「今だけは……忘れられるから……」

「乃絵と付き合ってやってくれ」
「俺が石動乃絵と付き合う代わりにあんたに比呂美と付き合ってくれって言ったらどうする?」
「かわいいよな。あの子。……じゃ、そうゆうことで」

 売り言葉に買い言葉。というつもりでもなかったが、眞一郎は石動純の言動に納得がいかず、勢いに任せてそんなことを言ってしまった。
 比呂美は石動純のことが好きだと言っていたし、自分も比呂美を諦めるためには必要なことのようにも思える。
 けど、胸の奥の蟠りが気持ち悪かった。

 眞一郎と純とのやりとりからほぼ二月が過ぎた。
 あれから純とは何もなかったが、比呂美と接する機会が減ったように眞一郎は感じていた。
 もともと学校でも家でも会話することが少なかったが、早くに登校したり帰宅が遅かったり姿を見ることも少なくなった気がした。
 部活が忙しいんだろうと眞一郎は推測していたが、実際はどうも違うらしい。
「最近 比呂美どうしたのかな? 部活休みがちだよね」
「ん~なんか家の方の用事でいろいろ忙しいみたいだよ」
 昼休みに偶然 比呂美と同じバスケ部の子がそんな話をしているのを聞いてしまったのだ。
 確かに彼女は酒屋である家の手伝いをしてくれてはいるが、部活を休んでまですることではないし、
部活のしてない自分が、早くに帰宅して手伝いをしている比呂美の姿を見たことはなかった。
 ……比呂美のやつどうしたんだ……?

 放課後。眞一郎は視線で比呂美を追っていた。
 部活仲間の朋与と申し訳なさそうな表情をして会話をしている。
 どうやら今日も部活を休むようだ。
「眞一郎ー。あいちゃん寄ってこうぜ」
「悪い。今日ちょっと用があるんだ」
 比呂美が教室を出たのを確認して、三代吉の誘いを断り席を立つ。
 なんだよつれないなーとつまらなそうな顔で非難する三代吉に、悪いなともう一度告げて教室をあとにした。
 探偵よろしく付かず離れずの距離で比呂美の後を追う眞一郎。
 いや、これはむしろストーカーだろ…
 馬鹿なことをしていると自分を蔑みながらも、比呂美が何をしているのか真相が知りたかった。

 他の生徒と同様に学校を後にしていく比呂美。案の定自宅とは違う方に向かってゆく。
 長く綺麗な髪がさらさら揺れる様は遠目に見ても目立つので見失うことはなさそうだ。
 しかしどこに向かって歩いているのか見当がつかない。
 気付けば知らない路地を進んでいて、うっかりすると帰り道に迷いそうだった。
 そうして数十分歩き続けた結果、辿り付いたのは住宅街の見知らぬ一軒屋だった。
 ……誰の家だ?
 比呂美がインターホンを押し少しすると引き戸のドアが開いた。
 眞一郎の場所からは死角になって誰が出迎えたか見えない。
 誰かを確認する前に比呂美はそのまま家の中へ招かれていってしまった。
 行ってみるか。物陰から出て眞一郎はその家に向かう。真っ先に目にしたのは、
 ……このバイク……石動乃絵の兄貴の……!
 紛れもなく純のバイクがそこに止めてあった。
 なら、この家は石動家と思って間違いない。
 だとすれば比呂美を出迎えたのは──……
 嫌な胸騒ぎがした。眞一郎は思わず戸口に手をかけた。

