桜並木からのプレゼント


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負けるな比呂美たんっ! 応援SS第43弾

『桜並木からのプレゼント』

●承 #41『お留守番』の続きです



大きな池、それを取り囲むように続く桜並木
そよ風に舞う花びらたちが
風のかたちを教えてくれる
ほどよく暖かくて
優しい春の香りが
わたしたちをつつんでくれる

周囲には休日を過ごす人々の群れ
こころなしか、ひとの動きも柔らかい
家族連れ、老夫婦、若いカップルさんたち…
わたしたちはどう見えるだろう…
ただの男女連れ?
それとも恋仲の男女連れ?
もし 恋仲にみえるなら それはどのくらいの?
少し先を行く彼との距離は
いつもより少し遠いまま…

「よかったね、お天気よくて」

ぎこちない空気を何とかしたくて
ついてでたのはそんな言葉…

「ああ、そうだな」

彼は自然を装いそう答えてくれた
やっぱり少しおかしい
さっきの事を意識してるに違いない
だって あれからこっち
私の瞳を見てはくれていない筈…
『筈』としかいえないのは
わたしも彼と同じだから…





彼と共にするせっかくのお昼
選んだメニューは
なるべく失敗しにくくて
できれば感心してもらえそうな
そんな、すこしズルい基準で選んだ…

そしたら思わぬハプニング
恥ずかしいあの日の記憶がよみがえる
それに もっと恥ずかしいのは
思い出してしまったことを
彼に知られてしまった筈だという事…
まるで何かを期待でもしていたかのように…
もし、そんな風に思われてたら…

あのとき
わたしが牛乳を取り落とさなければ
どうなっていただろう?
あんなとき
どうするのが自然なの?
ゆっくりと目を閉じれば良かったの?
もし 彼がそれを望むなら
わたしにはそれを拒む術などない





あのとき
雪が降り出した海岸で
おじさんとおばさんの素敵なおもいで
知っててくれた筈なのに…
麦端踊り…
『見ててくれ…』
それとも
『お前のために踊るから…』
どんな言葉をくれるだろう
なんて
期待ばかりが膨らんで
なのに
彼は困ったような顔をするばかり
抑えきれない不安な気持ち
気がついたら
彼に…
あんなこと…
心の底で ずうっと
もし叶うならばと思い描いていた
どんなかたちとも 違ってた
そんな 初めての…
後悔はしていないけど
私ばっかり
舞い上がってしまってと
あのあと何度も泣いた…

そのあとも
もう嫌われてしまったかと
不安な夜をいくつも過ごし
恥知らずな真似までしそうになった
彼のことばに
見失ってた自分を取り戻せた
わたしのことを思ってくれる
彼のきもち
とても ありがたかった

待って 待って 待って
やっとくれた
彼のことば…
うれしくて うれしくて うれしくて
もう なにもいらない
そう思った
だけど…





「なんだろう」

彼が足を止めて池を見ながらそう告げた
わたしも倣って彼の視線の先をたどる
池の岸から少し離れた辺りに浮き小屋がいくつか見える
なんだろう?

「さあ?」

わたしも分からない
浮き小屋を順番に観察すると
小屋の主が休んでいるのがみつかった

「鴨さんだよ」

「鴨?」

彼はまだ気がつかない

「ほら、右から3つめ、居るでしょう?」

手を伸ばして指し示す
わたしの足は自然な感じで
彼との距離を縮めてくれた

「あ、ホントだ、影で見えなかったな」

やっと彼も気がついてくれた
二羽の鴨が並んで休んでいる

「ほら、あっちにも居るよ」

なんとか見分けられるほどの対岸
これまた二羽の鴨が並んでる
お食事中だろうか?
水草を食んでいるようだ
あれ、鴨たちは二羽一緒が基本なの?
いつもつがいで行動するのだろうか?
そんな疑問がふと頭をよぎる
でも、これはきっと鴨さんたちからのプレゼント

ワザとらしく彼の真横に身体を寄せた
肩が触れ合うくらいの慣れない距離
見上げてるわたしの瞳に
彼は少し驚いた視線をくれた
…おかえりなさい

「えへへ 鴨さんたちの真似」

悪戯っぽい表情をブレンドしてのプレゼント
彼はフッと笑って視線を鴨さんたちへ戻した
なんとか受け取ってもらえたみたい
でも、あのときみたいに肩を抱いてはもらえない
まあ、わたしたちには先を急ぐ恋は
あまり似合いそうには無いのかな?





