二人でおつかい

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=3話の海岸沿い道路のシーンを見てから読んでください= =あの笑顔を300%増(目標値)にします= ="仲上家の騒々しい正月"の後のお話です= 二人でおつかい 少しどんよりとした雲り空、冬の休日。 二人は海岸沿いの道を並んで歩いていた。父の知人宅に酒の届け物を頼まれた 為である。幸運にも"二人"で、と言い渡されていたことから休日に揃ってのお 出かけとなった。 - - - - - - - - - - - - - 「今日は風がちょっと強いな」 「うん」 海から吹き付ける風は耳が痛くなる程ではないが、それなりに冷たい。風上 側に眞一郎がまわって比呂美は道路側を歩いている。 「うおっ」 強めの風に眞一郎が、寒いっ、という感じで身をすくめた。 「うわっ、寒くなってきたね。じゃ、よいしょっと」 眞一郎の様子を見て、比呂美は自分の右腕を彼の腰に手を回してから、左手 を取り、自分の腰に回し体全体をぴたっ、と密着させる。 「お」 「こ、これで、暖かいよね?」 照れる眞一郎と、頬を染める比呂美。 厚手のコート越しに暖かさを感じるはずもないのに暖かいと主張してみたり、 わざと歩く速度を落としてみたりと、いかにも、である。実際に鼓動が速まっ ているだろうから、暖かいというのは本当だろう。比呂美が残念なのは、コー トの厚みが邪魔をして胸をいくらがんばって当ててみても、効果が薄いこと であったことだが、本人は全力投球だ。彼は気付いていないが… 「暖かいな」 「うん、あったかい…」 「二人でお出かけって、いいな」 「うん…、いいね…」 「…」 「…」 そんな二人を少し離れて観察している人物がいた。 「はぁ」 今の時間帯、交通量は多くはないが人目が全くないわけではない。昼間から 堂々とびったりとくっついて歩く姿に、ため息が出てしまった。 「そうだ」 急いで携帯電話を出してすかさず写真を取る。しっかりと顔がわかるポジショ ンを取り、何枚か撮った後、どうしても独り言が出てしまう。 「気付かないかなぁ?普通?」 自分ではやばい?という感じもあったのだが、二人は気付かないまま、ゆっ くりと歩いて去っていった。 「さすがに面白くない、うん」 見つかって大慌てしたところをどうからかおうか?という期待を見事に外さ れては、不満が残ってしまう。早速誰かにメールして言いふらそうか?と考 えていて、もっと良いアイデアが浮かんできた。バラすよりも写真を見せて 何か奢ってもらおうという魂胆である。写真は欲しがるだろうから、高く売 れそうだ。たまたまこの辺りに用事で来ていた朋与は、軽やかな足取りで自 宅へ向かっていった。 - - - - - - - - - - - - - 住宅が多くなってきた辺りで密着を解き、時間がかかった分を急ぎ足で歩い て取り戻して知人宅に到着した二人。 「こんにちはー」 「こんにちはー」 広い玄関で声をかける。 「おおー、坊ちゃん、お嬢様、いらっしゃい。わざわざどうも」 出迎えてきたのは、"おじさん"である。にこにこと人の良さそうな笑顔を二 人を奥の方へ案内していく。 「ちょっとお茶でも飲んでいって下さいな。寒かったでしょう?」 "おばさん"がお菓子とお茶を持って、ぱたぱたとやってきた。 「あ、おかまいなく」 「おかまいなく」 既に奥まで通されているが、一応遠慮してみる。少し世間話をしていると、 今度はばたばたと大勢やってくる気配がした。 「おお、いるいる」 「ふーん、この子がぁ」 「あら、可愛いじゃなーい」 次々とやってくるのはこの家の娘達と"おばさん"連合軍。この家の娘の一 人は赤ん坊を抱いている。"おばさん"連合軍は近所からも来ているようだ。 品定めをするように、じっくりと比呂美を観察している。 「ちょっと、何ですかっ。こんなに大勢で!」 眞一郎はこの家に入った時に何か忘れていた気がしていたのだ。