第4話【統治】

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クレスタ領 王都レクシア ヴァーノン宮殿 ミドガルド「この1年、正統なる王位継承者として国を治めてきたが・・・。この国は未だ正式に王が決まっておらぬ。お前達はこれが異常な事態と思わぬのか」 重臣「そ、それはわかっておりますが・・・」 重臣「戦争が終わって僅か1年でございます・・・。今は自国内で争っている場合では・・・」 ミドガルド「それでは他国に侵略の隙を与えるだけではないか!!」 重臣「しかしながら・・・クリストフ王子とエドワード王子の2人が殿下の王位継承を認めておりませぬ・・・」 ミドガルド「奴らは放っておけ!王になった暁には奴等を死刑台に送ってくれるわ!」 重臣「ですが殿下・・・」 ミドガルド「貴様ら!!奴等の犬か!!」 重臣「そ、そんな!違いまする!断じてそのようなことは!」 ミドガルド「ならばすぐにでもこのミドガルドの王位継承式の準備にとりかかれ!そうすれば国はすぐに1つにまとまる!」 重臣「無茶苦茶でございまする!勝手にそのようなことを取り決めては他の王子や重臣たちが黙っては・・・」 ミドガルド「くどい!だれぞこの者を牢獄にぶちこめ!!」 重臣「ひ、ひいい!!」 重臣(何ということだ・・・これでは暴君ではないか・・・) 重臣(やはり聡明なクリストフ王子につくしか我らに生きる道はあるまい・・・) クレスタ領 メサイア城 クリストフ「そうか・・・。焦っているか。兄上は」 伝令「今日も諌言をした重臣の1人が牢獄に送られました。他の重臣も同様を隠せていないようです」 クリストフ「愚かな男だ。やはりあのような男がこの国を統治すべきではない」 ???「では誰ならばよいというのですか?」 クリストフ「エドワードか。それを決めるのは我々ではなく世論だよ」 エドワード「世論・・・ですか」 クリストフ「この国は今変わろうとしている。王の統治でどうにかできるレベルではなくなってきているのだ」 エドワード「では王ではなく誰がこの国を統治するのです?」 クリストフ「それは民だよ。民が国を統治する新しい時代の始まりだ」 エドワード「私が言えたことではないが王族のあなたが言っても説得力はないな」 クリストフ「そうかね。だが私は本気だよ。あの男を排除しこの国に新たな政権を樹立し、ヴァルベルデ王家の政権をミドガルドの世代で終わりにさせる」 エドワード「私がミドガルドの兄上を王にしたくないのはあの人の性格を知っているからだ。あの人は気にいらないものは何だって排除しようとする。そのような人が王になったところでこの国は栄えないからだ。そしてあなたも・・・自分にとって利用価値のない人間は虫けらのように思っている。自分の目的のためなら何でもするところがあるはずだ」 クリストフ「エドワード、ならばお前が次の王になろうというのか」 エドワード「兄上たちがなるというのならば」 クリストフ「エドワード、1つ教えておこう。『王たる者』とは利用できる者を利用できるときに利用し、利用価値がなくなったときに切り捨てることのできる者のことをいうのだ」 エドワード「では『王たる者』であるあなたは王ではなく何を目指すというのですか!?」 クリストフ「私はこの国を暴君から救った英雄を目指すつもりだよ」 エドワード「・・・」 クリストフ「このまま奴は無理矢理にでも王になるだろう。それを止めるつもりはない。私の元に奴からたくさんのモノが流れてきているのでな。ここが潮時だろう。エドワード、お前も軍勢をまとめて戦いに備えるといい」 エドワード「それは私がそうすることで利用価値が生まれるからですか?」 クリストフ「どう思うかはお前次第だ。我々の台頭を許したくないのならばお前はそうするしかないはずだがな」 エドワード「・・・兄上、エアリアルをどう思いますか」 クリストフ「私にとってはどうでもいい人間の1人だ。いずれミドガルドが殺すであろう」 エドワード「そうですか・・・」 クリストフ「我々兄弟は互いに相容れぬ価値観を持っている。昔からそうだったではないか。国を巻き込んだ『兄弟喧嘩』・・・楽しみにしているよ」 エドワード「・・・」 アレクセイ領付近 デズム「そういえば」 リバティ「はい?」 デズム「忙しくてお前に聞けなかったことがある」 リバティ「はぁ、なんでしょうか」 デズム「何でお前は残ったんだ?」 