼と少女の視線がぶつかった。
深い翠色の瞳だった。とても純粋で、綺麗なモノを感じる、優しい雰囲気。
 その時跳ねた心臓の感覚だけは、今になっても忘れられない。
 思えば、彼が今ここに立っている理由。
それは、その時のほんのささいな出逢いの所為だったのかもしれない。

「ようこそ。お早いお着きでしたね。ロックマン・コード」
 部屋の入口で、真っ直ぐにこっちを見詰めてくる純白の鎧の少年に、ニコッと笑みを浮かべつつ、
彼は嫌になるほど丁寧な拍手を彼に捧げた。
 コードの瞳は、ただ一点、彼-フェルマータの真紅の瞳を捉えている。
その眼差しから感じられる想いは一つ。この闘いに勝利すると云う決意だけだ。
 フェルマータは、そんな眼差しに口の端を歪めた。
「フェルマータ」
 ザッと両足を軽く開いて、バックパックに納めてあるオルティーガの柄にそって手をかける。
 それと同時に、軽く目だけで部屋全体を見渡す。
ミュートとの戦闘があった部屋と大差無い。
違う箇所を挙げるとすれば、この部屋には随分と飾り気があると云うことだ。
 無駄に美しさを強調したような模様が所々にペイントされている部屋。
これから形振り構わない戦闘が繰り広げられる場所だとは、到底思えない。
「ヒカルはどこだ」
 ゆっくりとした動作でオルティーガを引き抜く。
その柄から発生した蒼い刃は、心無しか、いつもよりも更に輝いて見えた。
 フェルマータは、コードが完全に戦闘意識を露にするのを待っていたかのように、
今まで腰掛けていた、西洋風の古風な椅子から、そっと立ち上がった。
「随分と到着が早かったですからね。まだ彼女は生体ユニットとして取り込まれてはいませんよ。
 ただ、既に取り込まれる寸前ですが、ね」
 わざとコードを挑発する様に、フェルマータは口元に指を当てて、クスリと笑った。
 コードは、その台詞に眉間に小さな皺を寄せる。時間が無い-。
「ヒカルを返せ!」
「そう云って返して貰えると思っているのですか?」
「・・っ」
「どっちにしろ貴方が彼女の元へ辿り着くには、道はこれ一つしかありませんよ」
 ドンっと、さっきの椅子が粉々に吹き飛んで、その後から、この部屋の入口だったモノと同じ扉が顔を見せた。
 アレが最後の扉、だ。あの扉の先に、ヒカルがいる。
そして、自分がアレを通る為には-。
「つまり、貴方が彼女と再会する為には、この私を倒さなくてはならないと云うことですよ」
「俺は・・!」
 ギリッとオルティーガの柄が小さく軋んだ。
 そんな自分の愛剣に小さく視線を向ける。
あちこちに傷が出来ていた。何度も何度も修復した跡が所々に目立つ。
 一年前の地球の逆襲以前からの自分の愛剣。
いつも、同じ闘いを切り抜けてきた。
 云うなれば、この剣も大切な仲間、相棒だ。
 恐らくこれが最後の闘いになる。だから、もう少しだけ一緒に頑張ろう-コードは、意味が無いと理解しつつも、
心の中でそっと、オルティーガに語りかけた。
「俺は、みんなを・・ヒカルを護るためにここまで来たんだっ!!」
「・・覚悟はいいですか?」
「お前を、倒すっ!!」
 コードがそう叫んだ瞬間、不意に三つの光が彼の周囲を取り囲んだ。

