交差点


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もう乃絵のためには踊れない。夜の海でそう乃絵に告げた。

聞き出した携帯に連絡をとり、じべたを小屋に戻し、高校近くのコンビ二で石動純を待つ。
疲れと寒さで、乃絵はうとうとしている。勝手なやつだと少しだけ腹立たしい。
多少はましかと思って、自分のマフラーを乃絵に巻いてみたが、彼女の頬は白いままだ。

30分程して石動純がタクシーで到着した。こちらを一瞥してカウンターへ向かうと、熱い缶飲料を2つもって
戻ってくる。ああ、俺って間抜けだなと思う。
熱い缶を握らせ、動きの鈍い乃絵の体をさすりながら、何度も乃絵に話しかける石動純。
俺は渡されたコーヒーを開けて、一口飲む。熱い液体が心地良い。
間近で見るとやはり乃絵と似ているなと思う。表情は硬い。バイク事故の際自分が比呂美を見つけたときも、
こんな顔をしていたんだろうか。土地勘のない石動純は、夜の街をどう走ったのだろう。

慇懃に礼を述べ、石動純は乃絵をタクシーへと促す。
「湯浅比呂美にも後ほど改めて…」
俺は首を振り、交換条件など持ち出した非礼をわび、二度と連絡しないでくれるよう伝えた。
石動純の目の中に逡巡の色が動き、何か言おうとする。と、乃絵が何事か小さくつぶやいた。
それに気をとられるうちに、早く仕事を切り上げたい風の運転手が降りてきてドアを開けてくれ、
二人は車内に乗り込んだ。石動純が目礼し、タクシーは動き出す。

飲みかけの缶をゴミ箱に捨て、しんと凍えた雪の小道を歩き出した。
首筋が寒い。帽子を深くかぶり直す。乃絵に告白した日に似たもやもやした感じ。
誰かに伝えたくて、雪の中で愛ちゃんの店が開くのを待ったっけ。
今日は麦端祭の日。明け方までまだ少し間がある。体を休めたい。でも行かなくちゃ。

携帯を取り出して電話。1コールで相手が出る。やっぱり起きてた。
今から部屋に行く許可をもらい、電話を切る。
何度も怒らせ悲しませるだろうし、いつかだめになってしまうかもしれない。
それでも、今は彼女を安心させたい。話したい。会いたい。
暗い竹林の中、靴にまとわりつく新雪を踏み分け、俺は比呂美のアパートへと向かった。

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