新年度の始まり-12


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=そういえば、前の11。読み返すと朋与が強ヤンデレでもいけますね。
=完全に病んでしまっていて、心の中で黒い思考が渦巻いているような…。
=でも、そういうの嫌いなんで、書かないです。その代わり…


新年度の始まり-12


「じゃ、行こっか?」
「うん」
力強い歩調で歩き去っていった。手には可愛らしいお弁当箱。


2人は無言のまま歩いている。
校庭に面した空いているベンチに、少し離れて、座った。友達の距離でもなく、
面識が無いと思わせる様な他人行儀でもない、微妙な位置。どこかギクシャク
としているが、険悪という雰囲気ではない。
「…」
朋与は黙ってお弁当を食べている。
「…」
あさみも同じ。2人は視線も会話も交わさない。この日、珍しく昼休みまでに
1回しか話していない。比呂美とは話すが、お互いに避けているようにも感じ
られた。クラスメイト達は、当然、不思議には思っていなかった。
「どういうことなの?」
「ま、あんたが思ってる通り」
「お昼」
「うん、2人で話そっか?」
あさみは気付いた。朋与が自分と同じ行動をした理由を。比呂美は一瞬だけ怪
訝そうな表情をしたと思うが、直後に眞一郎に注意を向けてしまっていたこと
から、完全には気付いていないと思っている。しかし、あさみは違う。
(朋与が、どうして? 今まで言ってたのと全然違うじゃない…)

食べ終わる間際になって、朋与が先に話し始めた。
「あたし、仲上くんのこと、好きだわ」
「……はむ……んぐ……んぐっ…ん…」
「簡単に言うわね?」
「ん…」
あさみは飲み込みながら、首を縦に振った。まだ無表情を続けている。
「1年前、"あの目"をあたしも見ていたわ。
 あんたに言われるまでは、忘れていたけど、思い出したってこと」
「んぐっ…ぐっ!………げほっ…ごほっ!…」
「ちょっと! 大丈夫?」
「ぐはっ!…………んく…だ、大丈夫だから。続けて?……んく…ごくっ…」
この時、やっと2人が目を合わせて会話した。それまではそれぞれ前を向いて
いたのだ。少しだけ無言で視線を交わし、朋与がいつもの表情になった。
「思い出したのは、それだけじゃなくって~」
「好きだったってことも?」
あさみの声からは警戒心が感じられる。何かを探るような視線だった。
「そ」
朋与の短い返答をする笑顔を見た時、あさみは一瞬だけひるんだ。何か自信に
満ちているようにも感じられる。よく分からないが、何か引っかかった。
「何か変」
「ん? 何が?」
「だって、それだけで好きにならないでしょ?」
「それ以外にもあるけど、あんたに言っても、しょうがないしね~」
「言わなきゃわかんない」
「ヒントだけあげる。あたしは、あんたよりも比呂美との付き合いが長い」
「それだけ?」
「そ」
「…」
あさみの目は厳しい。当然だが、朋与が自分の手の内を簡単に晒すはずが無い。
正直に話してない、そう感じると、簡単に「そうなんだ」とは言えない。
「理由とか、どうでもいいでしょ?」
「うん、そうだけど…」
「で、どうなの?」
「どうって?」
「言ったの?」
「言った」
あさみはこれは譲りたくなかったが、強がりだとは分かっている。もしそうな
ら、今朝のようなことはできないはずだ。これは暗黙の了解に近い。2人とも
理解していた。素直に納得はできそうにないが…。
「ホント?」
「こないだ、私と仲上くんが2人っきりで居残りしたでしょ?」
あさみが、どこにアクセントをつけて話したか、おわかりでしょう。
「あぁ、居眠りばっかして、怒られた日ね?」
「うん………その時に…」
「返事は?」
「朋与には言わない」
「ヒントは?」
「言わないっ」
「ま、別にいいけど~」
「何でそんなに余裕なの? 分っかんないよ!」
「余裕何て、全然ないわよ。今でも走り出しそうなくらいよ…」
朋与の口調が変わった。いつものからかうような感じではない。
切羽詰った、ぎりぎりの精神状態が伺える、唇が少し震えている。
「…」
あさみは言葉を失った。
「今すぐ駆け寄って、抱きついてしまいたい。何もかも捨ててもいい…」
「…」
「比呂美と友達でなくなってもいい。勿論、あんたとも…」
「…」
「あたしには…」
朋与が少しの間、黙る。視線を外し、遠くを見つめた。
「…」
何かを感じてあさみは息を飲んだ。

