あれはやっぱり、誕生日のプレゼントじゃなくて…


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「何度見ても足りない…やっぱりバイトするしかないか」

 自分の通帳を前に、一人考え込む眞一郎。
 ここ何日か、比呂美との先日のデートを、思い出してはこの様子だ。

「あんな顔でショーウインドー覗き込んでるの見たら…買うしかないよな…」

 眞一郎は、目を瞑ると、あの時の事を思い出す。


 信号待ち。不意に、比呂美が隣から居なくなった事に気付いた眞一郎。
 振り返ると、比呂美は腰を屈め、ショーウインドーを覗き込んでいる。
 どうやら貴金属店のようだ。

「…」
「…」

 近づいて、肩越しに見ると、比呂美が見ているのは指輪のようだ。
 値段は………とても高い。

「…あ、ゴメンナサイ」

 硝子に映った眞一郎に気付くと、視線を、硝子の中の眞一郎に合わせる比呂美。

「いや…。そうだ、誕生日には、指輪、プレゼントしようか?」
「…ううん。いいの。それに、高いし」

 悪戯っぽい顔でそう言うと、比呂美は向き直り、笑って見せた。
 それは、いつも通りの笑顔だった。
 向き直る直前、一瞬だけ、寂しそうになった以外は。


 ひとしきり思い返した後、椅子にふんぞり返り、目を開ける。

「あれはやっぱり、誕生日のプレゼントじゃなくて…だよな…よしっ」


 数日後

「比呂美、ちょっと行きたい所があるんだけど、一緒に来てくれないか」
「うん…どこに?」
「そうだなぁ、竹林とかどうだ?」
「なにそれ。考えてなかったみたい」

 眞一郎の妙な言い方に、比呂美はクスリと笑う。

「いいからいいから」
「はいはい」


 とりとめのない会話をしながら、ゆっくりと歩く。
 嬉しくて、幸せな時間。
 不意に、眞一郎の足が止まった。
 この場所は、二人の、大切な想い出の場所だ。

「比呂美、これ」
「?」

 ポケットから小さな箱を取り出し、掌にのせて見せる眞一郎。

「受け取って欲しい」
「え?」
「誕生日とかのプレゼントじゃないぞ」
「…ぁ…」

 暫しの間をおいて、その意味に気付く比呂美。

「ずっと隣りに居て欲しいから」
「………まだ卒業もしてないのに」

 涙が溢れてくる。

「ずっと隣りで見ていたいから」
「………本気にしていいの?」

 涙が零れ落ちる。

「当たり前だろ」
「ぅ………私…この場所で…泣かされて…ばっかり…」

 泣きながら笑う、比呂美。
 優しく微笑む、眞一郎。

「それは言わないでくれよ」
「…ん」

 竹林に見守られ、抱きしめ合う二人。
 始まりの場所で、また一つ、新しい始まりを迎える二人。
 この場所は、きっとこれからも、二人の始まりを見守ってくれるだろう。

「…今日の夕飯、何?」
「ぇ…? バカ…」
「教えてくれよ」
「…シチュー」

 おしまい


 ちょっと急ぎ足だけど、こんな妄想もありかなと。
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