夫婦


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畳の上に敷かれた二組の布団
くっついているわけでもなく、離れすぎているわけでもない
この微妙な距離が、この夫婦にとっての最高の距離なのだ
「今日のお前は、本当に立派だったよ」
いつもは寡黙な男が、天井を見ながら話す
「私、みっともなかったわ…」
美人な女は、目を閉じて呟いた

『比呂美は私たちの子供です。責任をもって育てます』
女の言葉は、男と比呂美の心に、大きくしっかりと響いた
今日は、どこかに刺さっていた何かが抜けた日だった
膿んだ傷口も、これから時間と共に癒えていくだろう

「お前が比呂美に冷たく接していたのは、俺の責任でもある」
「そんなことは…」
「“あの過去”がお前を苦しめたのだろう?」
「…」
今は亡きもう一人の女を含め、三人の間には共有する過去があった
それは美しいばかりではなく、哀しい過去でもあった
「たしかに比呂美は似ている。だがあの子に罪はない」
男は続ける
「それをお前も理解してくれたことが嬉しかった
 お前には辛い思いをさせたな。すまない
 だが、お前を選んだあの日から、俺が愛する女は生涯お前だけだ」
女は何も言わない。男が隣を見ると、女は泣いていた
「泣いているのか?」
「ふふ…嬉し泣きよ」
女が笑ったのは久しぶりのことだった

「そっちに行ってもいいかしら」
「…あぁ」
女は男に抱きつき、顔を上げて目を閉じる
キスを待つその表情は、少女のころから変わっていない
普段は髪を後ろで結んでいるからだろうか、髪を下ろした夜の顔はいつもより艶やかだった
「ちゅ………ぁ…んんっ…」
キスは徐々に激しさを増していく。同時に慣れた手つきで互いを脱がせあう
結婚してから十数年、初めて結ばれた日からは二十年も経つ
だが何百回、何千回と身体を重ねても、飽きるということはない
ゆっくりとしたリズムで動く、腰が動くたびに心地よい波が揺れる
「アッ…ああっ……ぅ…ん…んっ…ゃ……今度は…あっ…私が上にっ…」
男の上で腰を振る女
その肌は、とても三十代のものとは思えないほどハリがあり、
身体には無駄な脂肪は一切なく、美しいボディラインを維持している
愛される妻でいるために、陰ながら続けている努力の結果である
「綺麗だ…」
腰を突き上げながら、男が言う。その一言は女にとって最高のご褒美だった
「んっ…あ、あんっ……ひゃ…も、もうダメ…私、ああっ…イっちゃい…そ…です…」
「俺も…もう…っ……一緒に………くっ」
「ひゃ…ら、らめ…んん、イク!…イクッ!」
絶頂を迎え、ガクッと力が抜けた女は、男の胸に倒れこむ
抱きしめ合いながら、乱れた息を整える二人
額には汗が滲み、その表情からは満足感がうかがえる

「なでなでして…」
猫のように甘えた声で女が言う
男は女を抱いたまま、綺麗な髪を撫でてやると、幸せそうな笑みを浮かべる
普段の涼しげな眼や、クールな態度からは想像できない、意外な一面
二人っきりのときだけ、夫にだけ見せる、甘い笑顔
それを見て男は、改めてこの女だけを愛することを心の中で誓った
―終―


(おまけ)
「おじさんとおばさん、最近ラブラブだよね?」
家の前で雪かきをしながら比呂美が言った
「そうか?俺には変わらないように見えるけど…」
眞一郎も隣でシャベルを動かしながら答える
「あ、そっか、眞一郎君の部屋は二階だから気づかないのね」
「……え?どういうこと?」
「ニブい人にはわからないってこと」
「???」
―おしまい―
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