 !?……開いてる……
 鍵をかけ忘れたのか、日中在宅時は鍵をかけないのか?
 勢いで手をかけたものの、まさか鍵がかかってないとは思わなかった。
 ただ、鍵が開いてるとはいえ、自分は何をしようというのか?
 勝手に上がってしまえば明らかな不法侵入だし、石動家に自分がいることに理由がない。
 比呂美のことが気になるからなんて、私情も甚だしい。
 ただ……それでも比呂美の事が気になって仕方がない。
 彼女は純のことが好きで、もし二人がいつの間にかそういう関係になっていたのなら……
 それでも……それでも俺は…… 
 常識的なことなど全てふっとばして、感情的な思考のまま眞一郎はドアを静かに開けた。
 ゆっくりと音を立てないように、足音、衣擦れ、息さえも押し殺して玄関の中へ。
「……ん……あっ………」
 静かな空間からわずかに聞こえた女性のくぐもった声…
 嘘……だろ……
 玄関からすぐ近くの部屋…リビングだろうか? そこから漏れる声に吸い寄せられるように、
眞一郎は激しく打ち付ける自分の鼓動の音を聞きながらふらふらと近づく。
 閉まりきっていない扉から覗き込んだ瞳に映ったのは……
「んっ……っ……」
 抱き合い、唇を重ねる比呂美と純の姿だった。

 …………そんな……
 眞一郎は愕然として身体から力が抜けてしまい、壁に寄りかかるようにその場に崩れこんでしまった。
 二人はもうそんな関係だったのかと、やっぱりこんなことやめておけばよかったと、後悔の念が一気に押し寄せてきて、自分が愚かで哀れで情けなさで消えてしまいたくなってしまった。
 二人に気付かれる前に早くこの場を立ち去りたい。そう思うのに、
 ……比呂美…………
 二人がこれから何をするのか──それはわかりきってはいるのだけど──気がかりでその場を動けない。
 事実、
「ん……純さん……んんっ……」
 比呂美の声に下半身が反応してしまっていていた。

 互いに制服姿のまま、二人は唇をゆっくりと重ねあう優しいキスを繰り返していた。
 それは純が主導で彼が上唇や下唇をはむのを比呂美が受けとめているといった感じだった。
「……はぁ……んっ……」
 互いの唇を潤しあい、時折唇が離れれば短く銀の糸が引く。
 そんな恋人同時の甘いひと時を、眞一郎は胸が締め付けられる思いで見つめていた。
 いつか比呂美と──そんな夢を見なかったといったら嘘になる。
 比呂美と結ばれることを夢想して、自慰をしたことだってある。
 それでも、現実は甘くも優しくもなく……ただ残酷だった。
「……んっ……!?…」
 純が比呂美の右手を取ると自分の股間に引き寄せてきたので、比呂美は驚いて唇を離してしまった。
「触って…」
 短く告げて純は再び彼女の唇を奪う。
「んっ!……っ……んっ……」
 比呂美は恥ずかしさに頬を真赤に染めながらも、観念したのか膨らむ純の股間をおずおずと撫で擦る。
 ……あいつ比呂美にあんなこと……
 眞一郎は悔しさに拳を握り締める。
 自分が同じ立場だったらさせているかもしれないことでも、他人にされていれば怒りがこみ上げる。
 ただそれも比呂美が望んだ関係ならばどうすることもできない。

「口でしてくれるか?」
 長いキスを終えてぼんやりしている比呂美に純は問いかける。
 口でって……比呂美断ってくれよ……!
 祈るような思いで比呂美を見つめる眞一郎だったが、
「……うん」
 ……そんな……
 無常にも比呂美はそれを受け入れた。
 三人がけのソファに純が座ると、比呂美がその前にかがみ込む。
 純のベルトに手をかけ外すと、ジッパーを開けズボンを降ろすとトランクスに手をかける。
 そこで戸惑うように純を見上げる比呂美だったが、
純が何も言わず見つめ返すのを受けて、目を逸らしがちにしながらも慎重に脱がせた。
「……っ……」
 すでに十分勃起したペニスが比呂美の目の前に現れ、存在を主張する。
 眞一郎は知らないことだが、比呂美は数度 純のペニスを見ている。
 それでもやはりこうはっきりと視界に入れられるのは恥ずかしくてたまらなかった。
「それじゃ……するから……」
「あぁ…」
 決心しておずおずと純のペニスに手を伸ばし、利き手で優しく根元を握った。
 ……くそっ!
 見ていられなくて眞一郎は顔を背けた。 
 なのに、二人の息遣いや、かすかな動作音がはっきりと耳に張ってきて、ますます股間が刺激されるばかりだった。

