truetearsVSプレデター8


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「雷轟丸、石動 純・・・みんなの遺志は受け取ったぁああああ!!!」
炎のように猛った鮮血で丸出しの筋肉を覆ったような体躯。
白い翼を広げたような巨大な目と、顔の下半分を占める裂けた口。
しかし、残虐性の権化のような外見に対してその胸中は、真っ青な空のように高潔であった。
「真実の涙‘TRUE TEARS’!!!」


「・・・涙、お兄ちゃんの・・・」
乃絵はトラックの運転席から、鉄塔の中心にいる紅いモンスターを見上げていた。
しかし不思議と恐怖も嫌悪も感じない。むしろ湧き上がってくるのは・・・愛おしさ。
ずっと離れていた娘に、初めて会ったはずの母親が覚える母性のような。

兄は死んだ。もういない。
ロボットに胸を貫かれ、鉄塔から投げ捨てられ、原型を留めぬほどに地面へブチ撒けられた。
しかし湯浅 比呂美の心に、その肉に、ひとつに混ざって生き続ける。
少女は毒を以って狩人へ転生した。
その礎に兄がいることが嬉しかった。最高の4番だと思えた。


「たかが残骸を纏っただけで何をいうっ!!」
修復用のナノマシンで、ロケットパックを復活させたアームスーツが飛翔しTT(TRUE TEARS)に殴りかかる。
「っ!!」
鉄骨から飛び上がった怪物が、向かってくる高速の機体にしがみ付いた。
「亡骸の意匠を被って、自分が成長したつもりか!!」
鉄塔の中を細い支柱にぶつかりながら、グングンと天辺まで上昇していく2体。
「それこそが愚民の卑劣!矮小!傲慢!そして限界!」
「これは飾りじゃないっ!!」
あちこちに当たりながら、塔の内部に血管のような触手を張り巡らしてTTは巣を作っていた。
その張力が限界まで絞られると、勢いよく飛んでいたはずのマシンは空中にミチミチと引き止められる。
「貴様を倒す武器!その闘いを私は継ぐ!」
ゴム鉄砲の弾のように、地面へ垂直に弾き落とされるアームスーツ。
「おぉぉおおぅううう!!!???」
ドグワラガァアアアンンッッッ
隕石のように大地を抉って墜落するマシン。
しかし、その手にTTを抱え離さなかったため、彼女も相当な衝撃を受けた。
両者はもつれるように転がって、火花の路線を地に描く。
「人間を捨てて化け物に成り下がった裏切り者め!!」
TTの上に乗ったスーツが高速震動カッターを腕から展開して、首を狙う。
「それは違うっ!」

首の筋肉を変形させ、骨折気味に曲げてカッターをかわす比呂美。
刃は地をバターのように溶かして突き刺さる。
「どっちも守る!」
ジャキンッ
腕に仕込んだプレデターのリストブレイドを発生して、横凪に迫るカッターへ交差させる。
「人も!獣も!どっちも私!」
大陸プレートがせめぎ合うように超圧力でカッターとブレイドが拮抗する。
「理屈に押されて、嘘をつきたくない。力に呑まれて、今を逃げたくない」
アームスーツのマスクが比呂美の額を押し潰してくる。
「逃げるさ、何度でも。弱いんだからなぁ!」
カッターがじりじりと彼女のブレイドを圧迫して首筋に迫る。
「そう。私は大切なことから・・・逃げて、隠れて、忘れてきた」
TTの額がグッとスーツを押し返す。
「だけど今は一人じゃないっ!!」
ガキィッ!
TRUE TEARSのブレイドが強化外骨格のカッターを叩き折った。
「なにぃっ!?」

怪物の蹴りが覆いかぶさったアームスーツを跳ね除けると、
即座に立ち上がった両者がガッチリと組み合う。
「全部殺してやったわっ!誰もこのオレ様に敵いわせぬわっ!」
鮮血の涙に包まれた比呂美の爪を握り締める。
「みんなの記憶が、血が、涙が!今の私にはあるんだ!あんただって倒してみせる!!」
「そんなこと、出来るはずがないっ!!」
機械の豪腕が、比呂美の腕を宙に抱え上げ、投げ落とそうと振りかぶる。
「ぃやってみせるっう!!」
ハンマーのように地上に叩きつけられるはずだったTRUE TEARSは、
空中で渦を巻くようにして腰を回し、その勢いを返して、逆にアームスーツを背負い投げた!
「ぐおぁああああっっ!?」

雪の上を滑るように転がってゆく鋼鉄のマシン。
「ならば見せてやろう・・・強化外骨格の力!!」
立ち上がったアームスーツが全身から蜘蛛の足のようにアンテナ塔を突き出すと、
放出した高圧力電磁波の閃光が徐々に集まり、回転をはじめる。
「貴様のプラズマ砲を今さっき解析したのだ・・・分かるか?」
収束した光源は雷のように強烈な眩さを放ち、大気をブルブルと揺るがすように唸る。
「我が機体は進化する。それは光よりも速い、文明の輝きなのだ!」
医療用ナノマシンによって、破壊されたはずのロケットパックを修復すると、
花火のように一気に空へ向けて飛ぶ上がる。
「いっときの成長程度で追いつけるものでない!」
龍のように天空を駆け抜けるマシンは、雲を切り抜け遥か天空まで達していた。
そこまで到ると停止して、空中に浮遊したまま凝縮エネルギーを精製する。
「全て光となれ・・・」
アームスーツは金色のの粒子を気球のような大玉にして、頭上に高々と掲げる。
その輝きはさながら太陽のように世界を照らし、富山の夜空が日の出のように白く染まった。
「貴様ごとき小娘に、何ができるっ!?」

