遊園地デート

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=9話の少し後くらいのお話です。 ="お手伝いのお手伝い"のちょっと後、です。 遊園地デート ある日の夕食後、比呂美は眞一郎と居間でお茶を飲んでいた。 「…」 「…」 二人の間には会話が多くない。どことなく落ち着かない様子で、比呂美がちら ちらと眞一郎の顔を見ている。 覚悟を決めて比呂美が口を開いた。が、その口調はたどたどしい。 「あ…あの…、眞一郎くんは…今度の休みの日…、時間…あるの?」 「えっ?、日曜?」 「うん…そう…」 「えーと…、特に…何も予定ないなぁ。絵本のアイデアでも考えようかなぁ?」 「…」 「…何?」 「あ、あのね…。それなら…、あのね…」 まだ勇気を振り絞っている最中のようで、なかなか切り出せないでいた。 「うん…」 「あのね…。これ…、貰ってね?…、今度の日曜日…までなの…」 「何?これ?」 眞一郎はその2枚の細長い紙を手にした。何かのチケットのようだ。 「あのね…、あのね…」 「遊園地?」 「そっ、そう!…、ずっと前に貰ってて忘れてたの」 ここにきて、比呂美が少し本来の調子に戻ってくる。眞一郎の顔を見て話し始 めた。 「へぇ、そういえば、まだココは行ったことないなぁ」 「それなら丁度よかった!今度の日曜までなのに、一緒に行く人がいなくて、  ちょっと困ってたの」 「え?でも…」 「一緒に行く人がいなくて、ちょっと困ってたの!」 同じ言葉を繰り返したが、今回は力が入っていた。少しだけ余計に。 「あっ…そう…」 眞一郎はその勢いに押されている。 「だからね、眞一郎くんが良ければ、一緒にって思ったの…」 「…」 「だめ?」 上目使いで顔を覗き込むようにして眞一郎の反応を伺う。 「うん…、いいね。楽しみだな」 「そう!良かったぁ、チケットが無駄にならなくって嬉しい。ありがとう!、  眞一郎くん…」 「あ…いや…。まあ予定、何もないし、丁度いいんじゃないか?」 「うん!そうだね!」 明らかに二人とも顔を赤らめているので、お互いに"どういう意味"なのかわかっ ているようだ。 このようにして、遊園地デートが決定された。 - - - - - - - - - - - - - さて、ここは最近できたばかりの屋内遊園地。 最近できたのに、なぜ比呂美が"ずっと前に貰った"のか、指摘するのは野暮と いうものだ。 「へぇ、すごいなぁ」 「すごいね」 「これなら、冬の間でもやってられるよな」 「雪は関係ないもんね。うわー、あれ見て!綺麗ー」 二人は入り口に近いところで、周囲を眺めていた。屋内遊園地としては、それ なりの規模を持っていて、比較的多くの人で賑わっている。雪が降るとこの地 方では屋外で、という遊び場所が限られる為人気が集まっている。 「さあ、どれからいこうか?」 「そうだね、コレは?」 パンフレットを二人で覗き込んでいる様子は、恋人同士という表現がぴったり。 「まさか…、端から順番に…全部…?」 「せっかくだし、ね?」 「い…行きますか?」 「うん!」 こうして、数々のアトラクションを巡り始めた。 「ちょっと…、気持ち悪い…」 「大丈夫?私は、何ともないけど」 元気の無い眞一郎の顔を、比呂美が少し心配そうに見た。 「ああいう映像モノは、苦手だったんだなぁ…。知らなかった」 「ちょっと休む?」 「うー…、そうだなぁ。何か飲むか、食べたいな」 「うん……、あっ!あっちでアイス売ってる!」 視線を巡らせると、小さい店が見つかった。比呂美の目が輝いた。 「好きだね、冬にアイス食べんの…」 「おいしいでしょ?」 「…」 「ね?はいっ、決まり。いい?」 「いいよ、食べよう」 「うん!行こうっ!」 二人は少し休む事にした。 ソフトクリームを食べながら、アトラクションについて、この屋内遊園地につ いて、二人の会話は弾んでいた。その時、 「あっ!眞一郎くん、鼻の頭に付いてるよっ」 「え?」 「アイス、付いてるよ」 「ほんと?サンキュ。ええと…、ハンカチは…」 「はい、拭いてあげるから、じっとしてて」 「えっ!?ちょっと…、それは…」 「いいから」 「…」 拭く方も拭かれる方も、顔を真っ赤にしている。 遊園地、アイス、とくれば、やはりお約束はこれ。比呂美の作戦勝ちだった。 お約束イベントの後はしばらく無言であったが、眞一郎がこの人ごみのなかで 知り合いを発見した。 