眞一郎の比呂美の部屋深夜訪問


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 true tears  SS第十五弾 眞一郎の比呂美の部屋深夜訪問

 流れに乗って、日付が変わる前に投下しました。
 まだプロットの段階でしたが、少し書いてみました。
 第十二話に入らないかもしれない場面です。

 私は眠れぬ夜を迎えている。
 とうとう膝を抱えて顎を乗せている。
 それでも寂しさは紛れてくれない。
 眞一郎くんと石動乃絵のことが気になってしまう。
 部屋に入れて合鍵を渡してキスをしているのに、一種間も待っているのに、
ちゃんとしている気配がない。
 ふたりが会っているという話すらも聞かない。
「何をしているの?」
 眞一郎くんに訊くことができずにいる。
 おばさんに言われて、眞一郎くんの部屋に着替えを運んだ。
 机の上には『雷轟丸と地べたの物語』という題の絵本があった。
 あれはきっと石動乃絵のための絵本。
 私には一枚の絵だけ。
 涙を拭いたいという台詞と髪の長い女性の姿から、私かもと思っているだけかもしれない。
 石動乃絵の家出で電話したときにも、絵本を描いていたらしい。
『雷轟丸と地べたの物語』のことを訊こうとしたけれど、かすれてしまった。
「羨ましいな……」
 石動乃絵と私との格差を感じる。
 私は幼い頃の思い出から十年以上なのに、石動乃絵は四ヶ月くらいだと思う。
 三十倍もの年月があっても、絵本にされる量は影響されない。
 私と眞一郎くんには夏祭りと進展しなかった仲上家での生活しかなかった。
 携帯の画面にいる眞一郎くんの顔を見る。
 今から掛けてみようかと悩む。
 もう、何度もしてきた行為。
 ふたりの邪魔でもしてみようかと考えてしまう。
 最近は眞一郎くんと親しくなれた反動で嫉妬深くなっている。
 着信音が鳴ると、画面には眞一郎くんと表示される。
『比呂美、寝てたか?』
 穏やかな気配りのある声。
『まだ寝ていないわ』
『話があるから、部屋に入っていいか?』
 眞一郎くんには合鍵を渡している。
『入れるものならね』
 私から電話を切る。
 私はゆっくりとロフトの階段を降りて電気を点ける。
 部屋を見回して危ないものを隠す。
 特に干したままの下着を仕舞い込む。
 ドアを開ける音がするが、眞一郎くんは何も言わない。
 私はドアの前に行って隙間から、眞一郎くんの顔を覗く。
 罠に掛かった小動物のように震えている。
「チェーンロックかよ」
「一人暮らしは物騒だって眞一郎くんも言っていたし」
 私はにこやかに応じた。
「深夜だからな。明日は祭だから長居はできないが、開けて欲しい」
 畏まった態度で迫ってくる。
「ちょっと待ってね」
 私はドアを閉めてから、チェーンロックをはずして開けてあげる。
「ありがとう」
 眞一郎くんを部屋の中に導いてあげる。
「何か温かい飲み物でもいる?」
「いらない」
 ふたりはテーブルを囲んで座る。
 眞一郎くんはコートも脱がずに眞一郎くんはいる。
 眞一郎くんは、あの『雷轟丸と地べたの物語』を上に乗せる。
 私は一瞬だけ忌々しげに見つめてしまった。
「部屋に入ったときに見られたかもしれないな」
 ばつが悪そうに問うた。
「気づいていたわ、中は見ていないけど」
 眞一郎くんの足音がしたので、我に返ってしまった。
 もう少し時間があればどうしていたかはわからない。
「乃絵と別れたから」
 単刀直入に言われて、私は眞一郎くんを見つめる。
 偽りがない眼差しで訴えてくる。
「本当に?」
 空耳のような気がして。
「経緯を話せば長くなるから、落ち着いてからでも。
 その前にこの絵本の読んで欲しい」
 眞一郎くんに両手で渡されてから、受け取る。
 スケッチブックを開くと、躍動感のある雷轟丸と地べたがいる。
 本当に細かく背景までも描かれていて、心を奪われてしまう。
 ラストシーンは地べたが墜落してしまうというBADEND。
 何て感想を伝えればいいか迷ってしまう。
 鶏だから飛ぶのは難しいのか?
 絵本であっても現実を受け入れなければならないか?
 石動乃絵はどういう印象を抱いたのだろう。
 ふと私は眞一郎くんを見ると、テーブルに伏せて眠っている。
 しばらく様子を眺めていたけれど、起きる気配がまったくしない。
 せめて私はニット帽とマフラーとコートを外してあげる。
 明日は祭だから休息をさせてあげたい。
 来客用の布団を出して敷く。
 眞一郎くんの身体を動かしてみても、なかなかうまくいかない。
 やはり男の人の身体は扱いにくいし、眞一郎くんを起こさないであげたい。
 まったく目が覚めないほどに疲れているのだろう。
 私に説明するまで気を休めようとせずに。
 何とか布団の中に眞一郎くんを入れることができた。
 仰向けの眞一郎くんの右頬を強く突いてみる。
 眞一郎くんの初めてのお泊りが、こういう形になるなんて思ってもみなかった。
 私は安らかな寝顔を見ながら、おばさんたちへの言い訳を考える。



 あとがき
 プロットを考えながら、比呂美スレを眺めていました。
 漠然としたイメージのままですが、眞一郎のお泊りです。
 さすがに本編に入りそうにないですが、一場面として描いてみました。
 十二話の展開を考えるのは時間がかかりそうなので、
 比呂美と眞一郎以外の場面は省略するかもしれまん。
 ご精読ありがとうございました。

 前作

 true tears  SS第一弾 踊り場の若人衆
ttp://www.katsakuri.sakura.ne.jp/src/up30957.txt.html

 true tears  SS第二弾 乃絵、襲来
「やっちゃった……」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4171.txt.html

 true tears  SS第三弾 純の真心の想像力 比呂美逃避行前編
「あんた、愛されているぜ、かなり」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4286.txt.html

 true tears  SS第四弾 眞一郎母の戸惑い 比呂美逃避行後編
「私なら十日あれば充分」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4308.txt.html

 true tears  SS第五弾 眞一郎父の愛娘 比呂美逃避行番外編
「それ、俺だけがやらねばならないのか?」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4336.txt.html

 true tears  SS第六弾 比呂美の眞一郎部屋訪問
「私がそうしたいだけだから」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4366.txt.html

 true tears  SS第七弾 比呂美の停学 前編 仲上家
「俺も決めたから」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4403.txt.html

 true tears  SS第八弾 比呂美の停学 中編 眞一郎帰宅
「それ以上は言わないで」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4428.txt.html

 true tears  SS第十弾 比呂美の停学 後後編 眞一郎とのすれ違い
「全部ちゃんとするから」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4464.txt.html

 true tears  SS第十一弾 ふたりの竹林の先には
「やっと見つけてくれたね」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4523.txt.html

 true tears  SS第十二弾 明るい場所に
「まずはメガネの話をしよう」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4585.txt.html

 true tears  SS第十三弾 第十一話の妄想 前編
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4598.txt.html
「会わないか?」「あなたが好きなのは私じゃない」
「絶対、わざとよ、ひどいよ」

 true tears  SS第十四弾 第十一話の妄想 後編
「やっぱり私、お前の気持ちがわからないわ」
「うちに来ない?」(予想)
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4624.txt.html
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