「なんすか、ありゃ?」
白い粉が舞う繁華街を先に行く丁稚が呟く。
「俺のデビューを祝ってくれたわけじゃなさそうだが・・・」
真っ暗だったはずの夜空が、突如山の向うから日が昇ったように明るくなったのだ。
「・・・比呂美・・・乃絵」
尋常でない現象。それがなにを意味するか知っている気がする。
「え?さっきのコそんな名前だったんすか」
「いや・・・それよりもう一軒行こう」

「綺麗・・・流星かしら?」
ベッドの上で横たわる愛子が囁く。
最初に男と交わったのは、もうずっと昔だ。
どれも技巧に長け、壺を心得た名器の持ち主だった。
なのに何故、経験も白紙同然、拙く幼い彼との触れ合いが、
今までのどんなSEXよりも満たされるのだろう。
「・・・愛ちゃんほどじゃないよ」
傍らで寝る三代吉が返す。お決まりのお世辞。が、彼がいえば価値は2000倍増しだ。
「んもぅっ!・・・ね、浮気しちゃヤダよ?」
「愛ちゃんに言われ、ゲフンゲフン!・・・大丈夫、俺競争率ないから」
彼の胸板に納まると、愛子は母の子宮に帰ったかのように安らぐ。
「そんなことないよ。ちょっと時代が早すぎただけなんだから」
「それ褒めてんの?」

「んん・・・UFO?」
眞一郎の母が、寝床から夜空に咲く光を見る。
夫はもう隣で寝息を立てているが、夜町に出た息子が心配で彼女は寝つけない。
ふと、いつも彼女の身の回りをかいがいしく世話してくれる少年のことが気に掛かった。
都合のいい、自分の衝動を満たすだけの相手。
母とてうぶではない。色町に行ったとなれば、どう言い繕うと、やることは明らかだ。
そんなことは勝手に致せばいいし、病気だけ気をつければ構わない・・・はずなのに。
丁稚が他所の女性の肢体に目を奪われている、それが何故か不愉快だった。

「できるわ!わたしたちならなんだって!!」
比呂美が宣誓すると、呼応するようにシンビオートが震える。
天空から来るおぞましい攻撃をどう迎え討とうか辺りを仰ぐと石動乃絵の姿が目に入った。
「来てたんだ。意外とタフね」
トラックの運転席まで近寄ると、彼女に語りかける。
「あなたもすごい顔だけど、それが素顔っていったら信じるわ」
乃絵も軽く返す。
言われて比呂美は自分が狂気を体現したような奇怪であると気付き、
恥ずかしそうに顔面部分の寄生体を解除する。
「なんだか・・・随分久しいわね」

「実に大した働きだぁ、湯浅 比呂美。いや、TRUE TEARS」
「あなたたちは・・・」
比呂美と乃絵の周囲に青白い電光が人影を描くと、そこから幾体ものプレデターが姿を現した。
比呂美が友情を結んだ雷轟丸と異なり、
彼─プロフェッサー・プレデターの日本語は洋画吹き替え(高木 渉)のように流暢だ。
「君の兄上もだ、石動 乃絵」
プロフェッサーが乃絵に頷く。沈鬱な面持ちになる少女。
比呂美はシンビオートが蓄えた純の記憶(断片的ではあるが)から、事情を察する。
「大分えげつないわね、あなたたちも」
プロフェッサーを睨む比呂美。奇生体がその憎しみに反応しかけるが、彼女はそれを抑える。
「そっちの価値観に立ち入る気はないけど。助けられたわけだし」
ポリポリと顎をかくプレデター。後ろの仲間に合図すると、彼らは透明になって退散していく。

「とにかくあのマシンは我らで処分する。宇宙船からビームでドッロドロにしてやんよ」
「やんよ?」
このプレデター、あんまり人間臭くて却って気持ち悪い・・・とか思う比呂美。
「ん、日本の大型webサイトで使われてたんだが?」
どこ見てんだか、と突っ込みたくなったがグッと押さえて続きを待つ。
「君らも一緒に退避させよう。狩りは終わりだ」
キィイイイイイイイイイインンンン
地上の航空機械とは全く異なる外観の小型船が空中に現れる。
その機動音もせいぜいクーラー程度と恐ろしいほど静かだ。プロフェッサーが船に向かう。しかし、

「まだ闘いは終わってない」
比呂美の顔を鮮血の寄生体が覆い、白銀の牙がニタリと笑う。
思考と感情を共有して力を与えるシンビオートが闘争に歓喜している、
比呂美の威信に一点の翳りもないという、完璧な証明であった。
「ま、いーけど。てこたぁ何かい?アレを倒さなくてもいーと?」
だ、だから・・・中に誰か入ってるだろ?といいたくなって頭を押さえる比呂美。
「え、えぇ・・・強化外骨格は私が倒すわ」
激しくシリアスな雰囲気を阻害されてる気がするが、気にしたら負けだ。
「ヤツの光線を喰らったら富山の土は向う百年ペンペン草も生えないよ」
「へ?」
古臭い表現と裏腹の凶暴な内容に、素っ頓狂な返事をしてしまう。
「負けたらキレイキレイ♪ってこと」