「あたしには、もう…何も…無いのかも…。仲上くんが欲しい、それだけ…」

穏やかな表情で遠くを見つめたまま、黙った。
目を少し細め、唇を噛み、手を、体を震わせて。

朋与はまだ、苦しみの中にいた。

想いを自覚した先には、さらなる困難が待っている。それが分かっていても、
そうせざるを得なかった。そして、したかった。心が求めていた。
喜びの先には、また苦しみがあった。
さらなる喜びを得る為には、"何か"を捨てる必要があるかもしれない。
「…」
あさみは何も言えない。朋与が言葉で、その姿で、示した"想い"は強かった。
「ま、そんなとこ」
朋与が視線をあさみに戻し、いつもの表情になった。そして、笑顔を向ける。
「…」
「で、どうなの? あさみは比呂美に勝てるの?」
「…」
「勝てると思ってるの?」
「分かんない」
朋与の"想い"を見て、あさみが自分の想いと比べてみる。比べられるものでは
ないが、「負けたくない」という気持ちが湧き上がってきた。
それは"自分ではどうしようもない気持ち"だった。
「分かんないって、あんたらしいね?」
「だって、分かんないのは分かんない。しょうがないよ」
「じゃ、どうするの?」
「私、分かんない。分かんないけど、分かってることも…あるよ」
あさみの中で何かが動き出す。朋与とは違う純粋なもの。
「ふうん、何が?」
「仲上くんが好きってこと。たぶん、朋与にも負けないくらい」
「ふうん、で?」
朋与はあさみの"想い"を見たことがない。
「こないだ、教えてもらった、仲上くんに。私が仲上くんのことが好きだって」
「そりゃまた、面白いね? 言った、ってそのこと?」
「違う」
「どうやって教えてもらったの? 」
「それは朋与には言わない」
「あれま」
「ふざけないで! 私、私…」

あさみの心が震え始める。眞一郎を想う、ただそれだけ。
"あの目"とあの時の言葉を思い出す。そうすると、心が震える。

「…」
今度は朋与が言葉を失う番だった。あさみの"想い"を始めて見た。
「私…」
声を震わせることもなく、あさみの体には何の変化も無い、が、

あさみは自分で気付かない内に涙を流していた。

朋与はその姿に目を奪われる。自分にはできない、純粋な想いに驚いた。
あさみは自分程には"しがらみ"がない、これまでの話も掻い摘んでしか知らな
いはず、そう思うと羨ましかった。もし、あさみの立場なら、そう考えてしま
う。だから、相談される度に自分の中で何かが動き出したのだと、分かった。
しばらくして、声をかける。
「うん、分かった。もう、いいわ。涙、拭けば?」
その声はとても優しく、労わるような響きを帯びている。
「え?」
「あんた、泣いてるよ? 気付かないの?」
「え? あれ? ホントだ…」
あさみがハンカチを取り出して涙をぬぐった。
「あんた、そんなに好きだったんだ?」
「分かんない」
「はぁ、どうしよっかね?」
朋与はいつもの表情。
「うん、どうしよう?」
あさみもいつもの表情。
「比呂美、か…」
「うん…」
2人は同時に視線を外し、空を見上げた。
「どうしよっかね…」
「どうしよう…」
「はぁ…」
「う…」
「どしたの?」
「ト、トイレ…」
「…」
朋与は何となくだが、あさみが羨ましいと思った、その緊迫感の無さを。
「わ、私、トイレ行って。先に、教室戻るから…」
「はい、どうぞ」
「じゃね?」
あさみはそそくさと弁当箱をしまい。急ぎ足で歩いていく。去り際にはいつも
の様に軽く手を振っていた。朋与が1人、残された。

「はぁ…、あさみも、か…」

朋与の呟きが風に紛れて飛んでいく。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

<サントラ"溢れ出る、気持ち"を再生しながら読むとアニメ風、かな?>
<上手くペース配分すると、いいところでサビになるはず>
<"心を通わせながら…"まで読んだら、曲を最後まで聴いた方がいいです>

