愛子の失恋

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愛子の失恋」(2008/03/21 (金) 00:55:45) の最新版変更点

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愛子の失恋 小雪のちらつく空、愛子は一人で佇んでいた。 大きな道の反対側には、寄り添うように歩く眞一郎と比呂美の姿が見える。 二人は次第に愛子の視界から遠ざかっていく。視界がぼやけて、涙が溢れそう になり、顔を上げて空を見上げた。とても苦しそうな表情。 「愛ちゃん…」 三代吉が近づいて、話しかけてきた。 「来ないで!」 愛子は、そちらを振り向きもせずに叫ぶように言う。 「今は私に近づかないで!」 「…」 「もし…近づいたら…一生口もきかないから!…」 「…」 「だから…今は…今はっ!…」 「…」 三代吉は何も言えずに、立ち尽くしていた。傷ついた愛子を慰めたい。しかし、 それでは失恋の痛手を利用していることにもなってしまう。想い人が苦しんで いるのを見ていられない。何か力になりたい。 (今はオレじゃあ…、ダメなんだろうなぁ…) 愛子の望むことでなければ意味がないことを悟り、三代吉自身が傷ついたよう な顔で、ゆっくりとその場を離れていった… (ごめん…) 愛子は涙で歪む空を見ながら、心の中で謝った。 (眞一郎…眞一郎…眞一郎ぉ…) 離れていく姿が目に浮かぶ。自分が隣を歩きたかった、隣で笑っていたかった、 隣であの笑顔を見たかった、隣で…誰よりも近くで。自分だけに見せる笑顔が 欲しかった…自分だけに…。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 今川焼き屋の店に裏口から入る愛子の頭や肩には、雪が積もっていた。店内に 入り暖房をつけ、椅子に座る。カウンターを見ると、そこに眞一郎が座ってい る風景が目に浮かんできた。 「はははっ。そんなことないってー」 目に浮かぶのは、いつもの眞一郎の笑顔。あっという間に涙が溢れ出してきた。 「眞一郎…ううっ…ううっ…うううっ…」 大粒の涙が愛子の頬を伝う。 「ううううぅ…」 しばらく愛子は、一人であることを噛み締めるように泣いていた。 泣き止んだ後、携帯電話がメール着信を知らせていた。 「あれ?誰からだろう?…」 画面には"眞一郎"の文字が見えた。 「えっ!?うそっ!?」 慌てて開きメールを表示する。            ┏━━━━━━━━━━━━┓            ┃┌─────────────┐┃            ┃│Fm:眞一郎       │┃            ┃├─────────────┤┃            ┃│Sub:<無題>      │┃            ┃├───────────────────┤┃            ┃│そうなれればって思った│┃            ┃│こともある   │┃            ┃│でも、やっぱり愛ちゃん│┃            ┃│は幼馴染で、大好きで、│┃            ┃│とても大切なお姉ちゃん│┃            ┃│           │┃            ┃│      │┃            ┃│好きでいたい、大切にし│┃            ┃│たい     │┃            ┃│        │┃            ┃│だから、謝らないよ  │┃            ┃│眞一郎    │┃            ┃│           │┃            ┃└────────――─┘┃            ┗━━━━━━━━━━━━┛ 愛子はメールを読んで、今度は大声で号泣した。 「あああああああぁっ!…」 眞一郎に気持ちは伝わっていた。自分を"女"として見てくれて、考えてくれた。 それでも、越えられない…、届かない…、隣に並ぶことはできない…。 愛子の心にとても大きな穴ができていた。この世でたった一人しか埋めること ができない、そこに居て、笑って欲しかった… 声が枯れるまで…、涙が尽きるまで…、泣いて、泣いて愛子は寂しさと戦った。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― どのぐらい時間が経ったのだろうか、外はすっかり暗くなっている。力が抜け たようにして座っていたが、突然ある考えがひらめいた。 (そうかっ!諦めるなんて、まだ早いよ!) 愛子… (比呂美ちゃんとずっとそのままって、ないかもしれないじゃん!) 愛子ってば… 元気良く立ち上がり、こう叫んだ。 「これからっ!これからだよっ!」 END -あとがき- どうですか?泣いたわりには、ちっとも諦めていない愛ちゃんは? 愛ちゃんがアタックしても、比呂美を見ている限りは眞一郎が なびくことは無いでしょうが… 8話の涙のシーンから連想したSSです。比呂美END後としています。 テーマは、眞一郎の気持ちです。短いメールしかないですけど。 この続きは考えてありますが、書くかどうかは未定…。 眞一郎からのメールに一番悩みました。どうかなぁ。 もう一つ何かインパクトが必要だと思うんです。 "ごめん"としない方がいいと思ったのですが、どうでしょう? これが眞一郎にとって、都合が良く見えるかもしれませんが、違う意図で書い たつもりです。 愛ちゃんから本気告白を受けると、眞一郎がかなり悩むと思うんです。 4話で見た二人のやりとりから考えたメールなんですが…、うーん。 ありがとうございました。