あのエネルギー球にそこまで破壊力があるって・・・。
望むところだ!といってやりたいが、自分だけならまだしも、
生まれ育った土地の全て、見知ったひとも、そうでないひとまでも巻き込む気にはなれない。

「闘って。そしてアイツを倒してきて」
声は比呂美の隣からした。
「石動さん・・・?」
石動乃絵。中学生と見紛う小さな少女が、しかしその決意の瞳は訴えるものがった。
「気にしないで・・・というのも無理でしょうけど、大丈夫よ」
そして比呂美にニッコリと微笑む。こんな笑みを向けて貰えるとは思いもしなかった。
「だってここで生まれたんでしょ?そしてずっとここで育った」
流れがみえないが、コクコクと頷く比呂美。
「そして、この場所に辿り着いたのがあなたなら、ここを背負う資格は存分にあるわ」
悪魔のようになった比呂美の手に、そっと自分の手を重ねる乃絵。
「私にもお兄ちゃんにも、眞一郎にも、市長だって県知事だってそんな無茶は許されないけど
でもあなたは戦った。闘って、たかかって(あ、噛んだby比呂美の心)・・・ここまで来た」
ギュッと、奪ってきた命で染まった紅い手を握り締める。
「努力賞とかじゃない。ここで育ったあなたが、ここで起きたことに関わって、挑んで、そしてケリをつける」
乃絵と比呂美の視線が合わさる。
「だったら当たり前じゃない。
これは始まりから終わりまで、富山の、富山人 湯浅 比呂美の戦よ」

どくんっ
「わたしの・・・?」
ゾクッときた。
屁理屈極まれり、といった演説だったが胸にストンと落ちるものがあった。
「そうよ。宇宙人なんかにおおとり持ってかれてなるもんじゃないわ」
そう、とられたくない。
「富山代表 湯浅比呂美」
復讐?けじめ?贖罪?どれも心を動かす要素だが、決定稿ではない。
「県民代表の後見人はわたし 石動乃絵」
この闘いは私から始まった。
あのとき、レイプ犯を殺さなければ雷轟丸とも出会わず、誰も死なずに済んだ。
「これが最後の闘いになるわ」
比呂美は天空を見上げる。目指す先には閃光の塊があった。
「地べたの鳥が飛べることを教えてきて」
あんなものが何だ。機械の羽に、真実の空は舞えない。
「あなたの翼を見せて・・・・・・比呂美!」
覚悟は決まった。

「行くわ、乃絵ちゃん!」


いくつかの下準備を終えた比呂美は、
強化外骨格が撃ってくるであろう荷電粒子球弾を破る最後の仕上げに入った。
「さてと・・・」
まずは鉄塔の麓に立ち、手首から赤い蜘蛛糸を天辺に向けて放出する。
2,3,4・・・と幾度も頂点に結び付けられた糸の束は綱引きの縄のように太く厚くなってゆく。
恐らくは戦車でさえ容易に持ち上げるほどの強靭な張力になったそれの強度をグイと引いて確かめる。
「・・・ぃよし」
それをもう片手で繰り返して鉄塔の先まで伸ばした荒縄を2本作ると、今度はプレデターの槍を展開させる。
「この糸をそのまま引っ張ったら腕が持ってかれちゃうからね」
スピアの両端に2本の糸束を結びつけると、上から更に糸を巻いて補強する。
タコ糸の束のようになった槍を、鉄骨に挟み込んで固定する。
「これで完成・・・。時間は?」

腕の機械をみるプロフェッサー・プレデター。
「一分かね。で、うまくゆくかな?」
宇宙船に乗り込んで半身を乗り出しながら空を見上げる。そこは夜明けのように眩しい閃光を放っていた。
「・・・・・・ん」
一緒に乗り込んだ乃絵も言葉を濁す。
出来ればここで全てを見守りたかったが、邪魔にしかならないのでプレデターたちとともに非難するのだ。
「ごめんね、純くんのこと」
比呂美が先に口を開いた。雷轟丸が殺され激昂した彼女を救うために純は死んだのだ。
その罪は告白せねばならない。
「・・・うぅん、お兄ちゃんは 帰ってきたよ」
雪の道に踏み出したかつての兄は、ヴェノムとなって戻ることはなかった筈だった。
「え?どうゆう・・・」
比呂美にはわけがわからない。今は語る時がない。
「そろそろ離れないと巻き込まれるぞ」
プロフェッサーが乃絵を促す。乃絵は比呂美に向き直った。
「ありがとう」
伝わらない。それでも伝えたい。自分の気持ちを。
「信じて」
寄生体を比呂美へ贈った叫びは紛れも無く、石動 純のものだった。
「お兄ちゃんは本当の4番になれたの、比呂美のおかげで」
視線が交錯する。形にならない感情が混じっては霧散していく。
一番いいたいこと。一番素直な気持ち。
「あなたに会えてよかった!」
思いっきり叫んだ。いい笑顔だった。
いいたい言葉を出す。そんなことがこんなに嬉しいとは思わなかった。
宇宙船が風を巻き上げて浮き上がり、ドアが重くのしかかるように閉まってゆく。
物理的に隔絶された壁は運命をも暗示しているようだ。

