お手伝いのお手伝い

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お手伝いのお手伝い」(2008/03/21 (金) 00:56:53) の最新版変更点

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=9話直後くらいのお話、です。 お手伝いのお手伝い 「お願いできるかしら?ちょっと、手が離せなくて…」 「はい、いいですよ。時間、ありますから」 眞一郎の母が、比呂美に買い物を頼んでいる。まだ、二人の間は微妙な関係だ が、以前とは明らかに異なっていた。 比呂美がコートを取りに部屋へ行こうとした時、声がかかった。 「に、荷物持ちくらいなら、一緒に行くけど?」 眞一郎が目を合わさずに、少しぎこちなく言った。 「えっ、う…うん、ありがと…」 「いいよな?母さん…」 母の方を見て、念の為に聞いた。その声はキツイものではなく、むしろ機嫌を 伺っているようにも聞こえる。 「二人とも、足元に気をつけて。いってらっしゃい…」 特に気にした様子もなく母が言い、台所の方へ戻っていった。 「コート、取ってくる」 「うん、玄関で待ってるね…」 二人は家を出て、近くのスーパーマーケットへ向った。 - - - - - - - - - - - - - 比呂美と眞一郎は、雪道を並んで歩いている。 「…」 「…」 お互いを意識しているのか、会話がない。しばらくすると、比呂美が口を開い た。 「あ、ありがと。少し多めに買うかもしれないから、助かったかも」 「……ああ…、うん…」 「…」 「…」 残念ながら、会話が続かないようだ。もう少し、気楽に話せれば… - - - - - - - - - - - - - スーパーマーケットはそれ程遠くない。おかげで、無言の時間は思っていたよ り長く続かなかった。さて、どちらが助かったのだろう? 店内に入り、メモを見ながらの買い物が始まった。今度はあれこれと商品を探 しながらなので、自然と二人の間に会話が生まれている。 「あれーっ?どこだぁ?さっき見た気がするんだけどなー…?」 「えっ?、あっちじゃない?一度通ったよ?」 「それは向うだろ?」 「行ってみようよ。どうせ、そこにも買う物あるかもしれないし」 「うーん、そうするかぁ」 「行こう!」 「よし!」 慣れない買い物で、どこに何があるか二人とも知らない。メモに書いてある目 的の物をいくつか見つけていると、次第に調子が出てくる。 二人の距離が少しずつ縮まっていく。 「あっ!」 「あっ!…ごめん…」 「う、ううん…」 お約束の手の触れ合いも発生。 「これ…眞一郎くん、好きだよね?」 「そうそう、旨いんだよなー。かりかり、ってさ」 「こっちはどうするの?」 「うっ…、迷う…」 「両方は無理だよ?お金足りないかもしれないし」 「びっ、貧乏だから?」 「そうだよー、がんばって働いてねー?」 軽い冗談が出るくらい、会話は弾んでいた。 「はい…、それにしても…、悩むなぁ…」 「じゃ、ここで迷ってて。あっちに行ってくるから」 「わかった。うーん…」 買い物は、とても楽しい時間になった。お互いに笑顔で話し、商品を確かめ、 仲良く袋につめる。特別なことはない普通の買い物。 - - - - - - - - - - - - - 並んで歩いて自宅へと向っている。二人の距離は帰り道の方が少しだけ近く なっていた。 「重くないの?」 「大丈夫、大丈~ぶっ!」 言っているそばから雪の塊に足を取られて、眞一郎が転びそうになった。 「きゃっ!」 「うおっとぉ!…はっ!」 何とか転倒は免れたが、かなり間抜けな格好で耐えていた。 「ぷっ…」 「あー、危なかった。やべぇ、やべぇ」 「ぷっ…」 「いやぁ、落とさなくてよかった、って?何?」 「くっ…」 「何だよ?転ばなかっただろ?」 「だって…、おかしな格好だった…。ぷっ…」 「転ばなかったんだし、問題ないじゃん」 「ぷっ…くっ…」 「そんなに変だったかなぁ?」 「あははははっ♪」 「笑うほど変じゃないって…」 「だって、大丈夫って言ったのに…。あはははっ♪」 「ちょっと滑っただけだろ?」 「あはははっ、あ~っ!?」 笑っていると足元が疎かになって、今度は比呂美が少し滑った。 「わっ!」 咄嗟に眞一郎が空いている方の腕で、比呂美を抱きとめた。 「…」 「…」 お互いに目を合わせずにいること数秒。短くて、とても長い時間が二人の間に 流れている。心臓の鼓動が速まる。 「何してるんです?お二人で?」 ぱっ、と声のした方を同時に見ると、仲上酒造に勤める丁稚が不思議そうな顔 で見ていた。 「それに、こんなところで、抱き合って」 すごい勢いで二人が離れ、必死の言い訳が始まる。 「あっ!いや!これは…その…」 「そ…そう!、ちょっと滑って…」 「じゃあ、急ぎますんで。お先にー」 丁稚は、慌てる二人を置いて歩き始めた。 「…」 「…」 今度は照れながら、二人で見つめ合った。その次の瞬間、とてもまずいことに 気が付く。 「「あっ!」」 そう、こんなところを見られて"誰か"に言われでもしたら… 「ちょっと待ったぁーっ!」 「待って!」 二人は慌てて丁稚の背中を追いかけていった。 END -あとがき- 9話での比呂美浮上記念です。慌てて書きました。 ありがとうございました。
