絵本のつづき

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負けるな比呂美たんっ! 応援SS第19弾 『絵本のつづき』  それは眞一郎と比呂美がお互いの想いをはっきりと知ったその日のこと 「見て欲しいものがあるんだけど」  少し落ち着きのない眞一郎が比呂美に告げた。 「なに」 「絵本… なんだ」 「眞一郎くんが描いてたやつ?」 「うん」  眞一郎が先に立ち自室へと比呂美を先導する。 「初めてね、お部屋誘ってくれるの」 「そうだっけ」 「そうよ、覚えてない?」  もちろん眞一郎は知っていたが、初めて自室に比呂美を招く事が気恥ずかしく、とぼける形でしか答えら れない。  眞一郎が自室の戸を開け、比呂美が続く、  比呂美は部屋に一歩踏み入れ周囲を見回す。 「やっと入れた」  思わず呟いた。 「え、なに?」 「ううん、なんでも」  眞一郎は机の上に置いてあった大き目の原稿を取り上げ 「これなんだけど」  両手で比呂美に差し出した。  比呂美はそれを両手で受け取ると、周囲を見回してからベッドを示し 「座っていい?」  と確かめた後ベッドの端に浅く腰掛けた。  はじめに表紙を眺め、数秒目を閉じてから深呼吸し 「じゃあ、拝見します」  比呂美はゆっくりページを捲りながら時間をかけて先へ進む。  途中、動きが止まる頁などもあり時間が過ぎてゆく  見守る眞一郎は自分の内面を直接覗き込まれているみたいで鼓動が高鳴っている。  比呂美はゆっくりと時間をかけ一通り見終わった。 「綺麗な世界…」  そう呟いて再び頁を繰る。 「そうかな」  眞一郎の声は少し擦れる。  比呂美は眞一郎を少し悪戯っぽく見つめ 「ふうん、これが眞一郎くんのタイプの女の子なんだ?」 「いや、まあ、ハハハ」 「ね、この子のことどう思ってるの?」 「え、まあ、その…」  はっきりしない眞一郎。  比呂美は小学校の教師が小学生に説明するようなゆっくりとした口調で語る。 「女の子はこんなに綺麗なだけじゃないかもよ?」 「それはそうかもしれないけど」 「あんまり綺麗なイメージもたれちゃうとこの女の子も困るんじゃないかな?」 「大丈夫、一応ある程度は判っているつもり」 「それで… この女の子って、ひょっとして、私?」 「う、うん」 「眞一郎くんは、私の想いをこんなに赤裸々に見抜いていたくせに、ずっとほったらかしにしてたんだ」 「え、それは」 「私が泣いてるのに気がついていながら知らん振りしてたんだ」 「そういうつもりじゃあ…」 「…」  比呂美は悪戯っぽい笑みを浮かべたまま少し口先を尖らせた。 「ごめんなさい、仰るとおりです」  眞一郎は今までのことを思い出し、ここは素直に謝った。  比呂美は再び頁を繰り、原稿を見返している。 「どうかな、気に入ってもらえたら嬉しいんだけど…」  眞一郎は頭をかきながら比呂美の評価を待った。  比呂美は目を閉じながら顔をあげ小さく呟いた。 「…50点」 「…」  眞一郎は思ったより辛口の比呂美の採点に内心かなり動揺した。  こういった作品の場合、受け入れられるかどうかは個人差がかなり大きいと覚悟はしていたが…  比呂美はもう少し時間をかけて種明かしするつもりだったが、眞一郎の傍目にも分かるほどの気落ちした 表情を目の当りにして考えを変えた。  相手が勘違いしないようにゆっくりと心に届くように話した。 「あのね、実は採点には続きがあるの…」 「続き?」 「そう、続き」  訳が判らない眞一郎は混乱し、まともに考えがまとめられない様だ。 「もう、あれだけ人の心を見抜けるのに、今は全然解らない?」  少し拗ねたように声色を使い、これから先の内容に興味を持たせる。 「ごめん、よくわかんない、続編を描けばいいのかな?」 「ハ・ズ・レ!」 「…ごめん、わかんないや」  動揺が大きすぎたんだろうか、眞一郎は本当に混乱しているようだった。  さすがに可哀想になり種明かし。 「ペーパーテストは50点満点」 「ペーパーテスト?」 「うん、それで実技が残り50点」 「実技?」 「そ、実技。 受験資格は眞一郎くんだと条件付で2年後、4年後なら無条件かな?」 「受験資格?」 「これ以上言わせる気?」 「…え、と」 「願書は1名だけ受け付けます」 「それって」 「ご応募お待ちしております」 比呂美はその場でお辞儀の格好をしてみせる。 「あの…」 「一生かけて採点してあげる」 「比呂美…」  比呂美は立ち上がって放心状態の眞一郎に優しく原稿を返し、戸口へ向かう。 「がんばってね、応援してる」  比呂美はそれだけ言い残すと笑顔の頬を染めながらゆっくり戸を閉めた。  それは眞一郎がこの家で初めて目にした、比呂美の幸せそうな笑顔だった。 了