「さようなら」

透明になった船がいずこへと消え去ってゆく。
いよいよ、風が吹きすさぶこの地上にいるのは比呂美だけになった。
「あなたもいたわね、ふふっ」
真紅の寄生体に微笑む。応えるように肩から牙を生やした口が生えて、奇怪に笑う。
「乃絵ちゃん・・・」
虚空をみつめる。もう影も分からない。
それでも、今もどこかで見守ってくれているだろう。
雷轟丸も、純君も、ここで奪われてきた皆が見ているのだ。
この結末を。
「じゃあ見てて・・・私の‘変身’!!」
大気を引き裂くような唸りを上げると、
紅い寄生体が比呂美の全身に血飛沫を浴びせるようにして包み込んだ。
全身を引き絞るように剥き出しの筋肉が隆起して、顔面を割るように白い牙が生えてくる。
白く歪んだ目が見開き、猛る炎のようにシンビオートはぐちゅぐちゅと蠢いている。
「TRUE TEARS!FINAL FORM!」

ナイフのように鋭くなった爪で、鉄塔に引っ掛けた槍を掴む。
重力が逆転したような張力がかかるが、グッと堪えると足を鉄塔に携えて全身に力を込める。
「~~~っっっ!!!」
巨大な歯を食い縛って、限界まで槍を引き寄せる。
肩から腕にかけての筋肉がミチミチと音を立てて裂けるが、それでも糸束を張り詰める。
これ以上ない限界まで力が達したとき、TTは足を離した。
全身に降りかかった圧力は想像の遥か彼方先をゆく強烈さだった。
「っっ!!?」


「荷電粒子収縮率98%.限界値到達まであと20秒」
なだらかな女性の声(田中 敦子)のナビゲーションボイスが通る。
遥か天空。雲の上に立ち、太陽の日差しを浴びる強化外骨格。
その手には原発のように巨大な光球が浮かべられ、回転して輝きを増し、形を鮮明にしていた。
「さしものこの高所では手も足も届くまい。この土地ごと焼き払ってくれるわ」
既に十分すぎるほどのデータを回収し、
マシンの自己進化AIは奇跡ともいえる発達を遂げた。
目標の宇宙怪物の武器や標本を消し去るのは無念だが、
この功績だけでも人類史上、最高ともいえる働きなのだ。
「地上から高速の物体が接近。人間です」
「やつかっ!!」
アームスーツが身構える。
どうやって、この超高度まで?まだ見知らぬ装備があったのか?

「キシャァアアアアアアアアアオオオオッッ!!!」
雲の海を紅い人影が高速で突き抜ける。
比呂美は寄生体を鋼のように固めて、叩きつける風圧に必死で耐える。
大気がコンクリートの滝のようにぶつかり、眼球は破裂し、骨は粉々になりそうだ。
永遠にも思えるコンマの時間を耐え、耐え、なお耐え続ける。
鉄塔を銃座、蜘蛛糸をバネ、自らを弾丸にして、
今アームスーツのいる場所へ辿り着こうと必死で意識を保っていた。

「あと10秒,9・・・」
高圧粒子の圧縮精製はクレーンで卵の殻を割るような作業だ。
完成するまではアームスーツもこの位置を移動することはできなくなる。
「7」
全財産を賭けた大穴万馬券の最終レース直前の心境で秒針を見守るパイロット。
「5」
あと数秒で助けがくると分かりながら、虎の檻に裸で正座する気分だ。
「3」
歯の根がカタカタと震え、汗が滝のように吹き出る。自分の鼓動が太鼓のように耳を叩く。
「・・・ィィィイイイシャアアアアアアァァァッゥ!!!」
雲の海をTRUE TEARSが突き抜けて、雄たけびを上げた。
糸を巻いた槍を、鉄棒に腕を伸ばすように乗る。
その目がアームスーツと巨大なエネルギー球を捉えた。
「見つけたぁっ!!」
しかしパイロットもニンマリと笑う。
「0. 精製完了」
コクピットのコンソールが表示した完了の証。既に照準は比呂美をロックしている。
「わざわざ的になるとはな」

「それは・・・どうかなぁ!?」
比呂美が叫ぶ。
そのとき、地上で青白い閃光が弾け、突風が大気を薙ぎ払った。
「地上で高エネルギー爆発を確認。大型の物体が接近中」
「なにぃっ!?」
パイロットが下方を仰ぐ、必要はなかった。
雲の海から潜水艦でも浮上するように、巨大な三角推の鋼鉄が姿を現したのだ。
「あれはさっきの鉄塔!!」

数分前、比呂美は鉄塔が大地に根を下ろす4本の足をプラズマ砲で焼き切っていた。
地面に立つだけになったそれの根元にプレデター伝家の最終兵器、高エネルギー爆弾を設置する。
爆発後、綿密な計算のもとにアームスーツへ向かって飛んでいくよう調整すると、
最後に自らがその巨大な槍の誘導係りとなるべく先行したのだ。

