true MAMAN 番外編 今、俺は最低なおっさんじゃなかったか


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「社長、今日本当にいいんですか?」
「ああ、気にするな」
「俺、嬉しいッス。坊ちゃんや比呂美さんの学校の文化祭が見れるなんて。社長、ありがと
うございますッ!」
「礼を云われる事でもない。それと、社長は止めておけ」
「?わかりました、社長!」
「・・・・・・・」
 俺は肩をすくめ、後は無言で歩いた。
 そう、今俺は住み込みの少年を供に、麦端高校の文化祭を見に行くところだ。
 今まで子供の文化祭など見に来たことはない。運動会だって最後に行ったのは眞一郎が
小三の時だ。それ以降は理恵子一人に任せてきた。
 それが今年に限って
「あなたも一度くらいは眞一郎達の文化祭を見に行ってはどうですか。まだあなたが学生
だった頃の先生も何人か残っているのでしょう?」
 と言って、いつの間にか少年連れて文化祭行きが決定していたのだ。
 当時の担任どころか、俺の同級生で今あそこで教職についている奴もいる。そんな所へ
行っても昔の恥を暴き立てられるだけじゃないかと思うのだが、理恵子の考えは違うらしい。
 それに、少年の顔を見ていると、たまにはいいかという気にもなる。少年、と言ってはいるが、
小柄で頭を丸めているからそう見えるだけで実際は眞一郎より一歳年長なのだ。自分が行け
なかった高校を見てみたいという思いはいつも持っていたのだろう。もしかしたら理恵子はその
ことに気付いていたのかもしれない。
「社長、坊ちゃんたちは何をすることになってるんですか?」
「さあ、それが、どうしても教えてくれなくてな」
 本当のことだ。理恵子も、眞一郎も、比呂美さえも教えてくれなかった。
 なんとなく理恵子は含み笑いをしていたような、比呂美は慌てていたような、そして眞一郎は心
底嫌がっていたように見えたが、話さないと言う一点では共通していた。
「まあいいさ。着いてからのお楽しみだ」
「それもそうッスね」
 そんなことを話している間に校門が見えてきた。


 文化祭は活気があった。
 俺の頃と違って、食べ物を扱う模擬店は減っていたが、その代り景品つきのゲーム大会を開い
ているところが多く、あちらこちらで歓声やファンファーレが聞こえる。
 市販の菓子とお茶が飲める程度の模擬店なら何箇所かが開いていて、生物部のジャングル喫
茶では蛇が逃げ出したとかで別の意味で大騒ぎになっていた・・・・。
「凄いッスねえ。やっぱり名門となると珍しい蛇までいるんスねえ」
「・・・・名門とかいう問題じゃないと思うぞ・・・・」
「えーと、あ、ここッス、ここッス!この廊下突き当りが坊ちゃん達のクラスッス」
 少年は入り口で貰った案内図を見て、廊下の先を指差した。
 俺も自分の案内図を開く。間違いないようだ。「Baroque」と言う単語が、模擬店を示す赤で書か
れている。どうやら中で一休みできるらしい。
 俺の2,3歩前を歩いていた少年が
「うひゃ」
 と妙な声を上げてバックしたのはその時だった。俺は足を踏まれないように避けながら
「どうした――」
 固まった。
 パラシュートのようなスカートに(室内なのに)日傘を差した女の子が、呼び込みをしていた。
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。コスプレ喫茶『バロック』にようこそ!店内では美少女給
仕に執事がお出迎えだよぉー!」
「と、朋与!せっかく綺麗な格好してるんだからそんな下品な呼び込み駄目だよ!」
「なによあさみ!だって同じコスプレ喫茶として3-Bには負けたくないじゃない」
「だ、だけどさあ・・・・」
 最初の精神的ショックを乗り越えると、俺は少年を連れて中に入る覚悟を決めた。深呼吸し、若干
勢いをつけて踏み込む。
「いらっしゃいませ――きゃ」
「ひ、比呂美・・・・さ・・・ん?」
 少年が絶句する。俺も言葉が出なかった。
 店内には比呂美がいた。腰までの長い髪を結い上げて、エプロンドレスに頭には白いフリル付きの
カチューシャ・・・・所謂ところの「メイドファッション」だった。
「えと、おじさん、その、本当に来られたんですか!?」
「ああ・・・・・・」
「あの、恥ずかしいから、あまり見ないで下さい」
 恥ずかしいどころか、似合いすぎて怖いくらいだった。
 身体の線が出る服ではないが、それでも比呂美のウェストの細さ、ベルトラインの高さは確認できる。
普段は見ることのないうなじが、今は完全に出ていてなんともいえぬ色香がある。
 顔見知りに見られた気恥ずかしさからか、上気した頬の赤みがひどく官能的だった。
「恥ずかしくなんかないッス!とってもきれいッス!比呂美さん!」
 少年の声で、危うく我に返った。世間で言う「萌え」なるものを初めて理解した瞬間だった。
(俺は今、最悪なおっさんではなかったか?)
 しきりに照れる比呂美を見ながら、俺は自問した。是、という答えが心の奥から返ってきた。
「なんだ?・・・・げえ!?おじさん」
 新しい声の主を見て、今度は現実を通り越えて地獄に叩き落された。
 それはエプロンドレスに白いフリル付きのカチューシャを着けた――三代吉君だった。
「なんでそんな格好になってるんだ・・・・?」
「衣装はくじ引きで決まったんですよ。俺だって好きでこんなの着る訳ないでしょう」
 そう言うと三代吉君はにやにやしながらこちらに近づき
「それよりどうです、ご子息の未来のお嫁様は?可愛いでしょう?」
 と小声で囁いてきた。
「・・・・・まさか、眞一郎もこの格好を?」
 無視して自分の疑問を投げかける。
「いえ、あいつは・・・おい、隠れてないで出て来いよ!」
 仕切りの裏から眞一郎が出てきた。
 頭に猫耳をつけて。



                         了

あとがき
ほぼオールスターキャストのドタバタ編です
思った以上にノリノリで書けましたw
最初はひろしの恥ずかしい過去がばらされるオチも考えてたんですが
これでもオチてるのでまあいいかとw



に続きます
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