過去と、現在と、将来と 3 親離れ子離れ

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 true tears  SS第二十七弾 過去と、現在と、将来と 3 親離れ子離れ  博も加わって比呂美と眞一郎の結婚についての家族会議が始まる。  比呂美はアルバムを出して四人の過去の話を聞きたくなる。  その前に理恵子はコーヒーを飲もうとする。  眞一郎父は博、眞一郎母は理恵子、比呂美父は貫太郎、比呂美母は千草。  前作の続きです。  true tears  SS第二十六弾 過去と、現在と、将来と 2 白い結婚  http://www39.atwiki.jp/true_tears/pages/345.html  true tears  SS第二十五弾 過去と、現在と、将来と 1 恋人握り  http://www39.atwiki.jp/true_tears/pages/326.html  true tears  SS第十一弾 ふたりの竹林の先には  http://www39.atwiki.jp/true_tears/pages/96.html  true tears  SS第二十弾 コーヒーに想いを込めて  http://www39.atwiki.jp/true_tears/pages/245.html  true tears  SS第二十一弾 ブリダ・イコンとシ・チュー  http://www39.atwiki.jp/true_tears/pages/275.html  true tears  SS第二十二弾 雪が降らなくなる前に 前編  http://www39.atwiki.jp/true_tears/pages/287.html  true tears  SS第二十三弾 雪が降らなくなる前に 中編  http://www39.atwiki.jp/true_tears/pages/306.html  true tears  SS第二十四弾 雪が降らなくなる前に 後編  http://www39.atwiki.jp/true_tears/pages/315.html 「話はすべて聞かせてもらった」  おじさんは引き戸を勢い良く開けてから、中に入って来る。  自分の席で胡坐をかいて、三人に告げる。 「足を崩してもいいぞ。長話になっていたな」  おじさんに言われたように正座をやめると足が痺れていた。 「立ち聞きをしていたのか?」  眞一郎くんは眉を顰めていた。 「さすがに正座していた。立ったままだと湯飲みが熱くても、持っていなければならない」  おじさんは平然と返していて、私は吹き出してしまった。  突発的に今までと異なる言動だったからだ。 「あなた、比呂美に笑われていますよ」  おばさんは悪い気がしていないようで、右手を口に当てている。 「昔は千草によく冗談を言って笑ってもらっていた」 「ありましたね、そういうことが。私が突っ込んであげたり、貫太郎とあなたが漫才したり」  おじさんとおばさんは懐かしみつつ、振り返ってくれていた。  両親がいたときにそういうことがあったような感覚がある。  内容を忘れていても頭の中の引き出しには仕舞われているのだ。 「親父は何で廊下にいたんだ? わざわざ湯飲みまで持って」  眞一郎くんは話を戻そうとしたが、別にそういうことは流しておいて欲しかった。  具体的にわからなくても、だいたいは想像できるのにだ。 「比呂美ちゃん、解説をお願いね」  おばさんはちゃん付けで促してきた。私が不満げな顔をしていたのを見抜かれたようだ。 「さっき用事があるからと、おばさんがおっしゃっていたのはおじさんに教えに行かれた。  もともと玄関前を掃いていたのは、私たちを待ち伏せしていたのでしょう。  後は勝手口からふたりは台所に入って、お茶を沸かす。  おじさんは湯飲みを持って廊下側の引き戸から出て居間のそばで待機していました」  淡々と推理をしてみると、おじさんが深く頷いてくれた。  私は微笑んで影ながら見守ってくれていたおじさんの行為に感謝した。 「あなたたちを怒らせてしまって出て行かれたら、博さんに出くわす。  喧嘩になったら、博さんの判断で入って来てもらうわ。  私は何があっても正座をしていようと思っていた。  