ロクノベ小説保管庫 輪廻-ただ友のために 1章

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       ・・・一つの野望は朽ちた。

       ・・・だが、人の欲はとどまることを知らない。

       ・・・その野望を引き継ぎ、新たな王となろう者が居る。

       ・・・だが、当たり前の事なのだ。

       ・・・人というのはそういう生き物なのだから・・・。


   永遠と広がる大海の中に一つ、ぽつんと小さく自己主張をしている島があった。
   その名は『クルブ島』。知られてはいないが全世界の存続を賭けた闘いの舞台だった島である。
   何も無い無人島であった島が今では島中を覆い尽くすほどの瓦礫で一杯になっている。
   その上に、誰かが立っていた・・・いや、果たしてそれは人と呼べるのだろうか?
   形は確かに成人した女性の姿である。数種の色の布を巻きつけたような服に、腰まで届く髪。
   どこから見ても美しい女性の様に見える。・・ジェルのような物体で無ければ・・。
   薄い水色をしたその身体は向こう側の景色をゆがめ、その身体の中には一際紅い
   ボールのような物体が波うち、身体中に細かな振動を伝えて行っている。
  「・・思ったより回復しないわね~。やっぱり第一コアを壊されたのは痛手だったかしら。」
   外見上口と見える箇所からソプラノに近い声を出す物体。どうもしっくりこないのか溜息を漏らす。
  「まったく、あの子も困ったもんね。途中で心を乱さなきゃ勝てたかもしれないのに。
   ホントだらしない!私の計画がパアじゃない!・・でも、彼が相手じゃ仕方ないっか。」
   物体の口から思っても見ないほど軽い言葉が出てくる。やがて物体は何やら閃いたのか指を鳴らす。
  「あ!あそこなら最適だわ♪替えのコアもあるし、何より仕返し用のとっておきがあるわ♪
   『前システム』復活のためにも彼をかわいがってあげなきゃ。ん~ったっのしみ~~!!」
   とはしゃぎながら物体が口笛を吹く。すると何処からともなく鳥に似たリーバードが飛来する。
   それにのって物体はどこかへと飛び去っていった・・・・・
   全てが暗闇に覆われたそんな日のいちにちであった・・・・
   


   それから、しばらく経ったある日、 ある古代遺跡の中。

                 この物語の始まりの場所にて・・・・・


  「・・・ここが最後の部屋?・・・誰も居ないし、反応もない・・・。どうして?」
   ある遺跡の最深部・・・俗に言うラスボスの部屋に紅いアーマーをつけた少女が立っていた。
   彼女の名は『ロール・キャスケット』。これでもS級のディグアウターなのである。
   彼女はパートナーと一緒にディグアウトをしにきたのだが、途中で別れ、調べ回っているうちに
   この部屋を発見。好奇心に身を任せて、パートナーにも知らせずに入ってしまったのだ。
   そして、現れるであろうボスを先に倒し、パートナーに誉めてもらおうとかも考えている。
   だが、肝心のボスが居ないのでショットガン型のバスターを降ろし、ぼ~っとしているわけである。
  「・・・・時間の無駄だわ・・・戻ろう・・・。」
   痺れが切れたロールが扉へ向かったその時!!突然辺りが禍禍しい気配に包まれる!そして・・

               ガァーーーーーーーーーーン!!!!

   ロールの位置に寸分違わず突き刺さる大鎌!激しく舞い散る土砂がその破壊力を物語る。
   襲い掛かって来たのは『ハンムルドール』のようだ。姿形は別物であったが・・・。
   象徴ともいえる巨大な腕が鋭利な鎌へと変わっており、脚も蜘蛛のように鋭く細い。
   丸々としたボディが一変し、細身で刺々しい攻撃的なボディに変化している。
   例えるとするなら、『遺跡の番人』が『凶悪な暗殺鬼』となったと言うべきか。
   やがて土埃も収まり、『暗殺鬼』は貫いたはずのモノを確認するために、エモノを掲げてみた。
   真っ赤に染まり、美しくきらめく腕を見るのを心待ちにしつつ、ゆっくりと・・・。
   
   
  『暗殺鬼』は呆然となった。いつもなら掲げた腕には何物にも勝る芸術品があるのに・・。
   自分に至上の時を与えてくれる素晴らしい腕がそこにあった筈なのに・・・・。
   だが、その腕はいくら高く掲げても見えてこない。怪しげに光る刃すらない・・。
  『暗殺鬼』は認めざるをえなかった。腕が砕かれ、消滅している事を・・・。

