新年度の始まり-3


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=13話以降のお話です
="新年度の始まりの続き"の直後

新年度の始まり-3


開店前の今川焼き屋"あいちゃん"店内では、ちょっとした騒ぎになっていた。

「だ・か・ら! 比呂美はそんな事できないって!」
「比呂美が言ったのよ、"まだ"って。その気があるってことでしょ?」
追求の手を朋与は緩めない。
「そ…そうなんだ…、二人はそこまで…」
あさみは想像を膨らます。
「…」
比呂美は、恥ずかしくて黙り込んでしまった。

"まだ"という言葉に、二人を除いて全員の想像が膨らんでしまっていた。
どうしてそんな話題になってしまったのか、眞一郎はに分からないが、守るべ
き時であることは理解している。
さらに"あーだこーだ"言いそうな雰囲気を感じて、
「まあ、いいや。もしも、比呂美がそうしてくれたら、俺は嬉しいけどね。
 それだけ俺を想ってくれてるのが分かるし。それに……、
 無理してそんな事しなくても、比呂美は比呂美だから、な?」
最後は目を見て一気に言った。開き直りとも取れるこの発言に、騒いでいた
朋与、あさみ、三代吉が驚きつつ黙る。唯一、愛子の目だけが真剣だった。
眞一郎の言ったことはある意味"告白"だ。しかも人前で、堂々と、強い口調で。
はっきりと好意を示され、比呂美の表情が一瞬の驚きから変わった。
つまり、ニヤけていた。
(眞一郎くん…)
"でれっ"なのか、"うっとり"なのか、何とも表現し辛い表情だ。
実は眞一郎は少しだけ怒っていたのだった。比呂美と仲がいいから、からかっ
ているのだろうが、困っているのを見ていると"どうしようもない気持ち"が湧
き上がってきていたのだ。朝から、ずっとだったので、我慢できなくなってい
た。そして、黙ったままでコーラを飲み始める。一口飲んだ後、自分の言った
ことを思い出して照れているのが、誰の目にも明らかだった。

「あ~あ、眞一郎が怒っちゃったぁ。ごめんね? 比呂美ちゃんをからかい過ぎ
 たね?」
さすが、小さい頃からの付き合いで良く知っている愛子が言った。
「別に、怒ってないけど…」
内心を見透かされ、誤魔化しているようだ。
「へぇ~。眞一郎はやっぱ、そういうのが好みか?」
三代吉が重くなりそうな空気を変える為に、眞一郎に標的を移した。
「なっ!? 俺は、別に…」
と言いつつ、刺激的な比呂美の姿が目に浮かんで、元々照れて赤くなり始めて
いた顔が、一気に真っ赤になってしまう。
「図星か…。エロイぞ…、お前…」
噛み締めるように三代吉に言われると、どうしても否定したくなる。
「ちょっと待てよ! お前だって、いつも色々言ってるじゃねぇかよ!」
ガタッ、と眞一郎立ち上がった。三代吉の意図までは分からないが、渡りに船
とばかりに少し挑発する。
「ああっ!? オレはお前ほどじゃねぇだろ!」
こちらもガタッ、と立ち上がる三代吉。ぎゃいぎゃい言いながら、軽く取っ組
み合って騒ぎ始めた。それを愛子が何となく優しい目で見て、
「ふ~ん、あの二人も中々いい感じの親友してるね?」
と言うが、比呂美は、
「…」
眞一郎を黙って見つめていた。だらしなくニヤけた表情はそのままだ。
(やっぱり、嬉しかったんだぁ。恥ずかしかったけど、頑張って良かったぁ。
 そんな事しなくても比呂美は比呂美、かぁ…。ふふっ♪)

「う~ん、比呂美を追い詰めると仲上君がかばって告白、か。これは予想外ね」
朋与は眞一郎の言葉に驚きつつ、少し反省していた。
「…」
あさみは、自分の鼓動が速まることを感じて、戸惑っている。あんなにはっき
りと言うとは本当に予想外だった。あの様子だと、教室でもっと大勢の前でも
言いかねない勢いだ。もし、あれが自分に、とそこまで考えてしまった。そこ
で、はっとする。
(いけない、いけない。だって仲上君は比呂美のこと…)
この日を境に、あさみの悩みが一つ増えた。

