阿頼耶識システム

阿頼耶識システム

概要

大洋州連合が開発した機動兵器用人体結合型有機デバイス。連邦から得た技術であるサイコフレーム及びサイコミュデバイス系統の技術をそのプライドからの問題で使用を忌避した大洋州連合軍上層部が研究開発を主導した。技術的な問題から多くの人体実験とサンプルが必要とされ、その対象を最も新しい海外領土に求めたために当初の技術研究は在日大洋州連合軍横浜基地と技術開発部が主導。日本を失陥後は国営兵器産業廠が研究開発を引き継いでいる。

『機体の追従性やパイロットの情報処理能力を向上させるには物理的に機体とパイロットを「繋げて」しまう方がサイコフレームを使用するよりも簡易かつ効果が見込める』との発想から研究が行われている。仕組み自体は簡単であり、パイロットの脊髄に埋め込まれた「ピアス」と呼ばれるインプラント機器と操縦席側の端子を接続し、特殊な有機ナノマシンを介してパイロットの脳神経と機体のコンピュータ・火器管制システムを直結させることで、脳内に空間認識を司る器官が疑似的に形成される。これによって、通常はディスプレイなどから得る情報がパイロットの脳に直接伝達され、専門知識が無い者でも機械的プログラムに縛られない自身の肉体の延長上のような直感的操作が可能となる。また、手術は複数回行うことが可能であり、失敗するリスクが高いものの回数を重ねるごとに処理可能な情報量が増大して結果的により優れた性能を発揮可能となる。

その半面、人型機動兵器から送られてくる情報量が操縦者の脳に与える負担は極めて大きく、リミッターを外しての接続を実行した場合などはパイロットが廃人化するリスクを負う事になる。また、『翼』のような特殊なバックパックを有する機体だと本来肉体に存在しない部位のイメージが出来ない為に扱いに慣れるまでに時間がかかるなどの欠点を持つ。
中でも最大の欠点は現時点の技術では成長期の子供以外ではナノマシンが定着せず、なおかつ手術そのものの成功率がお世辞にも高いとはいえない。こういった欠点のため、未だ正規軍では採用されるに至らず、継続しての研究が続いている。

しかしながら、手術を施すだけという極めて簡易的な方法でサイコフレーム搭載機に匹敵する機体追従性を与えられる技術という点と、いくらでも代替の効く安価な少年兵をそれだけで熟練のパイロットに仕立て上げる事が出来る為に自らの海外領土や植民地の私兵を抱える大洋州連合の貴族たちが積極的に導入している。また、研究開発を進める国営兵器産業廠も実戦データを得るために阿頼耶識システム搭載仕様のMSや買い付けてきた少年兵を積極的に秘密裏に各軍に斡旋している。そのような少年兵達は未成熟の技術の『モルモット』となることを強いられた卑しい生まれの者であると見られる事と、後述するように大洋州連合宇宙軍から売られてくる事が多いために『宇宙ネズミ』と呼ばれて蔑まれている。

そういった少年兵の供給先はアフリカ諸国連合内や欧州総督府東欧管区といった貧困層の多い地域や地球連合とZAFT軍との戦闘で荒廃した各コロニーからの出稼ぎ者であり、人身売買が大洋州連合国内やプラントの勢力圏内で盛んに行われ始めている。特に大洋州連合宇宙軍は各宙域の宇宙海賊に地球連邦や火星連合の貨物船・民間船に対する襲撃を黙認・支援するのと引き換えに人身売買の斡旋・仲介を宇宙軍に一任させるという密約を結んでおり、国営兵器産業廠や貴族相手の人身売買を取り仕切ることで莫大な収入を得ているとされている。その関係か大洋州連合宇宙軍とそこを基盤とする貴族の私兵に際立って多くの阿頼耶識システムの手術を行われた兵士が多い。

大日本帝国の場合

阿頼耶識システムの研究開発に対して大洋州連合軍以上に熱心なのが大日本帝国軍である。大洋州連合軍が退却した後、横浜基地の地下研究施設にあった大量のサンプルと実験データを得た大日本帝国軍は『手術を行うだけ』という利便性に注目。『世界に冠たる優生種たる大和民族に相応しい新時代の操縦デバイス』と大々的に自らが開発したかのように国内に宣伝し、絶対的な物量が大きく劣る自軍の欠点を『パイロットの質』で補うべく実用化を推し進めている。

実情は強制収容所に収容された在日外国人や政治犯を使い捨て前提にした人体実験による研究開発が主である。しかし、収容所で政治犯の子女を洗脳し、思想教育を徹底した少年少女に順次阿頼耶識手術を行って少年兵にそのまま仕上げることで帝国上層部が望む『思想的に忠実かつ強力無比な精鋭兵士』を容易く量産する事が可能となっており、未だ事実上の試験運用に近い大洋州連合軍よりも運用面では進んでいるとされている。事実、武装警察軍隷下の部隊の中では全員が阿頼耶識化された少年兵と見られる極めて精強な部隊が大洋州連合との小競り合いで確認されている。

また、政府に反抗的として収容所で拘束しながらも優秀なパイロットが故に処刑を躊躇っている『保留中』とされる軍人たちを『再利用』する為に成人にも行える阿頼耶識手術の術式開発には非常に熱心である。一説には『四肢を切断し、文字通り機体と繋げてしまう』事が前提ながらも洗脳と阿頼耶識化を可能とする術式はすでに完成しているとの見方も出ている。

阿頼耶識システム Type Re

第13独立義勇師団の技術班が所持していた阿頼耶識システムの研究データから独自に提唱した阿頼耶識システムの亜種。阿頼耶識システムの最大の欠点である『パイロットの脳に与えられる負担』を軽減し、リスク無くリミッターを解除しての最大出力稼働を行う事を目的としている。

『阿頼耶識システムに生体パーツとして人間の脳を組み込み、その脳に負担を肩代わりさせる事でパイロットの負担を軽減する』という関連する研究者が一度は思いついても誰も実行しなかった発想を実現させており、師団司令官のエーデルハイト・アルトマイヤーをして『悪魔の発想』と評されている。生体パーツとして組み込まれているのは暗黒星団帝国から派遣されているレプリカント・ファースト少尉の脳をクローン培養したもの。これは素体となっているアーヴの脳構造が機動兵器パイロットに適しており、その特徴を活かして阿頼耶識システム対象者の空間認識能力を底上げする事を目的としている。

欠点としては常人では負担に耐えきれずに自我が崩壊するレベルの負担を稼働中に与え続ける為に制限時間を超えると生体脳が『焼き切れ』、システムが停止してしまう事。この欠点を補うために実際の運用時は複数の生体脳を予め内蔵しており、焼き切れた段階でシリンダーの弾倉のように次々と装填し直して長時間の連続使用を実現させる。

試験的にMSにはASW-G-66V ガンダム・キマリスヴィダール、さらに艦船用阿頼耶識システムの実証試験の為に建造途中に確保したビスマルク級一等旗艦型戦艦の二番艦ティルピッツに搭載されている。
最終更新:2017年09月30日 22:08