true MAMAN特別編・こんな想い出もいいよね~一日目~

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「くううぅぅ、やっと歩けるー」  三代吉が大きく伸びをする。眞一郎もそれに続く。  朝、駅に集合してからサンダーバード、新幹線、バスと乗り継ぎ、ようやく最初の目的地、 海の中道海浜公園に到着したところである。  ここで少し遅い昼食をとった後、適当に散策時間を設けて次の目的地へ、という計画にな っていた。  季節外れのバーベキューで腹を満たした後、園内に散っていく。富山に比べれば、やはり 格段に暖かい。 「しかしさっきから、あんまりグループ行動になってないんだな。2,3人でバラバラに動いてる 感じだ」  眞一郎が思った通りを口にすると、あさみが訳知り顔に首を振った。 「わかってないなー仲上君。これは最初の大きなチャンスなんだよ」 「チャンス?なんの?」 「告白よ、こ・く・は・く。今まで気になってたけど話すきっかけのつかめなかったあの人と、 ここでカップル成立すれば旅行中はずーっと一緒!学校に戻ってからも楽しい学園生活確 定!しかも異邦の地での開放感で成功率は2割り増し!これぞ修学旅行マジック!」 「…で、うちにはフリーの女子が2人もいて、そのマジックとやらはなしか?」  三代吉の的確に過ぎる指摘に、あさみは嫌そうな顔を向けた。 「うるさいわね、これからよこれから。それにあたしは理想も高いんだから。見てなさい、 格好いい男捕まえて、比呂美と仲上君以上のベストカップルになってやるんだから」 「仲上君より上でいいなら、結構簡単に見つかると思うけどね……ヒッ」  あさみに茶々入れした朋与が、首筋に殺気にも似た悪寒を感じて飛び上がった。振り 返ったが、眞一郎と比呂美が腕組んで歩いているのが見えるだけである。  おかしいなと首をかしげる朋与を目の前に、眞一郎は別のことを考えていた。  今でも比呂美に告白する男はいるのだろうか?  比呂美は贔屓目抜きでも美しい少女である。少なくとも自分が外見で釣り合うとは、眞一 郎は思っていない。  「…ん?どうしたの、眞一郎くん?」 「いや、なんでもない」  この10分後に朋与がA組の男子に呼び出され、6分後に一人で帰ってきた。 「男バスの子だったけどぉー、まるで印象に残ってないから断っちゃった」  さらに15分後に三代吉が同じB組の女子に呼び出され、8分後に戻ってきた。 「ウゼー。今更愛子以外の女なんて眼中にねーよ」  それから30分間はなにもなし。あさみが目に見えて落ち込んで来た所でついにC組男子から声をかけられた。 「うわ、ヤダ、ドーシヨ。まさかあたしに告白?そんな全然予想も期待もしてなかったのに」  嬉しそうに声をかけた男についていったあさみは、7分後全速力で駆け戻り、まっすぐに 比呂美の胸に飛び込んできた。 「どうしたの、あさみ?」 「ヒクッ、ウッ、いき、なり、キスッ、しようと、してきた。怖かったー」  なだめる比呂美と居場所を奪われた眞一郎を見ながら、朋与が 「めんどくせ」  と呟いていた。  最初の宿は県内の温泉旅館だった。  比呂美はレモンイエローのブラウスにライラックのカーディガンを合わせた、あまり変わり 映えしないスタイルだった。 「結局それ?あたし達のアドバイスはどうなったの?」  朋与の抗議も比呂美には通じない。 「別にいいの、私は。さ、少し時間があるから館内見てまわろ?」  まだ落ち込んでいるあさみも連れ出し、ホテルのお土産コーナーに向かう。  陶器製の携帯ストラップや明太子ラーメンを物色していると、眞一郎達もやって来た。 「あら、もうお土産買うの?」 「いや。部屋で食うお菓子調達に来た。しかしさすがと言うか、明太子味多いな」  三代吉が答えながらスナック菓子を物色する横で、眞一郎は比呂美が見ているショー ケースの中身を覗いた。  青磁製のペンダントだった。小さいが細やかなフルーテッドの入った繊細なデザインで、 色調が比呂美には少し地味な気がするが、比呂美らしい趣味だ。 「比呂美」 「眞一郎くん」 「何か、欲しいのある?」 「え?ううん、そうじゃないけど…」  そう言いながらまたペンダントに目を落す。 「…なあ比呂美。よかったらそれ――」  眞一郎が言いかけたところへ 「なんだ眞一郎?こっちはもう選び終わったぞ?」  三代吉がレジから声をかける。 「……今選ぶ」 「うん、また後でね、眞一郎くん」  比呂美もにっこりと笑って、朋与らと土産コーナーを後にした。  食事の後、入浴時間は基本的に自由である。消灯時間は決まっているが、それまでの 間であればいつ入っても、何度入っても構わない。  そして今、女子浴場には比呂美らが入っている。 「………」 「………」 「………」  あさみや真由、美紀子がジッと比呂美を凝視している。  最初こそ気にせず身体を洗っていた比呂美だが、さすがに視線が気になってきた。 