さすがに今は足を崩しているけどね」  おばさんは軽々と決意を明かしてくれていた。  私たちがおばさんと対峙するのならば、逆も同じなのだ。  だからあれほどまでに否定的にして、私たちの絆を確かめようとしてくれていた。  おかげで眞一郎くんの本心を確かめられたし、今後の祭りを楽しめるようになりそうだ。  あの祭りで味わった傷も癒されてゆくだろう。 「ありがとうございます。そこまでは気づきませんでした」  私は浅はかさを素直に恥じた。したり顔で推理できたのは一部に過ぎなかったのだ。 「他人行儀な言い方はやめてよね」  おばさんは照れながら棘を刺してきた。 「すごく嬉しくて……」  私まで頬が熱くなって釣られてしまう。 「ふたりの判断には助かったよ。  まずはお袋と話し合ったほうが良かったから。  親父が一緒だとお袋の攻めが弱くなってしまう。  でも本気で別れさせようとしているのかもと焦った」  眞一郎くんもおばさんとだけで会いたかったようだ。  この場におじさんがいなかったら、また同様にしなければならなかった。 「ふたりの幸せのためならば別れたほうが良いとも考えていたわ。  眞一郎は比呂美の気持ちをまったくわかっていなかったし、比呂美は眞一郎を甘やかすし。  お互いにとって良くない組み合わせに思えていた」  おばさんはにこやかに語るのが、背中が寒く感じさせた。  簡単に眞一郎くんを許そうとしていたのは事実だ。 「理恵子が先に話していて良かったかもな。  ふたりが両想いとわかればすぐに補佐をしてあげようと思ってしまう」  おじさんは認識の不足を悔やんでいた。  私が引っ越しを打ち明けたときも詳しく訊こうとはしなかった。  あれはおばさんとの関係が修復しにくいと納得してくれていた。  石動さんとのことだとは夢にも思わなかっただろう。  おばさんが踊り場で仕入れた情報を、おじさんにどこまで話しているかは不明だ。  だからおじさんに洞察力が不足しているとは限らない。 「だからさっきの打ち合わせで、私が正しかったのはわかったでしょ」  おばさんが満面の笑みを浮かべて浸っていると、私は頷いた。 「それにしても結婚まで考えているとは」  おじさんは思案顔で腕を組んでいる。 「今朝の眞一郎の姿からではわかりませんでしたね」 「確かにな、あれでは帰宅後に結婚の承諾を得に来るようには思えない」  ふたりは目配せをして納得し合っていると、眞一郎くんは表情を固くする。  私はその場にいなかったことを後悔してしまう。  仲上家にいれば挨拶でお互いの心境をわかり合えていただろう。 「どういう顔でしたか?」  私はふたりを見比べた。 「早起きをしてすがすがしそうにしているが、浮き足立っていた。  仲直りというか、うまくできただけだろうな」 「鼻の下を伸ばしすぎだわ。  眞一郎がいなくなって、帰りに比呂美が来てくれるだろうとは予想していたけどね」  何もかもが見透かされていたようで、眞一郎くんと私は恐縮してしまう。  年の功なのか私たちの行動を巧みに読まれていたのだ。  結婚まではわかっていなかったのは、私たちが斜め上を行き過ぎていたのだろう。  眞一郎くんの絵本が私たちの将来を描こうとしているために、先走りしてしまう。  絵本の内容は秘密にするために眞一郎くんと口裏を合わせておこう。 「下校は私から登校してすぐに誘いました。ひとりで来るのは寂しいので」  眞一郎くんの言動を待っているといつになるかわからないからだ。  たぶん学校では会話を控えようとするかもしれない。  祭りの翌朝に私が部屋に誘った影響がありそうだ。 「初々しくていいわね」 「結婚とかはまだ先のことだからな。今の状況を楽しんでおけばいい」  おばさんは頬を染めていて艶やかな眼差しだ。  おじさんは応じつつも、私たちに経験から述べた。  私は冷めたお茶を口に含んだ。  おじさんは私の動作に何かを気づいたようだ。 「お茶が冷めるまで四人で会話をしたのはかなり久しぶりかもな」  しみじみと言うおじさんの解釈に誰もが首を縦に振った。  眞一郎くんが目配せをしてきたので、意図を理解する。  私は鞄を開けて一冊のアルバムを取り出す。 「四人の過去の話が聞きたいです」  右側にいるおじさんにアルバムを提出すると受け取ってくれた。  おばさんのそばに寄ってふたりで眺めていて、眞一郎くんは興味深げにしている。 「うちにあったのと同じのが多いな」 「当然でしょ。