おいてかないで…


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「おいてかないで…」
比呂美がそう言ってからどのくらい時間がたっただろう
仲上のおばさんが祭りの後、着替えに帰ってこない比呂美に気付いたのは踊りが終わってから2時間経った時であった

「あなた、比呂美が戻ってこないのだけど、帰るとかって聞きました?」
「いや、祭りの後始末で比呂美には会っていないぞ」
「そうですか…私も色々忙しくて気付きませんでしたけど比呂美が着替えに帰ってきてないんですよ」
「うーん、友達と遊んでいるとかじゃないのか?」
「着物のままでですか?家に帰ったのかしら」
「携帯にかけてみたらどうだ」
「そうですね」

トゥルルル……トゥルルル……
しばらくかけてみたが反応はない
心配になって出かけたおばさんが比呂美を見つけたのは、後片付けが終わった舞台から少し外れた場所だった
そこにいた比呂美はぼーっとしており、よく見ると片足が裸足だった

「比呂美、あなたどうしたのこんな所でそれに下駄が片方しかないじゃない」
「おばさん…」

おばさんの声を聞いた比呂美だが反応は薄くどこか虚ろな目をしていた

「こんな所でじっとしていたら体が冷えるわ、帰るわよ」

おばさんは少し比呂美の様子がおかしいのに気付いたが
あの時以来比呂美に引け目を感じていてうまく話すことが出来ない

「おいてかないで…」

比呂美はつぶやいたが誰にも届かず虚しく自分の中でこだまする

「比呂美?」

その場を離れない比呂美にやや怪訝な声でおばさんが問いかけた

「ごめんなさい、下駄を無くしてしまって…」
「下駄ぐらい持ってきてあげるわよ、帰りましょ」

「あの… いえ、大丈夫です一人で帰れますから」

どうしようか迷ったおばさんは

「少し待っていなさい、下駄を持ってくるから」

と言って急いで家のほうに帰った
おばさんが下駄を持って比呂美のいたところに行くと比呂美の姿は消えていた
辺りをおばさんが捜してみたが結局見つからず
晩くに比呂美から勝手に帰ってごめんなさいと謝りの電話があった

次の日比呂美は学校を休んだ
結果、昨日の晩石動乃絵が怪我をして病院に運ばれたことその付き添いに眞一郎がいたことを知ることはなかった
怪我自体はたいしたことはなく捻挫程度だったが乃絵が心配な眞一郎は乃絵にべったりで比呂美を見ることはなく
はたから見れば一組の仲のいいカップルにしか見えなかった


学校で眞一郎君と石動乃絵が一緒に歩いている場面を見た
凄く冷めた目で眺めている自分に気付いた

まるで心が無くなってしまったかのように


死ねば眞一郎君は私のために泣いてくれるのかな…
眞一郎君の心に一生残るのかな…

お父さんとお母さんが死んでから何にもいい事がなかったな…
会いたい…お父さんとお母さんに会いたい…

机の上には便箋が1枚

仲上のおじさんとおばさんへ

私が死ぬことで世間から色々言われると思いますけど、これは私自身が決めたことでおじさんやおばさんの性ではありません
少し疲れてしまって両親と同じ場所に行きたいと私が願ったからです
今まで短い間でしたけど私の親代わりとして育てていただいたことに感謝しています、ありがとうございました

朋与へ

私の一番の親友
私が苦しい時、悲しい時、楽しい時、どんな時も朋与が一緒にいてくれて本当にありがとう
こんな選択をした私を朋与は許してくれないだろうけど、あなたに出合えて本当によかった

さようなら
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