「消えろぉ!!」
アームスーツが荷電粒子砲を兆速発射する。
天に道を作るように光の渦が比呂美に向かって直進する。
が、彼女は猛烈なパワーを受けて跳ね上がってきた塔を、
先端に結び付けた蜘蛛糸によって方向を操った。
「いよっっとぉ!」
今度はその力に引き寄せられるようにして、鉄塔に吸い寄せられると、
その内側に潜り込んで、塵も残さぬ光球をかわした。
狙うは強化外骨格、その正面を捉えた。
「いっけぇええええ!!!」
いまや、天を突く鉄塔は比呂美の巨大な船と化した。
「甘いわぁっ!」
アームスーツの電磁波塔が輝くと即座に第二のエネルギーが集まり輝いた。
「回数を分けたんだよぉっ!」
月のように巨大な光が比呂美のいる鉄塔に向けられて発射された。
間をおかない連射で焼ききれる電磁波アンテナ。が、その一発で十分だった。
比呂美にはむろん方向転換などあるはずもなく、正しく飛んで火にいる何とやらだ。
ズズズズズズ・・・・・・・
「ハハハハハハハハハ!!!!」
自殺同然に火の玉に突っ込んで鉄塔の槍は消え、アームスーツに届くことはなかった。
光に消えるTRUE TEARS。
「勝ったぞぉーーー!!!!」

「ん?」
ふと遮光バイザーから見る高圧粒子火球の輝きに、黒点が見えた。
「圧縮粒子率不安定。内部から干渉されています」
とのアナウンス。そのとき、青白い火花を散らせながら巨大な突針が飛び出した!!
「ぐぅぬあっ!?」
アームスーツを突き刺す正体不明な透明な塊。
頑強かつ柔軟な装甲によって串刺しは免れるが、太股に突き刺さった先端はドロドロに溶解して固まってゆく。
「い、いったいなんだ?」
慌てることはない。この箇所のパーツを分離させれば・・・が、その思考は眼前の光景に目を奪われた。
火球が前身して遠ざかり、徐々にその内部から姿を現した矛の正体は、
半透明になって青白く輝く鉄塔だったのだ。

「馬鹿なっ・・・!粒子エネルギーを中和する電磁フィールドを作ったのか!!」
そんな筈はない。透明化はやつらの擬態能力のためじゃなかったのか?
いや待て、この力はやつのプラズマ砲を無力化したアームスーツの進化と似通っている。
「まさか、本来の力はビーム兵器を防ぐためか!!」

電磁スクリーンによって空間を歪めて姿を隠す透明装置の本来の機能とは、
プレデター同士か同等の敵か、その技術が奪われたとき対抗するための防御線。
プラズマ砲を最強の矛とするなら、透明装置は究極の盾。
「この展開も宇宙生物たちは予期していたというのかぁっ!!」

比呂美が発想に到ったのは、アームスーツがプラズマ砲を防いでいたこと。
そして、シンビオートの弱点の金属音をプレデターの鎧が防いだことで、
空間を曲げる力に気付いたのだ。
しかし電磁スクリーンを纏っただけでは、巨大エネルギーの塊に包まれれば出力が足らず、
焼き焦げて塵も残らないだろう。
だから鉄塔を媒体に、プラズマ砲の火力を全てシールドに注いで巨大な要塞を作ったのだ。

「AIの知性に溺れて、考えることを怠ったんじゃない?」
透明スクリーンのなかから真っ赤な肉体が立ち上がった。
アームスーツを貫く鉄塔を守る出力が落ちて、幅の広い後方から溶けてゆく。
「万事を尽くして、絶命を克服する!それがプレデターなのよ!」
紅の怪物が鉄塔の上を走った!
そのまま一心に、その先端に固定されたアームスーツへ向かって駆けて行く。
後を追うように足場は崩れ、炎が迫る。

「所詮は浅知恵!進化するマシンに敵うわけがないっ!!」
アームスーツが全身の装甲を解放すると、小型ミサイル、機関砲、火炎放射、
全ての兵器を比呂美に注ぐ。まさに破壊の嵐だ。
「トゥルゥー・ティアァズ!マキシマムゥ!」
怪物の全身が爆発したように膨張した。
シンビオートが数千、数万か限りない触手を張り巡らすと、その一本一本が蛇のようにうなり
牙を並べて銃弾の雨を喰い尽し、炎の風を飲み込む。
「なぜ死なぬぅっ!?」
鉄塔が完全に崩れ落ちる。
そして寄生体の鮮血が波のように混ざった中から、武装した少女が飛び上がった。

朝陽が昇り、輝く日の出を背負った少女は、ぼろ雑巾のようになった寄生体を被り、
手足にはプレデターの鎧を纏って、腕のリストブレイドを左右に掲げた。
「心の翼を折らない限り!!」
刃を伸ばして両手を広げた姿は、天空に翼を広げて飛翔する鳥を想起させた。
「闘い続けることができる!!」
しかし、強化外骨格のパイロットアームが左右から来るブレイドを殴り飛ばした。
刃は粉々になり、かばった比呂美の左肩が外れて、肘の骨が肉から飛び出した。

「そんなもの、力の前では無だ!!」
もはや殆ど寄生体が死んだ筋力では、完全に圧倒されてしまう。
ジャキキキンッ
力ない手の平に仕込んだレイザーディスク─円盤状のカッターを展開して手裏剣型にする。
「屈っしはしない!!」
CDをセットするように、回転する円盤をパイロットアームの手首に滑り込ませた。
「ぬぉあああっっ!???」
装甲がパンを切るように綺麗に剥がれて、中身がむき出しになる。