 熱くて、硬い……
 純のモノをゆっくりと撫でながら比呂美は思った。
 誰かと結ばれ深い仲になればこういうことをする日がくるかもと考えたこともあるが、
実際にするとなるとこんなにも恥ずかしくてドキドキするものだとは思わなかった。
「……んっ……」
 ペニスを両手で支えるようにすると、先端に優しくキスをするように唇をつけた。
 ……………………
 目をそむけたい。目を背けられない。
 二律背半な思いのまま、眞一郎はその光景を見てしまいまたひとつ大切な何かを失ったような気がした。
「んっ………っちゅ……ん……はぁっ……んっ……」
 小さな猫のように短く舌を出し先端に濡らすようになめてゆく。
 亀頭の部分が乾いていると、触ったときに痛みがあるということは純に教えられていたので、
まずは全体を湿らせることから始めた。
 亀頭を舐め、カリ首周りにも舌を這わせる。
 これでいいの?というように比呂美が純を見上げると、彼は比呂美の髪を優しく撫でた。
 肯定と受け取った比呂美はさらに全体的にペニスを舐め上げていく。
 ゆっくりと腫れ物を扱うようにして、性感を呼び起こす努力をする。
「咥えて」
「うん……」
 十分にペニスが湿ったところで純の次の要求を受け入れる。
「んっ……んんっ……」
 ゆっくりと口内へ迎え入れ、唇で優しく締め付け舌も這わせた。

 もう眞一郎は完全に視線を落としていた。
 その場に座り込んで動こうにも動く気力すらなくなってしまっていた。
 ただただ、漏れてくる音を受け入れるしかなかった。

 どうすれば男が気持ちよくなるかはだいたいわかっていたので、
比呂美は唇で締め付けながら頭を動かし、ペニスをゆっくりと擦ってゆく。
 純のモノがどの程度大きいものなのか他の男を知らない比呂美には分からないが、
喉奥付近まで飲み込んでもまだいくらか余裕があるサイズだった。
「んっ…っぢゅっ……んんっ……んっ……」
 時折自分の唾液がこぼれそうになりそれをすする音や、空気が漏れてしまう音が大きく聞こえて、
大胆ではしたないことをしているような気になってますます頬を朱に染めて恥ずかしさでいっぱいになってしまう。
 そんなことに気を取られたからか、ほんのわずかだが比呂美の歯が純の先端に当たってしまった。
「痛っ……!」
「!…ごめんなさい……!」
 比呂美は慌てて口を離し申し訳なさそうに純を見上げた。
「……大丈夫だから続けて」
 微かに顔を歪めたが、何事なかったように純は続きを促した。
「ごめんなさい……」
 もう一度謝って、比呂美は歯を当てたところを癒すように何度も優しく舐めた。
 そしてもう一度咥え直し、今度はもっと優しく慎重に出し入れする。
 技術はないが奉仕する心遣いが十分に伝わってくるフェラチオに純の性感は確実に高まっていた。
「……このまま出していいか?」
「…………うん」
 少し逡巡したが比呂美は了承すると、自分なりに精一杯唇を舌を頭を動かしペニスを刺激した。