「こらっ! 椅子を蹴飛ばさない!」
愛子の大きな声が眞一郎と三代吉に向けられた。
「おっとぉ、直そうぜ」
「ん? そうだな」
二人が大人しく従う。
「ついでだから綺麗に拭いておいて。はい! はい!」
確認も取らず、ぽいぽいっと雑巾が投げられた。
「えっ!? ぶっ!」
「わっ!」
眞一郎は手だったが、三代吉は顔面で受け止めた。
「酷いなぁ、愛ちゃん…」
「ぶつくさ言わない! さっさと拭く!」
「やろうぜ、三代吉。愛ちゃんは、ああなると聞かないからな」
「…ちょっと雑巾舐めちまった」
眞一郎と三代吉がテーブルを拭き始めた。それを目の端で捉えつつ、愛子が話
しかける。
「比呂美ちゃん、よかったね? 眞一郎がかばってくれてさ」
「あ、うん…」
「朋与ちゃん、あさみちゃんも、あんまりからかうと眞一郎が黙ってないから、
 ホドホドにね? 比呂美ちゃん面白いから、気持ちは分かるけど、ね?」
愛子がお姉さんぶって軽く説教モードだ。眞一郎からは容赦なくツッコミが入
るが、朋与やあさみには無理だった。
「そうですね…、前にあった事を思い出しちゃいましたよ」
「そうだね。前って、喧嘩のこと?」
「…」
"喧嘩"と聞いて、比呂美はさらに顔がニヤけてしまう。が、ついでに少し嫌な
ことも思い出して、複雑な表情になった。
「何なの? 喧嘩って」
それに気付かず、愛子が興味を示して少しだけカウンター越しに身を乗り出す。
「それが…」
朋与が話し始めようとすると、
「ちょっと待ったあーっ!」
眞一郎が止めに入る。さらに"あの喧嘩"の事まで言われてはたまらない、しか
も、あの時に仲裁した人物の事を考えると、色々複雑なこともある。
「あれ? どうせ比呂美は知ってるけど?」
朋与は、比呂美には喧嘩を仲裁した人物のことまでは話していない。と言うか、
知らなかった。現場を見ていないこともあるが、何となく聞いてはいても、積
極的には確かめなかったのだった。今でもあまり良くは思っていない。
変な噂が消えていることは知っていたが、自分の目で見て感じるまでは信用で
きなかった。
「じゃ、じゃあ。改めて言うこと無いだろ?」
眞一郎は朋与の考えまでは分からないので、その話題は避けたいところだ。比
呂美には一度だけ、時間が経ってから話したが、蒸し返されたくはない。
「う~ん、私は聞きたいけどなぁ…」
と、そこで愛子が比呂美の表情に気付いた。
「ま、でもいいや。どうせ惚気話なんでしょ?」
「そんなとこですけどね」
「さっきのでお腹一杯だから、また今度ね?」
「ぷっ、それは言えるかも。あはは」
「でしょー?」
ニヤニヤしながら、眞一郎を見る愛子と朋与だが、あさみはちょっと違った。
(う~ん、そういえば、比呂美の為なら喧嘩もしちゃうんだった…)
あさみ…、深く考えない方がいいぞ…。

その時、誰かの携帯電話が震えた。比呂美が気付いて伝える。
「眞一郎くん、電話、鳴ってるよ?」
「ん? あぁ、さんきゅ」
携帯電話を取り出して、画面を見ると"仲上酒造"と表示されている。少し疑問
に思いながら話し始めた。
「もしもし? 眞一郎ですけど…」
一応、父親の可能性もあるので、丁寧だった。
「母さん? 何か急用?……あ、うん……」
話しながら外に出ていった。
「何だろうね?」
と、愛子。
「さあ?」
と、比呂美。
「珍しいんじゃねぇかな~。眞一郎の家からだろ? あんまり見たことねぇな」
と、三代吉。
「そうなんだ? で、それでさぁ…」
朋与が話題を変えて、いつもの女の子同士の会話に戻した。三代吉は相変わら
ず丁寧に汚れていないテーブルを拭いている。
比呂美はちらちらと外を伺うようにして、あまり会話に集中していなかった。

「…」
眞一郎が少し困った様な表情で戻ってきた。
「おばさん、何だったの? 急用…とか…」
「あぁ、別にそんなんじゃなかったけど…」
歯切れの悪い言い方が気になり、愛子が加わる。
「どうしたの? ひょっとして…こないだの話?」
「ん? そう…かな?」
「ぇ…」
愛子と眞一郎の間では話が通じたようだが、比呂美が驚きの表情で止まった。

続き…ます。

END


-あとがき-
前回の"新年度の始まりの続き"を読んで、"釣り"だと感じたレスが見られ
たので、今回もそんな感じで切ってみました。

冒頭の眞一郎の告白に近い台詞はどうでしたか? 今一つ、ですかね…。
乃絵の登場はまだまだ先になりそう…。

 ありがとうございました。
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