「どんな痛みも・・・」
糸が縮まって鉄塔の先端にくっついていた槍は、アームスーツの足に突き刺さっていた。
それをかろうじて動く右腕で拾うと、頭上で回転させて引き伸ばし構える。
「苦しみにも・・・」
全ての武器は破った。比呂美が牙を見せて、アームスーツに振りかぶった。
ガコンッ
マシンの胴体が口を開けるように上がり、スピアの先端が跳ね除けられた。
「なっ・・・」
と、比呂美。今まで激突してきながら姿を見せなかったパイロットが出てきた。
パンパンパンパンパンッ

比呂美の額に向かって拳銃が何発も火を噴いた。
通常の寄生体だったら防いげたが、布切れ同然の今では惨状となった顔を覆う程度しかできない。
悪魔の仮面に穴が空く。
「残念だったな、あと一歩、しかし一歩届かない」
筋骨隆々とした剥げ頭髭面の男がコクピットから出てくると、アームスーツにまたがったまま
立ちすくむ比呂美の亡骸を蹴り落とす。
「グッバイ♪」
地面に落ちてゆくそれを見下げるパイロット。
果てしなく広がる雲。その遥か下には大地。

いない。

「・・・?」
身を乗り出して窺うと、足元で少女の指がアームスーツのつま先を握っていた。
枝にスーパーの袋がひっかかるような儚さだが、確かに生きている。
「馬鹿なっ・・・不死身か!?」
ズルリッ
「あ、生憎・・・面の皮が厚く、て・・・」
比呂美の顔面に張り付いていた寄生体の残滓が崩れ落ちる。
そこにあったのはプレデター雷轟丸のマスクだった。
怪物のデスマスク。それが彼女の命を救った。
「ならこれで終わりだ」
パイロットが比呂美の手に狙いをつける。

しかし、それをこそ待っていた。
「いいえ」
バシュンッ!
比呂美の腕に備えたガントレットから、ネットランチャー、鋼鉄線の網を発射した。
「のわっあ!」
網に全身を包まれ、バリケードのようなワイヤーで皮膚が千切れるパイロット。
壁に打ち込むべき杭が、全身に突き刺さって網を巻き上げ、締めつける。
「ぎゃぁぁあああっっつ!!??」
ネットを完全には射出せず、ガントレットから伸びた網で捕らえたパイロットを確認すると
比呂美は空中に浮遊するアームスーツから手を離した。
たまらず、全身に食い込むワイヤーに裂かれながら比呂美の手を掴むパイロット。
「正気か貴様ぁっ!道連れに・・・ぐぁがっ!・・・死ぬなど・・・げぎぃ」

撃たれたショックで前後上下も不覚なのは比呂美にとって幸いだった。
高所に対する恐怖を感じることもなく、グラグラと身を揺すってパイロットをギリギリと苦しませる。
「あなたも泣くといいわ」
今度は振り子のようにブラーンブラーンと身を揺する。
「おおおれの、ぎぎぐ!働きはっ・・・人類の多大な、がばっ!は・・・発展に貢献、ぞるだ!」
パイロットの全身に十字の傷跡が刻まれてゆく。
「それが真実の涙」
転落の恐怖がパイロットを支えていたが、サイコロステーキになるのは止めようがなかった。
「こんな・・・ひひっ・・・筈ではっ・・・げむむ」
ワイヤーを伝って、パイロットの血が滴ってくる。
「それがTRUE TEARS」
骨まで線が達し、きりきりと悲鳴をあげる。
「無念の命」
だんだんと血の滴りが増してきて、パイロットの呻きが霞んできた。
ブルブルと震え、断末魔の準備が整う。
「じにだぐな・・・げげげ・・・ごろず!貴様っぼ!ずばばば!ぢぃいいふ!ぼぼぼううけん・・・・」
ミチミチと肉と骨をを刻む音だけが、アームスーツの上から聞こえてくる。
さっきまでは2人いた。今は一人になってしまった。

「あなたの哀しみも私が負うわ」

それは生き残ったものが背負い続ける死者の雫。
業はやがて抱えきれないほど溢れ、ゆっくりと私を溺れさせる。

「私の涙は・・・行き着く先もなし」
太陽が眩しい空の上でひとり呟く。
見渡す限り、誰もいない、本当に誰も。この世界で自分だけだ。
命を奪うことで得る充実。その引き換えに、勝ち続けたものが至る最期。
心を分かつものを奪いつづけ、たったひとり孤独のなか朽ちてゆく。

もはや力を込めてるのか、筋肉が硬直してしまったのか。
手足の感覚はとうに消え、意識も半ば朦朧としてきた。

ブチッ・・・ブチブチブチブチチチッ

何かが断ち切れる音が続くと、頭上から赤いサイコロ片がポロポロと降ってくる。
重石が解体され、アームスーツにぶら下がっていた比呂美も解き放たれた。
人形のように足掻くことないまま、その身は宙に投げ出された。
戸惑いのない様は、他人がみたら熟練のスカイダイバーだと思っただろう。
気流の風が吹きつけ、体が持ち上がりながら落ちてゆく。

(・・・雷轟丸、純くん、乃絵ちゃん・・・私・・・勝ったのよね?)

