第1話【革命】

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フェーナ領領主アデス・ロンダートの館 アデス「税を上げよ」 重臣「アデス様・・・これ以上は・・・」 重臣「何卒お考え直しくだされ!」 アデス「黙れ!よいか!近々国内で内戦が起きる!ワシはその時に備え軍備を増強せねばならん。このような辺境の地の領主で終わらぬためにもな!」 ???「しかしアデス様。長い目で見ればこのフェーナもただの辺境の地では終わらぬ立派な土地でございます」 重臣「ビ、ビート殿!いつ王都から戻られたので?」 ビート「つい先程です」 アデス「ビートよ、貴様何が言いたい?」 ビート「税など上げなくともフェーナは諸外国との貿易もできる国内の数少ない大きな港を所持している地方です。アデス様が再び・・・」 アデス「ならぬ!ガリアとの情勢が不安定なこの時期に貿易などができようか!そしてそれに投資するだけの金なぞここにはもう残っておらぬ!!」 ビート「・・・その為に税を上げ、また国を戦火に晒すのですか・・・」 アデス「ビートよ!わしのやり方に不満か!?」 ビート「いえ、私は領主様に従うのみです」 アデス「それでいい。して王都はどうであった?」 ビート「見た目の華やかさとは裏腹に黒いものが渦巻いておりました」 フェーナ領・エレクトラの森 盗賊「大将!今日は大量でしたな!」 大将と呼ばれた男「そうだな。おい、デズム!お前たったそれっぽっちの取り分でいいのか?」 デズム「ああ、これでいい。あまりたくさん貰うと足がつくんでな」 大将と呼ばれた男「そうはいうがな。今回の襲撃もお前が情報を流してくれたおかげで成功したようなもんだ」 盗賊「それにアルベルトの大将の作戦じゃここにいる全員もう捕まってますぜ!」 盗賊「ひゃはは!ちげーねぇや!」 アルベルト「お前らなぁ!」 デズム「俺はあくまで机上の空論で話してるようなもんさ。それを実行に移してるのはあんたたち『蒼の騎士団』だ」 アルベルト「蒼の騎士団か。だが俺たちはもう騎士じゃねぇ。ただの盗賊だ」 デズム「だが頂いた物のほとんどは民に分け与えてるし、襲った人々を殺しもしない」 アルベルト「デズムよ、それでも俺たちは盗賊なんだよ。お前も俺たちに関わっていたらいつかは・・・」 デズム「こんな国が悪い」 アルベルト「デズム・・・」 デズム「戦争を始めて人が多く死んで終わってみると得られるものなんて何もなかった。国のために命を賭けて戦ったあんたたちに恩賞なんて何1つでなかった。だからあんたたちは盗賊にならざるを得なかったんだ」 アルベルト「そうだな・・・盗賊として生きるしか道はなかった。人を傷つけるようなことばかり得意な連中だったからな」 デズム「いつかこの国を変えてやるさ」 アルベルト「そう思ってるうちはまだ若いってことかね」 デズム「俺は本気だ」 アルベルト「何かいい算段でもあるなら聞こうか」 デズム「いずれ機を見て話す」 アルベルト「そうかい。ま、楽しみにしておこう」 デズム「じゃ俺はそろそろ戻るよ」 アルベルト「おう、気をつけてな」 盗賊「しかし大将、デズムっていえばアデスの糞野郎の使用人らしいじゃねぇスか」 盗賊「なんだってそんなやつが俺たちに協力を?」 アルベルト「さぁな。奴の考えてることはわからん」 フェーナ領 アデス・ロンダートの館 デズム(そろそろこの二束のわらじ生活も限界だな。そろそろ作戦に移す時期が来たか・・・) ???「領主の使用人が今までどこで何をしていたのかな?」 デズム「ビート!帰ってたのか!?」 ビート「ついさっきね。それより俺は今日領主に言われたぞ。近頃、貴族ばかりを狙う盗賊が現れて迷惑しているとな。警備や巡回の兵をもっと増やせといわれた」 デズム「そうか」 ビート「『そうか』・・・じゃないだろう?大体お前はな・・・」 デズム「親父殿に似てきたな」 ビート「話を誤魔化すな」 デズム「わかったよ」 ビート「一体どういうつもりなんだ?何がしたいんだお前は?」 デズム「この国を変える」 ビート「本気で言ってるのか?いや・・・冗談でこんなことを言うお前じゃないな。だがどうするつもりなんだ」 デズム「でかい声で言えることじゃないな。