truetearsVSプレデター1


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それは銀河系の彼方、深く冷たい闇から来た。
それは誇り高く、使命と伝統のためなら躊躇なく殉ずる覚悟を持つ戦士であり───残虐無比であった。

富山県某市。夜道を長い髪をした清楚な少女が歩いている。
日はとっくに落ち、いくらかの人はもう寝ているであろう遅くに、年若い少女がたった一人でいるのは理由がる。
彼女の母親─住まい先の─に命じられ、取引先の家庭に届け物があったのだ。送るという相手の誘いを断り、今は帰宅の途であった。
名を湯浅 比呂美という。

怪物の目的は砺波市にある自衛隊駐屯地であった。
強襲を受けた防人は寸前まで勇敢に抗ったが、凄惨な最期を迎え、心ならずも自らの髑髏を怪物に明け渡した。
とはいえ決死の反撃に怪物も手傷を受け、邪魔をされずに傷を癒すためにそこから遠くへ足を運んだ。

「やめてっ・・・!くぅうっ!はな・・・して・・・!ゲッホ!」
道脇に停車してある黒いバンの中からくぐもった悲鳴が漏れる。しかし、近隣の住宅に届くには小さすぎる。
比呂美が車のエンジン音に気付いたときには手遅れだった。
ヘッドライトを消して猛スピードで比呂美の行く手を塞いだかと思うと、中から無数の手が伸び彼女を引きずり込んだのだ。

「おら手ぇ押さえろ!そっちそっち」
「足開けボケ!殺すぞアマ!」
「かわいいねーきみー。高校生?ビデオで全部撮ってあげるからねー♪」
「あれ、ケンジやんねーの?めっちゃおまえの好みじゃん」
「ジョジョの新刊読むからパス」

彼らは県外から来た一流大学のサークル仲間だった。平静は品行方正で通り、金にも女性にも不自由しないエリートにも関わらず、
月に何度か周囲には男だけの親睦合宿と称して、地方の娘をレイプして回る凶行を何年も繰り返していた。
比呂美を選んだのもたまたまという、それだけであった。

「おねがいします・・・云うこと全部聞きますからホテルでしてください」
恐怖で気が狂いそうになりながらも、必死で冷静を保つ比呂美は抵抗を止め、痛みを最小限に留めることにする。
「えーマジー!!超淫乱じゃねオマエ。どーする?」
「たまにはいっか。あ、逃げらんねぇように服全部脱がしとけよ」
「・・・自分で脱ぎますから、破かないでください」
抵抗しないならレイプの醍醐味は半減である。それに落ち着いて見るとTVでもそう見かけない稀な美少女といっていい。
彼女が進んで奉仕してくれるのならそれはそれで大いに楽しみようがある。

比呂美は自ら進んで裸体になっていく様を鑑賞される恥辱を必死に耐える。
(眞一郎くん・・・助けて!)
全身を嘗め回すような視線を感じる。視姦されているのだ。己の内面が汚れていくのを感じる。
いっそ必死で抵抗すれば尊厳は守れる。そう、愛しい人に対する心は。
しかし、そうすれば身体に残った爪痕によって、彼に愛してもらう、ほんの微かな希望さえ失せてしまうのではないか。
彼はそんな人物ではない。それは確信できる。
しかしそれでも肉体に証拠が残らないよう努力する行動を選んでしまう。

胸が膨らんできてサイズの合わなくなってきたシャツを窮屈そうに脱ぐと、豊潤な乳房がたゆんと弾む。
その間も比呂美は歯が鳴るのを堪え、膝が震えるのを我慢していた。
指がジーンズのジッパーにかかり、淡い縞のショーツを露にして、わざと臀部を見せ付けるようにするのも、
両目にたたえる殺意を悟られないためである。
しかし被虐心を起こさせまいとする比呂美の過剰な演出は裏目に出る。
一同はホテルについてから事を行う、という了解がなんとはなしにできていたが、
男子ばかりの臭いが充満した車内にあって、若く健康な少女の放つ芳香はたちまち場を狂わせてゆく。
汗の染み付いたスポーツブラを外し、薄桃色の乳首が現れたところで遂に一人が暴走する。