=9話直後くらいのお話、です。 お手伝いのお手伝い 「お願いできるかしら?ちょっと、手が離せなくて…」 「はい、いいですよ。時間、ありますから」 眞一郎の母が、比呂美に買い物を頼んでいる。まだ、二人の間は微妙な関係だ が、以前とは明らかに異なっていた。 比呂美がコートを取りに部屋へ行こうとした時、声がかかった。 「に、荷物持ちくらいなら、一緒に行くけど?」 眞一郎が目を合わさずに、少しぎこちなく言った。 「えっ、う…うん、ありがと…」 「いいよな?母さん…」 母の方を見て、念の為に聞いた。その声はキツイものではなく、むしろ機嫌を 伺っているようにも聞こえる。 「二人とも、足元に気をつけて。いってらっしゃい…」 特に気にした様子もなく母が言い、台所の方へ戻っていった。 「コート、取ってくる」 「うん、玄関で待ってるね…」 二人は家を出て、近くのスーパーマーケットへ向った。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 比呂美と眞一郎は、雪道を並んで歩いている。 「…」 「…」 お互いを意識しているのか、会話がない。しばらくすると、比呂美が口を開い た。 「あ、ありがと。少し多めに買うかもしれないから、助かったかも」 「……ああ…、うん…」 「…」 「…」 残念ながら、会話が続かないようだ。もう少し、気楽に話せれば…  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― スーパーマーケットはそれ程遠くない。おかげで、無言の時間は思っていたよ り長く続かなかった。さて、どちらが助かったのだろう? 店内に入り、メモを見ながらの買い物が始まった。今度はあれこれと商品を探 しながらなので、自然と二人の間に会話が生まれている。 「あれーっ?どこだぁ?さっき見た気がするんだけどなー…?」 「えっ?、あっちじゃない?一度通ったよ?」 「それは向うだろ?」 「行ってみようよ。どうせ、そこにも買う物あるかもしれないし」 「うーん、そうするかぁ」 「行こう!」 「よし!」 慣れない買い物で、どこに何があるか二人とも知らない。メモに書いてある目 的の物をいくつか見つけていると、次第に調子が出てくる。 二人の距離が少しずつ縮まっていく。 「あっ!」 「あっ!…ごめん…」 「う、ううん…」 お約束の手の触れ合いも発生。 「これ…眞一郎くん、好きだよね?」 「そうそう、旨いんだよなー。かりかり、ってさ」 「こっちはどうするの?」 「うっ…、迷う…」 「両方は無理だよ?お金足りないかもしれないし」 「びっ、貧乏だから?」 「そうだよー、がんばって働いてねー?」 軽い冗談が出るくらい、会話は弾んでいた。 「はい…、それにしても…、悩むなぁ…」 「じゃ、ここで迷ってて。あっちに行ってくるから」 「わかった。うーん…」 買い物は、とても楽しい時間になった。お互いに笑顔で話し、商品を確かめ、 仲良く袋につめる。特別なことはない普通の買い物。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 並んで歩いて自宅へと向っている。二人の距離は帰り道の方が少しだけ近く なっていた。 「重くないの?」 「大丈夫、大丈~ぶっ!」 言っているそばから雪の塊に足を取られて、眞一郎が転びそうになった。 「きゃっ!」 「うおっとぉ!…はっ!」 何とか転倒は免れたが、かなり間抜けな格好で耐えていた。 「ぷっ…」 「あー、危なかった。やべぇ、やべぇ」 「ぷっ…」 「いやぁ、落とさなくてよかった、って?何?」 「くっ…」 「何だよ?転ばなかっただろ?」 「だって…、おかしな格好だった…。ぷっ…」 「転ばなかったんだし、問題ないじゃん」 「ぷっ…くっ…」 「そんなに変だったかなぁ?」 「あははははっ♪」 「笑うほど変じゃないって…」 「だって、大丈夫って言ったのに…。あはははっ♪」 「ちょっと滑っただけだろ?」 「あはははっ、あ~っ!?」 笑っていると足元が疎かになって、今度は比呂美が少し滑った。 「わっ!」 咄嗟に眞一郎が空いている方の腕で、比呂美を抱きとめた。 「…」 「…」 お互いに目を合わせずにいること数秒。短くて、とても長い時間が二人の間に 流れている。心臓の鼓動が速まる。 「何してるんです?お二人で?」 ぱっ、と声のした方を同時に見ると、仲上酒造に勤める丁稚が不思議そうな顔 で見ていた。 「それに、こんなところで、抱き合って」 すごい勢いで二人が離れ、必死の言い訳が始まる。 「あっ!いや!これは…その…」 「そ…そう!、ちょっと滑って…」 「じゃあ、急ぎますんで。お先にー」 丁稚は、慌てる二人を置いて歩き始めた。 「…」 「…」 今度は照れながら、二人で見つめ合った。その次の瞬間、とてもまずいことに 気が付く。 「「あっ!」」 そう、こんなところを見られて"誰か"に言われでもしたら… 「ちょっと待ったぁーっ!」 「待って!」 二人は慌てて丁稚の背中を追いかけていった。 END -あとがき- 9話での比呂美浮上記念です。慌てて書きました。 ありがとうございました。

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