「行こうか」

彼のことばに従って
ふたたび歩きだす
道すがら
風に舞い散る
花びらのリズムが美しい

バサバサッ

突然、そんな音をさせながら
舞い降りてきたのは
5、6羽の鳩さんたち
道に降り立つと
わたしたちの前を通せんぼ
これはなに?
餌でもねだられているのだろうか
右に左に避けようとしても
つかず離れずついてくる
思わず彼と笑いあう
多分、無理に歩けば大丈夫
鳩さんたちは逃げ出すだろう
だけど彼はそんな事はしないみたい
こんな優しさ
どうしてわたしにくれないの?

「あっちから回ろうか?」

池の反対側、並木の外側は土手になってる
土手のさらに向こうは河が流れているはず
土手の急な斜面にはタンポポたちが
緑の草の中で黄色い群れをつくってる
そんな斜面には上下を結ぶ小道が
白っぽい地面を覗かせていた

ホラッ

そんな感じで
先を行く彼が手を貸そうと
腕を差し出してくれた
これでもわたしは運動部
このくらいなら手なんか借りなくても大丈夫
それになにより恥ずかしい
どうしたものか一瞬迷う
見上げる彼の先
ちょうど今 お年寄りのご夫婦が登ってく
ご主人が手を貸しながら…

「俺たちも真似させてもらおう」

今度は彼がそう言ってくれた
少しぎこちない笑顔
こんな顔で差し出される腕
断れるほど わたしはプライド高くない

「うん」

素直に手を添え斜面を登る
時々引っ張り上げて貰いながら
こういうのも悪くない
なんて思う
あれ?
これは鳩さんたちからのプレゼント?

丁度 土手を登りきると彼が

「ほら」

そう言いながら背後を示す
振り返ってみると
池のぐるりを取り囲む一面の桜並木が見下ろせた

「すごい」

思わず声が漏れた
桜色の絨毯のよう
一年のうち
こんな景色が見えるのは
一体どのくらいの期間なんだろう
この景色 忘れたくない
ずっと 大切にしたい
彼と一緒に…

確かめたかった

「あのね 」

わたしは桜の絨毯に顔を向けたまま

「うん?」

彼の顔がこちらに向けられるのを感じた

「来年も来ようね」

未来の願いを口にした

「…」

え?
お返事が無い…
あれ?

雪の海…
あのときの不安な気持ちがぶりかえす
彼の表情 確かめるのが怖い
どうしてなにも言ってくれないの?
『ずっと隣』
って 言ってくれたのに…

少し泣きそうな顔になってたかもしれない

「来年だけじゃない、ずっとだ、
 毎年 来よう」

彼のことば
わたしの心に届くまで
すこしだけ時間が掛かった
何かがあふれ出てくる予感がする

「いじわる」

彼に見られるのが恥ずかしくて
気がついたら彼の胸に顔をうずめてた

「え? おい?」

わたしの気持ち全然分かってくれてない
もう…
本当に…
この愛しい人は
わたしを不安にばかりさせて…

ゆっくりと
肩や背中に優しい感触…

これは誰からのプレゼント?

ああ、きっと桜並木からのプレゼント…

いま、
わたしは彼に抱きしめてもらいながら
そんなことを考えてる








●あとがき

#41『お留守番』の比呂美視点での続きです。

本編11話
① 雪が降ってきて急に喜ぶ比呂美
② 何か急くように海に向かう比呂美
③ キス直前、眞一郎も両親の話を知っていると知ると目をそらす。
④ その後、何か待ってるみたいにもみえる。
⑤ 以降、比呂美は眞一郎の踊りに対し非常にこだわってます(『眞一郎くんは麦端踊り頑張って』など)。
それらから仮定した解釈を反映させています。
ダラダラ見るのがもったいなくてまだ2度しか観てません、根本的な間違いがあったらご容赦下さい。

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