「おぉぉぉ!マジたまんねぇわ!一発抜かせろよ」
盛りのついた雄が比呂美の柔肌に覆いかぶさり、滾った肉竿が太ももに擦れると全身に悪寒が走る。
「やっ!ホ、ホテルで・・・待って・・・」
願いも空しく首筋を舌が這い回り、乱暴に胸を揉みしだかれ乳頭を捻られる。
「あっ!・・・くっうぅう・・・んっ~!」
尻をこねこねと弄繰り回され、唾液を頬に垂らされると比呂美の精神は限界に達した。
今の瞬間まで心を殺して、現在の悲劇を他人事のように思おうとしていたが、
女子の尊厳を踏みにじられる汚辱を実感するに至ると、彼女の怒りがそれを許さなかった。

「あっ、初めてだから、キ・・・キスしてください」
比呂美は男の腰に太ももを絡ませ、首に手をかけると強請るように舌を伸ばす。
「へっ、度スケベが」
比呂美はむしゃぶりつくように口腔をぶつけ、舌を絡ませながら、男のズボンの中で窮屈にテントを張ったペニスを探り出す。
周囲も漫画でしかありえないと思っていた和姦の様に、手を出さず鑑賞を決める。
狭い車内で体勢を入れ替え、比呂美が男の上になると自らの秘所も慰めつつ、フェラチオの体勢に入る。
「おねがい、じっとして・・・」
運転していた男もとうとう溜まらずに、ブレーキを踏んでして後ろをを振り返る。

「ぎゃあああーーーーーーーーーーっっっっ!!!」
急停車による慣性で一同が傾いた刹那、比呂美は先ほどまで肌を合せていた男の睾丸を渾身の力で握りつぶしたのだ!
甘い淫欲の空気を一変させる断末魔で一瞬、男たちは思考を停止する。
その隙をついて比呂美は一番傍に男の鼻に向かって掌を打ち込む。鼻骨が陥没し脳まで刺さり、意識を失う。
残るは運転手を含め4人。友人を破壊された怒りで男が無理やり掴みかかるが、狭い車内と転がる男たちのせいでうまくゆかない。
比呂美は小柄なフットワークを活かして、2人がかりにならないよう体勢を入れ替えながら、
その男の小指を捻りあげると流れるような一連の動作で肘と肩を極め、その行動を完全に支配し、他の男たちの盾にする。
「いでええええええ!!!やめろやめろやめろぉ!」
「全員車から降りて!」
捕まった男は幼児のように顔中から液体を滴らせ、許しを懇願する。
一方、他の男たちは友人を助けようか算段したものの、このままでは全員の将来が危ういと思うや、見捨てることを無言で決めた。

怪物は純粋な興味からその様を観察していた。
強制繁殖は珍しくもないし、特にこの惑星の知生体間ではその傾向が顕著である。
しかし、大概においてひたすら蹂躙されるばかりの片方が、
たった今、圧倒的不利から逆転の兆しを見せたことに戦士として関心を覚えたのだ。

ザグッ
「げぼっ」

比呂美に拘束された男は無条件に仲間が助けてくれるとばかり信じ込んでいたが、別にそんなことはなかった。
男の一人が椅子の下に隠していた大型のアーミーナイフで彼の肝臓を抉りこむように突き刺し、暴れないよう絶命させる。
彼らが殺人をしたのは初めてではない。時折、頑なに抵抗する女子や、その彼氏などは配慮無用とばかりに
暴力を楽しんだあと、海なり山なりに捨ててきた。そして刺した男は特にそれをばかり楽しんでいた。
「おまえ死姦してやるよ」
死体となってしまえば盾となる体は重い肉袋である。

だが比呂美は偽装の淫行に興じる間、この展開も予想していた。
ナイフ男が刺したのと合わせて、死体を足で突き飛ばす。ナイフ男の体勢が崩れたと同時に、挟んだ死体の隙間から
パンッ!
と手の甲で相手の眼に叩き、顔を背けた刹那、耳に中指を突き刺した。
「うをわああああ!」
「てめぇ!」
「外に引きすりだせ!」
運転席と助手席の男たちも懐から武器を出すと、一旦車から降りる。
ナイフ男は痛みでガムシャラに暴れるが死体がぐったりと突き刺さり、蛇口のように垂れ流れる血も
手をヌルヌルにして一向に凶器を引っこ抜けない。比呂美も水溜りのように辺りを濡らす血にずっこけながらも、
まるでナイフ男に抱きつくようにタックルをかけ、重心をずらし、必死に腕力で圧倒されないようぶつかってゆく。
「うおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」
比呂美の心の深く暗い奥底、あらゆる不幸や忍耐によって生まれた醜い真っ黒い獣。
残虐な本来の彼女、その猛獣が理性という鎖を無理やりに引きちぎり、産声を上げた。