そして、 イヤな予感も。これがそうだった。 「あらっ、かばっちゃったりして」 「そんなに好きなの?」 「私もかばってー」<がらがら声で脳内再生して下さい> 比呂美は真っ赤な顔で小さくなってしまっていた。眞一郎が守ろうとしても 全てが無駄になり、事態を改善できないまま、なすがままに観察されてしま う。 「あっ、赤ん坊を抱かせてみましょうよ」 この家の長女が自分の子供を差し出して、比呂美に抱かせてしまう。 「あっ、かわいい~」 少し慌てながら赤ん坊を受け取ると、自然な微笑を見せる比呂美。 「!」 眞一郎はその笑顔を凝視する。 「お~や、見とれちゃって!」 「まぁ、それだけ可愛いとねー」 「あははっ」 彼はすっかり忘れていた、小さいころから弄ばれていたことを。それから、 "おばさん"連合軍は眞一郎と比呂美とで遊んでいたが、ある時、眞一郎は とんでもない光景を目にすることになる。 「あー!」 赤ん坊は楽しげに比呂美の胸を触り、揉んでいた。 「きゃっ、ちょっとくすぐったいかも~♪」 笑顔の比呂美はあまり気にしていないようだが、眞一郎にとっては一大事で ある。 (え!?えっ!?ちょっと、お前!止めろよ~。そ、それは俺の…) 眞一郎はちょっとパニック気味。しかし、"おばさん"連合軍は楽しげだ。 「大丈夫よ、坊ちゃん!その子は女の子だから!」 「あらあら、喜んじゃって」 「でも、まだ早いわよねー」 「そうねぇ、まずは"お嫁さん"、"若奥様"、その後でしょー?」 正月に聞いた大好きな言葉が久しぶりに飛び出たことで、比呂美は頬を染め ながら満面の笑み。 「ちょっと喜びすぎね」 「そうね」 上げてから落とすタイミングも熟知している"おばさん"連合軍。しかし、 そんなことでは比呂美の機嫌を損ねることはできない。 (お嫁さん…若奥様…その後は…………) 「だって、まだだもんね」 「そうそう、まだまだ」 「まだ学生でしょう?」 (お嫁さん…若奥様…その後は…………) 比呂美の妄想を誰も止めることができない。眞一郎といいコンビである。 (お嫁さん…若奥様…その後は…………) 「あっ、そうだっ!若奥様って言ったら」 「何?」 「あれよ、あれ」 「髪の毛長いし、できるでしょ?」 「そうねぇ、いいんじゃない?」 (お嫁さん…若奥様…その後は…………) "おばさん"連合軍はどうやら、また新しい遊びを思いついたようだ。 比呂美の後ろに回り、何やら髪型をいじっている。その間眞一郎は向うを向 いて待たされていた。 「はい、できた!いいわよ、坊ちゃん!」 振り向いた眞一郎に、仰天の光景が飛び込んできた。 「えへへっ、どお?眞一郎くん♪似合う?」 それっぽい格好にご満悦の比呂美。赤ん坊へ視線を移してから眞一郎へ瞳を 向ける。 「!!!!!!!!!!!」 (あぁ…) 微笑んでこちらを見ている姿、その笑顔はある髪型で飾られていた。 眞一郎、至福の時間。じっくりと網膜に焼き付ける。 その時間を止めたのは帰りの遅い二人を心配してやってきた彼の母だった… 「な、な、なな、なっ、ななっ、何なのっ!?」 凄まじいばかりに動揺した声が部屋に響く。眞一郎の母は、その比呂美の姿 に驚きを隠せなかった、隠せるはずがなかった。 所謂、若奥様ヘアー。 <その後の惨劇を文章で描写することは困難です、よって省略します> END -あとがき- 少し暴走しましたが、湯浅比呂美若奥様シリーズ第二弾です。 若奥様ネタを気に入った方が見受けられたので、書いてみました。 二人のセリフが少ないのは、3話のシーンが思い出されて自然とそうなった からだと思います。たぶん、あの時無言だったんだろうなぁ、と感じていた からでしょう、精進します。 その代わりと言ってはなんですが、密着歩行?を使いました。 比呂美はこの後"若奥様ごっこ"にハマります。次は学校で愛妻弁当かなぁ… 最後に、読んで下さってありがとうございました。