第七話

「あっ・・」
 フヨフヨと自分の周りを浮遊する、三つの光の球体。
蒼と、紅と、もう一つは水色。
 それは、本当に少しの間だけコードの周りを見回すように飛翔した後、
不意に彼の目の前で、その姿を人型へと変えた。
 蒼い鎧を着た少年。紅い鎧を携えた青年。自分にそっくりな顔をした、薄蒼色の髪をした少年。
 コードは、驚いたように、ゆっくりと彼等の名、一つ一つを呟いた。
「エックスさん、ゼロさん、セイアさん」
《よくここまで来たね。コード》
 蒼い少年-エックスの半透明の笑顔が、やんわりとした声色で云った。
《最終決戦って奴だ。気合を入れろよ?》
《君なら出来る!信じてる!》
 ゼロに続いたのは、セイアだった。
 三人は、未だに驚愕したままのコードに、フッと小さく笑みを向ける。
 不意に、エックスが半透明の片手を差し出してきた。
それに続いて、その掌の上にゼロの掌が重なる。
最後に、ニコッと頬笑んだセイアが、その二つの掌よりも一回り小さな掌を、更に重ねた。
「皆・・・」
 何かにつられる様に、コードもそっと掌を差し出す。
 三つの掌の上にコードの掌が重なった瞬間、三人は再び三つの光球へと姿を変えた。
 ゆっくりと空を流れるように、三つの光球はコードを取り囲んでいく。
それは次第に、クルクルと、少しずつ、少しずつ彼の周りを回転していった。
《頑張るんだよ》
《諦めるな》
《大丈夫だから》
 その三つの声がコードの耳に響いた瞬間、カッと辺り一面が光に埋め尽くされた。
「ほぉ・・」
 その余りの光量に、思わず掌で目を庇いつつ、フェルマータは小さく嘆息を漏らした。
面白い-そんな呟きが、自然と彼の口から漏れた。
 ゆっくりと止んでいく光。その中心に、あの少年は立っていた。
 透き通るような純粋な蒼色をした鎧だった。
キラキラと光を照り返す姿には、もはや美しいと云う言葉すら通用しないだろう。
 ゆっくりと彼は目を開けた。
そこに宿る光は、先程よりも更に輝きを増していた。
「ヴィクトリー・アーマーか。一年前、フラットとの決着の際に発現させた」
 フェルマータは、意味深に呟いたつもりだった。だが、コードは片眉すら上げることは無かった。
ただ、理解した。一年前に地球の逆襲を引き起こした張本人が誰なのか-を。
フラットに感染したと云われているウィルスは、とうとう出所が不明のまま調査が終了したらしい。
その出所が、今はっきりと判った。
「勝負だフェルマータ!」
「面白い。貴方は果たして、その鎧の名の通りヴィクトリー《勝利》を掴めますか?」
「勝って・・みせるっ!いや必ず勝つっ!!」
「いいでしょう。お手並み拝見と行きましょうか・・Rの力を持つ者よっ!」
 決戦の火蓋は切って落とされた。
 フェルマータが最後に放った台詞を境に、二人の姿がほぼ同時にその場から掻き消えた。
 一瞬の静寂。だが、そんなものは本当の一瞬でしか無かった。
 不意に響いた轟音。その原因は、部屋の中心で激突した二人の光剣だった。
「・・・っ!」
 フェルマータがいつ剣を抜いたのかは判らなかった。
いや、正確には、いつ剣を『創り出した』のか。
 だが、押し合いだけに着目すれば、ほぼ腕力は同等。
コードは、すぐにオルティーガを引き、同時に真後ろへと跳んだ。
 足がまだ床に着かないウチに、エネルギーで膨張したオルティーガを一気に振り下ろす!
空斬撃だ。