「がっ!げぼぼぼぼ・・・げむ」
時計の針にすればほんの一振り。1秒に満たない時であったが、その間に比呂美は必死に抵抗する相手の腕の間を水のように縫い、
果実を摘むようにして喉を細い指で潰した。ナイフ男は陸に上がった魚のように痙攣しながら血が喉に詰まって息絶えた。

後部座席のドアが左右から勢いよく開かれる。が、男たちは仰天する。
ほんの一瞬、外に出て回ったら、車内は塗装したように真っ赤になり、先ほどまで少女を殺そうと暴れていた男はゼンマイ人形の
ようにバッタンバッタンとのたうつばかりであったのだから。
「おいっ、そこっ!」
「へ」
シュッ
ドアの隅に身を寄せていた比呂美は隠れるというにはお粗末だったが、凄惨な光景にショックを受けた男たちには精神的に死角だった。
あれだけナイフ男が抜こうとして出来なかった、死体に抉りこんだナイフをあっさりと抜き取っていた彼女は
力むでもなく、撫でるようにして左側のドアから来た男の頚動脈を裂いた。
噴水のように鮮血が比呂美の全身を彩っていくが、それを気にも止めず、もう一方に向き合う。

「狂ってやがる・・・」
とうとう残り一人となったレイプ集団だが、これまでのようにはいかない。
腹が据わった相手となれば、体格で劣り、疲労も困憊している比呂美が正面から当たっては勝ち目はない。
「ここらでお終いにしようや。俺は出て行く。おまえは帰る。な、もう会うこともないだろ?」
「悪くないけど・・・やっぱりあなたには死んでもらうわ。刺し違えてでも」

比呂美は血でドロドロに汚れたアーミーナイフを、今さっき屠った男の服で拭うと、
その男が使うはずだったチェーンを片腕に巻いて車から降りる。
全裸に人の血で真っ赤に染まったその姿はさながら血化粧をしたネイティブ・アメリカンの歴戦の戦士のようである。
怒り、悲しみ、憎しみ・・・あらゆる感情が顔面に沸き起こり、それらが殺意という意思でひとつにまとまったとき、
彼女の口には知らず笑みが浮かんでいた。
「・・・傀儡めっ!」
出会ってから10分と経たない男女が始めた狂気が佳境に入るなか、
その空気を日常とする怪物は彼らの息遣いが感じられるほど傍まで近づいていた。
月明かりと遠くからの外灯のみが頼りではあるが、
2人がよく注意すれば、すぐ傍らの闇に光る眼と、擬態によって歪んだシルエットを見たはずである。

怪物は2人の─特にまだ成人にも至らぬ少女の─感情を、精緻な観測機能によって細部まで味わい楽しんでいた。
数分前までは地球上の至るところにいる凡庸な少女が、尊厳(この理由も誇りを重んじる怪物の好奇を誘った)を守るため、
先ほどとは全く別の生物へ‘変身‘を遂げたことを、発汗、体温、血圧などが如実に示している。

とはいえ相手の男との体格差は依然圧倒的であり、それは心気の変化だけで埋められるほど容易くはない。
それに先ほどまでの死闘は彼女の敏速な奇襲であり、対等な勝負ではない。
故にこの一戦こそ少女が単にキレただけか、それとも稀有なる真の戦士に覚醒したかを決定するのだ。

ガギンッ!
最後の男が放った金属バットのから一戦が空を切り、ガードレールに火花をたてる。
比呂美も隙を突いて間を詰めるが、男の膝が余力を溜めていると感じるや、後ろに跳んで安全を保つ。
男も体勢を立て直すとバットを腰を沈めて構えなおし、再びジリジリと距離を詰める。

男は値の張る運動靴を履き、バットも使い慣れている。高校時代は野球部で汗を流し甲子園まで行った。
結局、スポーツでは一流になれず、流されるまま爛れた大学生活を送って輝いていた栄光は、今や苦痛でしかなく、
旧友とも顔をあわさず思い出すことも今ではなくなっていた。

