truetearsVSプレデター7


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ゴイイイイイィィィンンン!!!
アームスーツが鉄塔に激突し、重く鈍い金属音が辺りに響き渡る。
「ッッィシャァア!!??」
突然、比呂美を抱えて鉄骨に着地した純=ヴェノムが甲高い悲鳴を上げた。
「ど、どうしたの?」
わけがわからず動揺する比呂美。

ヴェノムの体表がハリネズミのように触手を伸ばしてもがく。
純の頭にもトンカチでガツンと割られるような痛みが奔っていた。
金属の衝突による音のショック。
シンビオート=寄生体の弱点、その超短波を間近で浴びてしまったのだ。
「クルルゥッ?」
歴戦のプレデターには、それがすぐさま寄生体の弱点だと気付く。

が、その観察はプレデターだけに止まらなかった。
アームスーツのシステムがダメージから回復すると、足元の鉄骨に高速の拳を打ちつける。
ガアアアァァァアン!!!
「キャシャオォォーーーッッ!!!」
とうとう純の全身を包んでいた黒い寄生体が金属音に堪えきれず、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
爆発するように辺り全体に拡散すると、ドロドロと固まって鉄骨を伝い、音から必死で遠ざかろうと流れていく。
「うわあああぁぁ!お、おれの体がぁ・・・っっっ」

「いったいどこにいるの・・・?」
純には止められたものの、心配に突き動かされ現場に来てしまった乃絵。
彼女がたどたどしい手つきで、トラックを停車させてると、兄たちはどこにいるのか探す。
が、そこから見える光景はひたすら壮絶としかいいようがない。
雪が一面に積もる真っ白な世界に、赤黒く歪んだ点々があちこちにある。
それはおびただしい戦場の爪痕、かつては生き生きと動いていたはずの物体の残滓だ。
「・・・ぅおっえっ!!」
思考が情報に耐え切れず、肉体が拒否反応を起こした。
咄嗟に胃の内容物が逆流してくるのを抑える。
肝が据わってるのが石動乃絵の長所とはいえ、年若い少女がおよそ正常を保てる世界ではない。

      • ィィィィィ・・・

「あそこ?」
この光景から意識を遠ざけてくれるならなんでもいい。
微かに聞こえた共鳴音を辿って、その方角に目を凝らすと、送電用の巨大な鉄塔が目に映る。
「あれは・・・黒い?」
視力はいいほうだ。明かりが少ないので、鮮明には分からないが、鉄塔の真ん中あたりで何かが激しく動いている。
2・・・3、全部で4つの人影だ。
一つがやたらとデカすぎる。熊どころではない。あれは象か?
もう一つもNBAのバスケ選手ほどはある。それにあのガタイ、あれはきっと依頼された目標のプレデターだ。
で、あの黒いのがお兄ちゃん・・・おかしい。
兄の全身に寄生したはずの不気味な生命体が、踊るように暴れている。
隣にいるのは湯浅比呂美でFAだろうが、もうかなりどうでもいいことだ。
「お兄ちゃん!」
乃絵はギアを入れると、もはや慣れた動作でトラックを鉄塔に向けて走らせた。

「があぁ・・・げえぇお・・・」
寄生体が消え去った跡に比呂美が見たものはミイラのように憔悴しきって蹲る石動純だった。
寄生体と生命を共有していた彼はダメージを激しく受けた上に、
その力を殆どシンビオートに奪われてしまったのだ。


「ウガァアオオオッッゥ!!」
純の苦しむ様に怒りを覚えたプレデターが咆哮する。
片膝を破壊された怪物は、しかし腕立てをするように鉄骨に手を着くと、
両肩の筋肉を風船のように肥大化させアームスーツに飛び掛った。
「おっとっ!」
そうはさせじと強化外骨格のロケットパックが噴射し、その巨体はたちまち空に離脱する。
捕まえそこなったプレデターは、地上に真っ逆さまで諦めなくても試合終了だ。

「雷轟丸っ!」
誰の声かと思った。そもそも誰を呼んだやら、とも思った。
違う。今のは自分の声か。
そう、湯浅比呂美が咄嗟に落ちゆくプレデターに呼びかけたのだ。
なぜ?彼女にも分からない。もっともそれに思索する余裕もなかった。