     =3話の海岸沿い道路のシーンを見てから読んでください=         =あの笑顔を300%増(目標値)にします=        ="仲上家の騒々しい正月"の後のお話です= 二人でおつかい 少しどんよりとした雲り空、冬の休日。 二人は海岸沿いの道を並んで歩いていた。父の知人宅に酒の届け物を頼まれた 為である。幸運にも"二人"で、と言い渡されていたことから休日に揃ってのお 出かけとなった。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 「今日は風がちょっと強いな」 「うん」 海から吹き付ける風は耳が痛くなる程ではないが、それなりに冷たい。風上 側に眞一郎がまわって比呂美は道路側を歩いている。 「うおっ」 強めの風に眞一郎が、寒いっ、という感じで身をすくめた。 「うわっ、寒くなってきたね。じゃ、よいしょっと」 眞一郎の様子を見て、比呂美は自分の右腕を彼の腰に手を回してから、左手 を取り、自分の腰に回し体全体をぴたっ、と密着させる。 「お」 「こ、これで、暖かいよね?」 照れる眞一郎と、頬を染める比呂美。 厚手のコート越しに暖かさを感じるはずもないのに暖かいと主張してみたり、 わざと歩く速度を落としてみたりと、いかにも、である。実際に鼓動が速まっ ているだろうから、暖かいというのは本当だろう。比呂美が残念なのは、コー トの厚みが邪魔をして胸をいくらがんばって当ててみても、効果が薄いこと であったことだが、本人は全力投球だ。彼は気付いていないが… 「暖かいな」 「うん、あったかい…」 「二人でお出かけって、いいな」 「うん…、いいね…」 「…」 「…」 そんな二人を少し離れて観察している人物がいた。 「はぁ」 今の時間帯、交通量は多くはないが人目が全くないわけではない。昼間から 堂々とびったりとくっついて歩く姿に、ため息が出てしまった。 「そうだ」 急いで携帯電話を出してすかさず写真を取る。しっかりと顔がわかるポジショ ンを取り、何枚か撮った後、どうしても独り言が出てしまう。 「気付かないかなぁ?普通?」 自分ではやばい?という感じもあったのだが、二人は気付かないまま、ゆっ くりと歩いて去っていった。 「さすがに面白くない、うん」 見つかって大慌てしたところをどうからかおうか?という期待を見事に外さ れては、不満が残ってしまう。早速誰かにメールして言いふらそうか?と考 えていて、もっと良いアイデアが浮かんできた。バラすよりも写真を見せて 何か奢ってもらおうという魂胆である。写真は欲しがるだろうから、高く売 れそうだ。たまたまこの辺りに用事で来ていた朋与は、軽やかな足取りで自 宅へ向かっていった。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 住宅が多くなってきた辺りで密着を解き、時間がかかった分を急ぎ足で歩い て取り戻して知人宅に到着した二人。 「こんにちはー」 「こんにちはー」 広い玄関で声をかける。 「おおー、坊ちゃん、お嬢様、いらっしゃい。わざわざどうも」 出迎えてきたのは、"おじさん"である。にこにこと人の良さそうな笑顔を二 人を奥の方へ案内していく。 「ちょっとお茶でも飲んでいって下さいな。寒かったでしょう?」 "おばさん"がお菓子とお茶を持って、ぱたぱたとやってきた。 「あ、おかまいなく」 「おかまいなく」 既に奥まで通されているが、一応遠慮してみる。少し世間話をしていると、 今度はばたばたと大勢やってくる気配がした。 「おお、いるいる」 「ふーん、この子がぁ」 「あら、可愛いじゃなーい」 次々とやってくるのはこの家の娘達と"おばさん"連合軍。この家の娘の一 人は赤ん坊を抱いている。"おばさん"連合軍は近所からも来ているようだ。 品定めをするように、じっくりと比呂美を観察している。 「ちょっと、何ですかっ。こんなに大勢で!」 眞一郎はこの家に入った時に何か忘れていた気がしていたのだ。そして、 イヤな予感も。これがそうだった。 