眠い、なんだかとても眠い。
寄生体が吹き飛ばされたときに、自分はもう死んでいたのではなかろうか。
このまま、天空で息を引き取るのか、地面にぶつかって息絶えるのか、どっちが早いだろう。
できれば前者がいいなぁ、と思いつつ比呂美は眼を閉じた。





───22年後

「いらっしゃいますか~?」
インターホンを鳴らす音。小鳥の囀り。
カーテンの隙間からさす朝陽。転がる目覚まし時計。
「はぁ~い、待って待ってぇ・・・」
冷えた廊下をペタペタと裸足にスリッパで歩きながら、玄関に向かう。
「おはようございます、石動先生!」
嫌味なくらいに元気な挨拶。こっちは徹夜だってのに・・・。
「じゃあコレどうぞ・・・お願いします。お茶でも出したいけど、次の曲の〆が昼までなんで」
「お預かりします。ありがとうございましたー!」
バタンッ・・・
あー、帰った帰った、しっし

長い月日が過ぎ、日々の忙しさに右往左往する私には
あの日の、人生の分岐点を思い出すこともめったになくなっていた。
それほどまでに日々は移ろい、人も歳をとり、変わらないのは空だけか。

「ここ私の家じゃないんだけど」
「知らんがな」
そういってプロフェッサー・プレデターは私を母の家の玄関に置き去りにした。
そのときはまさか、もう富山の土を踏むことはない、などと思いもしなかった。

<ということで突然ワープして乃絵の未来。
 ttVSプレデター世界後なので本編とは関連なしっす



仕方なく数日だけ世話になるつもりだったが、
兄は殺されていたし、その遺体の惨状はあの母ですら寝込むほどで、
とても帰る気にはなれなかった。
それにあとになって気付いたが、湯谷の会社に私のことが知られるのは不味かった。
命に関わるほどに。亡き後も兄は私を救ってくれたのだ。
結局、それからは隠れるように東京で生活することとなった。

「乃絵ちゃんだよね?かわいいなぁ・・・よろしくね!」
それから私は自分が平凡だと知った。
富山で奇人変人の名を欲しいままにしていても、こっちにくれば真っ当な部類らしい。
東京は冷たいが、変わり者には住みやすかった。

あれよあれよと友達を作り、予備校に通って、大学進学・・・ならず浪人。
数年はブラブラしたが、その間に趣味で始めた作曲と
進路希望の戯れに選んだ音楽の糸が繋がってきて、専門学校に入学。
世間ずれしないセンスが嵌ったのか、もちろん努力と根性も込みで、道を切り開いた。
「あなたの曲でいじめから立ち直れました!」
      • 気がつけばそこそこにファンと仕事もつき、野生児のようだった私も今では立派な社会人。

とはいえ結婚はまだいしていない。
      • 現在も処女記録を更新しつつあるなど、変わらない部分も結構あるわけで。
ロバが旅に出たところで馬になって帰ってくるわけじゃなし。
器なりに身をたてているのが今の私だ。

そうそう、当事のことを振り返ろうにも、
ここにいるとあの町の噂もとんと聞かなくて、忘れてしまうのを誰が責められようか。
かつては世界の全てだったあそこも、今は遥か遠い思い出だ。
まぁもともと交友関係も広くなし、悪い噂の身の上となれば、縁もなくなるというものだが。

ただ黒部 朋与、奇縁というべき彼女とは親密にしていた。

なぜかといえば、彼女は比呂美が失踪した縁で親しくなった眞一郎と結婚した、
      • まではいいが、ある日離婚して何故か私の家にやってきたのだ、子連れで、しかも2人。
他にたくさん友達もいるだろうにと思ったが、そうでもなかったらしい。
仲上に一度盾突くと本家にはその気がなくても、その周囲が許さないのが名士たる所以。
友達からも村八分を喰らって、縁も所縁もないことには定評のある私に縋ってきたのだ。

以来、かつての険悪が嘘のように(女って分からないと同性ながらしみじみ)打ち解け、
朋与がこっちで再婚した今もよくさせてもらっている。
今では成人した彼女の子達もよく懐いてきて、我が子のように思っている。

で朋与から聞いた話では、三代吉くんと愛子さんは結婚して子沢山とか。
仲睦まじくやっているようで何よりだ。
朋与親子が路頭に彷徨ったときも、彼らだけが助けてくれて、
東京の私を頼るよう助言したと聞く。
ていうか私には断りなしか。
まぁ聞いたら断っていて今の関係もなかったので感謝している。

眞一郎のお父さんは腎不全で死んだときく。私が富山を出て半年後に。
比呂美を失った罪悪感は相当だったらしい。
比呂美のことを伝えるべきだったかは今でも分からない。
お母さんのほうは、働きに来てた坊主の少年と結婚したそうな。

眞一郎は・・・絵本作家やデザイナーなどをこなしつつ、そこそこに生きているらしい。
一度、地元で作った彼のアニメの作曲オファーがあったが、それは断った。
それは何も当事私たちが微妙な間柄だったからだけではない。
彼を通じれば、富山に一度くらい戻れるかもと私も期待したのだ。
だが、朋与が眞一郎と別れた理由を聞いて幻滅した。

普通、昔の女を忘れないことでいざこざがあるものだが、
2人が別れた理由は彼女の留守に比呂美の荷物を全部焼き捨てたから、だったという。
思うところがあったんだろうが、それには憤慨した。