第八話

 空斬撃の巨大なエネルギー弾は、フェルマータの眼前で大きく四散し、
そのエネルギーを雨のように振り注がせた。
が、それが射止めたフェルマータの姿に、既にその本体は存在していなかった。
「っ!?」
 バッと顔を上げて、コードは思わず声を上げた。
 数百発を超えるだろうエネルギー弾が、空中に残留しているのが見えた。
その数々は、コードがそれに気付いた瞬間に、一気に彼一人へと殺到した。
「くっそっ!」
 もう一撃空斬撃を放ち、飛び込んでくるエネルギーを相殺させていく。
しかし、いかんせん空斬撃はモーションが大きすぎた。
エネルギー弾の一発を諸に受け止めて、コードはそのまま後方の壁にまで持っていかれた。
しかし、すぐに壁を蹴っての三角蹴りを使用して、間髪入れずに追い打ちをかけてくるエネルギーの雨を跳び越える。
 着地するとすぐに地面を蹴って、右へ左へジグザグにエネルギー弾の合間を潜り抜ける!
「はぁぁぁ!!」
 目指すは部屋の端っこで、掌からエネルギー弾を連射し続けるフェルマータ本体だ。
 側転で身を躱し、立ち上がるよりも前に飛び込んでくるモノはオルティーガで弾く。
そして、大きく跳躍し、思い切り握り締めたオルティーガを、思い切りフェルマータ本体へと-
 カッ。
 コードがオルティーガをフェルマータに一閃する瞬間、彼が直接、コードの胴へと掌のエネルギー弾を押し付けた。
「っ!?」
 ピタリとフェルマータの連射が止んだ。
 フェルマータがエネルギー弾を叩き付けたコードの姿が不意に消え去ったと同時に、
彼が背後から強烈な衝撃を受け取ったからだ。
 惑影撃か-フェルマータは追い打ちとして放たれたコードの拳をガッシリと受け止めつつ、小さくニヤリと笑った。
 コードのもう片方の拳は、フェルマータのもう片方の掌に受け止められた。
だが、コードは勢いを止めようとはしなかった。
 両腕を使用した拳のラッシュ。まるでマシンガンの様に放たれるコードの拳を、
フェルマータは全て両掌で受け止めていく。
 ガンガンと耳を裂くような音を響かせる、コードの拳のラッシュは一向に止まる気配を見せなかった。
その余りの摩擦に、辺りに火花が散っていく。
「早いな」
「うぉりゃぁっ!」
 グッと一際大きく拳を引いて、焔を灯すと共に一気に叩き込む。
 ダメージとまではいかなかった。
だが、一気にフェルマータとの間合を外すことが出来た。
 コードは、すぐに片手をバスターへと変型させると、
さっきまでとは比べ物にならない程の連射力を持った、バスターの豪雨を降らせた。
 フェルマータは、小さくクスリと笑うと、そっと降り注ぐ光弾に対して掌を翳した。
ぬちゃりと不気味な音がすると共に、彼の掌全体に、盾のような装甲が創り出された。
 コードの予想を遙かに上回るそれは、高音を響かせながら、
コードの放った蒼の光弾を、あらぬ方向へと弾き返していった。
「それでお終いですか?」
 瞬時にフェルマータの姿が、至近距離まで移動した。
コードが惑影撃を仕掛けるよりも前に、フェルマータの掌の中で形勢されたビーム・ソードの刃が、胴を大きく薙いだ。
 ヴィクトリー・アーマーの装甲をも貫いた刃は、そのままコードの生身の身体を掠める。
しかし、傷口から鮮血が飛び散るのを感じながらも、コードは怯まなかった。
「舐めんっ・・」
 ガシッとそのままフェルマータの頭部を引っ掴み、思い切り膝蹴りを顔面に叩き込む!
 そして、素早くウォーター・サイクロンに出力を切り替えて、
オルティーガやフレイム・ストライクでは届かず、
かと云ってバスターやブラスト・レーザーを放つには近すぎる距離から、連続で三発。
「なぁぁぁっ!!」
 直撃、直撃、弾かれた。
 そのお釣りとして払われた代金は、高出力のエネルギー弾が一発。
コードはそれを、エレクトリック・アートの盾で真横へと受け流した。
 軽く床を蹴って、間合を開く。
フェルマータが追撃してくる様子は無い。今の一瞬だけは、荒んだ息を整える事に専念することにした。
「驚きましたよ。予想以上の実力ですね」
 ウォーター・サイクロンを打ち込んだ部分が、ミュートのそれと同じように修復されたのを目の当たりにして、
コードは小さく舌打ちをした。
 ヴィクトリー・アーマーを装備していても互角に闘うのが精一杯のフェルマータを相手に、
果たしてさっきと同じように上手く行くだろうか。
「・・猫を被るのもそこまでにしたらどうだ」
 キッと目付きを鋭くして、コードはわざと低く潰した声で言い放った。
 フェルマータは、少し予想外の発言をされたのに驚いたのか、「ほぉ」と小さく声を漏らした後、
口元に、先程とは比べ物にならない程邪悪な笑みを浮かべた。
「成る程。見抜いていたか」
 今までの丁寧な口調とは、一気に百八十度転換した。
 それに伴って威圧感を増した声に、コードは更に睨みを強めた。
 ようやく本性を現したな-今までの闘いの中、何度もフェルマータの不自然さを感じていた。
そう、何か出来のいい演技でも演じているかのような、なんとなく程度の違和感。
 やばいな-コードは、一気に威圧感を増したフェルマータの存在感を肌で感じながら、心の隅でポツリと一言。
ヴィクトリー・アーマーとほぼ互角。そんな計算は間違いだ。
 コードがそれを改めて感じたのは、彼はすぐ真後ろの壁に叩き付けられて、
その蒼色の髪から真っ赤な鮮血を垂らし始めた後だった。