しかしとうに忘れた筈の‘負けることは死ぬに等しい‘と思っていた緊張感がフツフツと蘇ってくる。
泣きたいほど逃げ出したい困難に全力で踏み出す快感。
思えば惨い最期を迎えた友人は、行いからすれば当然といえる。というより、所詮法の器だったわけだ。
罪に対する罰、世の定法を破るものこそ世を動かすに相応しい器。そう、彼女はその試練なのだ。
彼もまた比呂美の殺意に中てられて、雄の野心が目覚めていた。

今宵、闇には獣が3匹現れた。果たして最後に立っているのは誰だろうか。

(眞一郎くん、会いたいな)
今、踵を返し、この場から逃げたら追いつかれるか。だが大声で助けを呼びながら逃げればうまくゆくかも。
男も人が来れば当然‘逃げる‘。いや、可能性さえ示せばいい。実際に助けがこなくても。
それだけで自分は家に帰り、命を拾える。

「あっ、お巡りさん!助けて!」
小学生のようなフェイクだが、比呂美の鬼気迫る演技、女の仮面によって男は刹那、注意が反れた。
瞬間、比呂美が左腕に巻いたチェーンがムチのように唸る。
ヴオンッ!ギーーーン!
男も咄嗟にバットでガードするとステップを踏んで豪腕なスイングをかける。
殴ることに特化した鈍器はガードしても、そのまま比呂美の身体は叩き潰せるのだから。

が、男の身体の外側に比呂美は入っていたので、バットは腕の力のみのスイングになる。
なんなく比呂美は交わすと、男の膝を横から踵で蹴りを入れた。
「がうぁっ!」
男が下からバットを切り上げたときには比呂美は既に安全な距離まで退いていた。
ナイフという古来の凶器に注視していた男は読み抜かれ、膝の健に傷を負う。
「っのゲロくせぇガキがああああ!!!」
か勝利を確信していた男はこの手傷で怒り、痛みを消して襲い掛かる。

今の瞬間こそ比呂美がこの狂気から離脱する最後のチャンスだった。しかし自分は‘人間‘として彼らに侮辱を受けたのだ。

比呂美はチェーンを巻いた左腕を前に伸ばし、ナイフを取る右腕を顔の傍に構え、相手にとって身体を横に向け構える。
腕で体までの空間を作り、男の横に回りながら豪風のような振りを紙一重、しかし確かにかわす。
日々の練習の積み重ねが結実し、一撃で死に至る恐怖を前にしても、相手の動きを読むことに比呂美を集中させていた。

法という手の上で庇護と裁きを」受けることは誇りさえ他者に保障してもらうことで成り立つと比呂美自身が認めてしまうことだ。
それだけは許せない。

全ての権利や自由が奪われてるのは我慢できても、自分が心を持っていることだけは放棄できない。
だから自分を玩具のように扱った彼らは比呂美自ら殺さなくてはならないのだ。
「(今!)」
防戦一方だった比呂美が針の穴を刺す正確さで腕から蛇のようにチェーンを飛ばし男の親指を砕いた。
「だがぁっ!」
しかし比呂美の注意がバットにのみ傾いた刹那、男は肩を向けて体当たりで駆けてきた!
迷いなくナイフを伸ばす比呂美だが、
男の動きが先立ったため、凶器は男の腕を掠っただけで、比呂美はその力をもろに受けて弾き飛ばされる。
「ひやっっ!」

受身もとれず派手にすっころんだ彼女はそれでも間髪置かず立とうとするが、
「遅ぇんだよっ!」
ドグァ!!!
それより速く彼女の腹に男の分厚いシューズがめり込んだ。
「ゲッおあ!」
少女の体は宙に浮き、腹が万力で捻られたような痛みが脳髄を焼き、溜まらず吐しゃ物を撒き散らす。
「ゲェエええええええおおおあっ・・・」
「どうしたアマァ!」
しかし男は容赦なく比呂美のわき腹にも蹴りを叩き込む。
「~~~~っがぶぃ!」
今度は体を捻って直撃は避けたが、それでも体を内側から燃やされたような痛みで失神しそうになった。
息も絶え絶えになり、武器も投げ出して体を縮める。

