眞一郎の脳内劇場 やあ、我は仲上眞一郎の脳だ。 この体に存在するあらゆる感覚器官、運動、思考、記憶、ポエム等を 統合、制御しておる。 2箇所程ではあるが、我の統治を拒み続けている器官がある。 我としても時間の問題であるとは考えておるが、いかんせん強情な奴 らだ、忌々しい。 話は変わるが、我の主である仲上眞一郎は視覚と聴覚に優れておる。 これらを用いてデータを取得し、編集、構成するのは我が主導となり、 行っている大事な作業だ。 何に使われるかといえば、我の中に存在する仮想スクリーンに映像を 投影し、音声再生を行う為だ。まれにどちらかだけで行われる場合が あるが、基本的には双方を用いる。 我々はこれを脳内劇場と呼んでおる。 おっ、教室でいつものターゲットである素材提供者、比呂美が話して いるようだ。そちらに注目しよう。 「もう、やだぁー、朋与ったらぁ、へーん」ホゾンシマシタ 「そ、それでね…」 ノウナイフィルタ ニヨリ サクジョシマシタ よし、ここでストップ。 今回は2つ程良い素材を得ることができそうだ。保存された音声デー タをテンポラリィAとして、先頭部分から切り出すとしようか。 「もう、やだぁー、朋与ったらぁ、へーん」  ̄ ̄←の部分をテンポラリィBとして、保存、と。 ふむ、次の素材は、もう一度テンポラリィAだな、よし、 「もう、やだぁー、朋与ったらぁ、へーん」  ̄ ̄ ̄←の部分をテンポラリィCとして、保存。 よし、この2つはまあまあの素材だ、しかし我が主の趣向としては、 もう少しテンポの調整を望むであろう。雑音の除去も必要になる可能 性があるな、よし、テンポラリィBとCを音声処理班に任せよう。 我の中にある音声処理班は、とても優秀である。様々な素材の調整、 編集、構成に秀でておる。頼りになるヤツらだ、フッ。 簡単に依頼事項をまとめて、音声処理班に新たなデータを渡しておく。 おそらくそれ程時間を要せずに、調整が終わるであろう。 また、我の中にある映像処理班も負けてはいない。 こちらも、外部からのデータ処理を行うこともあるが、本来の業務は ポエム・チームとの連携だ。彼らは、連携することによって記憶の中 にある断片から様々な映像を作り出すことができる。 最近では天使まで召喚する偉業を達成しており、我の中での階級にお いて、上位を独占ほどになっている、侮れん。 おっ、さすが我が音声処理班だ、既に先ほどの処理が終わって、脳内 ライブラリに登録してきたか、やるな。 出来上がったばかりのファイルを再生してみすか、丁度仲上眞一郎は 居眠り中だ、いくつかの追加音声と先日"お気に入り"に登録されたば かりの映像と組み合わせてみるとするか。 なんと言ってもこの映像データは、脱衣所での遭遇によって多くの情 報が補間されたとても貴重なものだ。次の日の朝には、座っている制 服姿から裸体を連想することができた時には、我が映像処理班の優秀 性を改めて痛感した。これで、いつでもどこでも、どんな姿でも、素 材提供者である比呂美を裸にすることができるからの。 しばらく映像処理班には頭が上がらんわい、はっはっはっ。 さらに驚くべきことは、比呂美の体育での動作から、モーションデー タを抽出して、裸体を動かしたことだ、すばらしい。技術の進歩とは これほどのものなのか、と痛感する。 次はモーフィングとやらをを用いて、"揺れ"まで構成すると言ってい たが、我にはピンとこない、しかし彼らへの信頼が上回っておる。 こちらの期待以上の仕事をしてくれるであろうな。 さて、先ほどのファイルと既存編集済み音声と組み合わせてみるか。 <比呂美があられもない姿で悶えている映像をご想像下さい> 「やぁだぁぁ」「んっ」「もぉぅ」「あっ」 [ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ] い、いかん!居眠り中だからとて油断してしまった! 下半身の"アイツ"が起動し始めておるではないか?おおっ、血液まで 奪うというのか!やめんか!再生をやめろ!やめるんだ! ふう、ゆ、油断大敵とはまさに事のことだな、うんうん。 では、諸君。次のよい素材が得られたらまた会うことにしようか。 アディオス! END