「あの…何?」 「いや、その…きれいなカラダだな、と思って」  一同を代表して真由が答える。 「やだ、ちょっと、なにそれ!?」 「だって、ほら、湯浅さん色も白いし、スタイルいいし、それに、その……なんとも言えずH ぽいし…」 「やめてよ、もう…」  タオルで身体を隠す比呂美に、横から朋与が抱きついてくる。 「おぉう真由ぅ。Hぽいとは上手いこと言うねえ」 「朋与……」 「照れるな隠すなぁ。最近おっぱい大きくなってきてんじゃないの?」 「なってない!それよりどこ触ってるの!?」 「いやぁ~ご亭主が羨ましいですなぁ~このナイスバディを毎日のように好きなように出来る とは」 「そんなわけないでしょ!」  比呂美が否定するが、ここで夕食を食べて復活していたあさみが参加してきた。 「またまたご冗談を。合鍵使って『ただいま』なんて言いながら家に入ってくる間柄なのに?」 「だからそれは昨日言った通り…ひゃん!?」 「おほほほほぉー、いい声ぇ~。ほれ」 「もーいい加減にしなさい!」 「キャー比呂美が怒った~」 あさみと朋与が囃し立てる傍で、真由や美紀子は取り残されたように湯船に沈んでいた。 「毎日…ただいま……」  一方男子浴場にも当然利用者がいる。しかし比呂美たちと同じ時間に眞一郎や三代吉 が入りに来たのは偶然である。  入ってすぐ、眞一郎達は女湯に同級生が入っていることに気がついた。会話はよく聞き 取れないが、どうも比呂美と朋与らしき声が聞こえる。 「なにやってんだ?随分賑やかだな」 「湯浅さんてあんなに大声で笑うんだ。ちょっと意外」 「黒部がうるさいのは予想通りなんだがな……」  と笑っていた連中も「どこ触ってるの」や「ひゃん」という声が聞こえてくると、ソワソワと しだした。早くも仕切に近づいてもっとよく聞こえないか試しだす者もいる。 「おい、やめろよ。みっともないから」  眞一郎の正論はしかし、別の正論によって打消される。 「これで気にならない奴が、健全な男子高校生と言えるか?」 「おい、ここ見てみろよ、登れそうだぜ」  三代吉が岩壁を指差した。云われてみれば、壁は角度こそ急だが、凹凸が多く、完全な 垂直なわけでもないので、登れなくはないように見える。 「おい、いくらなんでもそれは――」 「おおお確かに」 「見えるのか?この崖を制したら桃源郷が見えるのか!? 」  眞一郎の制止も虚しく、三代吉が壁を登り始める。 「三代吉……愛ちゃんにいいつけるぞ」 「眞一郎、俺は信じてるぞ。お前がそんな奴ではない事を」 (俺はお前が親友の彼女の風呂を覗く奴ではないと信じていたよ)  三代吉は意外な身軽さを発揮して、岩壁を登っていった。  八合目まで登り、後身長分登りきれば登頂、というところで左足をかけると、かけた足場 に苔が生えていたらしい。 「ぐぁ!?」  手足をビル登りのTVゲームのように伸ばして壁にしがみついていた三代吉は、手足の形 はそのままに岩壁を下まで滑り落ちた。 「痛エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」  眞一郎達は三代吉に駆け寄った。見れば、脛を派手に擦りむいている。  これでは湯に浸かる事は出来ない。とりあえず男湯から出て、フロントに薬を貰いに行く。 「すいません、傷薬ありませんか?あの風呂場で転んじゃって」  旅館の人は全く動じることなく、慣れた感じで傷薬を出してくれた。 「薬貰ってきたぞ」  眞一郎が傷薬を三代吉の脛に塗りつける。 「沁みる沁みる沁みる!お願い、優しくして!」 「気持ち悪い言い方すんな」  大騒ぎしすぎたらしい。教師が部屋に入ってきた。 「なんだ、なにやってる?」 「い、いえいえ何でもありません」  だが教師は三代吉を見ると、 「あの岩壁な」  ため息混じりにこう言った。 「滑るんだよ、八合目辺りの足場が」                          続 ノート 僕は九州なんて行ったことありません。ググるとわかりますが海の中道海浜公園はレストハウスが軽食メニューばかりなので、昼食を採るには微妙な立地です。所要時間計算すると富山から丁度6時間くらいで着く場所なので、7時出発で13時昼食という要件から決めてます。 みよきちの岩壁から落ちて脛擦りむく話は雨上がり決死隊の宮迫の実話です。 あさみは朋与が男に興味のないという立ち位置なので、恋に恋するような、少女漫画的な性格付けにしています。ステレオタイプですが、バランスよく動かせますね。 絵的にはあさみより、釣り目の朋与にたれ目の真由の方が比呂美と並べるにはバランスがいい気もします。 あと、話題になっていた「ただいま」ですが、あれはそう言うと比呂美が喜ぶからやっているので、そんなに毎日顔を出してるわけではありませんw

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