true MAMAN あなたを見ている人がいる~比呂美の章1~


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 カフェの窓際の席で、理恵子は腕時計に目を落とした。
 ――もうそろそろね。
 改めて外を見ると、比呂美が歩いてくるのが見えた。比呂美もこちらに気付く。比呂美
が外から会釈し、理恵子は微笑みで応じた。


 話は30分前に遡る。
「比呂美ちゃん?私だけど。申し訳ないのだけれど、今から駅まで来れるかしら?眞ちゃ
んの服を見立てて欲しいのだけど」
 理恵子が比呂美を買い物に誘うのは、これが初めてだった。外出に同道させて、その
帰りに一緒に買い物をした事は何度かあるが、こうして買い物の為だけに呼び出すのは
今までになかった。
 店内に入り、理恵子の前に座った比呂美は緊張しているように見えた。
 聡明な娘だ、今日の呼び出しの、本来の目的に、あるいは気付いているのかもしれない。
「ごめんなさいね。何か予定があったのではないかしら?」
「いえ、大丈夫です。・・・・・・・あの、それで今日は――」
「何か飲まない?紅茶でいいかしら」
「え?あ、はい」
 紅茶が運ばれ、比呂美がそれを飲んでいる間、理恵子はとりとめもない話をしていた。いき
なり強豪と当たってしまい、2回戦で敗退したバスケの秋季大会について残念だったと慰め、
今年は米が不作で杜氏にとっても厳しい年になりそうだと愚痴り、店内で愛子に三代吉が
キスしようとしている現場を目撃した愛子の父が、三代吉を2キロ以上に渡って追い回したと
いうニュースを話した。その話は比呂美も初耳だった。
 比呂美が紅茶を飲み終えても、理恵子は席を立とうとしなかった。
 自分から訊ねるべきだろうか?比呂美がそう思った頃、理恵子が席を立った。
「そろそろ出ましょうか」
「え?あ、あの――」
 だが理恵子は伝票を持ってさっさと会計に向かってしまう。
 比呂美は戸惑いをため息で表わした。


「すいません、私の服まで・・・・」
「いいのよ、おかげでいい買い物も出来たし」
 ブティックを出てすぐに比呂美は理恵子に礼を言った。理恵子はそれには及ばない、と言うよう
に首を振る。
 眞一郎に買ったのは濃緑色のダッフルコートだった。まだ季節としては先のものだが、早めに
買っておくに越した事はない。
 コートを選んでいる時の比呂美は本当に楽しそうだった。いや、幸せそうだったと言う方が正しい。
「そんなにも好きなのね・・・・」
 思わず、思ったことがそのまま声になった。
 去年の今頃は、自分と比呂美の関係は最悪だった。そればかりではない、比呂美は眞一郎が
異母兄などという理恵子の妄言を信じていて、それでも眞一郎を諦めきれず、理恵子に辛く当たら
れても側にいられることを望んだのだ。
 改めて自分のした事の浅ましさに震えが来た。だからこそ今回は、この問題だけはわずかな過ち
も許されない。比呂美の幸せになる事それだけを確実に選ばせなければいけない。
「おばさん?」
 比呂美が声をかけてきた。考えてるうちに足を止めてしまったらしい。
「どうかなさったんですか?」
「いえ、なんでもないわ。嬉しかっただけ」
「?・・・・気に入っていただけて嬉しいです」
「気に入るのは私ではなくて眞ちゃんよ。本当にこれならよく似合いそう・・・・私が選ぶよりも、ずっと」
「そんな、おばさんよりなんて・・・・」
「比呂美ちゃん」
 理恵子の声が真剣なものに変わった。比呂美が思わず息を呑む。
「もう一度、さっきのお店に戻らない?お話があるの」


                     続

あとがき
すいません!本題入るまでに長くなりすぎました!ぶっちゃけ本題の会話シーンはこれよりもっと長くなる予定ですので、ここで一回引っ張らせてもらいます。
ママンの望みは比呂美の幸せです。これは僕のシリーズのテーマ(2つ)両方に関る前提としてぶれません
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