  「・・・ツツッ・・・ちょっと気付くのが遅すぎたみたい。」
  『暗殺鬼』が少し離れた位置に居る生意気な獲物を見つめる。どうやら、此方の攻撃も当たった様だ。
   獲物の足が少々だが切り傷を負ってるのを確認する。だが・・・・

   自分が受けた傷に比べるとあまりに小さな傷であった。

  『暗殺鬼』には許せなかった。自分の腕を失った代償があの程度の傷であったことに!
   自分に至福の時を与える腕を破壊し!自分を絶望の渦に叩きこんでおきながらも!

           まだのうのうと息をしている下等な存在が!! 

   次の瞬間。『暗殺鬼』は走っていた。あまりにも幼稚で単純な感情の暴走は彼に『疾さ』を与えた。
   何者をも上回るであろう速さで『暗殺鬼』は獲物の背後を取り、まだ残っている腕を振り上げる!
  「し、しまった!!」
   獲物が叫ぶがもう遅い。彼の腕は憎しみに後押しされ、首めがけ振り下ろした!!

                  ガ キ ン ! !

   ・・・手応えはあった。だが、彼の腕は獲物の首を捕らえてはいなかった。
   彼と獲物の間に突如現れた蒼い光によって黒い凶器は止められていたのだから・・・
   その蒼き光源には、一人の少年が居るのを彼のアイレンズが捉える。
   蒼き鎧をまとい、細い腕で自分の全体重を込めた一撃を易々と受け止める、そんな少年の姿が・・・。
   
  

   眼の前の現象は何なのであろうか?自分から見てごまつぶの様な存在は何をしているのか?
   速度、パワー、タイミング、技能。どれをとっても完璧な一撃だった。渾身の一撃だったのだ。
   それを・・受け止められた?しかも、自分がが迫り負けを?
   受け止められた後少年の異常な腕力で吹っ飛ばされた身体を起こしつつ、『暗殺鬼』は混乱する。
   そんなこちらがわを無視するかのように先程の少年は獲物の手を取り、怪我の具合を診ているようだ。
   
               ナメられている!

   自分の向かって背を向け、獲物と談笑を交わすほど奴は格が上ということなのか?
   いや違う!!自分より強い者など居る筈が無い!!まぐれに決まっている!!
   
   今度こそはこの腕に二体の美しい芸術品を作ってみせる!!

  『暗殺鬼』が雄叫びを上げながら少年に向かって突っ込んで行った!
   自尊心、破壊願望、そして狂気。それらを結集した黒き力が欲望のみを糧に増大していく!
   巨大な負の一撃が、あまりにゆったりと構えを取り出した少年を捕らえ、両断する!・・はずだった。

                 ガ シ ュ !!!!
   
  『暗殺鬼』は自分の身体に稲妻のような衝撃が走るのを感じた。はたしてその箇所を見ると案の定・・
   既に身体の下半身は上半身を離れ、遥か後ろに転がっていた。そして・・・・・

                ボフン!!!

   先程まで、自分の巨体を支えていた脚が粉微塵に吹っ飛んだ。爆発?違う、アレはそんな物ではない。
  「・・すまないけど滅させてもらった。君はごく最近の間とはいえ、許されない事をした。」
   少年が語りかけてくる。そんな少年に向かって『暗殺鬼』は恨みを込めて睨み返す。
   だが、少年を見た瞬間。『暗殺鬼』は生まれて初めて恐怖という感情に襲われた。
  「一等粛清官『ロックマン・トリッガー』の名において、君の権利と存在を抹消する。」
   少年の声が聞こえるが『暗殺鬼』には聞こえない。先の蒼き光は?この姿は?これが正体なのか?
   次第に現れてきた死へのカウントダウン。遂に亀裂が身体全体に及んだが、彼は思考を止めない。
  「・・ごめんね。来世では君にとって実りある物である事を祈っているよ。」
   少年の言葉は優しい。だが、この姿はなんなのだ?!このおそろしい・・・

                 ボウン!!!!
   
