Amour et trois generation L'equipe de football(サッカーチーム)


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「そろそろかな・・・・」
 三代吉は携帯で時間を確認しながら呟いた。
 富山駅の改札前である。
 三代吉が待っている相手を、敢えて説明する必要があろうか?
 ただし、今回はイレギュラーな連れがいる。
「ごめーん、三代吉、待った?」
 愛子が走ってきた。
「いや、まだ時間前だ。それに、まだ他が来てねえよ」
 言いながら愛子の今日の格好を見る。
 日頃はおしゃれに気を使い、小柄な身体を最大限魅力的に見せる服装を研究する愛
子が、今日はサッカー観戦モードだった。
 漆黒のユニフォームの左胸に縦に赤青の2ラインが走り、背中にはシルバーで10が染
め抜かれた、中々格好いいユニフォームだ。
「それ、今日試合するチームの奴か?」
「うん。サードユニだから今日は着てこないと思うけど」
「ふ~ん」
 サードユニなるものの意味がわからない三代吉は、曖昧に答える。
「高岡さん達はまだ来てないの?」
「ああ。そろそろ来んじゃねえの」
 ・・・・ここで、事の次第を説明しよう。
 三代吉の父親が、知人からサッカーの試合のチケットを貰った。アルビレックス新潟が、
海外のクラブを招いての親善試合を開く為、そのチケットが新潟の知人から三代吉の父
に渡り、三代吉がそれをせしめたという訳である。
 チケットは4枚あり、当然三代吉は愛子と、眞一郎、比呂美を誘ったのだが、眞一郎が
東京の出版社に持込に行く日と重なった為、必然的に比呂美もNGとなった。
 その時、比呂美や朋与と店に来ていたルミが、
「あら、私の彼氏、このチーム好きだって言ってたわ。迷惑でなければ、ご一緒させて
くれない?」
 と、申し出て、今日のダブルデートに至るのである。
「でも、高岡さんに彼氏がいたなんて意外。今までそんな話でなかったし」
「湯浅も黒部もえらい驚いてたよな」
 事実である。朋与などは暫らく口も利けないほどのショックを受けていた。
 と、横断歩道を渡って、長身の美女がまっすぐにこちらに近づいてきた。
「ごめんなさい、少し遅れてしまったわ」
「た・か・・・・お・か・・・・さん?」
 愛子が絶句したのも無理はない。
 ルミは大人っぽい白のスーツに色を揃えたパンプスとセカンドバッグ・・・・要するに、
スポーツ観戦というより、勝負服の本命デートの格好で来たのである。
 三代吉も学校での姿とのギャップに口が開きっぱなしになる。
「どうかした?やだ、私の顔に何かついてる?」
「い、いやなんでもない」
「高岡さん、凄いきれい!」
「そんな、面と向かって言われると、恥ずかしいわ」
「いやホントよ。ね、それで、彼氏は?一緒じゃないの?」
「それが・・・・ドタキャンされちゃって」
 残念そうでもなく、ルミが答える。
「ごめんなさい。そういうわけだから、本当はあなた方の邪魔をしたくはないのだけど、
この格好でただ家にUターンするのも癪だし、私一人でもご一緒していいかしら?」
「あたしは別に、構わないけど・・・・」
「ん?俺も構わねえよ」
「ありがとう、じゃあ、行きましょうか」



 電車に乗ってビッグスワンまでは、意外に時間がかかる。車中では、招待されたクラ
ブのファンだと言う愛子が、チームの基本的な知識をレクチャーしていた。
「――つまり、このクラブはセットプレーが最大の得点源な訳。特に、ゴール正面での直
接FKは絶対、見逃しちゃ駄目よ。無理だと思うような距離でも叩き込めるから――」
 説明しながら愛子は、ちらちらとルミに目をやった。
 服装もそうだが、メークも実に大人びている。部活を引退して伸ばし始めた髪は、まだ
それほど伸びていないが、比呂美より更に明るい髪の色もあって、重さを感じさせない
アクティブな雰囲気を演出していた。
(きっと楽しみにしてたんだろうな)
 愛子はルミに少し同情した。ドタキャンされてもさほど落胆した様子がないのは、恐ら
くよくあることなのだろう。好きなサッカークラブの試合なら何とか予定を合わせてもらえ
ると思ったのだろうか。
「ねえ、高岡さんの彼氏って、どんな人?」
「え?どんなって、普通の人よ。もう社会人だけど」
「うわぁ歳上なんだ。やっぱりバスケやってるの?」
「ええ、今でも続けてるわ」
「写真とかないの?見てみたい」
「ちょっと待ってて・・・・駄目ね、携帯の中に残ってないわ」
 三代吉は2人の会話を聞きながら、つくづく対照的だと思う。外見もそうだが、口調や
物腰も含めて、とても2人が同学年とは思えない。交際している男の年齢が
反映されるのだろうか?
「今度写真持ってきてね」
「ええ、わかったわ」
 話題も一巡し、再び愛子の戦術講座が再開した。