空を飛ぶどころか、足も壊されジャンプさえできない異形の戦士。
地べたに這いつくばる怪物が天を自在に舞う鋼鉄のマシンに飛びかかったとき、
その失敗しかない試みに勇気だけで挑んだとき、それに該する名詞が浮かんだのだ。
自己の限界を明らかに上回る、挑戦といえるかすら危うい行動。
それを無謀と笑うか、冒険と称えるか。そんな外野の評価など無意味だ。
ただ、動いたのだ。

比呂美自身は鶏の雷轟丸が狸に食われたのは、単にそれの本質が陳腐だったからと思っている。
生死の境において、餌に選ばれる宿命。それは相手に爪でなく、背を見せたことに他ならない。
が、しかし‘雷轟丸’という名へ込められた思い、そのものは別だ。
絶対的に飛べぬものが、それでも飛ぼうとする勇士には雷鳴轟く感動を覚えただろう。
その意味にあって、ただひたすらに死闘に挑み続ける眼前のプレデターにこそ、あの名は相応しいのだ。

比呂美はイギリスの女王が偉大な働きをした徒に騎士の称号を与える心地で、
そうプレデターを名づけていた。‘雷轟丸’と。

プレデター=雷轟丸が鉄骨に座り込むアームスーツに飛びつく寸前に、その巨体は空に浮き上がった。
ので、一瞬の差で間に合った雷轟丸の爪がマシンのつま先に引っかかる。
「なにっ!?」
下方に消えるプレデターを想起していたパイロットに動揺する。
「・・・あぁ!」
一方、同じ予想をしていながら、それが外れた比呂美の表情は花が咲いたように明るくなった。

そのまま怪物はヤモリのように素早くよじ登ると、コクピットとなる胴体部分にしがみついた。
「落ちろ化け物!!」
マシンの片腕がプレデターをボディから叩き落とそうと動くが、
シュバァッ! ドグシャァッ!
肩のプラズマ砲がそれより早く動いて、巨大な腕を根から吹き飛ばした。
とうとう機械の両腕はなくなって、全体からすると小さな2本腕だけになるアームスーツ。
絶大な戦闘力を半減させたことになる。

「やったぁ!」
ガッツポーズをとる比呂美。嬉しい!チョー嬉しい!心が沸き立って脳の快感物質がフィーバーする。
純ヴェノム、プレデター雷轟丸、それに自分。
一人では到底敵わない相手でも、協力すれば報いることができる。できるんだ。

さっきまでは、ずっとずっと一人だった。
いや、いつだって自分は一人だったのだ。
周りのせいではない。周囲の人間には恵まれていると自信をもっていえる。
環境のせいでもない。不幸に底はなし、孤児院一直線だったはずが地元の名士に拾われるなど通常ありえない救い。

それでも孤独だった。心を開けなかった。否、開きたくなかった。
自我の奥深く、遥か光の届かない闇の底。
多大な才能を備えた肉体と知性、これを以って存分に、
一切の容赦なく外の世界にぶつけてしまったらどうなるのかという恍惚な期待。
出してはならない。考えてもいけない。気付くことすら許されない。
もしそんな獣じみた、いや野獣そのものの湯浅比呂美を作ってしまえば、行き着く先はただ破滅のみだ。
誰にも理解されず、分かり合えず、これまで築いてきた全てを断ち切ってしまう。

だからひっそりと、どうあっても本来の欲求を出すことなく生きていく。、
ときおり下らない怒りをぶつけ、おざなりな折衝をして、最後は男の肩によりかかる。
望めるなら仲上眞一郎と結婚するのがいい。
彼が酒蔵を継げばお上さんとして世話しなく働きまわり、面倒見のいい奥さんになる。
子どもも3人は欲しい。
作家を目指すなら、自分も働くだろう。OLとして事務をこなし、家事も献身的にこなす。
休日は朋与たちと旦那の愚痴を肴に、甘いものを梯子する。
地域のクラブに入って、バスケットを続けるのも面白い。
石動 純と付き合ってたのも、いいネタになりそうだ。
或いはその石動 純と結ばれてもいいのだ。
冷めたとこがよく似てるし、互いの汚い面を理解し合っているという意味では眞一郎を上回る。
案外、そーいう気安さがあると長続きしそうではないか。
石動乃絵が妹になる、というのがしんどいが。
とにかく、そーいう俗な女になりたかった。大人になりたかったのだ。