「あらっ、かばっちゃったりして」 「そんなに好きなの?」 「私もかばってー」<がらがら声で脳内再生して下さい> 比呂美は真っ赤な顔で小さくなってしまっていた。眞一郎が守ろうとしても 全てが無駄になり、事態を改善できないまま、なすがままに観察されてしま う。 「あっ、赤ん坊を抱かせてみましょうよ」 この家の長女が自分の子供を差し出して、比呂美に抱かせてしまう。 「あっ、かわいい~」 少し慌てながら赤ん坊を受け取ると、自然な微笑を見せる比呂美。 「!」 眞一郎はその笑顔を凝視する。 「お~や、見とれちゃって!」 「まぁ、それだけ可愛いとねー」 「あははっ」 彼はすっかり忘れていた、小さいころから弄ばれていたことを。それから、 "おばさん"連合軍は眞一郎と比呂美とで遊んでいたが、ある時、眞一郎は とんでもない光景を目にすることになる。 「あー!」 赤ん坊は楽しげに比呂美の胸を触り、揉んでいた。 「きゃっ、ちょっとくすぐったいかも~♪」 笑顔の比呂美はあまり気にしていないようだが、眞一郎にとっては一大事で ある。 (え!?えっ!?ちょっと、お前!止めろよ~。そ、それは俺の…) 眞一郎はちょっとパニック気味。しかし、"おばさん"連合軍は楽しげだ。 「大丈夫よ、坊ちゃん!その子は女の子だから!」 「あらあら、喜んじゃって」 「でも、まだ早いわよねー」 「そうねぇ、まずは"お嫁さん"、"若奥様"、その後でしょー?」 正月に聞いた大好きな言葉が久しぶりに飛び出たことで、比呂美は頬を染め ながら満面の笑み。 「ちょっと喜びすぎね」 「そうね」 上げてから落とすタイミングも熟知している"おばさん"連合軍。しかし、 そんなことでは比呂美の機嫌を損ねることはできない。 (お嫁さん…若奥様…その後は…………) 「だって、まだだもんね」 「そうそう、まだまだ」 「まだ学生でしょう?」 (お嫁さん…若奥様…その後は…………) 比呂美の妄想を誰も止めることができない。眞一郎といいコンビである。 (お嫁さん…若奥様…その後は…………) 「あっ、そうだっ!若奥様って言ったら」 「何?」 「あれよ、あれ」 「髪の毛長いし、できるでしょ?」 「そうねぇ、いいんじゃない?」 (お嫁さん…若奥様…その後は…………) "おばさん"連合軍はどうやら、また新しい遊びを思いついたようだ。 比呂美の後ろに回り、何やら髪型をいじっている。その間眞一郎は向うを向 いて待たされていた。 「はい、できた!いいわよ、坊ちゃん!」 振り向いた眞一郎に、仰天の光景が飛び込んできた。 「えへへっ、どお?眞一郎くん♪似合う?」 それっぽい格好にご満悦の比呂美。赤ん坊へ視線を移してから眞一郎へ瞳を 向ける。 「!!!!!!!!!!!」 (あぁ…) 微笑んでこちらを見ている姿、その笑顔はある髪型で飾られていた。 眞一郎、至福の時間。じっくりと網膜に焼き付ける。 その時間を止めたのは帰りの遅い二人を心配してやってきた彼の母だった… 「な、な、なな、なっ、ななっ、何なのっ!?」 凄まじいばかりに動揺した声が部屋に響く。眞一郎の母は、その比呂美の姿 に驚きを隠せなかった、隠せるはずがなかった。 所謂、若奥様ヘアー。 <その後の惨劇を文章で描写することは困難です、よって省略します> END -あとがき- 少し暴走しましたが、湯浅比呂美若奥様シリーズ第二弾です。 若奥様ネタを気に入った方が見受けられたので、書いてみました。 二人のセリフが少ないのは、3話のシーンが思い出されて自然とそうなった からだと思います。たぶん、あの時無言だったんだろうなぁ、と感じていた からでしょう、精進します。 その代わりと言ってはなんですが、密着歩行?を使いました。 比呂美はこの後"若奥様ごっこ"にハマります。次は学校で愛妻弁当かなぁ… 最後に、読んで下さってありがとうございました。

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