   遂に彼の身体は粉末と化してしまった。彼の恐怖に満ちた叫びは少年にとどくことなく。
   
           <血のように紅き眼と紅刃の剣を持った姿。>

   最後の彼の言葉が舞い散る粉塵とともに部屋の中に舞い散り、そして消え去った・・・。


   ボスの居なくなった部屋の真中に今小さな墓が作られていた。今消えた『暗殺鬼』の墓だ。
   それの前にて手を合わせるのは先ほど彼を粉砕した少年である。
   彼の名は『ロック・ヴォルナット』。カトルオックス島を初め数々の遺跡をクリアし、
   全世界の危機を二度も救った史上最強のディグアウターである。ライセンスはSS級である。
   現在マザー『セラ』の指示により、『古き神々』の遺跡の暴走を止める任務を行っている。
   この遺跡は古代とは全く関係ないのだが、ある異変によりロックが調査に当たっているのだ。
  「ロック~~~!またあったわよ~~このチップ~~!」
   ロールが粉末と化した『暗殺鬼』の成れの果てから一枚の黒いチップを取り出した。
  「ありがとう、ロールちゃん。」 「どういたしまして・・・それにしてもこれで5枚目ね。」
   不思議そうにチップをみながら話すロール。それを聞きロックも考えこむ。
   調査を行っているこの遺跡は元々C級クラスの遺跡だったのが、今やS級クラスの遺跡と化している。
   何も知らずに入った初心者ディグアウターの多くが被害に遭い、帰らぬ人となってしまった。
   しかも、この遺跡は6つの簡単な遺跡が円周上に配置してあるが、この分だと残り一つも・・・。
   そして、このチップ。今まで調べた遺跡全てのボスリーバードに装着されていた物である。
   例外なく、チップの入れられたものはヘブンの命令を無視し、只破壊と殺戮に溺れる兵器となった。
   不思議に思ってセラともう一人のマザー『ユーナ』の手によってスキャニングをしたのだが、
   絶対の解析率を誇るマザー二人の力を持ってしても、チップの内部を見ることが出来なかった。
   セラが言うに恐らく『古き神々』が造り出したものではないかとのことだが・・・
  「ともかく一度ここを離れようか。セラさんに報告しないといけないし・・ロールちゃん?」
   地上に帰ってからゆっくり考えようと出口に向かって歩き出したロックだったが、
   ロールは何故か立ち止まり、不安げに何か考えているようである。こちらが見えてないらしい。
  「ロールちゃん!」 「・・え?・・あ、ゴメンねロック。出るのね?じゃ、早く行きましょ。」
   あわてて、出口へ向かうロールを不思議に思うロックだったが、特に気にしない風に外へと向かった。
   ロックに見えないように先を行くロールの顔には不安の色が消える事が無かったが・・・



   場所は変わって、こちらはサルファーボトム号内の『ディフレク会社経理部』。
   この部屋のデスクにヘブンの元マザー『セラ』がお付きのジジを片手に陣取っていた。
   緑のショートヘアー、白を基調とした服、そして、少女らしからぬ荘厳とした態度。それがセラである。
   彼女の前には数人の男性女性がそれぞれの机に座り、命令を待っていた。
   緊張状態のためか、何者も入れぬほどのプレッシャーがその部屋に充満していた。と、そこへ。
  「失礼します。ロック・ヴォルナットです。セラさんは・・・・うぅ?!」
   何も知らず入ってきたロックが瘴気(?)にあてられ思わず仰け反った。
  「だ、大丈夫ですか、ロックさん?」 「あ、ありがとうございます。水兵さん、これは・・」
   警備についていた水兵の手を借りて立つロックが冷汗を流しつつ聞くが、水兵も知らないようだ。

          リリーーーーン・・・リリーーーーン・・・リリーーーーン!!!
   その静寂を打ち破るかのように突如鳴り出す電話。デスクの女性が神速の速さで応対し、叫ぶ!
  「ダプコン社!株の売買を始めました!」 「来たか!!各員配置に着け!!第一波だ!!」
   いきなり立ち上がりデスクの人間に命令をするセラ。その声で一気に部屋中の空気が変わった!
  「株の動きはどうなってる?!それと、震天堂の動きもだ!!」 「今こちらで調べます!」
  「震天堂!株式の5%を売り払いました!震天堂の株価ダウン!」 「手を出すな!それは罠だ!」
  「ダプコン社!わかりました!」 「遅いぞ貴様!ジジ!早急にこのメモ通り株式を売れ!」
  「承知しました、セラさま。」 「あの~~ダプコン社は・・・」 「貴様はもういい!クビだ!」
  「え~~~!!!」 「ブンダイが乱入!当社の株を買い始めました!」 「何?!そうきたか!」
  「経理部長!僕には家族が・・・」 「ええい!うるさいだまっとれ!!」 「そこ!サボるな!」
  「当社の株価上がります!」 「今上がるのはマズイ!何か手を・・」 「クビイヤ~~~!!」