第九話

 あたふたと騒がしい指令室。
その中でただ一人立ち止まっていたのは、イリスだった。
 ジッと巨大なスクリーンに映し出された映像を凝視する。
画面の中では、蒼い髪の少年と紅い髪の青年が圧倒的な数を持つ敵メカニロイドと、
いつ果てるともわからない闘いを繰り広げている。
 周りの隊員達は、それをなんとかサポートしようと躍起になっているし、
出撃出来る者はベースの防衛だけでもしようと、次々と指令室を飛び出していく。
「みんな」
 きゅっと拳を握り締めて、イリスは呟いた。
 自分は果たして彼等に何をしてやれるのだろう。
ベースを護るためにひたすら闘い続ける海と響に。
総大将との最終決戦の為に月へと向かった輝に。
「無理だ」
 不意に聞えたのは、ぼそりと呟いた一人の隊員の呻きだった。
完全に絶望した様に両手で頭を抱えて、出てくる台詞は既に諦めを許容してしまった者の言葉のみ。
 イリスは、それにピクリと反応して、素早くその隊員の方へと振り返った。
通信回線を担当している隊員だ。だが、既に彼は自分の役割などとうに忘れてしまっただろう。
「幾らあの二人でも、あれだけの数を相手に勝てるわけが無い!オレ達はここで死ぬんだよっ!」
「ふざけないでっ!!」
 ゆっくりと歩み寄ったイリスは、ガッと隊員の胸ぐらを掴むと、彼の顔を思い切り引き寄せた。
イリスに怒鳴り付けられた隊員は、少しの間呆然と目を見開いていたが、
すぐにまたその絶望的な声を上げ始めた。
「無理なんだよ所詮!もうお終いなんだよ何もかも!」
 誰も口には出さなかった台詞-本当は指令室にいる誰もが思っていた事だった。
 あの圧倒的多数に対して、こちらは弱体化した隊員達と、ロックマンが二人。
その中でも真面に闘えるのは、本当に海と響の二人だけの様なものだ。
 ネオ・イレギュラー・ハンター総勢で闘ったとしても、所詮は無駄な足掻きに過ぎない。
頼みの綱であるコード-輝も、この組織内で最強の戦士だとは言え、
前回のミュートとの闘いで、海、響との三人掛かりでも辛勝利がやっとだったと言う先入観がある。
 果たして、今のベース内で真に彼等を信じている者達が何人存在しているのだろう。
「最初から諦めてちゃアンタはそれでお終いよ!」
 パァンと乾いた音が、隊員の頬を張った。
 イリスは信じていた。彼等のことを。
海と響が必ずベースを護り抜いてくれると。
そして、輝が必ずフェルマータを倒して、帰ってきてくれると。
 一年前のあの時。イリスもまた目の前の隊員の様に絶望していた。
ジーロン弾発射までの猶予はあと数日。そんな中で、誰も輝がフラットを倒すことが出来るとは思ってもいなかった。
 モニターに中継された輝とフラットとの闘いを見て、十人の内何人が「勝てるはずが無い」と呟いたことか。
 イリスも同じだった。勝てるはずが無いと思っていた。
ジーロン弾で地球の生命をまるごと全滅させられてしまうものだと思っていた。
 しかし、結果は違っていた。
彼は、輝は勝ったのだ。勝てるはずも無いと云われた闘いの中で。
 だから今度も、必ず彼等は勝ってくれると信じている-。
「どきなさい!」
 どんっと通信機器の前に棒立ちしている隊員を押し退けて、イリスは通信機のスイッチを入れた。
 回線はオープン。繋げられる場所全てに繋いだ状態だ。
 ハンターベースの回線は全世界のあらゆる機器に繋がっている。
多くの場所から瞬時に情報を得られるように。一般の民家からでもイレギュラー発生の報せを受けることが出来るように-だ。
「皆さん・・」
 スッと小さな深呼吸の後、イリスはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
 命令無視の行動に、他の隊員がイリスを取り抑えようとしたが、
それらの行動は全て、ブリエスの視線によって制された。
「やらせてやれ」
 彼もまた信じていた。輝の事を。海の事を。響の事を。
 輝が生まれた頃から、ずっと彼の事を見ていたし、彼等がどれだけ頑張っているのか、一番近くで見ていた自信がある。
何より自分はこの組織の総司令官なのだ。
自分が彼等のことを信じないで、どうして他の隊員が信じることが出来よう。
「皆さん。全世界の皆さん。聞えますか?ネオ・イレギュラー・ハンターです」
 横目でブリエスの微笑を受け取りつつ、イリスは小さく笑ってから、そう続けた。