比呂美と眞一郎は、いつものように手を繋いで歩いている。比呂美の部活が終
わった後、校門で待ち合わせて合流し、眞一郎の家へ向っていた。
この日は、夕食を食べることになっているからだ。
眞一郎がふと思い出して、話し始めた。
「今日、あの2人、どっかおかしくなかったか?」
「ん? 朋与とあさみのこと?」
朝から上機嫌継続中で、その声も態度も甘い。
「そう、何か変だったような…。最近、特に…」
「う~ん、そう言えば3人で話してないかも…」
「いつもは5人で話す時もあるのに、1人だけ来なかったり…」
眞一郎は何か考え込むような表情になっていた。
「そうだね。朝、眞一郎くんを起こそうとしたら、2人が…」
比呂美は朝の一件を思い出していた。違和感があった。だが、明確にどうなの
か言葉にはできない。どこか引っかかる、そんな感じだった。
「何だろうな?」
「…」
「比呂美?」
「ねぇ、眞一郎くん」
「ん?」
「私のどこが好き?」
比呂美は漠然とした不安から、普段聞いたことがない問いかけをした。
困らせるつもりはないが、"何か"を確かめたいと感じている。
「えっ!?」
唐突な質問に驚いてしまった。
「私のどこが好き?」
もう一度同じ質問を繰り返した。眞一郎が比呂美の目を見る。
「…」
「…」
しばらく見つめ合う二人。比呂美を見ている眞一郎の目。
それは朋与やあさみの言う"あの目"だ。それは何かを見るのでもなく、
語るのでもなく、ただ眞一郎がその時感じた気持ちを映し出していた。
比呂美の心に"何か"を伝える目。そして、照れくさそうに話し始める。
「まぁ、えっと、その…」
「うん…」
「笑顔が好きって、思ってた時もあったけど…。それはそうなんだけど…」
「うんっ」
嬉しさがつい声に出てしまう。いつも眞一郎の言葉は比呂美を楽しませ、
喜ばせる。自分でもよく分からないが、それだけでも十分だった。
「違うみたいだ」
「ぇ…」
不安が心をよぎる。信じていてもやはり動揺してしまう。続きの言葉を待つ。
最後まで聞かなくてはならない、そう感じていた。
「比呂美がいい、としか言えない。それ以外に思いつかない」
「…」
言葉を失ってしまった。比呂美の心に溢れるのは、どんな言葉でも言い表すこ
とができない強烈な気持ち。色褪せる事を知らない、いつまで経っても新鮮な
驚きを感じる。"隣"にいる眞一郎が、自分の全てを満たす錯覚に襲われた。
「あ、えっと、だな……その…、変な言い方でごめんな?」
かなり照れているのか、顔が真っ赤になっていた。
「……ううん、私も眞一郎くんがいい。眞一郎くんじゃないと、やなの…」
耳まで赤くしながら、懸命に言葉を紡ぎ出す。目に涙が滲んだ。
「あ~、えっと、だから……こうするしかないな」
比呂美の前にまわり込んで正面から抱きしめる。…ぎゅうぅっ…
二人は言葉にはできないが、同じ気持ちを感じている。それは、

お互いを強く想う気持ちと、得たものを失うかもしれない漠然とした不安。

信じてはいるが、不安を完全に払拭することは不可能に近い。
それ故に比呂美は甘え、拗ね、怒り、問いかけをすることで、消そうとする。
いつも通じるとは限らないが、今はそれを素直に表に出すことができる。それ
は、とても、とても嬉しいこと。比呂美が得たもの、失いたくないものの一つ。
眞一郎も同様で、たまに突然抱き寄せたりする。今は、感じるままに抱きしめ
て、その不安と戦っている。比呂美の存在を確かめようとする。

上手く言葉にできない、けれど、簡単な言葉では済ませたくない。

だから、態度で示す、全身で気持ちを伝える。

「んふぁ…」
比呂美の溢れ出す気持ちが、吐息となる。眞一郎が不安を消してくれる様に感
じ、喜びが溢れた。眞一郎の気持ちを全身で受け止める。
二人が絆を深める方法の一つ。
お互いに気持ちを伝え、確かめ、"何か"を感じて共有し、"隣"にいる。嬉しい。
「比呂美がいい」
今度は耳元で囁く、あらん限りの想いを込めて。
「眞一郎くんが…いいの…」
万感の想いを込めて、囁き返す。
そして、背中へ回した腕に力を込める。…ぎゅっ…

そのまま二人は抱き合う。心を通わせながら…。
       ・
       ・
       ・
だが、いつもの様に鋭い指摘を受けることになる。
「本当に相変わらず仲がいいわね? 『た だ い ま』くらい言ったら?」
抱き合う二人を、またもや眞一郎の母が見ていた。
「「た、ただいま…」」
二人は必死に声を絞り出した。

どうやら、歩きながら話している間に、眞一郎の家に着いていたようだ。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

夕食後、次の日に早朝から出かける予定のある眞一郎の両親は、既に就寝して
いた。まだ、時間は早い。二人は眞一郎の部屋にいる。
机に椅子はあるが、ベッドに密着して座っていた。

「比呂美…」
「眞一郎くん…」
電気は消さない。万が一にでも疑われることがないように、念のため。

<この後は二人だけの時間です。邪魔するのは野暮ってもんです>


続きます。


END


-あとがき-
強い想い故に切羽詰った気持ちを朋与に、純粋な想いをあさみに与えました。
ある意味、比呂美の中に存在する一部を取り出している感じです。
この解釈が妥当であるかどうかは分かりませんが、もし、比呂美と同じ様な
気持ちを眞一郎に抱く少女が"近く"から現れたらどうなるか?です。
いくつか設定とイベントは考えてありますが、まだ構成が未決定…。

あと、比呂美と眞一郎のイチャイチャも入れました。どうでしょう?
本来はもう少し後で、ヤバくなりそうな時に入れようと考えていたのですが、
想定外に朋与とあさみが強くなってしまったので、早めに投入です。
言葉は少ないけど、ちょっと過剰演出? う~ん…、難しい…。

やっぱ、ママンはこうでないとね。ラブコメ描写には必須。

 ありがとうございました。
ツールボックス

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