「あれ?三代吉だ…」 「えっ!?どこ?」 照れくさい空気からの復帰が果たされ、比呂美も姿を探し始めた。 「ほら、あっち」 「えっ!?見えない…」 「あっちだって」 「えー?、全然わかんない…」 などと言いながら、顔が近づいていたことを悟り、またも真っ赤になって黙っ てしまった。アイスの時とは比べ物にならない。 「…」 「…」 すぐに離れるわけでもなく、何か言うわけでもなく、硬直する二人。時間だけ が過ぎていく。 「何してんの?」 その状態に冷静な声が割り込んできた。 「うわっ!」 「きゃっ!」 慌てて椅子に座り直して、その声の持ち主を探すと… 「あ…愛ちゃん!?」 「!」 愛子が腕を組んで仁王立ちで見下ろしていた。面白くなさそうな、不機嫌そう な、そんな表情で。 「デート?」 その声は、冷静に物事を指摘するものだ。が? 「あっ!?いやっ!ひ…比呂美がっ、チケットを貰って…」 「そっ!そう…貰って…」 「きょっ、今日までだから!…えっと…」 「そうなの!それで…」 とてもいいところを邪魔されたが、その時の動揺がそのまま言葉に出てしまっ ている。 「へー」 あくまでも冷静な愛子の言葉。何かを含んでいる。 「べっ、別に…えと…」 「あっ…あの…」 二人の動揺は収まらない。悪いことをしているわけでもないのに、責められて いる気分になっていた。 「面白いから、もう少し見る方がいいかなー」 今度は三代吉の登場だ。両手に飲み物を持っている。 「みっ、三代吉!」 「野伏君?」 「よっ!デート?」 「あ…いや…えっとだな…」 「…」 向うへ行ったはずの三代吉の登場で、眞一郎の動揺はピークに達し、まともな 言葉も出なくなっていた。 比呂美と眞一郎の動揺に構わず、愛子と三代吉は近くにあった空き椅子を持っ てきて、四人でテーブルを囲む。 「今日は、たまたま来てたのよ」 「そう!オレがチケット持ってたからな!誘ったってワケだ」 平坦な愛子の声と上機嫌な三代吉の声。 「…」 「これで念願のダブルデートだなっ!」 <はい、ここでストップ!そう、愛子はまだ紫色のセーターの秘密を言ってな  い設定です。ダブルデートの為です。我侭ですみません。では続きをどうぞ> 無言で飲んでいる愛子。上機嫌で話す三代吉、がんばれ。 ちなみにテーブルに座っている配置は、時計回りで眞一郎、愛子、比呂美、三 代吉の順である。 さり気なく二人の間に割り込んでいる愛子の手腕、恐るべし。 「そう!それでさー・・・」 三代吉が上機嫌に話すのを適当に聞き、相槌を打ちながら、眞一郎は比呂美の 様子を伺ってみる。 「…」 無言だ。愛子は…、 「…」 やはり無言。眞一郎はピンチなんだろうか?いや、彼の注意は比呂美にしか向 いていない。最初は愛子が無言なのを疑問に思ったが、先程の"接近"を見たか らだろう、と簡単に考えてそのままにしている。 気になるのは比呂美。機嫌を取りたいのに、三代吉の相手をしなくてはならな い為、できないでいた。 その後、四人でアトラクションを回ったが、眞一郎はよく覚えていない。彼の 記憶にあるのは比呂美が楽しそうにしていないことだけだった。 - - - - - - - - - - - - - 屋内遊園地からの帰り道。 何か考え事をしているような愛子と上機嫌の三代吉と別れてから、二人で歩い ている。やはり、比呂美には元気がない。 「…」 「…」 会話がなかった。眞一郎は会話の糸口を見つけられないでいる。しかし、先に 口を開いたのは比呂美だった。 「ねぇ…、少し…遠回りしない?」 「…あっ…ああ、いいよ。海へ行こうか」 二人は海辺へ向っていった。 今日は風が弱く波もそれ程高くない、穏やかな海が沈みかけた夕日に照らされ ている。しばらく海を眺めてから、眞一郎が照れくさそうに言った。 「きょ…今日は、じゃ…邪魔が入ったから、今度はこっちから誘っていいか?」 この言葉には様々な意味が含まれている。比呂美はそれを感じて、 「うん!」 笑顔で頷いた。 また少しだけ二人の距離が縮まり、自宅へと歩いていった。 END -あとがき- 最後の眞一郎のセリフは本編とかなり異なると思います、だって色々と大変な はずですからね、本来は。 その辺りは、比呂美スレ用のSSなのでOK、ということにして下さい。 ありがとうございました。