「ハァ・・・お、おね・・・がい、もう・・・許してぇっ」
「許すかバカ」
とうにやめたとはいえ、指を砕かれては2度と野球はできない。その怒りはおよそ形容できるものではない。
もはやべったりと地に張り付き、鈍くのたうつしかできない痣だらけの少女に唾を吐き捨てると、
その顔面に向け80キロはあるその体重をのせた高速の踵蹴りを落とした。

比呂美は顔に風を感じた。淡い夜風でなく、突き刺さるような猛風だ。
瞳を開いたとき、有名メーカーのスポーツシューズの底デザインがゆっくりと視界を占めてくるのが目に入った。
成人男性の体重の乗った蹴りをアスファルトを背に頭部で受ければ頭蓋骨陥没か、腕で防いでも骨折は避けられない。
しかしかわすには体勢が悪すぎる。比呂美は思う。

死んじゃうんだ・・・私。どこにも行けず、何も伝えられず、ずっとずっと一人ぼっちで・・・。


ガゴォ!

怪物が嗤う。勝者が選ばれたのだ。

比呂美は避けようと身を捩る努力を捨て、打ち落とされた踵を真っ直ぐに見つめると、
その先が鼻に触れた瞬間、顎の下から伸ばした右手で踵を上に弾き、左手で脛を打ち切って、男の足を掬い上げた。
無意識の動作に比呂美自身驚いたが、生きたいという想いが思考を突破して、反射神経を呼び覚ましたのだ。
「のわっ!」
バランスを崩された男は宙に手を仰ぎながら後ろ向きに倒れる。
その隙を逃さない比呂美は腰を軸に、足で地を蹴りCD盤のようにアスファルト上を回転しながら、
蹴られたとき投げ出したチェーンを掴むと倒れるしかできない男の足を引っ掴み、目にも止まらぬ速さで縛り上げた。

「このゾンビがぁああああッ!」
男が悲鳴とも怒号ともつかない叫びであがくが、
両足に無理やり巻きつけられたチェーンはズボンの中で皮を破り、肉を裂き、骨まで食い込んでいた。
すぐさま比呂美は男をうつ伏せにして、両足を抱え上げ、海老反りの体勢にさせて体に圧し掛かる。
これでは如何な筋力差でも押し返せない。
「おぐう、やめろぉ、降参だ、です!すいませんごめんなさいごめんながぁがががが、げけこかかかかか」

ビキッッ
「ッッッッッッ!!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
比呂美はそのまま限界まで男の足を抱え上げた。虫のように暴れ、泣き、許しを懇願する男の声もどこか遠いまま、
脊髄を折り曲げ、渾身の力で男の背骨を砕いたき、糞尿をズボンの内で垂れ流し、蟹のように泡を吐きながら男は白目を剥いて失神した。
怒りも悲しみも焦りもなく、ただ終わらせたのだと思った。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
緊張が途切れると、マラソンを終えたように呼吸が荒げ、全身がチクチクと痛みで疼き、筋肉は鉛のように重くなる。
立つこともままならず、比呂美はなんとか倒れないようよろけながら、その場に腰を下ろすだけで精一杯だった。
実際のところ、バスケの試合に比べれば微々たる時間だったが、
比呂美にとってはこれまでの人生の全てをその間に圧縮したように思えた。
「は、早く、帰らないと・・・叱られちゃう、なぁ」
こんな真夜中に全裸で空の下にいれば凍死してしまう。生存の幸福を味わうのは帰ってからでも遅くない。

ふとそのとき、前方の空間に違和感を覚える。眼鏡越しにみるような奇妙な歪み・・・。
カルルルル・・・
比呂美の全身に氷の刃を当てられたような悪寒が奔り、再び脳が沸き返る。
先ほどまでの死闘がぬるま湯のように思える絶望と理解。狩猟者と獲物の圧倒的差異を皮膚で感じた。

(い、いつから・・・・・・!?いた!ずっと、ずっとそこにいたんだ!!!)
野犬や幽霊などではない。確かに脈動して知性を持つ生き物!
しかし人間の放つそれとは明らかに異質の空気。比呂美の目と鼻の先に2mをゆうに体躯は武器そのものだ。
獣とも機械ともつかない巨大な何かがそこに立ちながら見る・・・そう、比呂美の眼差しをじっと見つめていた。