リバティ「結局自由といってもそれは本当に自由じゃない気がするんです。現に戦争はこうやってまた起きようとしている。デズム様は極力それを抑えるためにこうやって動いているのでしょう?」 デズム「一応な。だが避けられない戦いは必ず来ると思っている」 リバティ「それならば尚更真の自由を得たとは思えないんです。この国から争いがなくなったときこそが俺の本当の自由な気がします」 デズム「リバティが目指すはリバティに非ず、フリーダムか」 リバティ「どういう意味です?」 デズム「これも古い国の言葉で自由という意味だ。ただしリバティと少し意味が違ってくる」 リバティ「はぁ・・・」 デズム「もうすぐアレクセイだ。大丈夫だとは思うが護衛は任せたぞ、リバティ」 リバティ「任せてください!」 アレクセイ領 マルス・ヴォルフラムの館 ロフ「お初にお目にかかります。リーゲル様。私はロフ・シュトーレンと申します。以後お見知りおきを」 デズム「よろしく。それでヴォルフラム殿の容態は?」 ロフ「今は安定しておりますがいつそれが崩れるかわからない状況です」 デズム「そうか・・・」 ???「へぇ・・・貧乏領主が来るとはきいていたが・・・こんな優男とはな」 デズム「君は?」 ハロルド「俺を知らないとはあんたモグリだな?聞かれたなら教えてやろう。俺は戦場に吹く一陣の風・・・ハロルド・バーキンス様だ!」 ロフ「バーキンス!!無礼だぞ!」 ハロルド「シュトーレン、気にするこたぁねぇよ。こいつは1年前まではただの平民だった男だぜ。なぁ貧乏領主くん」 デズム「その通りだ。だがこちらもハロルド・バーキンスの名前なら知っているぞ」 ハロルド「なんだと?」 デズム「戦場で味方の陣と敵の陣を間違えて帰還し、危うく捕虜になりかけた『戦場の透間風』の愛称を持つハロルド・バーキンスのことだ。人違いだったかな?」 ハロルド「あ、あれは初陣でだな・・・!!くそ・・・!覚えてろ!!」 ロフ(恐ろしい男だ・・・既にこのアレクセイの人間を調べあげていたのか・・・) デズム「ではシュトーレン殿。ヴォルフラム殿のところに案内してくれ」 第4話【統治】完
クレスタ領 王都レクシア ヴァーノン宮殿 ミドガルド「この1年、正統なる王位継承者として国を治めてきたが・・・。この国は未だ正式に王が決まっておらぬ。お前達はこれが異常な事態と思わぬのか」 重臣「そ、それはわかっておりますが・・・」 重臣「戦争が終わって僅か1年でございます・・・。今は自国内で争っている場合では・・・」 ミドガルド「それでは他国に侵略の隙を与えるだけではないか!!」 重臣「しかしながら・・・クリストフ王子とエドワード王子の2人が殿下の王位継承を認めておりませぬ・・・」 ミドガルド「奴らは放っておけ!王になった暁には奴等を死刑台に送ってくれるわ!」 重臣「ですが殿下・・・」 ミドガルド「貴様ら!!奴等の犬か!!」 重臣「そ、そんな!違いまする!断じてそのようなことは!」 ミドガルド「ならばすぐにでもこのミドガルドの王位継承式の準備にとりかかれ!そうすれば国はすぐに1つにまとまる!」 重臣「無茶苦茶でございまする!勝手にそのようなことを取り決めては他の王子や重臣たちが黙っては・・・」 ミドガルド「くどい!だれぞこの者を牢獄にぶちこめ!!」 重臣「ひ、ひいい!!」 重臣(何ということだ・・・これでは暴君ではないか・・・) 重臣(やはり聡明なクリストフ王子につくしか我らに生きる道はあるまい・・・) クレスタ領 メサイア城 クリストフ「そうか・・・。焦っているか。兄上は」 伝令「今日も諌言をした重臣の1人が牢獄に送られました。他の重臣も同様を隠せていないようです」 クリストフ「愚かな男だ。やはりあのような男がこの国を統治すべきではない」 ???「では誰ならばよいというのですか?」 クリストフ「エドワードか。それを決めるのは我々ではなく世論だよ」 エドワード「世論・・・ですか」 クリストフ「この国は今変わろうとしている。王の統治でどうにかできるレベルではなくなってきているのだ」 エドワード「では王ではなく誰がこの国を統治するのです?」 クリストフ「それは民だよ。民が国を統治する新しい時代の始まりだ」 エドワード「私が言えたことではないが王族のあなたが言っても説得力はないな」 クリストフ「そうかね。