幸せのお裾分け


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負けるな比呂美たんっ! 応援SS第28弾

『幸せのお裾分け』



進級を控え新たなメンバーを迎える前の1年生最後の合宿

何とか初日の日程を無事終えた

入浴を済ませると皆と別れ自動販売機でジュースを買う

頼まれてはいないけど同室の友の分も当たりをつけて買っておく

階段を登って割り当ての部屋へ

ドアを開けると彼女がベッドに寝転んだまま携帯を眺めていた

彼女は携帯中毒ではないはずなので割合珍しい光景ではある

私に気付くと

「おかえりー」

と携帯を閉じて声を掛けてくれた

ジュースを彼女に勧めたが

私の選ばなかったほうで良いと言う

記憶を頼りに彼女の好きそうなほうを渡す

今日はもう寝るだけなので

私もベッドに寝転んで彼女ととりとめのない話に興じる

しばらく話して気がついた

どうも彼女はいつもと違っている

学校や家を離れているからというわけでも無さそうだ

どこかうわの空、いつもの彼女じゃない

時折向けられる視線から察するに

さっきから携帯を気にしているとみた

今夜も餌食になってもらおう



「ねえ、仲上君にはもう、おやすみコールしたの?」

「なっ、しません!」

「ふーん、てっきり離れ離れでさみしいってメールでもしてるのかと思ったんだけど」

「…べ、別に2泊する位でそんな事」

「ふーん、ねえねえ、普段はどんなやり取りしてんの?」

「普段?」

「幸せのお裾分けくらいしてよ、もったいぶらずに」

「メールのやりとりなんてしないよ」

「全然?」

「全然」

「なんで?」

「さあ、結局なんだかんだで身近にいるからかな」

「いいのか それはいいのか?」

「どうだろ」

「じゃあホントに今までメール送った事ないんだ?」

「うん」

「ふーん」

「なによ?」

「でも、今日くらいは送ったんでしょ?」

「ううん」

「いつも一緒にいる二人が離れ離れになっているというのに、何にもなし?」

「うん、そんなに いつも一緒にいるわけじゃあ…」

「仲上君からも来ないの?」

「うん」

「ふーん、そうなんだ」

「もぅ、なあに?」

「こりゃ、愛されてないわね」

「えっ」

「ふつー、愛し合う二人がこんな状況ならメールが乱れ飛んでるわよ」

「そんな事…」

「いーや、よく考えてごらん、今、この瞬間も仲上君は比呂美にメール1通送るより
大事な事やってることになるのよ」

「それは、眞一郎くんだって色々忙しいし、私なんかの相手だけしてる訳にもいかないし…」

「じゃ、比呂美は?」

「私?」

「今、仲上君にメール1通送るより大事な事何かしてる?」

「うーん」

「ほら?」

「うん」

「別に長電話で相手を縛るんじゃないんだからいいんじゃないのかな?」

「そうなのかな」

「もし、仲上君からメール来たらうれしい?」

「うん、まあ」

「『まあ』?」

「う、うれしい、かな?」

「じゃあ、仲上君は比呂美からメールもらったらどう思うかな?」

「さあ?」

「本気?」

「…嬉しいと思ってくれたら嬉しいけど…」

「比呂美ぃ、あんた仲上君のこと信じてないの?」

「え?」

「仲上君、比呂美からのメールもらっても、なんとも思わない薄情な人間だと思ってんの?」

「そんなことないけど」

「よし、決まり、思いっきりラブラブなの送っちゃえ」

「ラブラブって… そんなんじゃないんだから」

「もうっ! 送るのっ? 送らないのっ?」

「送りますっ!」

「よろしい」

「あの…」

「なに?」

「実はね…」

「うん」

「さっきから、ずっと送ろうかとは思ってたんだけど
 どんな文面がいいか分からなくて… どうしたらいいのかな?」

「やっと正直になったわね」

「えっ?」

「もう、分かるって、ずっと携帯 気にしてるし」

「朋与…」

「で、内容は? 下書きくらいしてるんでしょ?」

「ダメ、恥ずかしい」

「恥ずかしいような内容なんだ」

「ち、違うよ、ヘンな内容なんかじゃないんだから」

「ふーん?」

「じゃあ… 笑わないでね
『こんばんは
 こちらは問題ありません
 早く帰りたいです
 おやすみなさい』
 なんだけど どうかな?」

「それだけ?」

「うん」

「うーん、なんていうか、あんた達いつもどんな会話してんの? 何処に愛があるの?」