だけど、自分は巡り合う。
地獄の釜の底の底。悪鬼羅刹の巣窟で、
たった一つの小さな命、それをとことんぶつけ合う。
そんな無茶ができる仲間に会えたのだ。
もう寂しくないのだ。

「カァッ」
しかしプレデターは機械の腕を吹き飛ばしたのを後悔した。
背後に風を受けた瞬間、咄嗟に反応して攻撃してしまったが、そのビームでパイロットを撃っていれば。
たとえそのパンチで我が身は平らに潰されようと、長い闘いは終わりにできたのに。
次にパイロットを狙えばよいわけはない。できないのだ。
雷轟丸が一撃を放てば、そのすぐ後にはアームスーツが攻撃してくるのだから。

アームスーツのパイロットハンドがプレデターの胴体を抱えると、
有無を言わさぬ加速をかけて鉄塔に体当たりした。
「ゲハァッ!!」
強固なマシンと分厚い鉄柱の高速プレスに挟まれた雷轟丸が血を吐く。
胸部の骨は折れ、衝撃で脳がグワングワンと揺れている。
今がどこで、自分が誰なのか思い出せない。
そればかりか、その事実さえ今にも失われようとしていた。

「雷轟丸っ!!」
50mはある高所の鉄柱の上で、横たわる純を抱きかかえる比呂美。
「・・・オレの・・・体・・・オレの・・・」
その純は砂漠で水を求めるように、震える手を仰がせ、
パクパクと口を開けて呟いている。
が、黒い寄生体はもういない。
奇跡のような力。人間という枠から解放された高揚感。すべては過去だ。
「純君、立って!」

ズルリッ
目の光を失ったプレデターが、抱きつくように力なく倒れる。
糸の切れた人形のように、構えることなく鉄骨に体を打ちつけ、それに反発するそぶりもない。
完全にこと切れてしまったのか。
「ワン・ダウン」

アームスーツが比呂美と純を振り返る。
装甲ごしとはいえ、その視線は十分に比呂美を戦慄させた。
「純君、起きて!おねがい!」
あぁ、もういっそ身投げしてしまおうか。
この苦しみから、痛みから、恐怖から、葛藤から。
少なくともこれからこのマシンが与える暴力よりはマシなはずだ。
「落ちても無駄だぞ?貴様らが地面につくより速く拾うなど造作もない。その行為を救命とはいい難いがな」
アームスーツがわざとゆっくりと歩いてくる。飛び降りるのを期待しているのか。
絶望の底にある最後の希望。そこにすがった時、眼前で全てを奪うつもりなのだ。

「どこだ・・・どこだよ・・・?」
寄生体の弱点の超短波はとっくにやんでいる。なのに何故戻ってこないのか。
それは石動 純の闘争心が掻き消えてしまったからだが、そうあるゆえに気付かない。
「また・・・消えてしまった・・・」
いつもいつも大切なものは消えてしまう。
どれだけ努力しようと、戦おうと、逃げようと、そのどれも許さず現実はオレから奪うのだ。
足掻くだけ虚しいのなら、いっそ全部を諦めるしか・・・。

「やってみなさいよ」
比呂美は優しくそっと純を横たえると、アームスーツの正面に向き直った。
迂闊なことに何一つ具体的な武器を持ってないことを悔やんだが、
強化外骨格の装甲の前では蚊がなく程度の効果もないなと思い直す。

「虚勢で恐怖を和らげるか。しかし漫画と違って、精神の勇ましさは苦痛の前では何の役にも立たん」
チュンッ
「~~~っっっ!!」
アームスーツから放たれた銃弾が、比呂美の右耳を掠めて血がパッと散る。
「まだ我慢はできる・・・が、苦痛そのものが消えるわけじゃないな」
比呂美の耳からはポタポタと血がしたたる。

