比呂美END予想SS


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比呂美END予想SS


祭りの夜、雪の降る学校。俺はここで石動乃絵を探している。
彼女に今までの事を感謝するため、そして…
奥から物音が聞こえ、俺はその方向へ走り出した。
乃絵が木に登っていた。でも彼女は、俺が駆け寄る前に木の上から飛び降りた。
駆け寄る俺に気が付いて、彼女が振り向く。降り積もった雪がクッションになったようだ。
彼女は怪我をしていないようだ。
彼女が飛び降りた時、自殺でもするつもりだったのかと思ったが、
どうやらそれは俺の思い過ごしだったようだ。
「眞一郎、私、飛べなかった」
「お前、飛ぼうとしたのか?」
いまだにコイツの考えることはよく分からないことがある。
だが、今はそんなことで悩んでも仕方が無い。俺は本題に入った。
「絵本、完成したんだ。見て欲しくて。」
俺は乃絵のために書き上げた、「地べたと雷轟丸の物語」を取り出す。
前に書き上げたときとはエンディングを変えてある。
失速した地べたを、地面から飛び上がった雷轟丸が支えて着地する…
ありえないようなハッピーエンドだ。
「眞一郎、あなた、飛べたわね。」
絵本を読み終えた後、乃絵が口を開いた。
「ああ、乃絵のおかげだ。踊りのことも、絵本のことだってそうだ。
 俺が飛べたのは乃絵が傍にいて励ましてくれたからだ。ありがとう。」
「お礼なんていいよ、眞一郎なら、きっと、自分だけでも飛べたから。」
「それと俺、もう一つ乃絵に伝えなきゃならないことがあるんだ。」
「何?」
乃絵は笑顔で俺を見つめている。一点の曇りもないような、澄んだ瞳…
俺は少しためらいつつも、勇気を振り絞って、話し始めた。
乃絵には残酷な、俺の真実。
「俺、湯浅比呂美が好きだ。比呂美とは幼馴染で、昔からよく遊んでた。
 あいつの両親が亡くなってさ、うちで引き取ってたんだ。
 でも、あいつと俺、兄妹かもしれないて言われてて、それで…」
「それでお兄ちゃんから私と付き合ってって言われたとき、
 お兄ちゃんと湯浅比呂美が付き合うように取引をしたのね。」
「乃絵、おまえ…」
「お兄ちゃんから、全部聞いた。湯浅比呂美からも、全部。だから、分かるの。」
「ごめん、乃絵、俺は…」
乃絵は俺の言葉を遮って続けた。
「私、何も知らなかった。お兄ちゃんのことも、湯浅比呂美のことも、そして、眞一郎のことも。」
「乃絵…」
「それなのに、『真心の想像力』だとか言って、全部分かったつもりになってた。
 そんな私が、何も見えていない私が涙なんて取り戻せるはずなかったんだわ。
 でも、ありがとう、眞一郎。今の私なら涙を取り戻せる。
 真実が見えるようになった、今の私なら、きっと。」
乃絵が俺に近づいてくる。
「眞一郎、あなたの涙、私がもらってあげる。」
乃絵に言われて、初めて自分が泣いていることに気が付いた。
彼女の指が、俺の頬に触れる。
そして…俺の目の前の少女は、涙を流した。
失った涙を、彼女は取り戻した。俺の涙を拭うことで、彼女は。
「乃絵、おまえも飛べるさ」
俺は泣きながら呟いた。

乃絵を家まで送った後、俺はそのまま家に戻った。
家までの帰り道、比呂美に今日のことを何て言おうか、そればかり考えていた。
乃絵とのこと、ちゃんとしよう。
そればかり考えて、比呂美にあんな嘘をついてしまって。
俺って、本当に結局ちゃんとできているんだろうか。
そんなことが、頭に浮かんでは消えていった。

次の日の昼休み、俺は三代吉と教室にいた。
昨日の祭り会場以来、比呂美とは話をしていない。
比呂美は昼休みが始まるとすぐに教室を出て行って、今は教室にはいない。
比呂美から、何か避けられている感じがして、
俺は完全に話しかけるタイミングを失ってしまっていた。
昨日の嘘を謝らないといけないのに、自分から話しかける言葉も見つからずに、
ただただ時間だけが過ぎていった。何やってるんだ、俺は。
これじゃあ何一つ変われてないみたいじゃないか。
自分が嫌になる。

放課後、急に比呂美のほうから一緒に帰ろうと声をかけてきた。
口を開くタイミングをつかめないまま、海岸沿いをただ歩き続ける。
「今日の昼休みね、」
「え?」
急に口を開いたのは比呂美のほうだった。
「石動乃絵が来たの。」
比呂美の話によると、昼休みに乃絵が体育館に来たのだそうだ。
比呂美に会うために。そして、昨日のことを全部話していったらしい。
俺はあまりの恥ずかしさに顔が真っ赤になった。
「それでね、彼女、最後になんて言ったと思う?」
「さあ…」
「眞一郎君のこと、信じてあげてほしいって。避けないで、きちんと向き合ってあげてって。」
比呂美は俺のほうに振り返って話し続けた。
「だからもう、私、眞一郎君のこと疑ったりしないわ。こんな自分、嫌なの。」
「比呂美、俺…」
「なあに?」
もうこうなったら覚悟を決めるしかない。俺は目を閉じ、自分の気持ちを比呂美にぶつけた。
「比呂美、俺、お前のことが好きだ。」
そのまま間をおかず俺は続ける。
「うちに引き取られて来てから、お前はずっと泣いていた。でも、お前が泣いたら、
 これからは俺がお前の涙を拭ってやる。明るい場所へ連れて行ってやる。
 だから、もう泣かないで欲しい。比呂美には笑顔でいて欲しんだ、だから…」
目を開けると、そこには涙を流す一人の少女がいた。
「泣かないでって言ったのに…」
「でも、私…嬉しくて。私も眞一郎君のこと…」
後は言葉にならなかった。
俺は比呂美の涙を指で拭う。

僕の中の君は、いつも泣いていて、
僕は、君の涙を拭いたいと思う。
拭った頬の感覚を、僕はこのとき始めて知った。
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