   舞い散る言葉の嵐、息もつかせぬ状況の変化、金への執念、そして、一人の男の脱落・・
   あまりの激しさにロックは引いてしまった。何よりもセラのあの修羅のごとき姿に・・・
  「後、30分はあのままですので・・・」 「・・・わかりました。奥で休んでます。」
   こんな嵐の中にいたら数分と持たないだろう。水兵に礼を言ってロックは部屋へと入っていった。
  「ジジさんがセラさんのことを話す時涙目になるのって、こういう事なんだな。」
   眼を白黒させながらセラの絶え間ない命令に従ってるジジを見て、ロックは人知れず納得した。

   環境の変化とは、末恐ろしきものである。真面目な人間も金の亡者と成りうる。



   そして、30分後。ようやくセラが帰還してきた。
  「待たせてすまない。今は忙しい時なのでな。」 「・・・そのようですね・・・」
   眼の間を抑えるセラをロックは苦笑いをする。あの嵐の中ならば当然の事であろう。
  「さて、報告を聞こうか?どうであった?」 「はい、五つ目もそう変わりません。」
   そう言うとロックはバックパックの中から回収したチップを取り出して、机の上に置く。
  「・・・またあったのか?これも前のものと同じだな。」 「過去の・・・物ですね。」
   ジジが持ってきた今まで集めてきたチップをロックとセラがマジマジと見つめる。
   見つめれば見つめるほど、不安を掻き立てさせる不思議なチップなので、ロックは度々
   このチップを捨てようかと思ったほどである。だが、この不思議な現象はこのチップのせいである。
   リーバードに異常なほどの殺意を芽生えさせ、強力な戦闘力を与え、やがてボスだけでなく
   他のリーバード達にも影響を与えて、C級の遺跡を上位級の遺跡に仕立て上げる魔性のチップ。
   ヘブンからのシステムを書き換えるのだ、並大抵の物であるわけが無い。このチップは何のか?
   何処から来たのか?そして、誰が何の目的で仕込んだのかを詳しく調べる必要があるのだ。
   ロックは誓ったのだ。もう、あんな悲しい出来事が起こらないように・・・。
  「・・・何にしてもこんな物を作った人を僕は許さない!必ず正体を暴いてやる!」
   ロックは腰に付けている光剣を握り締めながら呟く。セラも黙って頷いていた。
   その時だった!突然机の上に並べておいたチップが激しく発光した!
        「な、なんだ?!」 「こ、これは・・・・?!」 



   いきなりの発光に驚くロック達。そんな彼らにお構いなしにチップは光りつづけ、ある形に集まる。
   チップが発行を止め、元の黒々とした色に戻った時、チップは六角形が欠けた形となっていた。
  「い、今のは一体何だったのだ?」 「セラさん、ジジさん!チップが・・・」
   ロックが机を指差す。セラとジジもロックが指差す方向を見て唖然となる。
   チップに何時の間にか見なれない文字が書き込んで会ったのだ。先の発光の時に現れたのか。
   ロックは早速チップの文字の解読を試みる。だが、全く読めなかった。
   一年前にトリッガーの頃の記憶、知識の全てを吸収したので過去の文字が読める筈だが・・・
  「・・・どうやらこの文字は暗号のようだな。残りの一つを集めぬことには読めぬようだ。」
   セラが文字を見ながら呟く。どうやらこれを造った者は抜け目が無いようだと付け足しつつ・・
  「では、セラさま。残りのあの遺跡に・・・」 「そうだジジ。遂に謎がわかるであろう。」
   セラの言葉を聞いたと同時に立ち上がるロック。握り締めていた光剣を腰に結わえなおす。
  「最後の遺跡に行ってきます!セラさん、ジジさん。後をよろしくお願いします!」
   そう言うとロックはセラの制止も聞かず飛び出して行ってしまった。
   嵐のごとく去って行ったロックの後セラとジジの二人は揃って溜息をつく。
  「・・トリッガー様は大丈夫でしょうか?」 「あやつなら大丈夫だ。こういうときにはな。」
   この部屋に入った時から置かれていたコーヒーの存在に気付き、一気に飲み干すセラ。
   コーヒーはすっかり冷め、不味く感じた。飲み干した後、さらに大きく息を吐いた。
  「ヴォルナット・・・負ける筈が無い。いや、負けては困るのだ。」
   セラがそう呟き、部屋を後にする。その呟きを聞き、ジジは訳がわからずに立ちすくんでしまった。