「まずは手の爪、指、肘、肩、ついで足の指、膝の順に折る」
マシンが指折り数えていく。
「はぁ、ふぅーっ・・・とんだ下衆ね・・・はぁ、ふぅーっ・・・アンタは・・・」
できる限り、苦痛が顔に出ないよう努めて、睨み上げる。
「やがて脳神経はストレスでズタズタになって、殺害を乞うだろう」
チュンッ
「っあぁあ!!」
悪魔の正確さで小指の爪だけが撃ち抜かれる。
「そうなったとき、お前はこれまで全てと今の現実、
そして輝かしかったはずの未来を否定する。せざるを得ない」
チュンッ
「~~っっ!!」
ついで薬指だ。幾度も激痛が針のように神経を突き刺し、それが止むことがない。
「終わることの無い苦痛に絶望し、お前の自我が崩壊したとき初めて、
この責めは終わる」
チュンッ
 中指。
「そのときは自分の名も忘れているだろうがな。というより‘考える’行為そのものができなくない」
チュンッ
人差し指。
「関連付けから成る思考、つまり記憶を否定し」
チュンッ
親指。
「朝も夜も絶え間なく恐怖に苛まれ、幻に怯えて生き永らえる」
パンッ
「ぐぁあああっっ!!」
比呂美の右小指が第一関節から吹き飛ばされた。その先は空中に落ちて消えてしまう。
「やがて死ぬ」
パンッ
「ぎゃぁああっつ!!」
薬指が千切れる。
「これからは苦しむためだけに生きろ」

「はぁっはぁっ・・・確かに、あなたにいうことは・・・た・・・正しい・・・です・・・くぅっ」
比呂美が出血を塞ぎながら呟く。目は虚ろで、息も枯れている。
そのままゆっくりと膝をつくと土下座の体勢をとる。そして
「お願い・・・もう・・・もぅ許して・・・」
バンッ
「あぁぁああっっ!!」
比呂美の左耳に風穴が開く。
「言えば叶えて貰える。自己が尊重されると思っている」
終わらない痛み。出口のない地獄。
「おまえの願いは一つとして叶わない」

「お兄ちゃん・・・そこのロボット!ちょっと聞いて!」
「ん?」
鉄塔の根元までトラックを寄せた乃絵だった。
それに気付かないとは、アームスーツのセンサーが一部狂ってるようだ。
「私の手にはプレデターの爆弾がついてるのよ!お兄ちゃんが死んだら爆発するんだから!」
プロフェッサー・プレデターに装着された腕のガントレットをかざす少女。
「あれは・・・確かに宇宙生物の自爆装置と同じデザインだな」
スーツの中で思案したパイロットは乃絵にスピーカーで問いかける。
「出鱈目をいうな。この少年が死ぬと、何故おまえまで死なねばならんのだ!」
ハッとする比呂美。咄嗟に声をかけようとするが、
「いする・・・ぐぁっ!」
軽くこづくようにスーツのつま先が比呂美の喉を蹴り上げる。
が、それだけで呼吸ができないほどのダメージだ。

「お兄ちゃんが任務に失敗しないためよ!」
「そんな任務あるわけがない」
粗末な誘導だ。
しかし、切羽詰った乃絵は意識が回らない。思考を一枚重ねる余裕がない。
「そのプレデターを倒すことよ!やつらのルールなの!」
言ってから青ざめる乃絵。パイロットがほくそ笑む。
「こーいうことか?」
プレデターに銃座を向けた。

「のぉあっ!」
振り返ったアームスーツに雷轟丸が短剣をかざして飛び掛った。
ガキィッ!
硬質な宇宙生物の皮膚を改造して作った特注製だ。
その刃は頑強な装甲を突破してマシンのコクピットまで達した。
「ちぃっ!」
が、限界を超えて消耗していたプレデターの腕力では、中にいるパイロットの鼻先までしか届かなかった。

バァアンッ

バルカン砲が雷轟丸の顔面に火を噴いた。
あたり一面に脳みそと体液を撒き散らして、顎から上が消え去る。
ふとそのとき、比呂美はプレデターがマスクをしていなかったことに気付いた。
とうとう素顔をみることなく、彼は逝ってしまったのだ。
戦士の魂が眠る銀河の墓場に。

「・・・ぁぁぁああああおおおおお!!!」
比呂美がアームスーツの足に掴みかかる。せめて、せめてこのマシンを地上に落とすぐらいはしなければ!
「ぅあっ!!」
しかし、その行いは全く不可能だった。
電磁石を靴裏につけたマシンを動かすのは、大木を根から引き剥がすようなものだ。
比呂美の足首を持って逆さ吊りにする。

