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「true☆tears」(2008/05/27 (火) 20:50:40) の最新版変更点
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※この作品はかなりパロディーな味付けで、エロは微量です。ご注意ください
小鳥のさえずりと、窓から差す朝の光で、眞一郎は目を覚ました
「もう朝か…ふわぁ~」
上半身を起こして伸びをする。何かがいつもと違うことに気づく
「ん?うわぁぁぁぁ!!!」
なんと隣で比呂美が寝ていたのだ
眞一郎の声で、比呂美も目覚める
「…あ、おはよう。眞一郎君♪」
「な、な、な、なんで比呂美が!?」
「なんでって、彼女が隣で寝ちゃいけないの?」
クスクスと笑う比呂美。眞一郎は起動したばかりの頭で必死で考える
『落ち着け…落ち着け、俺。…っていうか、いつから俺と比呂美は付き合ってるんだ???』
ガリガリガリ…と眞一郎の頭の中で、現実を処理する音が聞こえる
比呂美はベッドから起き上がり、ハンガーにかけてある制服を取ると
その場でパジャマを脱いで着替え始めた
「ちょ、ちょっと!何してるんだよ!」
「眞一郎君も早く着替えてご飯食べよう。遅刻しちゃうよ」
「自分の部屋で着替えろよ!」
「ここは私たちの愛の巣じゃない。変な眞一郎君(笑)」
ためらいもなく下着姿になる比呂美。眞一郎は慌てて自分の制服を取ると、部屋を飛び出した
『どうなってんだよ!なんかおかしいぞ今日の比呂美は』
「待ってよ~眞一郎君~」
階段を駆け下りる眞一郎を、比呂美が慌てて追いかける
ゼェゼェと息を切らしながら、居間に飛び込む
そこには新聞を読む父の姿があった。いつもと変わらない光景に眞一郎は安堵する
「と、父さん!比呂美が、なんか比呂美が変なんだ!」
そこへ大きな鍋を持った母がやってくる
「眞ちゃんと比呂美ちゃんは、今日も朝から仲良しね~」
その鍋をテーブルの中央に置くと、今度は魚や野菜が入った皿を持ってくる
「え?母さん、朝ご飯は…?」
「わーい♪私の大好きな“ぶりしゃぶ”だ~~♪」
後ろから声がした。両手を上げながら喜ぶ比呂美が、ズサーっと畳の上へ滑り込んだ
「比呂美ちゃん、いっぱい食べなさいね」
「ありがとう、おばさん!」
「ふふふ」
母はいつもとは違い、穏やかに笑いながら比呂美に話しかけている
俺はポカーンと口を開けたまま固まってしまう
「あら?どうしたの、眞ちゃんも食べなさい」
「……朝からこんなの食えないよ…」
「好き嫌いはよくないぞ」
新聞を置いた父が口を開いた
「比呂美、美味しいか?」
「うん!おじさんの分もしゃぶしゃぶしてあげるね!」
子供のように笑う比呂美を、父はニコニコしながら見ている
『これは何かのドッキリ番組?カメラはどこだ?誰かが俺を陥れようとしてるのか?』
眞一郎はパニック状態になり、その場を飛び出した
「眞ちゃん!朝ご飯いらないの?」
「眞一郎君、待ってよ~!一緒に学校行こうよ~!」
『くそっ!なんだよ!なにがどうなってるんだ!?』
眞一郎は自分の席につくと、頭を抱えて今朝の出来事を思い出す
まさか学校までも…と心配したが、先生やクラスメートはいつも通りだった
(キンコーンカンコーン)昼休みを知らせるチャイムが鳴る
今朝はあんなことがあったせいで何も食べておらず、眞一郎のお腹もグゥゥゥと鳴った
しかも家を飛び出したせいで弁当を持ってきていない。パンでも買おうと購買部へ向かうが財布を忘れてきたことに気づく
「チクショー、昼飯も抜きか…」