「愛って… 『早く帰りたい』に一応気持ちは込めたつもりなんだけど」

「もう少しあふれ出る情熱とかはないの?」

「そういわれても」

「『逢いたい』『寂しかった』『声が聞きたい』『帰ったら抱きしめてね』『今夜は泣いて眠ります』
 とかなんとか」

「朋与すごい」

「何よ、イヤミ? ねえ、それイヤミ?」

「ち、違う、違う」

「短くていいからさ、今の素直な気持ちをひとつ入れといたら?
 別にさっきのが悪いとは思わないけど」

「うん」



ブルブルブル…



突然振動音がした

比呂美の携帯?

水色のイルミネーションが瞬いている

「うそ、眞一郎くん?」

比呂美はそう呟くと携帯を取り上げる

何故表示も見ずに分かる?

さてはイルミネーションを専用設定にしているのか?

一度もメールした事ない相手に まあ 何て 乙女

「どうしよう 眞一郎くんからメール来ちゃった」

そう言う比呂美はなんだかかわいい

困ってる なかなか読もうとしない

「読んでみ、もしなにか急ぎだったらいけないから」

少し脅かす そうでもしないとモタモタしそうだ

「うん」

こわごわと携帯を開いて画面に見入る

深呼吸してからボタン操作

おいおい いまさら告白でもあるまいに何を緊張してるのかね

画面をなぞる視線が緊張を帯びたものから安堵したものに変わる

取りあえずいい内容のようだ こっちも一安心

「そうなんだ」

などと独り言 幸せそうな顔しちゃって

野暮を承知で訊いてみる

「何だって?」

「あのね、おばさまがご飯を炊く量、間違えたんだって、私がいないのに…」

「へえ」

「『ケガの無いよう注意してがんばれ』だって」

「うん」

「明日の夜もメールくれるって」

「よかったじゃない」

「うん」

「で、なにか愛のメッセージは?」

「えーと、特には無いみたい」

「なんにも?」

「うん、
『そちらの調子はどうですか
 家では母さんがご飯の量を間違えたといってぼやいてた
 ケガの無いよう注意してガンバレ!
 明日の夜またメールする
 おやすみ』
 だって」

「あんたたちはホントにもう…」

あのバカの顔を思い浮かべる

一時の比呂美を泣かせるような行動をしたときには正直腹が立った

けど、くっついてからの比呂美は幸せそうだ

学校ではおおっぴらにはしてないけど

以前のような無理はしなくなった

時折みせた思いつめたような表情も影をひそめた

おそらくいろんなことがうまくいっているのだろう

肝心な時に本音を話してもらえなかった事は寂しいが

それなりの事情がありそうなので気にしないことにした

比呂美が彼のことを呼ぶときには

クラスの皆の前では『仲上君』

だけど私の前では『眞一郎くん』

それだけ比呂美は私に気を許してくれてる

それはそれで嬉しくもある

って、それどころじゃない

「返事! 返事どーすんの!」

「あ?」

比呂美はポカンとしてる

相変わらずあのバカ相手だとどこか調子狂ってる

「ほら、早くしないと、彼、返事待ってるかもよ?」

少しいじめてみる

「どーしよう」

幸せそうに悩んじゃってまあ

「さっきのでいいんじゃない?」

「じゃあ
『メールありがとう
 嬉しかったです
 こちらは問題ありません 
 早く帰りたいです 
 おやすみなさい』
 でどうかな?」

「『どうかな』って言われても… まあ、いいんじゃない あんた達らしくて」

「うん、じゃあ送ってみるね」

そう言いながら送信してる

なんだかまるで中学生の男女交際だね

らしいといえばらしいかな

さて、もう少しお付き合いしてあげるか

「ところで、」

「なに?」

「仲上君とはどうなの?」

「どうって?」

「ドコまでいったの?」

「ドコって」

「分かってるくせに?」

「し、眞一郎くんはそんな男の子じゃないんだからっ!」

「ふうん、その辺りを詳しく、」

「知らないっ」

「もう、キスくらいした?」

「まだですっ!」

「じゃあ、しそうになったことは?」

「そ、それは…」


かかった!

今夜は楽しい夜になりそうだ







●あとからあとがき
8話まで視聴済み

本シリーズの守護天使、朋与視点です。
奥手なふたりにはこんな存在が欠かせません。
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