 試合は、簡単に言えば、来日したクラブは親善試合といえども手を抜く気は一切ない
事がよくわかるゲームだった。
 愛子が着ているのと同じ黒いユニフォームで登場すると(愛子が大喜びした)開始早々
から攻めまくり、18分にいきなり「ゴール正面の直接FK」になった。
「少し遠いわね」
 ルミが冷静に分析する。三代吉も同感だった。
 だが愛子は
「これくらいが適正な距離なのよ」
 と応じ、周囲の観客の盛り上がりから、愛子と同意見の人間が多い事を窺わせた。
 時間を掛けてゆっくりとボールを置いた8番が蹴り放つと、ジャンプした壁の上を飛び
越え――キーパーの手前でワンバウンドした。横っ飛びでショートバウンドを処理するとい
う困難な仕事を要求されたキーパーは止めることが出来ず、予言どおりの先
取点となった。
「決まったー!まずは1点!」
 愛子が飛び上がってガッツポーズをする。三代吉が勢いで軽く突き飛ばされた。
「おい、愛子――」
「このまま行けー!」
「・・・・聞こえてないようね」
 ルミが冷静に指摘する。
 それからも愛子のボルテージは上がる一方だった。
 とにかく攻め手を休めない。新潟もカウンターを狙うが、中盤の28番が片っ端からボール
を奪っていく。長いボールを放り込んでも3番と32番のハゲコンビが
跳ね返してしまう。
 前半の終了間際には、そのハゲの3番が長いボールを蹴り出すと、最前線の9番が胸で
受け、振り返りざま1点目のFKより遠いところからゴールに突き刺した。
「よっっっしゃー!」
 後半に入り、点を取った8番と9番はお役御免となったが、替わりに入った5番と15番(新
戦力らしい)も普通に新潟を圧倒した。
 この頃になると三代吉の興味は試合より愛子の反応に移ってくる。愛子は応援して
いるチームがボールを持つたびに立ち上がり、腕を振り回して応縁していた。
 そして後半14分に10番(愛子のユニの選手だ)が3点目を決め、勝負は決まった。
 試合後、愛子はすっかり満足した様子で
「いやーよかった。とってもよかった」
 を連発し、それから思い出したようにトイレに向かった。
「・・・・ったく賑やかな奴だ」
 呆れたように三代吉が呟く。
「でも、安藤さんが私たちの中では一番正常に試合を楽しんでたわよ」
 ルミがクスッと笑いながらフォローを入れる。
「そりゃそうですけど・・・・先輩はどうなんです?バスケが専門だからサッカーはそれほど
詳しくないんじゃないですか?」
「それはそうだけど、名前がわからないだけで、戦術やルールは一通りは理解してるか
ら。それに、やっぱりヨーロッパ十指に入るクラブはやっぱりレベルの違いがわかるわ」
「そんなもんですかね」
 標準的なレベルがよくわかっていない三代吉はそうとしか言えなかった。



 行列の末に用を足した愛子は、待たせたお詫びにとスタンドでジュースを3人分買った。
 紙の台に3人分のジュースを立て、人ごみにぶつからないように気をつけながら進むと、
すぐに三代吉とルミを見つけることが出来た。
 三代吉とルミの2ショットは、絵になっていた。
 三代吉の服装はルミほどにフォーマルではないが、偶然にも同じ白系統でまとまって
おり、並ぶと2人で揃えたようにも見える。
 長身のルミが4センチのヒールを履くと、かなり高いのだが、三代吉はそれよりも尚
3,4センチ高く、向かい合って話している姿がとても自然だった。
 愛子は下を向いて自分の服を見た。漆黒のユニフォームという、TPOから言えば最も
適切な格好が、逆に自分だけが仲間はずれになったような、空気が読めてないような錯
覚を起す。愛子はふくれっ面になった。
 そして大股で、足音をわざと立てながら2人の間に割るように近づいていき、
「おっ待ったせ~。お詫びにジュース買ってきたよ~」
 と声を掛ける。
「なんだよ、ジュースなら先に言ってくれれば俺が買っといたのに」
「だからお詫び。さ、重いから早く取って」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「悪いな」
 2人がジュースを取ると、愛子も台から取り、すぐに三代吉の腕に絡みつく。
 身長差の為、ぶら下がるような形になるのはいつもの事だ。
「お、おい、こぼれる」
 バランスを崩しかけた三代吉が、深刻味のない苦言を呈す。
「三代吉ぃ、これ飲む?」
「いや、自分の飲むからいいよ」
 2人のやりとりを見ていたルミが、堪えきれずに噴出す。
「2人見てるの、楽しい」
 愛子は、子ども扱いされたようで、またふくれっ面になった。


                        了

ノート
愛ちゃんの中の人、井口裕香さんが一度も活動していないフットサルチームを結成しているという話から、愛ちゃんにサッカーファン属性を付けてみました。
もうちょっとバカップルさせたかったんだよな
ちなみに新潟と対戦してるのどこかわかる人いますかね?
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