「っ……出すぞっ……!」
 純は宣言と同時に深く咥えた比呂美に喉奥に思い切り射精した。
「んんっ!…んっ!…っはっ!…けほっ………んん……」
 あっという間に喉奥を満たされ息ができなくなってしまった比呂美はペニスを外してしまい、
行き場のなくした精液を顔に浴びることになってしまった。
「大丈夫か?」
 喉に絡む精液を処理しようと何度も噎せる比呂美に純は心配そうに声をかける。
「んふっ……んっ……大丈夫…」
「待ってろ」
 純はその場を離れると台所へ向かい、コップへ水を汲んで戻ってきた。
 眞一郎は一瞬気付かれたかと焦ったがそうではなく息を吐いた。
「ほら、これ」
「…ありがとう」
 純の汲んできた水で口内をすすぐ様にしてゆっくり飲んでゆく。
 ホントは吐き出したいような気もしたが、純の手前そういうことはしたくなかった。
「悪い。無理させたな」
 言いながら近くから取ったティッシュで比呂美の顔についた精液をぬぐってゆく。
「ううん……気持ちよかったならそれでいいから…」
 健気な比呂美の言葉に純より眞一郎の方が反応する。
 ……ホントにアイツのことが好きなんだな……

「今度は俺が良くしてやるよ」
「えっ?…きゃっ!」
 純が比呂美の手を取り立ち上がらせると、そのままソファに座らせ肩を抱き唇を奪う。
「んっ!…んんっ……ぷはっ…んっ、んんっ…」
 さっきのとは違う舌を入れた濃厚なキスをする純。
 空いた右手で比呂美の胸を制服の上から弄る。
「んふっ、んっ…んんっ……」
 進入してくる舌を受けとめるので精一杯な比呂美は、自分の身体に触れられるのをされるがまま受け入れた。
 そのまま純は器用に上着を脱がしてゆき、ブラウスのボタンも外して、清純そうな比呂美らしい白のブラジャーに包まれた胸を露にする。
「外して」
 さすがに背中に手を回すのは難しいのか最後は比呂美に任せる。
「……………………」
 戸惑いながらも比呂美はあまりはっきり見られないよう身をかがめながら背中に手を回してブラを外した。
 ……あれが比呂美の……
 思わず眞一郎は息を呑んだ。
 どちらかといえば大きい部類に入る比呂美の乳房は離れて見ても綺麗だった。
 形も良くて頂の桃色の乳首は小さくて可愛らしかった。
「んっ…」
 その憧れすら覚える乳房に、純はあっさりと触れ優しく撫で回す。
 眞一郎は嫉妬心に身を焦がされる思いだった。

 キスをしながら胸を愛撫されると、これからセックスをするんだと嫌でも意識しまう。
 嫌……ではないのだが、恥ずかしさに思考が鈍ってゆく。
「んっ……あっ……んっ!…そっちはっ」
 純は手馴れていて愛撫がとても上手だった。
 だからいつも間にか性感を高められていて、スカートの中に手が進入してきたことに気付かなかった。
「もう十分濡れてる感じだな」
 ショーツの上から触れられただけでも、自分で濡れてしまっていることが分かるくらい愛液を滲ませていた。
「言わないで…」
 恥ずかしさに顔を覆ってしまう比呂美。それが逆に無防備になってしまい、純はショーツをするすると脱がせてしまう。
「あっ……」
「もっと良くしてやるから」
 言って純は半分比呂美に覆いかぶさるようにして、キスをし、左手で胸を弄り、膣内に指を挿れた。
「んっ!んふっ…んっ、んっ!」
 くちくちと純はわざと音を立てるようにして比呂美の羞恥を煽りながら、膣壁を引っかくように擦ってゆく。
 加えて親指で器用にクリトリスも刺激すると、比呂美は目に見えて身体をびくびくと反応させて喘いだ。
「ダメっ…純さっ……もうっ」
「イッていいよ」
 純に耳元で囁かれ比呂美の全身にゾクゾクとした何かが走り抜けた。
 そして止めとばかりにGスポットを強く擦り上げられた。
「やっ!ダメっ…んっ、んんっっ─! ああっ、んっ…あはぁ…」
 ビクビクと身をこわばらせて比呂美は絶頂に達する。
 ……もういいだろ……
 もうここにはいられない。想い人が他の男に抱かれる様は見たくない。なのに、
「んっ……はぁ……はぁ……」
 比呂美の漏らす喘ぎ、吐息が足を絡める鎖のように巻きついて足が動かなかった。