愛子の失恋 小雪のちらつく空、愛子は一人で佇んでいた。 大きな道の反対側には、寄り添うように歩く眞一郎と比呂美の姿が見える。 二人は次第に愛子の視界から遠ざかっていく。視界がぼやけて、涙が溢れそう になり、顔を上げて空を見上げた。とても苦しそうな表情。 「愛ちゃん…」 三代吉が近づいて、話しかけてきた。 「来ないで!」 愛子は、そちらを振り向きもせずに叫ぶように言う。 「今は私に近づかないで!」 「…」 「もし…近づいたら…一生口もきかないから!…」 「…」 「だから…今は…今はっ!…」 「…」 三代吉は何も言えずに、立ち尽くしていた。傷ついた愛子を慰めたい。しかし、 それでは失恋の痛手を利用していることにもなってしまう。想い人が苦しんで いるのを見ていられない。何か力になりたい。 (今はオレじゃあ…、ダメなんだろうなぁ…) 愛子の望むことでなければ意味がないことを悟り、三代吉自身が傷ついたよう な顔で、ゆっくりとその場を離れていった… (ごめん…) 愛子は涙で歪む空を見ながら、心の中で謝った。 (眞一郎…眞一郎…眞一郎ぉ…) 離れていく姿が目に浮かぶ。自分が隣を歩きたかった、隣で笑っていたかった、 隣であの笑顔を見たかった、隣で…誰よりも近くで。自分だけに見せる笑顔が 欲しかった…自分だけに…。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 今川焼き屋の店に裏口から入る愛子の頭や肩には、雪が積もっていた。店内に 入り暖房をつけ、椅子に座る。カウンターを見ると、そこに眞一郎が座ってい る風景が目に浮かんできた。 「はははっ。そんなことないってー」 目に浮かぶのは、いつもの眞一郎の笑顔。あっという間に涙が溢れ出してきた。 「眞一郎…ううっ…ううっ…うううっ…」 大粒の涙が愛子の頬を伝う。 「ううううぅ…」 しばらく愛子は、一人であることを噛み締めるように泣いていた。 泣き止んだ後、携帯電話がメール着信を知らせていた。 「あれ?誰からだろう?…」 画面には"眞一郎"の文字が見えた。 「えっ!?うそっ!?」 慌てて開きメールを表示する。 Fm:眞一郎 Sub:<無題>  そうなれればって思った こともある でも、やっぱり愛ちゃん は幼馴染で、大好きで、 とても大切なお姉ちゃん 好きでいたい、大切にし たい だから、謝らないよ 眞一郎 愛子はメールを読んで、今度は大声で号泣した。 「あああああああぁっ!…」 眞一郎に気持ちは伝わっていた。自分を"女"として見てくれて、考えてくれた。 それでも、越えられない…、届かない…、隣に並ぶことはできない…。 愛子の心にとても大きな穴ができていた。この世でたった一人しか埋めること ができない、そこに居て、笑って欲しかった… 声が枯れるまで…、涙が尽きるまで…、泣いて、泣いて愛子は寂しさと戦った。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― どのぐらい時間が経ったのだろうか、外はすっかり暗くなっている。力が抜け たようにして座っていたが、突然ある考えがひらめいた。 (そうかっ!諦めるなんて、まだ早いよ!) 愛子… (比呂美ちゃんとずっとそのままって、ないかもしれないじゃん!) 愛子ってば… 元気良く立ち上がり、こう叫んだ。 「これからっ!これからだよっ!」 END -あとがき- どうですか?泣いたわりには、ちっとも諦めていない愛ちゃんは? 愛ちゃんがアタックしても、比呂美を見ている限りは眞一郎が なびくことは無いでしょうが… 8話の涙のシーンから連想したSSです。比呂美END後としています。 テーマは、眞一郎の気持ちです。短いメールしかないですけど。 この続きは考えてありますが、書くかどうかは未定…。 眞一郎からのメールに一番悩みました。どうかなぁ。 もう一つ何かインパクトが必要だと思うんです。 "ごめん"としない方がいいと思ったのですが、どうでしょう? これが眞一郎にとって、都合が良く見えるかもしれませんが、違う意図で書い たつもりです。 愛ちゃんから本気告白を受けると、眞一郎がかなり悩むと思うんです。 4話で見た二人のやりとりから考えたメールなんですが…、うーん。 ありがとうございました。

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