「・・・お、女ですよ?」
比呂美はその異形と発せられた言葉のギャップに面食らい、素っ頓狂な声を出してしまった。
もし彼(?)が宇宙人で自分がファーストコンタクトを果たした地球人だったら、歴史に自分の間抜けを残してしまう。
幸い、その予想は半分しか当たっていないので杞憂だったわけだが。
どうでもいいことだが、プレデターの台詞は音声レコーダーから大雑把に出されたもので、もちろんそんな意図はない。
狩猟者として現地の観察を厳密に行うプレデターが偶然三代吉の家の前を通りかかったとき、聞こえたフレーズを録ったものだ。
可愛らしい子に対して賛辞だと思っているが、いろいろ誤解がある。

賛辞、そう─プレデターは比呂美の持つ芸術的なまでの残虐、生存本能の個性に感動を覚えていた。
もちろん死の危機に全力で助かろうとするのは、生命の原則といえる。
しかし多くは、現実を直視せずに盲目、無策で奇跡にすがる恐怖の奴隷だ。
死は法や幻想の枠に定まらない現実そのものであり、それに打ち勝つにはそれを観察し、理解し、想像して、動くしかない。
絶望のどん底でそれが出来る者こそ戦士なのだ。

キュゥゥゥゥン・・・・
比呂美の眼前で空間の歪んだシルエットが青白い火花をちらせながら消えていく。
「・・・・・っっっ!!!」
そこから現れたのは紛れもない異種─体型こそ人に近いが明らかに違う。
葉虫類のような肌と爪、大型動物のように強靭な筋肉、不気味な装飾品、重甲な武器の数々。
それら全てが知性と凶暴性を併せ持つ生物の生き様を物語っている。
「オ、オンナデスヨ」
つい吹き出しそうになる比呂美だった。その面はないだろう。

「傷ついてる・・・深く」
比呂美は最初、プレデターの薄汚れた体表と異臭に若干胃もたれを起こしたが、よくよく思えば汚さでは今の自分もいい勝負だ。
慣れるとそこかしこに大胆な擦過傷や銃創が作られ、それを応急措置したのがよく分かる。
「あなたも・・・?」
スケールこそ違えど、ついさっき死線を越えたもののみ味わえる、息をすることへの安堵。
比呂美はいつの間にか目の前の怪物に奇妙な共感を覚え、その胸に手を添え傷跡をなぞっていた。
プレデターの着込む網タイツ型のウォーマーは吹雪の中でも体温を保てるのでとても暖かい。
寒かったのもあって、比呂美は温もりを味わうようにプレデターに肌を寄せる。

「あなたも生き残ったんだ・・・」
腰に下げた人骨─美術で使うような模型とは質感の違う明らかに本物─のアクセサリーに気付いたが、
今の比呂美は常人が抱く流血への生理的な嫌悪もなく、ただそこに至る歴史のみに関心している。
(さっきの男たちとは違う・・・覚悟と、高い誇りを持ってる)
おそらくこの怪物は相当な数の人間を殺してきた。ヒーローとも思えないので大半は罪なきひとたちをだ。
しかし、それでもプレデターの強さそのものに比呂美の感情は憧れを抑えられなかった。

カルルルルゥゥ・・・カチッカチッ
マスクの下で牙を打ち鳴らすプレデター。別にお喋りが目的ではない。
ただ、ふとした奇縁で見つけた誇り高い戦士に尊敬の証を示そうと思って姿を現したのだ。
この広大な宇宙、遠大な時間のなかで巡り合った逢瀬に微かな未練もあるが、そう暇でもないので切り上げることにする。
「これは・・・弾、ですか?」
懐からライフル弾を取り出し、比呂美の前に差し出すプレデター。
先日の戦闘で自分に深手を負わせた大事な一発だ。持ち帰って装飾品の一つにするつもりだったが、ふと彼女に貰って欲しくなった。

「あ・・・ありがとうございます」
一瞬、おまえの頭にコレをぶち込むぞ、という物騒な(この場ではまんざらシャレと思えない)ジェスチャーかと思ったが、
どうやら素直に贈呈品らしいし、断るのも怖いので頂いておく。
弾丸なんて持ってるだけでいろいろ面倒な気もするが、怪物の不気味なアクセサリーの数々を見ると一番まともに思えるし、
巨大な掌が繊細に扱って差し出す様を見ると、大切なもののようで少しばかり嬉しかった気もする。