「どうした?まだ逆らうのか小娘がっ!!」
うっかり超貴重な宇宙生物を殺してしまった。
取り返しのつかないミスに激昂したパイロットは容赦なかった。
「どうしたの、このガンダム野郎っ!!それで勝ったつもり!?」
比呂美の怒りはそれ以上だった。終生の友を、心の根を共感できる半身をあっけなく奪われたのだ。
雷轟丸の痛みは自分の痛み。その怒りも、無念も、復讐も全て湯浅比呂美のものだ。

「ひ・・・ろみ・・・・?」
霞んだ眼で巨大なマシンに噛みつく少女。か細い、ほんの小さな少女だ。
オレは本当に馬鹿だった。いらないのだ、戦士であるのに。
宇宙怪人でなくともいい。寄生体も必要ない。ほんの小さな少女でもなれる。
なぜならば・・・
「なぜならば!本当の戦士は心に鎧を持っているのだから!」
感覚のない指を震わせ、穴が空いたように力ない膝を立たせる。
「シンビオート!それは心の鎧!プレデター!それは心の槍!」
純が、細い鉄骨の上をアームスーツに向かって駆ける。
「お兄ちゃん!!」
乃絵の声だ。来てくれたんだな。これが最後の試合だからな。
悪くない、とても悪くない。妹に見てもらえるなんて。
「真っ二つにしてくれるわっ!!」
アームスーツが手の平を掲げて、比呂美の心臓を突き刺す・・・!否、

ザシュッ

「・・・・・・純くん?」
比呂美の顔に注がれるドロリとした液体は純の腹から出ていた。
「・・・うそ」
ガックリと膝をつく乃絵。その顔からは表情が消えている。
「比呂美・・・おまえは全く・・・世話のかかる・・・ガブッ」
純の手がそっと比呂美の頬に触れ、掠めるようなキスをする。
「ふん」
「・・・純くん」
「ぐあぁああああっっ!!」
純の胴体を突き破ったアームスーツの腕が、高々と彼の肉体を持ち上げる。
「くっそ、こいつにも興味はあったんだが」
蛇口を捻ったように、口と腹から赤い滝を流す純が、マシンを見下ろす。
「さ、最悪の状況・・・っっ・・・で・・・シュートを・・・決める・・・そ・・・それが・・・」
鼓動が止まり、血液が殆ど失われる。しかし、これだけは言わねばならない。

「それ、がっ、4番・・・・・・・・・・・・シンビォオオオオオオオトッッッ!!!」

「キシャァアアアアアアッッッ!!!」
ドコに隠れていたのか、そこいら中から黒い液体が奇声を上げて集まってくる。
その行き着く先は、比呂美だった。
「馬鹿なっ?貴様ぁっ!!」
腕を振って、純の死体を空中に投げ捨てると、比呂美の頭を握りつぶそうとする。
ガシィッ!
「ぐぅっ!?」
しかしその腕を、真っ黒な手が抑えてそれを防ぐ。
そして足首を掴んでいた手を、蹴り上げると宙返りして着地した。
「ぬぅううう!!まだ抵抗するつもりか!?」
アームスーツがロケットパックを噴射して、空中に離脱する。
が、既にその背に黒い人影は捕まっていた。プレデターが突き刺した短剣を引き抜くと、
その背のロケットパックに思い切り突き刺した。
「のぉああっっ!!」
火花を散らして、下降するアームスーツ。なんとか角度を調節すると、乃絵が運転してきたトラックの上に
ドズンッと不時着する。
「あのアマァ・・・!!!」
パイロットが鉄塔を仰ぐとそこでは、プレデターの鎧を黒い生物が取り込んでいた。
やがてソイツは全身が鮮血を撒き散らすような赤い体表になる。


「プレデター雷轟丸、石動 純ヴェノム、そしてここで散っていった命たち。
 全ての想いをこの身に纏い、無限の地獄で私は生きる。それが贖罪、それが復讐、そしてそれが戦士」
 隆起した筋肉を脈動する赤い粘液が包み、それを歴戦の証が刻まれる甲冑で覆う少女。
「私はもう泣かない。なぜならば、この鎧は仲間と、そして敵の涙で出来ているから」
スピアを伸ばして地に打ちつける。が、寄生体はビクともしない。
プレデターの偽装システムによる空気の反射によって、超短波を防いでいるのだ。

「私の名は 真実の涙  ‘TRUE TEARS’ !!!」



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