第十話

「聞いてください。今、あなた方の希望は、私達を護るために懸命に闘ってくれています」
 イリスが一言一言を発していく内に、指令室の中はしんと静まり返っていった。
 イリスは、緊張で声の調子が崩れないように注意しながら、
ゆっくりと、そして確かに自らの言葉をマイクへとぶつけていく。
「二人は皆さんの住む地球を護るために。そして、一人は最後の闘いへと臨んでいます」
 モニターの中のカイトとフラットの勢いは、多少だが失せ始めていた。
 もう何百体のメカニロイドを斬ったか判らない程に、足元には機械の残骸が散乱している。
数百発、数千発のエネルギーを放った銃口は、少しの亀裂が走り、焼け爛れている。
休みなく振り回し続けているビーム・セイバーも、既に柄の部分が所々欠けてしまっていて、今にも砕けてしまいそうだ。
「辛い闘いです。既に、彼等が戦闘を開始してから数時間が経過しています」
 そんな彼等の様子を横目で確認しつつも、イリスは言葉を休めなかった。
 自分が彼等にしてやれる事。
それは、そうただ一つ-信じる事。
「でも皆さん!どうか信じて下さい!」
 背中合わせの海と響。
 肩アーマーとヘルメットが吹き飛んでいて、端から見れば既に充分戦闘不能状態だ。
それでも、彼等は笑っていた。
その笑みに、諦めや挫折、疑いと云う言葉は全く無い。
 寧ろ、止めどなく押し寄せてくる敵メカニロイド達に、今に見ていろとでも云っているようだ。
 今に見ていろ。今に、お前達の総大将を俺達の希望が倒してくれる-彼等もまた、信じているのだとイリスは悟った。
 諦めない自分自身を信じてる。隣で共に剣を握っている仲間を信じてる。
そして、遠い場所でたった一人、最も辛い闘いに身を置く彼を信じてる。
「信じてください。彼等のことを。私達が信じなくて、誰が彼等を信じて上げられますか?
 彼等は勝ちます!必ず!だから・・・!!」