諦めかけたそのとき、廊下の向こうから小柄な少女が走ってきた
「しんいちろー☆」
その少女は走るスピードを緩めることなく、眞一郎に飛び込み抱きついてくる
「わぁ!な、なんだよ、乃絵…」
「一緒にお昼ご飯を食べましょう。眞一郎の分もあるのよ」
「本当か!助かった~、サンキュー乃絵」
屋上のベンチに二人で座る
やっとありつけた食事だ、眞一郎は乃絵の弁当に期待を寄せる
「乃絵、どんな弁当を作ってきたんだ?」
「お弁当じゃないわ。今日のお昼ご飯はこれよ」
乃絵がコンビニの袋から取り出したのは“ね●ね●ね●ね”懐かしいお菓子だった
「マジですか、乃絵さん…」
「お水もちゃんと用意してあるわ」
小さな水筒も取り出す
「練れば練るほど色が変わるのよ」
「…うん」
「粉の番号と入れる順番を間違えないでね」
「…はい」
二人で仲良く練る練るして食べる
遠くに座っていたカップルが、こちらを指差して笑っていた
「美味しかったわ。やっぱりこのお菓子には、愛され続ける理由があるのね」
乃絵は満足そうな顔だったが、食べ盛りの男子である眞一郎には、明らかに少なすぎた
「ねぇ眞一郎、絵本を読んで♪」
「えぇっ?絵本なんて持ってないし…」
「これ、読んで♪」
そう言って乃絵が鞄から一冊の絵本を取り出す
タイトルは【ペンギンとダチョウの物語】…眞一郎が中学生のときに描いた絵本デビュー作だった
「ちょ、ちょっと待て!なんでお前がこれを!!!」
「いいから読んで♪」
仕方なく読み始める眞一郎、その肩に乃絵が頭を乗せ絵本を見ている
傍から見れば、幸せそうなカップルに見えるのかもしれない
だが眞一郎にとって自分の絵本を読まされるというのは、恥ずかしすぎる罰ゲームだった
「…ペンギンくんは言いました…どうして僕は速く走れないの?
…ダチョウくんは言いました…だけど君は泳ぎが得意じゃないか、僕には…」
いつの間にか乃絵は眠っていた。眞一郎は絵本を読むのをやめる
『乃絵の髪って、いい匂いがするな…』
乃絵の顔を覗き込むと、口から垂れた涎が、眞一郎の制服にべったり付いていた
「お、おい!乃絵、起きろ。そろそろ授業が始まるぞ」
「……むぅ~…こうやってつけて…むにゃむにゃ……」
体を揺らしても起きようとしない。眞一郎は乃絵をおんぶして教室まで送り届けることにした…
放課後
「眞一郎君~!どこにいるの~?海を見にいこうよ~!」
眞一郎はまるで戦場を駆け抜ける兵士のように、比呂美の視線を掻い潜って学校からの脱出に挑戦する
しかし階段を下りても安心はできない
「しんいちろ~!絵本の続き読んで~!」
下駄箱の前では、乃絵も眞一郎を探していた
男子トイレの窓から外に出ると、校舎の裏から回りこみ、なんとか校門まで逃げることができた
『これで一安心だな。まさか比呂美だけじゃなくて乃絵まで変になっていたなんて…』
乃絵は元々不思議な女の子だったが、今日はいつもより磨きがかかっていた
「おい見ろよ、あの子すげぇ可愛いな」
「あの制服、どこの高校だ?」
「ニーソックス萌え~(*´ω`*)」
何やら校門の前で男子生徒たちが騒いでいる
『なんだなんだ?』
眞一郎も確かめようとしたその時
「眞一郎~♪」
男子生徒たちをかき分けて、愛子が手を振りながらやってきた
「愛ちゃん!どうしたの?うちの学校に何か用事?」
「ううん、眞一郎に会いたくなっちゃったから♪」
「チェッ!また仲上かよ」
「いいよなぁ~ボッチャンは…」
「仲上の彼女?なんだ…残念…(´・ω・`)」
騒いでいた男子生徒たちはワラワラと解散する
「眞一郎、今日もうちの店に来てくれるよね?」
「ご、ごめん…。今日は財布忘れてきたから…」