 ぎしっと音が鳴って眞一郎ははっとした。
 リビングを見れば横たえた比呂美と向き合うようにソファに上がる純の姿が見えた。
「あっ……」
 達して力の抜けていた比呂美はその様を眺めることしかできず、これから何をするかは一目瞭然だった。
 ……やめてくれ!
 声を上げて部屋に突入したい思いだった。だが、そんなことできるはずがなかった。
『私が好きなのは蛍川の4番』
 それが呪いの言葉のように眞一郎を押しとどめていた。
 これは比呂美が望んだ状況で、自分が後押しした状況なのだと。
「挿れるぞ」
 再び勃起したモノを比呂美の膣口に宛がう純。
 わかっている……わかっているんだ……
 これが比呂美にとって一番幸せなことなんだと。
 けど、けど──!
「んっ…あっ!…んんっ……!」
 俺はそれでも比呂美が好きなんだよっ……!

 眞一郎の想いは報われることなく、比呂美の膣内は純のペニスで満たされていった。

「大丈夫か?」
 体勢的に密着できる限界まで腰を沈めて、純は息を吐いた。
「んっ……大丈夫…」
 初めの数回は破瓜の痛みが残っていたが、もうほとんど痛みはなくなっていた。
 が、異物を膣内に収めることにはまだ慣れず、純の大きなサイズもあって苦しさはまだ残っていた。
「そっか、ならよかった」
 比呂美の膣内は処女を失って間のないきつさが残っていて、締りもとても良かった。
 その上膣襞がペニスを歓迎するように生き物のごとく絡み付いてきて、挿入するだけで十分気持ちよかった。
 初めて比呂美としたとき“名器”だなと感じたが、数回こなした今間違いないと確信していた。
「動くぞ」
 比呂美の返答を待たず、純はゆっくりと動き出した。
「んっ…あっ…!んっ……んんっ……」
 実は達したばかりで少し敏感になっていた比呂美には少しの動きでも感じすぎるくらいだった。
 それを見抜いていた純はもっと比呂美を煽るように語り掛ける。
「比呂美の膣内はいいな。今までした中で一番良いよ」
「やだっ……比べないでっ……」
「比べるのが馬鹿らしくなるくらいだって」
 比呂美は羞恥心が高まるほど感じてしまうタイプだというのはこれまでの経験でわかっていた。
 大きなストロークで膣内を擦りながら、彼女が恥ずかしくなるよなことをたくさん囁いてやる。
「絡み付いて吸い付いて…たまらないな」
「んっ…そんなことっ…!んんっ…んっ、あっ…ああっ……!」
 言葉からの恥ずかしさと、身体からの快感であっさりと高められていやいやと比呂美は首を振る。

「気持ち良いか?」
 純はストロークを続けながら、覆いかぶさり両胸を揉みながら比呂美に尋ねる。
「んんっ、ふぁっ…あんっ……ん、んんっ……」
 素直に気持ち良いと答えることもできず、視線を逸らすことでごまかそうとするが、
そうすることでより快楽が内に溜まっていってますます我慢できなくなってゆく。
「顔見せて」
「あっ…!」
 背けている比呂美の顔を両手で正面を向かせる。
 汗ばむ肌に前髪が張り付き、瞳は泣きそうなくらい潤み、頬はこの上なく紅潮していた。
 その表情は年不相応の色気があって純もどきりとさせられた。
「やっ……」
 感じている自分の姿をまじまじと見られるのが恥ずかしくて比呂美は目を伏せる。
 同時に身をこわばらせ、膣内もきゅっと締まった。
「あっ!やぁっ、んんっ…純さんっ、激しっ…!」
 強く擦れるこの瞬間を狙って純は身を起こして、激しく腰を動かした。
「んんっ、もぅっ!んっ、ああっ…イクッ…!んっ!あっ!ああっっー!」
 身体を突っ張らせて比呂美は達した。
「くっ……」
 膣内が思い切り締め付けられ、一気に射精感が高まるのをなんとかやりすごす。
「あっ…ああっ……はぁ……はぁ……んっ…んんっ」
 絶頂の余韻が冷めぬまに、純は比呂美と唇を重ねた。