=9話の少し後くらいのお話です。 ="お手伝いのお手伝い"のちょっと後、です。 遊園地デート ある日の夕食後、比呂美は眞一郎と居間でお茶を飲んでいた。 「…」 「…」 二人の間には会話が多くない。どことなく落ち着かない様子で、比呂美がちら ちらと眞一郎の顔を見ている。 覚悟を決めて比呂美が口を開いた。が、その口調はたどたどしい。 「あ…あの…、眞一郎くんは…今度の休みの日…、時間…あるの?」 「えっ?、日曜?」 「うん…そう…」 「えーと…、特に…何も予定ないなぁ。絵本のアイデアでも考えようかなぁ?」 「…」 「…何?」 「あ、あのね…。それなら…、あのね…」 まだ勇気を振り絞っている最中のようで、なかなか切り出せないでいた。 「うん…」 「あのね…。これ…、貰ってね?…、今度の日曜日…までなの…」 「何?これ?」 眞一郎はその2枚の細長い紙を手にした。何かのチケットのようだ。 「あのね…、あのね…」 「遊園地?」 「そっ、そう!…、ずっと前に貰ってて忘れてたの」 ここにきて、比呂美が少し本来の調子に戻ってくる。眞一郎の顔を見て話し始 めた。 「へぇ、そういえば、まだココは行ったことないなぁ」 「それなら丁度よかった!今度の日曜までなのに、一緒に行く人がいなくて、  ちょっと困ってたの」 「え?でも…」 「一緒に行く人がいなくて、ちょっと困ってたの!」 同じ言葉を繰り返したが、今回は力が入っていた。少しだけ余計に。 「あっ…そう…」 眞一郎はその勢いに押されている。 「だからね、眞一郎くんが良ければ、一緒にって思ったの…」 「…」 「だめ?」 上目使いで顔を覗き込むようにして眞一郎の反応を伺う。 「うん…、いいね。楽しみだな」 「そう!良かったぁ、チケットが無駄にならなくって嬉しい。ありがとう!、  眞一郎くん…」 「あ…いや…。まあ予定、何もないし、丁度いいんじゃないか?」 「うん!そうだね!」 明らかに二人とも顔を赤らめているので、お互いに"どういう意味"なのかわかっ ているようだ。 このようにして、遊園地デートが決定された。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― さて、ここは最近できたばかりの屋内遊園地。 最近できたのに、なぜ比呂美が"ずっと前に貰った"のか、指摘するのは野暮と いうものだ。 「へぇ、すごいなぁ」 「すごいね」 「これなら、冬の間でもやってられるよな」 「雪は関係ないもんね。うわー、あれ見て!綺麗ー」 二人は入り口に近いところで、周囲を眺めていた。屋内遊園地としては、それ なりの規模を持っていて、比較的多くの人で賑わっている。雪が降るとこの地 方では屋外で、という遊び場所が限られる為人気が集まっている。 「さあ、どれからいこうか?」 「そうだね、コレは?」 パンフレットを二人で覗き込んでいる様子は、恋人同士という表現がぴったり。 「まさか…、端から順番に…全部…?」 「せっかくだし、ね?」 「い…行きますか?」 「うん!」 こうして、数々のアトラクションを巡り始めた。 「ちょっと…、気持ち悪い…」 「大丈夫?私は、何ともないけど」 元気の無い眞一郎の顔を、比呂美が少し心配そうに見た。 「ああいう映像モノは、苦手だったんだなぁ…。知らなかった」 「ちょっと休む?」 「うー…、そうだなぁ。何か飲むか、食べたいな」 「うん……、あっ!あっちでアイス売ってる!」 視線を巡らせると、小さい店が見つかった。比呂美の目が輝いた。 「好きだね、冬にアイス食べんの…」 「おいしいでしょ?」 「…」 「ね?はいっ、決まり。いい?」 「いいよ、食べよう」 「うん!行こうっ!」 二人は少し休む事にした。 ソフトクリームを食べながら、アトラクションについて、この屋内遊園地につ いて、二人の会話は弾んでいた。その時、 「あっ!眞一郎くん、鼻の頭に付いてるよっ」 「え?」 「アイス、付いてるよ」 「ほんと?サンキュ。ええと…、ハンカチは…」 「はい、拭いてあげるから、じっとしてて」 「えっ!?ちょっと…、それは…」 「いいから」 「…」 拭く方も拭かれる方も、顔を真っ赤にしている。 遊園地、アイス、とくれば、やはりお約束はこれ。比呂美の作戦勝ちだった。 お約束イベントの後はしばらく無言であったが、眞一郎がこの人ごみのなかで 知り合いを発見した。 「あれ?三代吉だ…」 「えっ!?どこ?」 照れくさい空気からの復帰が果たされ、比呂美も姿を探し始めた。 