ドシュッ
「・・・?」
プレデターの備える警戒装置が危険を発したときには、比呂美の顔は蛍光塗料に似た黄緑色の体液で濡れていた。
怪物の肩からそれは吹き出ていた。狙撃されたのだ。

「ヴオオオオオオオ!!」
プレデターの怒声が闇に木霊する。眠っていた動物たちは慄いて一斉に逃げ出す。
瞬時に迷彩装置が働き、虚空に溶け込むと、赤いレーザーが付近一帯をスキャンする。
熱源こそ感じなかったが、遥か彼方で微かに人影が身じろいだのを逃さない。
シュバァッ!!
肩に備えたプラズマキャノンが吼えると、そこから数百メートルを離れた茂みが青白く光った。
比呂美の目には届かなかったが、茂みにいた兵士にバスケットボール大の穴が開くのをプレデターは確認する。
「・・・何なの?」

一瞬のタメの後、離脱のためプレデターが鳥のように跳躍した。象も沈黙させる強力な麻酔弾を食らっていたが意に介さない。
その美しさにしばし比呂美は口を開けたまま呆ける。
が、突如プレデターは空中でもがくと、真っ逆さまに地上に激突して転がる。
ドグァッ!!ゴロゴロゴロ・・・
「クアアアアアッ?」
見ればプレデターの全身を時価数億にも上る強靭なアラミド繊維の網が捕らえ、無数の鉤針が刺して、囚人のようにガッチリと逃さない。
バリバリバリバリ!
すぐさま網に仕掛けられたバッテリーが黄色い高圧電流を放出し、プレデターの厚い肌から火が噴出す。
ステーキのような焦げた匂いと、熱気が立ち込め、されるがままプレデターは目覚まし時計のように震えていたが、やがて動かなくなる。
「ひどい・・・・・・、!!?」
それを待っていたかのように、カッと真夏の太陽のような閃光が比呂美の網膜に降り注ぎ、目を潜めた。

「軍隊!?」
どこから現れたのか、明らかに近所では買えない装甲車や、分厚い黒塗りのトラック、轟音と疾風を散らすヘリコプター、
そしてテレビかゲームでしかみたことのない黒尽くめに重武装の男たちが蟲のように遠くから現れ、ワラワラと集まってくる。
比呂美には知る由もないが彼らは日系企業、ユタニ社の非公式部門、
異星人の捕獲に何十年も費やしているプロジェクトの実行部隊だった。
世界中の軍事関連施設、地域に網を張り、富山駐屯地が急襲された数分後には動き出し、そこいら中を張っていたのだ。

地面に転がったプレデターは水をかけた炭のようにシューシューと煙を立てながら、マネキンのように転がってた。
さきほどまでの生命力は微塵もなく、もはや息をしているかさえ怪しい。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ!」
一方、比呂美は過呼吸にないそうなほどだった。
全身の血が逆流し、冷や汗が滝のように吹き出て止まらない。しかし腰をぬかし、尻餅をつきながらもなんとか状況を読み解く。

分かったのは‘関係ない‘である。
物騒な怪物と、物騒な集団。全く縁のない世界ではないか。
映画や漫画で夢想するだけのこの世の底の底、自分のいる周囲には生涯関わりのない世界の裏の裏に迷い込んでしまったのだ。
何故怪物が現れたとき、女の子らしく逃げ出さなかったのか。
朋世ならそうしたに違いない。こんな真似はどうせ石動乃絵の専売特許だった筈なのに、いつから同じワゴンに並んだのやら。
いや、不覚ながら現在は一馬身ほど自分がリードしてる始末だ。

気がついたら比呂美は自分から両手を上げ、地面に膝と頭をついて無抵抗をアピールする。
最悪の想像が総集編のようにオンパレードで頭を駆け巡るなか、震えながら目を閉じてとにかく次の事態をじっと待つしかない。
(眞一郎くん!眞一郎くん!眞一郎くん!眞一郎くん!眞一郎くん!)
意味も忘れたままに、愛しいらしい単語を呪文のように念じていた。
眼前の丸焦げ怪獣ステーキの仲間いりなど絶対にごめんである。いっそあのままホテルでレイプされていればどれほどマシだったか。
自分で作った散乱する死体たちが立ち上がってはくれまいかなどと、考えてしまう。


つづく

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