「そんなこと気にするなよ~。今日は私のオ・ゴ・リにしとくからさ♪」
店まで歩く二人。愛子は眞一郎の腕に抱きつくようにして歩いている
「あのさ、もうちょっと普通に歩こうよ」
「なんでぇ~?」
「歩きづらいだろ…そんなにくっついたら」
「べつにぃ~♪」
「…あの、当たってるから、もうちょっと離れようよ」
「当ててるの♪」
『愛ちゃんもなんか変だ…!そもそも愛ちゃんは三代吉が好きだったんじゃ……』
店に着くと、愛子は眞一郎を招き入れ【本日休業】の札を出してカーテンを引いた
「愛ちゃん…店は?」
「今日はお休みにする。眞一郎に食べてほしい新作の今川焼きがあるの、ちょっと待ってて」
店の奥へ行った愛子が、しばらくして戻ってくる。その格好に眞一郎は驚いた
なぜなら愛子が一瞬、裸エプロンで出てきたように見えたからだ
よく見ると、キャミソールにホットパンツ姿なのだが、正面から見るとエプロンしかつけてないように見える
「どうしたの?あぁ~!エッチなこと想像しただろ~?」
「し、してないって!」
その格好で今川焼きを焼く愛子、眞一郎は目のやり場に困ってしまう
「これが新作の今川焼き。食べてみて」
「うん…いただきます」
先ほど見た、なんとも表現しがたい色の餡に警戒心を抱いてしまうが、恐る恐る食べてみる
「…ん、意外とうまい」
「でしょ~?餡子は変な色だけど、味は良いでしょ?」
「うん、本当にうまいよ。この餡には何が入ってるの?」
「山芋と、オクラと、牡蠣と、マカと、スッポンと…」
ブーーーーッ!!!!
思わず噴き出してしまう
「俺、用事思い出したから帰るよ。じゃあね…」
「だ~め、眞一郎ったら恥ずかしがってカワイイなぁ♪小さい頃は一緒にお風呂も入ったのに」
逃げようとする眞一郎を、愛子は後ろから抱きついて放さない
「眞一郎!いるんでしょ!」
「眞一郎君!ここを開けて!」
店の外から声が聞こえる
「助かった…!」
抱きついた愛子をズリズリと引きずりながら、カーテンを開けて鍵を外す
その瞬間に、比呂美と乃絵が飛び込んできた
「ちょっと!私の眞一郎に何してるの!」
乃絵が眞一郎の手を掴んで、顔を赤くして愛子を睨む。だがその子供っぽい目では迫力がない
「眞一郎君、一緒に帰ろう。おばさんが今夜も“ぶりしゃぶ”だって言ってたよ」
比呂美も眞一郎の手を掴んで、懸命に引っ張る
「眞一郎、今川焼きだけじゃなくて、私を食べてもいいんだゾ」
愛子は眞一郎の顔に胸を押し付ける
愛「眞一郎はね、私みたいに胸の大きい女が好きなのよ!」
眞「いや、そんなことを言った覚えは…」
乃「違うわ。眞一郎は私みたいな小さな胸が好きなのよ」
比「眞一郎君はロリコンじゃない!あの日、着替えを覗いたのは私の身体に興味があるからだよね?」
眞「だ、だからあれは事故で覗いたわけじゃ…」
愛「何言ってるの?バスケばっかりしてて筋肉でゴツゴツのくせに!」
比「ムキィー!アナタは野伏君の彼女でしょ!?眞一郎君と関係ないじゃない!!」
乃「あなただってお兄ちゃんの彼女でしょう」
眞「まぁまぁ…みんな、落ち着いて…」
三人のエスカレートした感情の矛先が眞一郎に向けられる
眞一郎は、じりじりと壁際に追い込まれた
乃絵「眞一郎!私のために絵本を描いて!」
比呂美「眞一郎君!全部ちゃんとして!」
愛子「私のことも見てよ、お願いだよ!眞一郎!」
「……助けて…俺は……俺は……うぅ~」
「眞ちゃん、起きなさい」
母の声で目を覚ます
「……あれ?皆は?」
「何を寝ぼけてるの。今日は踊りの練習があるんでしょう?もう起きなさい」
慌てて隣を見る。もちろん比呂美の姿はそこになかった
―終―