原文

其一

漫漫秋夜長,烈烈北風涼。
展轉不能寐,披衣起彷徨。
彷徨忽已久,白露沾我裳。
俯視清水波,仰看明月光。
天漢回西流,三五正縦横。
草蟲鳴何悲,孤雁獨南翔。
鬱鬱多悲思,綿綿思故郷。
願飛安得翼,欲濟河無梁。
向風長嘆息,斷絶我中腸。

其二

西北有浮雲,亭亭如車蓋。
惜哉時不遇,適與飄風會。
吹我東南行,行行至呉会。
呉会非我郷,安得久留滯。
棄置勿復陳,客子常畏人。

其の一

秋夜は漫々と長く 烈々たる北風は涼し
寝返りしても眠れず 衣をはおり立ってさまよう
彷徨うこと久しく わが衣に白露したたる
うつむき視れば水波清く 仰ぎ看れば明月光る
銀河は西へ流れ 名月の光は縦横にのびる
何を悲しみ鳴くか草虫よ 孤雁は独り南へ翔ける
鬱鬱と寄せる悲しみ多く 綿々と故郷を思う
飛ばんと願えど翼は得られず 渡らんとすれど河に橋はない
風に向かって長く嘆息し 我が中腸の想いを斷絶す

其の二

西北に浮雲有り、もくもく湧くこと車の傘蓋のよう
惜しきかな天の時に遭わず、風とともに漂い会稽へ
我も吹かれるまま東南へ 行き行きて呉会稽へ至る
ここは我が故郷にあらず どうして久しき滞在を得るものか
棄て置けまた何を述べるのか よそ者は常に人を畏るるぞ


単語


【三五】
3×5=15、陰暦15日の夜。とくに陰暦八月十五日の夜は中秋の名月。
【西北有浮雲,亭亭如車蓋】
《芸文類衆》「魏志日、文帝生於沛国譙郡.時有雲気青色.而圓如車蓋.當其上終日.望気者以為至貴之證.非人臣之気」


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 後継問題に対する焦りをあらわしたと言われる作品。


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最終更新:2018年12月25日 17:09