向こうにも渡していたし、あちらからも貰っているし。  でもいくつかは今でも残してあるわ」  ふたりは私たちがいないように仲睦ましく眺めている。  肩が触れ合いそうになるほどで、時折に見つめ合って頷き合う。  お父さんとお母さんがしていたのと重なり、間に私がいるような情景が浮かぶ。  嫌悪感を示されて空気が乱れるかもと心配していたが、杞憂だったようだ。 「話してあげたいことがいくつもあるわね」  おばさんはそっと写真を撫でながら洩らした。  ここからだとよく見えなくて覗き込みたくなる。 「伏せておきたいこともあるのだが」  おじさんは渋っていた。 「博さんのほうがましだと思うけど。  コーヒーが飲みたくなったわ」  おばさんは急に立ち上がって、お盆を持ってすぐに台所へ向う。 「手伝います」  私も立ち上がって後を追う。  お袋が合図をしたかのように比呂美は居間から去った。  ふたりは何かと一緒に台所へ赴く機会が増えている。  祭りの前には比呂美がお手伝いで忙しくて晩御飯をともにするときが多かったからだ。 「親父とお袋と雰囲気が変わったな」  湯飲みに両手を添えている親父に感想を伝えた。  親父は目を細めて返答する。 「千草が健在だった頃に戻っただけだ」  長々と語らずに一言で済ました。  湯浅夫妻だけが幸せだったわけではなかったのだ。  仲上家にも同様で明るい笑い声が響いていた。  俺が幼くて今日の出来事を数多く話すようにしていたからだ。  当然ながら比呂美だけでなく愛ちゃんたちとのことも含めてだ。  だがいつの間にか成長するにつれて口数が少なくなって、食事中は静かなのが当然になった。 「眞一郎は比呂美と理恵子があの頃から不仲なのを知っていたか?」  親父が俺の理解度を測るためか真摯に問うた。 「何となくなら気づいていた。でもどうしてかはわかっていなかった」  あの頃からか、ふたりが余所余所しく接するようになっていた。  千草さんの死後に比呂美と貫太郎さんを仲上家に招いていた。  でも比呂美は俯いてばかりで、お袋は目を合わそうとはあまりしなかった。 「理恵子は比呂美に嫌われていると思っていたようだ。  そんなことはないとは言っておいたが、そう思えなくはなかった。  理恵子なりに比呂美のためにしてあげていたのだがな。  比呂美の言動を相談していたが、対処がしにくかった」  親父とお袋は以前から夫婦だけで話し合っていたようだ。  あの頃の比呂美は千草さんの代わりになろうと必死だった。  俺や愛ちゃんではどうにもならない問題で、遊びに誘うのもためらっていた。 「比呂美の思考は複雑だから」  俺はふと洩らしてしまうと、親父は顔を歪める。 「それをわかってあげるようにしろよ。  理恵子が千草の写真を切り取ったのは、俺のせいだから。  俺は理恵子の気持ちを汲んであげていなかった」  比呂美とあの写真との接点が俺にはわかりにくい。  親父がしていたことを俺がしているのだろうか?  お袋が親父ではなく貫太郎さんのようになれとは言っていた。  親父のせいでお袋が悩んでいたというのはありえるのだろう。 「祭りのことはいつか比呂美に謝ろうとは思っていた。  でも付き合えるようになって落ち着いてからのほうが良さそうだった。  お互いに都合の悪い部分には触れないようにしていたから」  折り合いを付けておかねばならないことが、いくつもあった。  昨晩と下校の雑談だけでは足りていない。 「祭りの熱が冷めないうちのほうがいいぞ。  比呂美なりに許してくれてからだと、傷口を塞いでしまっている。  理恵子のときは千草が体調を崩してからで、 俺がはっきりと気づいたのは比呂美の家出の後だからな」  親父は右手を額に当てて悔やんでいた。  お袋がいつからか知らないが、長期間も悩んでいたのだろう。  比呂美も祭りのことで同じようになっていたのかもしれない。  あのときの俺はただ比呂美の前から去って、乃絵を追うしかできなかった。 「千草が貫太郎のそばにいれば発覚しなかったのだが。  理恵子も忘れていたのかもしれない。  眞一郎は最初に比呂美のことを考えてあげろよ。  口にせずに黙っているときもあるがな」  お袋は多弁であるからわかりやすくはあるが、比呂美や千草さんの前では沈黙していた。  比呂美も同様で口にしたときには、かなり追い詰められてからだった。 