誰にも、朋与にさえいってないが、比呂美はみんなを守ってくれたのだ。
少なくとも、それを知っている私だけは仁義を通さねばならない。

そして、その比呂美にはやはり会ってないし、いま生きてるかさえ分からない。
兄さんを殺したのは彼女だ、なんて噂もあったらしい。
まぁ穿った見方をすれば一理あるわけだが。
品行方正な美少女の失踪なんてのは世間の喰いつきそうな事件だ。
ただ、多分湯谷とウェイランドが圧力を掛けたおかげ(?)で
早々に事件の火は消えたのが幸いだった。
一片の情報もなく、比呂美自身が天涯孤独となれば、世間はあっけなく忘れてしまう。
その風化の波は、真実を知ったはずの私でさえ例外ではなかった。

それでもときどきふっと思う。
この夜空の向う、あそこで輝く流れ星の光は比呂美なんじゃないかって。
そうして考えるのだ。
自分として生きようと闘った比呂美と、社会の一部として生きている眞一郎。
わたしはそのどちらにいるのか。
あのとき、彼らの立場にいたらどっちを選択したか。
しかし結局その思考も長続きせず、次の構想に入るころには全部忘れているのだった。


雲を突き抜けた比呂美に、何処からか温かいなにかが注がれる。
あたり一面が真っ白く輝いてくるのを、閉じた目の奥でも感じ、
ゆっくりと傍らに目を馳せると眩い閃光が向かってきた。

朝陽だ。
世界の反対からゆっくりとせり上がってくる大きな光の、
堂々とした輝きは、マシンが作り出した粒子火球とは比べ物にならない。
地平線に光が奔り、木々や建物が殻を破るように全容を表していく。
その陽光に降り積もった雪が反射して、
地面一帯が宝石を撒いたようにキラキラと煌いている。

戦いは終わった。
それを祝福するように天が彼女を照らす。
窮屈なプレデターのマスクを外して、胸に抱える。
「・・・綺麗・・・本当に・・・!」
心からうまれ出た言葉だった。
一生にこんな美しいものを、
こんな晴れやかな気持ちで見ることが2度あるだろうか。
全く生きるというのは分からない。

分からないからこそ、嗚呼、なんと素晴らしいのだ!



いくつかの偶然から数奇な歯車に巻き込まれ、激動の運命を辿ることになった比呂美。
その物語は、ここで一端幕を閉じさせていただく。
なぜならば、彼女はこのとき死亡したとも、生きながらえたともいえるからだ。

プレデターたちが墜落したアームスーツを回収したとき、中には比呂美らしき少女がいた。
損傷を受けたアームスーツは、パイロットの果汁を絞るようにして
その血をたっぷりと浴びた彼女を操縦者と誤認して救助したのだ。

しかしマシンは、比呂美の亡骸をその体内に残留していた寄生生物ともに修復してしまい、
復活した彼女はもはや、人間にも寄生生物にも納まるものでなかった。

その後の経緯については諸説あり、
地球に残って「TRUE TEARS carnage(大虐殺)」と名乗り裏世界で活躍したとも、
アルファ=ケンタウリ戦争で機械生命体軍と闘って散ったとも語られている。

最近の研究では、プレデターの惑星で雷轟丸の子を育てた人間の女性、
伝説の兄弟戦士、轟天号と翼丸の母親こそ比呂美ではないかというものもいる。
彼女は息子たちが成人したあとは地球に戻り、晩年は名高い女性作曲家とともに過ごしたらしい。

           <おしまい>


ってことで完結~!きゃーやっと終わったー!
スレ住人のみなさん、こんなわけのわからないのの連載を許していただき、
本当にありがとうございます。
やはり未完はつらいので、やり遂げられて気分爽快です。

一応パロなんでネタ元を解説なりしますと、
強化外骨格は攻殻機動隊。
スペックはむしろ、アップルシードのギュゲスか、アイアンマンですが。
ヴェノムはスパイダーマンに出てくる敵役(悪役でないのが味噌)。
TRUE TEARSと呼んでいたのは、ヴェノムの亜種で最狂の悪、カーネイジ。
アルファ=ケンタウリはトランスフォーマーの惑星があるところ。
湯谷とウェイランドは、エイリアンに出てくるわるい会社です。
ただ、勝手にあちこち設定改変してます。
エピローグは漫画版ナウシカっぽくしました。
エンディング候補が、いろいろあったので全部かいちゃえ!ってノリで。

それと気を害した方がいたらしく、申し訳ない。
眞一郎は比呂美と対比させたかっただけで悪意はないっす。
朋与はやはり、朋与男さんへのオマージュというかなんというか・・・
乃絵もプレデターに関わった以上、富山にはいられないなと思ったので、
その後の富山を伝える橋渡しとして助かりました。
本編に出すと悲惨な目に遭わせたくなるので、出さないでよかった(しみじみ)。

     ,. - 、   〈〉
    彡`壬ミ   ||  このAA使うのも久しぶりだなぁ
   用ノ哭ヾ二=G    <いつも槍の先端がズレるんだけどね
   〈_〉〉=={   ||      じゃあ長い間お世話になりました
   {{{.《_甘.》   ||      サヨナラ サヨナラ サヨ ナラ カルル・・・
    {_} {_}   ||
   ム' ム
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