負けるな比呂美たんっ! 応援SS第19弾 『絵本のつづき』  それは眞一郎と比呂美がお互いの想いをはっきりと知ったその日のこと 「見て欲しいものがあるんだけど」  少し落ち着きのない眞一郎が比呂美に告げた。 「なに」 「絵本… なんだ」 「眞一郎くんが描いてたやつ?」 「うん」  眞一郎が先に立ち自室へと比呂美を先導する。 「初めてね、お部屋誘ってくれるの」 「そうだっけ」 「そうよ、覚えてない?」  もちろん眞一郎は知っていたが、初めて自室に比呂美を招く事が気恥ずかしく、とぼける形でしか答えら れない。  眞一郎が自室の戸を開け、比呂美が続く、  比呂美は部屋に一歩踏み入れ周囲を見回す。 「やっと入れた」  思わず呟いた。 「え、なに?」 「ううん、なんでも」  眞一郎は机の上に置いてあった大き目の原稿を取り上げ 「これなんだけど」  両手で比呂美に差し出した。  比呂美はそれを両手で受け取ると、周囲を見回してからベッドを示し 「座っていい?」  と確かめた後ベッドの端に浅く腰掛けた。  はじめに表紙を眺め、数秒目を閉じてから深呼吸し 「じゃあ、拝見します」  比呂美はゆっくりページを捲りながら時間をかけて先へ進む。  途中、動きが止まる頁などもあり時間が過ぎてゆく  見守る眞一郎は自分の内面を直接覗き込まれているみたいで鼓動が高鳴っている。  比呂美はゆっくりと時間をかけ一通り見終わった。 「綺麗な世界…」  そう呟いて再び頁を繰る。 「そうかな」  眞一郎の声は少し擦れる。  比呂美は眞一郎を少し悪戯っぽく見つめ 「ふうん、これが眞一郎くんのタイプの女の子なんだ?」 「いや、まあ、ハハハ」 「ね、この子のことどう思ってるの?」 「え、まあ、その…」  はっきりしない眞一郎。  比呂美は小学校の教師が小学生に説明するようなゆっくりとした口調で語る。 「女の子はこんなに綺麗なだけじゃないかもよ?」 「それはそうかもしれないけど」 「あんまり綺麗なイメージもたれちゃうとこの女の子も困るんじゃないかな?」 「大丈夫、一応ある程度は判っているつもり」 「それで… この女の子って、ひょっとして、私?」 「う、うん」 「眞一郎くんは、私の想いをこんなに赤裸々に見抜いていたくせに、ずっとほったらかしにしてたんだ」 「え、それは」 「私が泣いてるのに気がついていながら知らん振りしてたんだ」 「そういうつもりじゃあ…」 「…」  比呂美は悪戯っぽい笑みを浮かべたまま少し口先を尖らせた。 「ごめんなさい、仰るとおりです」  眞一郎は今までのことを思い出し、ここは素直に謝った。  比呂美は再び頁を繰り、原稿を見返している。 「どうかな、気に入ってもらえたら嬉しいんだけど…」  眞一郎は頭をかきながら比呂美の評価を待った。  比呂美は目を閉じながら顔をあげ小さく呟いた。 「…50点」 「…」  眞一郎は思ったより辛口の比呂美の採点に内心かなり動揺した。  こういった作品の場合、受け入れられるかどうかは個人差がかなり大きいと覚悟はしていたが…  比呂美はもう少し時間をかけて種明かしするつもりだったが、眞一郎の傍目にも分かるほどの気落ちした 表情を目の当りにして考えを変えた。  相手が勘違いしないようにゆっくりと心に届くように話した。 「あのね、実は採点には続きがあるの…」 「続き?」 「そう、続き」  訳が判らない眞一郎は混乱し、まともに考えがまとめられない様だ。 「もう、あれだけ人の心を見抜けるのに、今は全然解らない?」  少し拗ねたように声色を使い、これから先の内容に興味を持たせる。 「ごめん、よくわかんない、続編を描けばいいのかな?」 「ハ・ズ・レ!」 「…ごめん、わかんないや」  動揺が大きすぎたんだろうか、眞一郎は本当に混乱しているようだった。  さすがに可哀想になり種明かし。 「ペーパーテストは50点満点」 「ペーパーテスト?」 「うん、それで実技が残り50点」 「実技?」 「そ、実技。 受験資格は眞一郎くんだと条件付で2年後、4年後なら無条件かな?」 「受験資格?」 「これ以上言わせる気?」 「…え、と」 「願書は1名だけ受け付けます」 「それって」 「ご応募お待ちしております」 比呂美はその場でお辞儀の格好をしてみせる。 「あの…」 「一生かけて採点してあげる」 「比呂美…」  比呂美は立ち上がって放心状態の眞一郎に優しく原稿を返し、戸口へ向かう。 「がんばってね、応援してる」  比呂美はそれだけ言い残すと笑顔の頬を染めながらゆっくり戸を閉めた。  それは眞一郎がこの家で初めて目にした、比呂美の幸せそうな笑顔だった。 了 ●あとからあとがき 6話まで視聴済み 比呂美に絵本をみせる場面を仮想してみたおハナシです。 私なら、絶対みせらんないですね、恥ずかしすぎて死んだ方がマシです、ええ。

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