たったそれだけの事なのに


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負けるな比呂美たんっ! 応援SS第23弾

『たったそれだけの事なのに』


気がついたときには
それはかけがいのないものになっていた



朝練を終え教室に向かう
胸の高鳴りが押さえられない
教室がだんだん近くなる
いつも通りなら彼はもう居る筈だ
開けっ放しの出入り口を過ぎる
目は自然に彼の姿を探す
あれ、席に居ない
級友たちの挨拶に半ばうわの空で自動的にご挨拶
教室内をそれとなく見回す
やはり居ない、少し残念
席について荷物の整理をしながら彼を待つ
彼、なかなか来ない
そろそろ先生来ちゃうのに
こっそり斜め後ろ、彼の席のほうに視線を向ける
あ、居た
後ろの出入り口から来たんだ
あ、『今日もがんばろう』の視線
私もお返事、『がんばりましょう』の視線
この視線の意味は私が勝手にそう思い込んでるだけ
ほんとのところは分からない
何時だったか 朝食の席でおばさんに怒られたその日
朝練を終えて私が教室に入ると
彼が視線をくれた
『元気出せ』
そんな表情と一緒に
その日から毎日朝とその日の授業が終わったとき
一日二回、視線でのご挨拶が日課になった
彼とは学校でもお家でも表立ってお話できないから
このやり取りは暗黙のお約束
私を気にかけてくれる
その事が確かめられるだけで
それまでの日々とは何もかもが変わった
おばさんに怒られても平気
部活にも自然と力が入る
毎日が少し違って見える
視線でのご挨拶
たったそれだけの事なのに…





今日も教室に入る
あ、彼いる
気がついてくれた
『がんばりましょう』
の視線を送る
あれ、
気が付かなかったのかな
席について荷物の整理
なるべく自然に彼の方を覗う
野節くんとお話中
うーん、今日はおやすみかな
時折タイミングが悪くこんな事もある
少し残念

授業が全部終わって席を立つ
いつもならこのタイミングで…
あれ、
彼、窓の外を見てる
おかしいな
あ、朋与呼んでる
いかないと
今までは一日のうちどちらかは必ずあったのに
部活に向かう足もなんだか重い
まあ、別に約束しているわけでもないんだし
こんな日もあるのかな





今朝、朝食のとき
彼は全然こっちを見てくれなかった
どうしたんだろう
今までこんなことはなかった気がする
そういえば昨日の朝食も少しおかしかったかな
朝練も少し身が入らない
こんな事じゃいけないのは分かってるけど…
教室に向かう
入り口を過ぎ、彼を見つける
あれ、今、私に気がついたのに…
どうして
明らかに顔を背けられた
うそ
なにがあったの
身体が自動的に自席へと運んでくれる
腰を下ろしても頭の中が真っ白で
何にも思いつかない
私何かしたのかな
そう考えて思い知る
そもそも私と彼の日常に
接点などない筈なのに…

訳の判らない不安な一日を終え
いつものタイミング
少し怖い
勇気を出して斜め後ろを覗う
あれ、居ない
あ、野節くんともう帰っちゃうんだ
視線のやり取り
やっぱり迷惑だったかな…
私ばっかり舞い上がってたんだ…
あれ、
どうしたんだろう
少し涙が…
いけない
なんでもない振りしとかないと
朋与に呼ばれて部活に向かう
朋与はするどい
『疲れてるみたい』
そう言ってくれた
寝不足で、と嘘ではない答えを告げてその場をかわす
練習は全然ダメだった
皆に申し訳ない
こんな事じゃダメだ





今朝は彼と顔を合わせるのが怖くて
朝食を早めに済ませ朝練にむかった
やっぱり調子は良くない
こんな事で皆に迷惑をかける自分が情けない
教室に入るとき
怖くて彼の方を見れなかった
もしまた顔を背けられたら
そう思うと…

昼休み
彼と同じ教室に居るのがつらくて
体育館で一人練習

その日、授業が終わると
私は逃げるように部活に向かった
調子が悪いと申し出て単独メニューに集中した





今朝も昨日と同じ
早くお家をでて朝練
休むのも大切なことだと言われ
基礎メニューをこなす
教室に入るとき目の端で彼を見る
窓の外を見ているみたい
顔を背けられるよりはよほどいい
少しホッとしたけど
なんだか心に穴が開いたよう
私今何のために生きてるんだろう

昼休み
今日も体育館に行こうとしたら
彼に声を掛けられた
廊下の端でお話
なんだろう
なるべく普通の素振りをしたけど自信はない
『最近元気が無さそうだが何かあったのか』
彼がそう訊いてきた
あれ、心配してくれてる
何がどうなってるの?
取りあえず、視線のやり取りの件
変な事に付き合わせてごめんなさい
と謝った
そしたら彼、突然謝ってきた
なんだろうと思って訊くと
彼の夢の中に私が出てきて
つい意識してしまって
そっけない態度をとってしまったとのこと
彼の夢の中?
私が?
想像もしなかったようなお話
どんな夢か訊いてみたけど
結局教えてくれなかった
なんだか言いにくいことみたい
私の夢になら彼は毎晩出てくるというのに
でも恥ずかしいので これは内緒
もっとお話しようと思ったら
チャイムがお邪魔
あわてて教室に戻る

その日の授業が全部終わって席を立つ
忘れられないタイミングで
彼の方をこっそり覗う
あ、『部活がんばれ』の視線
私もお返事、『がんばるね』の視線
約束したわけでもないのに元通り
なんだか世界が輝いて見える
視線でのご挨拶
たったそれだけの事なのに…







●あとからあとがき
7話まで視聴済み

4話中盤の朝、教室にうつむきながら入ってくる比呂美に触発されたおハナシです
直後、眞一郎、顔を背けてます、もし、視線が合ったあとで眞一郎に顔を背けられたんだとしたら
比呂美の悲しみは計り知れない事でしょう。
もしそうならその夜の比呂美の行動も充分理解できます。

おハナシは乙女チックな比呂美をイメージしました。
抑えられない気持ちに翻弄される少女…
ってこんな感じでしょうか?
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