第5話【理想】

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アレクセイ領 マルス・ヴォルフラムの館 ロフ「失礼します」 マルス「おお、ロフか・・・ではそちらが・・・」 デズム「お初にお目にかかります。フェーナ領領主デズム・リーゲルです」 マルス「このような床の間からで申し訳ないな」 デズム「いえお気になさらずに。こちらこそ何のご挨拶もないままで申し訳ありませんでした」 マルス「いやいや・・・ご多忙の身だったと見える。私がそちらの立場でも同じだっただろう」 デズム「その言葉で救われました」 マルス「君がここに来たのは他にも理由があるのではないかな」 デズム「さすがヴォルフラム殿、私の腹の内も見透かされているようですね。では単刀直入に言います。実は今悩みを抱えているのです」 マルス「その悩みの種は国王の後継者問題にあるとみた」 デズム「その通りです。先代の領主の頃からミドガルド王子から『もしものときには力を貸してほしい』といわれ続けてきました。しかし、今クリストフ王子からも協力要請が来たのです。このような重大な問題故にずっと考えていました。フェーナのためにはどちらの選択がよいのかと。ヴォルフラム殿、この国も同じような状況にあると見ています。あなたの考えも是非聞きたい。どうかこの若輩に良き知恵を・・・」 マルス(この者・・・既にどちらかに着くか決めておる。目に迷いがない。意見が食い違ったときのための芝居といったところか。恐ろしい男よ) デズム「・・・」 マルス「・・・そうだな。我が国ならば・・・」 ロフ「マルス様、それは・・・」 マルス「よい。我が国はこの内戦、どちらに加担するつもりもない」 デズム「!?」 マルス「ミドガルド王子もクリストフ王子もこの国の未来を考えているだろうか」 デズム「それはわかりません・・・しかし、どちらの陣営にもつかないとなるとアレクセイは中立を保つつもりなのですか?」 マルス「今のところはそのつもりだよ」 ロフ「しかしマルス様・・・家臣全員が同じ考えではありません・・・」 マルス「理想論というかね」 ロフ「はい・・・」 マルス「そうこの国はかつて理想があった・・・民が笑って暮らせる国・・・そんな理想を昔は抱いていたものだ」 デズム「私も理想を抱いて生きている人間の1人です」 マルス「君はどうするのかね」 デズム(この方に隠し事は通じないな・・・) ロフ「リーゲル様も困っておるようです。それにお体にも障ります。今日はこのくらいで・・・」 マルス「そうだな。この話は次の機会にしよう。今日は遠路遥々ご苦労だった。ゆるりと休まれるとよい」 デズム「お気遣い感謝いたします」 マルス・ヴォルフラムの館 庭園 デズム(今の状態で中立するとは・・・下手をすればどちらからも攻撃を喰らうことになるぞ・・・何を考えているんだ) ???「あなた見ない顔ね」 デズム「これは失礼、考え事をしていたもので・・・気づきませんでした。私はフェーナの領主、デズム・リーゲルと申します」 ???「じゃああなたがあの貧乏領主?」 デズム「そのとおりです」 ロフ「こちらにいらっしゃられましたか!エイス様!お父上がお呼びですよ!」 デズム「エイス?ではあなたがマルス・ヴォルフラム殿の娘の・・・」 エイス「そういうこと。よろしくね、貧乏領主さん」 デズム「デズムで結構ですよ」 エイス「あらそう?なら私はエイスでいいわ。よろしくデズム」 デズム「よろしくエイス」 第5話【理想】完

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