 達してふわふわとした気持ちのまま、優しくキスをされ少しだけ幸せな気分にさせられた。
 唇が離れ純の顔を確認するとその気持ちはすぐに霧散した。
 それが何故なのか。比呂美には分かっていたが、今は分かりたくなかった。
「純さんまだ……」
 純が射精しなかったのは感覚的に分かっていた。
「次こっち乗って」
 純は比呂美の膣内から抜き去ると、ソファに座り込む。
 比呂美は気だるげに身を起こして、付けたままのスカートを外した。
 彼の肩を支えに足を跨ぐ。そそり立つペニスめがけてゆっくりと腰を下ろしてゆく。
「んっ……」
 先端が触れたところで、純の方で膣口にペニスを宛がう。
 二度イカされたっぷりと愛液を湛えた膣内は、先端が少し入り込んだだけでちゅぷりと淫らな音を上げた。
「あっ……んんっ……!」
 ぬるぬると柔襞を切り裂く感触に膝が振るえ、身体を支えきれなくなり比呂美は純にもたれる様に一気に挿入した。
「んんっ!…ああっ…んふっ……」
 自分の体重が思い切り膣奥を押し上げることになり、比呂美はそれだけで軽く達した。
「子宮降りてきるな…奥当たってるのわかるだろ?」
 比呂美は純に抱きつきながら、こくんと頷く。
「奥までいっぱい……あんっ、んっ……んんっ……」
 そのまま比呂美は自分で子宮口を擦るようにゆっくりと腰をくねらせ始めた。

「んんっ!…あっ、あっ…んふっ、んんっ…んっ!あんっ…」
「やらしいな…男に跨って腰ふるタイプには見えないんだけどな…」
 比呂美の柔らかなお尻を支えるように掴んで純は言う。
 子宮口を擦られるのはゆっくりでも感じすぎるくらいだったが、比呂美はその動きを止めることはしなった。
「だって……こうしてるとっ、んんっ…凄く感じて…今だけは……忘れられるから……」
 途切れ途切れに、比呂美は切なげに呟いた。
「……そうだな……こうしてるときが一番忘れられる」
 ……忘れる……?……何を?……
 二人の言葉は俯く眞一郎にも届いたが、その意味を理解することはできなかった。
 共有する想いがあって、二人はそれで惹かれあったのだと眞一郎は知る由もない。
「もっと忘れさせてやるから」
 言って、純はソファの弾力を利用して比呂美の奥を突き上げ始める。
「ああっ!あんっ、んっ、んんっ!凄いっ…あんっ…いいっ…!」
 奥を突かれれば突かれる程、思考が弾け頭の中が真っ白になってゆく。
 膣内は締まり、愛液をまとった肉襞が絡みつき、純にも多大な性感を与えた。
「もうっ、もう、私っ!」
「俺もイクから…」
 絶頂を訴える比呂美に応えるように、純もスパートをかけた。
「ああっ!あんっ!イクっ…もうっ…!イクぅっ……!」
「イクぞ」
「うんっ、来てっ、来てっ!…んっ!あんっ!イクっ、あっ、ああっっ──!!」
 比呂美と純、二人が同時に絶頂に達する。