「心掛けているよ、プロポーズをしてあるし。  それだけでは不充分なのも」  言葉をいくら連ねても伝わらないし、態度だけでも不満が残るのだろう。  あれほどまでに親父とお袋が親しそうに見えていても、お袋は闇を抱えたままだったのだ。 「結婚の約束までしているとはな。  交際を明かしただけでも、親戚から結婚式の日取りや孫の話まで出るので同じだ。  貫太郎と千草がいれば、今夜は飲み明かしていただろうな」  親父は見上げて天国にいるふたりに向けて語った。  未成年である俺たちは祝杯を上げるわけにはいかなかった。 「俺たちはオレンジジュースならできる」 「いつかうまい酒を呑めるようにならないとな」  おばさんの後姿を捕らえたまま台所に着いた。 「アルバムまで持って来ているとはね」  小棚にあるコーヒーを探しながらだった。 「念のために用意をしていたのです。湯浅家のことは私からと眞一郎くんに頼んでいました」  私はコーヒーカップの用意をするために食器棚を開ける。  一年半も台所を利用する機会があると、仕舞っている場所がわかるようになっていた。 「そういうところはどちらに似たのかしら?」  おばさんはコーヒーが入った袋を手にして悩んでいる。 「特定できないです。お母さんならさりげなく誘導できそうだし、 お父さんならもっと堂々としていそうだから」  ふたりならそれぞれのやり方をしていただろう。  問題が起きそうなときには事前に対処していて、ややこしくはしなかったはずだ。 「絵本を読んで欲しそうな感じだったわ。  どういう内容か興味があってわざわざ持って来たような」  おばさんは紫の袋に決めて他のを仕舞った。 「あまり時間を掛けたくはないから、インスタントがいいわ」  スプーンを手にして粉をカップに入れてゆく。  私はやかんに水を入れてコンロに置いてスイッチをひねる。  特にすることのない私はおばさんを見つめる。 「……あの写真もあるのかしら?」  おばさんはシュガーポットを用意しながら訊いてきた。 「アルバムの最後に挟んでありますが、そこまで話していただかなくてもいいです。  切り取ったという結果よりも、何があったのかという過程が知りたい。  両親はそれを望んでいると思いますし、結果は人それぞれに導かれるだけでしょう。  おばさんは切り取ることで気を紛らわせていましたが、お母さんと私には日記があります」  私は両手を胸元で合わせて緩やかに述べた。  四人の過去の話を聞いていれば、おばさんの苦悩がわかるだろう。  感情が高ぶったおばさんがお母さんの顔を切り取ってしまった。  行為そのものを重視しないように考えたのだ。  もう写真はあまり残されていなさそうだし、湯浅家のものはあるからだ。 「あなたって、ものわかりが良すぎるわね。  私も日記を付けていれば、あんなことをしなかったかも」  瞼を震わせているおばさんは堪えようとしている。 「でも日記に書けるのは文章化できるときだけですから。  突発的な感傷には効果がありません」  冷徹に判断を述べておいた。  日記には欠点があり、記述者のすべてを知りえない。  お母さんがつらい想いをしていても、触れずにおいているかもしれないのだ。 「比呂美はかなり大人なのね。  眞一郎と同じ年なのにここまで違うとは」  おばさんは小さく口を開けてから、にんまりと頬を膨らませる。  おばさんの発言を否定していたのを気に留めていなさそうだ。  以前なら口答えしたと逆鱗に触れていただろう。 「お母さんが亡くなってから変わりました。  算数の時間に夕食が何かと期待する同級生はいても、 何を作ろうかと考えるのは私だけですから」  悲壮感を漂わせずに後ろに手をまわした。  お母さんに近づけるのは幸運でもあるし、視野が広がった。  算数は家計簿を付けるために学ぼうとしたし、 お母さんのノートを読むために漢字を覚えようとした。 「そういうふうに考えていたのね。  あの頃から無邪気な微笑をしなくなっていたのかしら」  おばさんのほうが悲哀に満ちていた。  指摘されるまでもなく年相応の対応ができずにいた。  泣かないように決めたのもあの頃からだった。  でも何かがあったときに涙は流れていたが。 「遊んでいるとき以外はできなくなっています。もう子どものままではいられませんから」  早熟にならざるを得なかったのだ。  