「ほら、あっち」 「えっ!?見えない…」 「あっちだって」 「えー?、全然わかんない…」 などと言いながら、顔が近づいていたことを悟り、またも真っ赤になって黙っ てしまった。アイスの時とは比べ物にならない。 「…」 「…」 すぐに離れるわけでもなく、何か言うわけでもなく、硬直する二人。時間だけ が過ぎていく。 「何してんの?」 その状態に冷静な声が割り込んできた。 「うわっ!」 「きゃっ!」 慌てて椅子に座り直して、その声の持ち主を探すと… 「あ…愛ちゃん!?」 「!」 愛子が腕を組んで仁王立ちで見下ろしていた。面白くなさそうな、不機嫌そう な、そんな表情で。 「デート?」 その声は、冷静に物事を指摘するものだ。が? 「あっ!?いやっ!ひ…比呂美がっ、チケットを貰って…」 「そっ!そう…貰って…」 「きょっ、今日までだから!…えっと…」 「そうなの!それで…」 とてもいいところを邪魔されたが、その時の動揺がそのまま言葉に出てしまっ ている。 「へー」 あくまでも冷静な愛子の言葉。何かを含んでいる。 「べっ、別に…えと…」 「あっ…あの…」 二人の動揺は収まらない。悪いことをしているわけでもないのに、責められて いる気分になっていた。 「面白いから、もう少し見る方がいいかなー」 今度は三代吉の登場だ。両手に飲み物を持っている。 「みっ、三代吉!」 「野伏君?」 「よっ!デート?」 「あ…いや…えっとだな…」 「…」 向うへ行ったはずの三代吉の登場で、眞一郎の動揺はピークに達し、まともな 言葉も出なくなっていた。 比呂美と眞一郎の動揺に構わず、愛子と三代吉は近くにあった空き椅子を持っ てきて、四人でテーブルを囲む。 「今日は、たまたま来てたのよ」 「そう!オレがチケット持ってたからな!誘ったってワケだ」 平坦な愛子の声と上機嫌な三代吉の声。 「…」 「これで念願のダブルデートだなっ!」 <はい、ここでストップ!そう、愛子はまだ紫色のセーターの秘密を言ってな  い設定です。ダブルデートの為です。我侭ですみません。では続きをどうぞ> 無言で飲んでいる愛子。上機嫌で話す三代吉、がんばれ。 ちなみにテーブルに座っている配置は、時計回りで眞一郎、愛子、比呂美、三 代吉の順である。 さり気なく二人の間に割り込んでいる愛子の手腕、恐るべし。 「そう!それでさー・・・」 三代吉が上機嫌に話すのを適当に聞き、相槌を打ちながら、眞一郎は比呂美の 様子を伺ってみる。 「…」 無言だ。愛子は…、 「…」 やはり無言。眞一郎はピンチなんだろうか?いや、彼の注意は比呂美にしか向 いていない。最初は愛子が無言なのを疑問に思ったが、先程の"接近"を見たか らだろう、と簡単に考えてそのままにしている。 気になるのは比呂美。機嫌を取りたいのに、三代吉の相手をしなくてはならな い為、できないでいた。 その後、四人でアトラクションを回ったが、眞一郎はよく覚えていない。彼の 記憶にあるのは比呂美が楽しそうにしていないことだけだった。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 屋内遊園地からの帰り道。 何か考え事をしているような愛子と上機嫌の三代吉と別れてから、二人で歩い ている。やはり、比呂美には元気がない。 「…」 「…」 会話がなかった。眞一郎は会話の糸口を見つけられないでいる。しかし、先に 口を開いたのは比呂美だった。 「ねぇ…、少し…遠回りしない?」 「…あっ…ああ、いいよ。海へ行こうか」 二人は海辺へ向っていった。 今日は風が弱く波もそれ程高くない、穏やかな海が沈みかけた夕日に照らされ ている。しばらく海を眺めてから、眞一郎が照れくさそうに言った。 「きょ…今日は、じゃ…邪魔が入ったから、今度はこっちから誘っていいか?」 この言葉には様々な意味が含まれている。比呂美はそれを感じて、 「うん!」 笑顔で頷いた。 また少しだけ二人の距離が縮まり、自宅へと歩いていった。 END -あとがき- 最後の眞一郎のセリフは本編とかなり異なると思います、だって色々と大変な はずですからね、本来は。 その辺りは、比呂美スレ用のSSなのでOK、ということにして下さい。 ありがとうございました。

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