「だから信じてください!!」


 イリスの叫びが、指令室全体に木霊した。
 何度かの反響。
イリスが次に紡ぐ言葉を見失った為に、指令室は静寂に包み込まれた。
 だが、効果は確実にあったのかもしれない。
指令室内、果てやベース内全体の隊員たちの瞳に光が戻り始めた。
 少しずつ、賑わいが戻り始めた。
口々に放つのは、先程までとは打って変わった台詞の数々。
それぞれ言葉は違ったが、それが意味するものはただ一つ。
 信じてる-。
「ネオ・イレギュラー・ハンター総監のブリエス・ノヴァ。突然のオール通信の非礼を深くお詫びいたします」
 いつの間にかイリスの隣に立っていたブリエスは、そっとマイクを片手で抑えると、
繋ぎっぱなしの回線に向かって、ゆっくりと語りかけ始めた。
 イリスは、パチパチと瞬きを数回した後、嬉しそうに表情の緊張を解いた。
今までの不安が、総監であるブリエスが参加してくれた事で、一気に吹き飛んだ。
「今申し上げた通り、皆様の知る三人のロックマンは今、最後の闘いへと身を投じています」
 再び指令室が静寂へと還った。
 そんな適度の緊張感の中、淡々とマイクに飲み込まれていくブリエスの声だけが小さく木霊する。
「残念ながら、我々では彼等に手を貸してやる事すら難しいのです。
 しかし、だからと云って諦める必要は何も無い筈です」
「総監・・」
「彼等は我々を、この地球を護るため、必死に闘っているのです。
 力無い我々は何もする事が出来ないとお思いかもしれませんが、それは間違いです。
 我々に出来る事・・・それは、先程も申し上げた通り、信じることです」
 ブリエスは、一旦言葉を切った。
 そして、一呼吸を置いてから、また、そして最後の一言を呟いた。
「そう、信じることです」