できる限り必要なものを取得しようとした。  料理や洗濯や掃除などで、お父さんは当てにならなかった。 「そんな比呂美が眞一郎からプロポーズをされるとはね。  どうしてそうなったのかしら?」  急におばさんが話を逸らされると、一瞬で頬が熱くなってくる。 「正式なのはまだですが、眞一郎くんと話をしていると自然にそうなっただけです」  まだうまく伝え切れなくて俯き加減になってしまった。 「そっちの話も今度に聞かせてもらうわ。  もう眞一郎のことは比呂美に任せる。  あの子は巣から出てから飛び立とうとしているわ。  でも飛ぶことしか考えていなくて、残された者や飛んだ後のことまでは。  だから比呂美をあんな目に逢わせてしまったわ。  私も子離れをするから、よろしくね」  微笑みながら真面目に頼んでいても寂しげだった。  母として息子を取られたくないから、私につらく当たっていた部分もあるはずだ。  でもいつかは私が眞一郎くんを占める割合が増えてゆかねばならない。 「私は甘え足りないし、眞一郎くんはしっかりしています。  速度は遅いように見えても、私が早いだけですから。  そんなに急がなくても良いと思いますし」  私のようなのは特殊であるから、基準にはなりえない。  眞一郎くんはおばさんとおじさんの庇護にいるべきだ。 「比呂美は私にできることがあったら言ってね。  それとあんなことがあれば眞一郎をひっぱたいてもいいから。  そこまでしないとわかってもらえないかもよ」  おばさんは右の手首にスナップを利かせて水平に払ってみせた。  やりなれていそうなほどだが、実際におじさんにしていたかは不明だ。 「暴力は苦手です。  私を怒らせるとコーヒーに塩を入れると眞一郎くんに伝えていますので」  にこやかに口端を上げて、右に首を傾ける。 「良い案よね。  眞一郎は比呂美の料理をいつも怯えながら食べることになって」  おばさんは悪戯っぽく笑みを浮かべて賛同してくれた。 「今回はどうするの?」 「祭りのことはおばさんに指摘するまでできなかったから、塩を入れたいです。  でもおばさんに結婚のことを言ってくれたから、差し引きなしで普通にします」  私はさっきの体勢のままで審判を下した。 「いつか甘いコーヒーを飲ませられるようになれればいいわね」  おばさんの意味深な発言を熟考してしまう。 「どういうことですか?」 「怖がらせてばかりだとかわいそうだから、ごほうびをあげないと」  右目を閉じてごまかされた。 「採用できるときがあればいいですね」 「いつになるのかわからないけど、眞一郎が比呂美のことをもっとしっかりしてからかな?」  遠くを眺める視線でありながら、朱に染まっていた。                (続く)  あとがき  博と理恵子は比呂美と眞一郎の交際を認めようと結託すれば、うまく立ち回りました。  本編の理恵子は比呂美のために眞一郎の部屋に洗濯物を届けさせたり、 祭りの朝には眞一郎とふたりきりにさせたり、チーズケーキや鰤大根がありました。  博は特に何もしていなさそうでも、理恵子からの報告を聞いていたでしょう。  このSSでも博と理恵子の仲は修復されており、仲上家は明るい家庭になっています。    過去編の要望がありましたし、千草と貫太郎を活躍させたくて描いていきます。  アルバムの写真を眺めながら、回想してゆくという形式します。  ゲームにある回想モードを見てから、現在にいる四人が会話をしてゆきます。  よって比呂美の登場する場面は少なくなりますが、現在の視点は比呂美が中心です。  千草の日記と貫太郎との会話を把握しているからです。  後日談については描ければ投下します。  比呂美と眞一郎について仲上家として合意がなされているので、続けられます。  次回、『過去と、現在と、将来と 3 憧れの女性』  踊り場に差し入れを運ぶために仲上家へ訪れる理恵子。  いつも微笑みを絶やさない静流が出迎えてくれる。  博にとっては都合の悪いことが暴露されてしまう。  後日談の次回、『自作のウェディングドレス』  比呂美はふたりの絵本のために結婚雑誌を買って来た。  部屋で眞一郎と寄り添って眺めていても、実感が湧いてこない。  眞一郎は比呂美に頼みごとをしてくる。

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