   その少し前、ロールはというと・・・・
  
  「ん~~~!!やっと傷が全部消えた~~~~!!」
   と、鏡で背中、腹、腕などを見ながら小躍りをしていた。
   実は、ロールは本来ならば病院であと半年は療養しなければならない身体だったのだ。
   それでは何故、先ほどまで動く事が出来ていたのか?それはこの人・・・・
  「元マザー1こと『ユーナ』様のおかげってワケよ!!」
   カメラがあるわけでもないのに何処ぞにピースサインを送るこの少女。ユーナのおかげなのだ。
   彼女のヒーリングにより、自然治癒能力を高め、一時的に怪我の状態を無効にしていたのだ。
   そして今。自然治癒能力の向上によって本来の傷が綺麗さっぱり無くなったのだ。
  「長かった~~~今までありがとうございました。」 「いえいえ、どういたしまして。」
   二人ともながきに渡っての治療を終えた喜びをかみ締めていた・・・その時。
  「入るわよ~~~ロール?終わったのかしら?」
   と、二人の前に特徴的な髪型の女の子が入ってきた。紺のジャケットにピンク色の服、
   そして胸に付けた骨をモデルにしたバッチ。空族ボーン一家の長女『トロン・ボーン』である。
  「あ、トロンちゃん!具合はどうなの?」 「絶好調よ!」
   サムズアップポーズを取るトロンにロールも安心する。話の通り、トロンもユーナの世話になってたのだ。
  「ふう。二人ともお大事にね?また傷作ると彼に嫌われるわよ?」 「「ユ、ユーナさん!!」」
   茶化すユーナにロールとトロンは同時に怒り、そして顔を赤面する。二人とも彼・・
  『ロック・ヴォルナット』に好意を寄せている事は明々白々である。
   だが、ロールは近頃ロックのことを不安に思っているのだ。彼を何時も間近で見ていただけに。
   最近のロックは戦闘に入るといつもの優しさがだんだん薄れていくように感じる。
   本能のままに闘っているというか、何処となく闘いを楽しんでいるように見えるのだ。
   あの人と同じである。狂ってしまった時のあの人・・いやそれ以上の・・・
   そして、今日その不安は現実の物となってしまった。
   あの時、ロックがボスを斬る時に見せたあの技・・・あれは『ゼロ・スラッシュ』。
   一年前に知り合ったあの人と同じ型、同じ威力。その証拠にロックの眼は・・・・


                     紅かった

   ロールは怖かった。あの人から貰った『絆』をロックの『信念』と合体させた剣、
  『Z,B(ZERO・BREAK)』を創り出したその日からずっと・・・恐怖に晒されていた。
   ロックもあの人と同じようになるのではないかと・・あの悲しい結末になるのではないかと・・。
  
  「ロール?どうしたの?顔が真っ青よ?」 「ロールちゃん。さっきからロック君から通信よ?」
   二人に肩を叩かれてやっと我に帰ったロール。慌てて通信機のスイッチをONにする。
  「・・ロック?どうしたの?」 『ロールちゃん?今すぐ出たいんだ!お願いできるかな?』
   通信機から聞こえるロックの声はいつも通り優しい声。それを聞いてロールも少し落ちつく。
  「わかった!すぐに準備するから待ってて!」 『了解!!』
   通信機を切り、いつもの紅いアーマーを素早く着込むロール。そこへ・・・
  「ロール?大丈夫なの?替わりに私が行ってもいいのよ?」 「大丈夫。ありがと、トロンちゃん」
   笑いながら言うロールにトロンは安心したようだ。(内心では舌を鳴らしていたが・・)
  「それじゃあ、行ってきます!!」 「頑張ってね~~!!」 「次は私も行くからね~~!」
   二人からの声援に笑顔で答えて、部屋を駆け出して行く、ロール。
  「(そうよ。ロックはロックよ。それ以外のなんでも無い!私はロックを信じる!)」
   ロールは自分にそう言い聞かせロックの待つ飛行船『フラッター号』へと走って行った。
  「(あなたもロックを守ってくれるよね。・・・・ねぇ・・『ダブル』・・・)」