第十一話

 正面から降り注いだ、高出力のエネルギー弾。
 一発目をオルティーガで横に流し、二発目をエレクトリック・アートの盾で-弾けなかった。
エネルギー切れだ。フェルマータとの戦闘が開始してから、常に何かの武装を放ち続けた結果だろう。
「ぐぁっ!」
 そのまま諸にエネルギー弾を胴に受けて、コードは強烈な衝撃と共に背後の壁に叩き付けられた。
そして、コードが体制を立て直すよりも前に、瞬時に目の前に移動してきたフェルマータが、
ガシッとコードの露出した蒼の髪を引っ掴んだ。
「っ・・!」
 至近距離で頭部に叩き込まれようとした膝蹴り。
コードはそれを、ギリギリ掌で受け止めた。
 そのままギリッと音が立つほどに握力を込め、同時にフレイム・ストライクを装填し、
強引にフェルマータの膝を押し返す。
 一瞬の隙が出来た所に、間髪入れずに至近距離からのウォーター・サイクロンを叩き込んで、
フェルマータを後退させた。
「ほぉ・・」
 ガリガリと数歩分、両足で地面を掻いたフェルマータは、
掌に残っている、数本の蒼い毛髪を床に払いながら、小さく嘆息を漏らした。
 コードは、ゆっくりと立ち上がった。
 今の攻撃で、フレイム・ストライクとウォーター・サイクロンのエネルギーが尽きた。
空斬撃も惑影撃も岩崩破も使いきってしまったし、ブラスト・レーザーも早い段階で役目を終えた。
 ヴィクトリー・アーマーも所々が砕けていて、既にその透き通る蒼の輝きは、無い。
破壊された肩アーマー等から、下地の蒼い鎧が顔を見せていて、それ自体もかなりの破損率を誇っている。
 片手を伝って、ポタポタと鮮血が床を濡らす。
もう片方の腕でその傷を抑えるが、一向に出血が止まってくれる気配は無かった。
「不屈の根性は流石だな」
「くっそっ・・」
 嘲笑するように、見下ろすように囁くフェルマータに、コードはギリッと歯軋りをした。
余りにも強く歯軋りをした為、口の端からつーっと鮮血が垂れてくる。
「だが、君が私に勝つことなど不可能だ」
 コードは、傷を抑えつける腕の力を、更に込めた。
 少しだけ、気持ち程度、出血の勢いが弱くなってきたような気がした。
「幾ら頑張った所で、この差は埋められない」
 半立ちだった姿勢を、ゆっくりとゆっくりと立て直す。
 グッと両の拳を握り締め、キッとフェルマータを睨む。
フェルマータは、そんなコードの仕草すら無意味だと嘲笑を寄越しながら、更に続けた。
「俺は・・」
「さぁ・・どうする?ロックマン」
 ボッと高出力のエネルギー弾を掌の上に発生させつつ、
フェルマータはニヤリと笑った。
 今のコードにそのエネルギー弾を防ぐ手だては無いし、
直撃させれば、ガラクタ同然のヴィクトリー・アーマーなんて、盾にすらなってくれはしない。
 だが、コードはそんなフェルマータの瞳を静かに見詰めつつ、ゆっくりと、云った。
「ロックマンはもう死んだんだ・・」
「ほぉ・・?」
 コードが放った台詞が、余りにも予想外だったのか、
フェルマータは初めて驚いたような仕草を見せた。
 コードは、完全に直立の体制まで身体を立て直した。
「ロックマン・コードは、あの時アンデライトに殺されたんだ!」
「ならここに立っている君は何者だ。君がロックマンで無いのなら、何故ここにいる?」
「俺はロックマン・コードじゃないっ!!松浦 輝なんだっ!
 俺は松浦 輝として皆を・・ヒカルを助けるためにここまで来たっ!!」
「ふっ、そういう事か」
 ボッと、フェルマータの掌に浮かぶエネルギー弾が、更にその数を増やした。
それはまるでフェルマータを取り囲むように、次々と発生していく。
 コードは、「くっ・・」と小さく呻いた。
確かに、躱す手だては何も無い。武器ももう宛には-。
「ではマツウラアキラよ。君がロックマン・コードだろうがマツウラアキラだろうが、私には関係の無いことだ。
 どっちにしろ君を消せば、地球は墜ちる」
 どうすればいい-心の中で叫ぶ。
 負けたくは無い。ここで負ければ、地球で残って闘っている海達はどうなる-。
そして何よりも、この先で自分を待っている人は-。
「俺は・・!俺はっ・・!!」
《諦めないでコード》
 不意に目の前に水色の光球が現れ、人型を象った。
 思わず「あっ・・」と口をぽかんと開く。
そんなコードを余所に、セイアはニッコリと、変わらない優しい笑顔を向けてくれた。
《君は諦めちゃ駄目なんだよ》
「セイアさん・・」
《ねぇコード・・》
 そっと、セイアは両手の腕を広げた。
そして優しく、その半透明な身体で血だらけのコードの体躯を抱き締める。
 触れられた感覚は、無かった。
けれど、それ以上、暖かかった。
《聞える?みんなの声が》
「あっ・・・・」
 聞えてきた。身体の内側から。
 平和を切望する人々の声。
自分達を信じてやまない、人々の声。
頑張れ、負けるなと叫び続けてくれている、彼-飛鳥と同じくらいの年齢だろう、子供達の声。
《みんな君のことを応援してる。みんな君が勝ってくれると信じてるんだ》