耳を貸せ」 ビート「・・・・・・・・・。お前が領主だと!?」 デズム「声がでかい!」 ビート「馬鹿なことを言うな!使用人が領主になれるか!」 デズム「だがまずは領主にならないことには何もできん」 ビート「だからどうやってなるっていうんだ?お前の『悪いお友達』付き合いもそれが絡んでいるのか?」 デズム「まぁね」 ビート「呆れて物も言えないよ。俺は」 デズム「育てて貰って20年間・・・親父殿が亡くなった今・・・俺を縛るものはなくなった。ビート・・・聞かせてくれ・・・。お前もこの国がこのままでいいと思っているのか?」 ビート「王都は次の後継者問題で慌ただしかったよ。普通に考えれば次の国王は長男のミドガルド王子だがそれに対して次男のクリストフ、三男のエドワードが異議を唱えていた。国王の急死は長男ミドガルドの起こした暗殺事件だという話だ。証拠はもちろんない。だが疑いを晴らすこともできない。じゃあどうやって次の王を決める?決まっている。内戦だよ。アデスはその内戦でミドガルド側に立つつもりらしい。その為にまた税をあげ軍備を補強しようとしている」 デズム「ビート」 ビート「わかっているよ。俺だってこの国がおかしいことくらい承知の上さ。だが俺には現状を変える力なんてないんだ。お前みたいに力もないくせにそんな考えを持つなんて無理だ」 デズム「よかったよ」 ビート「なに?」 デズム「お前はまだこの国が間違った方向に進んでることがわかってる」 ビート「デズム・・・」 デズム「力がないなら・・・ここを使って何とかするさ」 ビート「何か策があるのか?」 デズム「今はいえない。だが・・・」 ???「お兄様!帰ってらしたのね」 ビート「おお、アルカ」 アルカ「ひどいわね。王都から帰っているなら一言くらいあってもいいでしょ?あら、デズムいたの」 デズム「俺はビートのついでか」 アルカ「たまには顔を見せればいいのに見せないから忘れられちゃうのよ。それじゃお兄様、今日の夕飯はお兄様の大好物のシチューよ。早く帰ってきてくださいね」 ビート「ああ、わかったよ」 デズム「アルカは今いくつだったかな」 ビート「18だ。いい縁談の話も持ちかけられているが全部断っているようだ」 デズム「何故?」 ビート「あれはあれでお前のことを好いているんだよ」 デズム「そうかな」 ビート「さっきのはお前の顔が見たいと言っていたのさ」 デズム「貴族の娘と俺みたいな孤児じゃ不釣合いさ」 ビート「デズム・・・」 デズム「親父殿には感謝している。戦争孤児の俺を育ててくれて」 ビート「お前には才覚があった。俺よりもデキがよかったからな」 デズム「親父殿はいずれ俺にお前の補佐を頼みたかったのかもな」 ビート「だったら今からでもそうしたらどうだ?」 デズム「・・・」 ビート「・・・わかってるよ。それじゃこの地の領主なんて夢のまた夢だ」 デズム「ごめん」 ビート「じゃあこうしよう。お前がもし領主になったら俺がお前の補佐をする」 デズム「そりゃ頼もしい」 ビート「あまりアテにしてないだろ」 デズム「そうだな。俺の使用人でもやってもらおう」 ビート「こいつめ!」 デズム「アハハハハ!」 フェーナ領・『元』蒼の騎士団のアジト アルベルト「なるほど・・・。奴隷を使うのか」 デズム「どのくらい集められる?」 アルベルト「表の顔の奴隷商人として言わせてもらうがあまり戦力的に期待はできんと思うぞ」 デズム「わかっている。主力は君達蒼の騎士団だ。で、どのくらい集められるんだ?」 アルベルト「・・・40人・・・いや50人くらいなら」 デズム「十分だ。それに蒼の騎士団20人を持って革命軍とする」 アルベルト「アデスの館にはどのくらいの兵がいるんだ」 デズム「200人」 アルベルト「約3倍か。余程の策があるんだろうな」 デズム「協力者もいる。あとは奴隷たちの働き次第かな。ああ、そうだ。これを機会に彼らは解放するってのはどうかな」 アルベルト「それは俺から奴隷達を買い上げるってことか?」 デズム「それで構わない。ただし、支払いは出世払いになるけどね」 アルベルト「大したタマだよ。お前さんは」 第1話【革命】完

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