だが私は本気だよ。あの男を排除しこの国に新たな政権を樹立し、ヴァルベルデ王家の政権をミドガルドの世代で終わりにさせる」 エドワード「私がミドガルドの兄上を王にしたくないのはあの人の性格を知っているからだ。あの人は気にいらないものは何だって排除しようとする。そのような人が王になったところでこの国は栄えないからだ。そしてあなたも・・・自分にとって利用価値のない人間は虫けらのように思っている。自分の目的のためなら何でもするところがあるはずだ」 クリストフ「エドワード、ならばお前が次の王になろうというのか」 エドワード「兄上たちがなるというのならば」 クリストフ「エドワード、1つ教えておこう。『王たる者』とは利用できる者を利用できるときに利用し、利用価値がなくなったときに切り捨てることのできる者のことをいうのだ」 エドワード「では『王たる者』であるあなたは王ではなく何を目指すというのですか!?」 クリストフ「私はこの国を暴君から救った英雄を目指すつもりだよ」 エドワード「・・・」 クリストフ「このまま奴は無理矢理にでも王になるだろう。それを止めるつもりはない。私の元に奴からたくさんのモノが流れてきているのでな。ここが潮時だろう。エドワード、お前も軍勢をまとめて戦いに備えるといい」 エドワード「それは私がそうすることで利用価値が生まれるからですか?」 クリストフ「どう思うかはお前次第だ。我々の台頭を許したくないのならばお前はそうするしかないはずだがな」 エドワード「・・・兄上、エアリアルをどう思いますか」 クリストフ「私にとってはどうでもいい人間の1人だ。いずれミドガルドが殺すであろう」 エドワード「そうですか・・・」 クリストフ「我々兄弟は互いに相容れぬ価値観を持っている。昔からそうだったではないか。国を巻き込んだ『兄弟喧嘩』・・・楽しみにしているよ」 エドワード「・・・」 フェーナ・アレクセイ領境 デズム「そういえば」 リバティ「はい?」 デズム「忙しくてお前に聞けなかったことがある」 リバティ「はぁ、なんでしょうか」 デズム「何でお前は残ったんだ?」 リバティ「結局自由といってもそれは本当に自由じゃない気がするんです。現に戦争はこうやってまた起きようとしている。デズム様は極力それを抑えるためにこうやって動いているのでしょう?」 デズム「一応な。だが避けられない戦いは必ず来ると思っている」 リバティ「それならば尚更真の自由を得たとは思えないんです。この国から争いがなくなったときこそが俺の本当の自由な気がします」 デズム「リバティが目指すはリバティに非ず、フリーダムか」 リバティ「どういう意味です?」 デズム「これも古い国の言葉で自由という意味だ。ただしリバティと少し意味が違ってくる」 リバティ「はぁ・・・」 デズム「もうすぐアレクセイだ。大丈夫だとは思うが護衛は任せたぞ、リバティ」 リバティ「任せてください!」 アレクセイ領 マルス・ヴォルフラムの館 ロフ「お初にお目にかかります。リーゲル様。私はロフ・シュトーレンと申します。以後お見知りおきを」 デズム「よろしく。それでヴォルフラム殿の容態は?」 ロフ「今は安定しておりますがいつそれが崩れるかわからない状況です」 デズム「そうか・・・」 ???「へぇ・・・貧乏領主が来るとはきいていたが・・・こんな優男とはな」 デズム「君は?」 ハロルド「俺を知らないとはあんたモグリだな?聞かれたなら教えてやろう。俺は戦場に吹く一陣の風・・・ハロルド・バーキンス様だ!」 ロフ「バーキンス!!無礼だぞ!」 ハロルド「シュトーレン、気にするこたぁねぇよ。こいつは1年前まではただの平民だった男だぜ。なぁ貧乏領主くん」 デズム「その通りだ。だがこちらもハロルド・バーキンスの名前なら知っているぞ」 ハロルド「なんだと?」 デズム「戦場で味方の陣と敵の陣を間違えて帰還し、危うく捕虜になりかけた『戦場の透間風』の愛称を持つハロルド・バーキンスのことだ。人違いだったかな?」 ハロルド「あ、あれは初陣でだな・・・!!くそ・・・!覚えてろ!!」 ロフ(恐ろしい男だ・・・既にこのアレクセイの人間を調べあげていたのか・・・) デズム「ではシュトーレン殿。ヴォルフラム殿のところに案内してくれ」 第4話【統治】完

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