第十二話

 少しずつ、身体が熱くなってきた。
 痛いとか、苦しいとか、そんな感覚がどんどんと和らいでくる。
代わりに溢れてくるのは、暖かな力。全身を包んでくれるような、優しい何か。
 薄ぼんやりとしか聞えなかった『声』が、今はハッキリと聞える。
海、響、ブリエスにイリス。Dr.ルビウス。
そして、今まで街で出逢ったことのある人々。顔は判らなくとも、自分を応援してくれる人々の、『声』。
「みんな・・・」
《コード。君なら出来る。君なら、出来るんだ。自分を信じて》
「・・セイアさん・・俺は・・」
《きっと、あの娘も君の事、待ってるよ》
 コードは再び全身に力を込めた。
 ニコッと頬笑んだセイアは、コードを抱き締める姿勢のまま、すーっと陽炎の様に消え去っていく。
 その先に見えたのは、エネルギー弾で全身を包んでいるも同様の、フェルマータの姿。
「下らない幻想に縋っているのか?死ぬがいい!!」
 エネルギー弾のスコールが、一気にコード目掛けて降り注いでくる。
 コードは、それを前にしながらも、グッと瞳を前に向け、拳を握り締めた。
《負けないで!ロックマン!!》
 エネルギー弾が直撃する寸前に聞えた声。
それは、間違いなく、あの時失った筈の彼の声だった。
だが、今の一瞬ではもう、彼の名前は思い出せなかった。
 カッ。
 一気に部屋全体がホワイトアウトした。
 どんどん視界を塗りつぶしていく、破壊的なエネルギーの光を見ながら、
フェルマータはその邪悪な笑みを口元いっぱいに広げる。
 だが、フェルマータのそんな笑みは、数秒後に一瞬にして崩れ去った。
「なにぃっ・・!?」
 煙が一気に晴れた。
 ぼっこりと抉られた床。その中心に、少年は依然として立っていた。
 先程までガラクタも同然だった鎧は、再び元の輝きを取り戻し、その形状を更に鋭利な物へと変えている。
こちらに向けられているバスターの銃口に宿るのは、蒼色の光。
 それはエネルギーだとか、弾丸だとか、そんな次元の物では無い。
それは、そう、『想い』の形。
「負けて溜まるか・・!負けて溜まるか!負けて溜まるかぁぁぁ!!」
 叫びを上げるコード。
バスターの銃口に収束するエネルギーは、どんどんとその規模を高めていく。
「馬鹿な・・勝利の神・・だと・・!?」
 フェルマータは、そんなコードの姿に、思わずそんな事を呟いた。
 勝利の鎧を身に纏う彼に、新たに『神』が力を与えた。
馬鹿馬鹿しいが、そんな言葉が良く似合う光景だった。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ぬぅっ!!」
 フェルマータが再び投げかけたエネルギー弾の雨など、
コードが爆裂させた蒼い閃光の前には、全く意味を成さなかった。
 次々とエネルギー弾を飲み込んでいく閃光は、避けようとするフェルマータの行動さえ許してはくれない。
 途中、更にその規模を高めた蒼の閃光は、そのまま容赦無くフェルマータの全身を包み込んでいった。
 もはや、フェルマータの叫びを外界に漏らすことすら、それは断固として許さない。
ようやく光が晴れた頃、残っていたのは、さっきまでの戦闘で完全に荒れてしまった部屋の景色だけだった。
あれ程巨大な閃光が残した傷は、驚くほど、何も無かった。
「・・・」
 ゆっくりと腕を降ろす。
その拍子に、全身の鎧に亀裂が走り、乾いた音を立てて砕け散った。
 透き通る蒼い鎧の下から、いつも着慣れているシンプルなアーマーが顔を見せる。
 コードは、無言で振り返った。
目線の先には、最後の扉。それを、軽くバスターを放って強引に開く。
 地面を蹴る。全身の痛みはもう無い。
少しずつスピードを上げて、扉の先へと飛び込む。
 ここに来た理由。そして、最も護るべき者の名を叫びながら-。
「ヒカルーーーっ!!」


次回予告

遂にフェルマータを撃破した。
これでヒカルの所へ届く。これで・・・。
だけど・・この闘いにはそんな簡単な結末は用意されて無かった。
・・最深部に辿り着いた僕の前に、この世で一番厄介な敵が現れた・・・。
次回 ロックマンコードⅡ最終章~護りたいから~
「・・俺は・・・君が・・・・・・・」