 その瞬間、眞一郎の瞳から一粒の涙がこぼれた。

 比呂美の腰を抱き寄せ、ペニスの先端を子宮口に擦りながら純はびゅくびゅくと勢い良く射精した。
 我慢したせいか、フェラでの射精時より多くの精液を膣内へと解き放った。
「あっ…ああっ……んんっ……んはぁ……」
 ビクビクと暴れるペニスをしっかりと締め付けながら、注ぎ込まれる熱い精液の感触に陶酔する比呂美。
 本当に何も考えられなくなり、ただただ快楽の海を漂う。
 間違いなく幸せだった。満たされていた。この瞬間だけは──
「……抜くぞ」
 一足先に落ち着いた純が比呂美をソファに座らせるように身体を入れ替える。
「あっ、待って……もう少しだけ……」
 まだこの感覚を失いたくない。その思いで比呂美は離れようとした純の腕を掴む。
「もう…時間だろ」
 言われて辺りが暗くなりかけているのに気付いた。
 居候の身分でいつまでも外にいられない。
「シャワー浴びてくんだろ?」
「……ん」
 比呂美が納得したのを確認して膣内からペニスを抜き去る。
「んふっ……」
 同時に綻んだ膣口から純の放った濃厚な精液がこぽりと溢れた。
 それを純はティッシュと取って拭ってやる。
 他人に拭かれるのは恥ずかしかったが力の入らない比呂美はされるがままにするしかなった。

「でも……もう少しだけこうしてたかった」
 俯き加減に比呂美は呟く。
「なら一緒にシャワー浴びるか? それならまだしてやれるぞ」
「そんな……一緒になんて恥ずかしい……」
 意地悪く問う純の視線から顔を背けて比呂美は頬を染めた。
「今さら恥ずかしいもないだろ?」
 純は拭くのを止めて、膣内に指を差し込んで膣壁を引っかきながらまた抜いた。
「んんっ!」
「こんなに男の精液受けとめてるんだから」
 まだ残っていた精液がかき出されてそれを見せ付けられる。
 淫らな女だと言わんばかりに。
「………わかった…………だから、もっとして……」
 淫らでも構わなかった。
 はしたなくても構わなかった。
 純がこうして忘れさせてくれるなら。
 いつか本当に忘れられるときがくるなら。

 陽の沈みかける町の中を眞一郎は一人歩いていた。
 見たくなった。見なければ良かった。
 そうすればこんな思いをしなくてすんだのに……
 後悔だけが身体に巻きついて、他には何も考えられなかった。
「……眞一郎?」
 誰かが自分の名を呼んで、ふと前を見ると、きょとんとした顔の乃絵がいた。
「どうしたのこんなところで?」
「いや……そのちょっと…」
 いつもいつもタイミングが悪いな。と眞一郎は思った。
 こんなときは誰にも会いたくないのに。
「……眞一郎……泣いてるわ……」
「えっ……?」
 言われて初めて気付いた。乃絵が背を伸ばして頬を伝う涙を指で拭った。
「あっ……俺……」
 ヘボ涙と言われたあの時を思い出した。
「ま、またヘボ涙とか言うんじゃないだろうなっ」
 恥ずかしくなってごしごしと袖で涙を拭う。
「そんなこと言わないわ」
 予想に反して乃絵は眞一郎を抱きとめた。
「それは眞一郎を強くする涙。だから、もっと流したほうがいい」
「あっ……うっ……っ!…っ……!」
 押しとどめていたものがその一言で堰を切ったようにあふれ出して止まらなくなってしまった。
 眞一郎は逆に乃絵を抱きしめるようにしてその肩口で声を押し殺して泣いた。
 時間が許す限り、いつまでも。


以上です。なんか無駄に長くなって申し訳ないっす。
絶望した! エロくなくて絶望した! 三人称ってむずかいしいすね…
つーか、書いてて鬱になったので次は眞一郎と比呂美のラヴいの書いてやろうと思いました。
では。

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最終更新:2008年03月26日 14:26
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