降り立つ場所


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11作目今回は進路ネタ


         降り立つ場所





制服も既に夏服へ変わり太陽の日差しが容赦無く射す季節
ある出来事により数日、比呂美は少し落ち込んでいた
眞一郎が書いた絵本がコンクールで小さな賞を取ったのだ
初めは比呂美も自分の事のように喜んでいたが日を経つにつれある不安が沸きだしてきた
『私は眞一郎くんの夢の邪魔になるかも知れない』
その不安に色々と考える比呂美
(眞一郎くんに話せば私を想って絵本作家の道を辞めるかもしれない)
(じゃあ、朋与や愛ちゃん、野伏君に相談する?)
(多分ダメ、私に有利な条件を眞一郎くんに突きつけるかも知れない)
(やはりこれは私自身で解決しないと)
(そうしないと近いうちに言ってはいけない言葉を眞一郎くんに絶対に言ってしまう)
【私と絵本どっちが大切なの?】
(この言葉だけは絶対に言ってはいけない)
そしてもっとも考えたくない選択肢が比呂美を襲う
【眞一郎くんの為に別れる】
(でも、眞一郎くんと別れるは嫌)
この我侭な考えに比呂美は自嘲するように呟く
「私・・・思ってたよりまだ子供だ」


一学期最後のホームルームが終わった教室ではクラスメイト達が夏休みの計画を友達と話す声が飛び交う
比呂美と朋与も例に漏れず夏休みの予定をあれこれ話していた
「比呂美は夏休みどうするの?
 まさか部活と仲上君の所の手伝いだけでいっぱいって事ないわよね?」
「うん、おばさんももっと自分の為に時間を使いなさいって」
「ふ~ん、じゃあまた去年のように課題手伝って…てそっか今年からは駄目なんだっけ」
朋与は遠くを見ながら話す
比呂美は不思議に思い朋与の目線の後を追って見る
その先には三代吉と談笑している眞一郎がいた
「比呂美には仲上君がいるからね~邪魔は出来ないわね」
「あのね~朋与、いくら私が眞一郎くんと付き合っているからってそこまで遠慮されると困るわよ」
「何言ってるのこんな時だからこそもっと愛を深めるんでしょ
 ただでさえお互い奥手なんだから偶には比呂美からデートに誘うとか…」
「はいはい、朋与の言い分はわかったからでも、課題くらいなら付き合うはよ」
「え? ホント?助かるやっぱり持つべき者は良き友よね」
いつもの朋与の恋愛論を断ち切るように比呂美は軽くあしらう
比呂美は朋与と教室を出てじゃあ明日部活でと言って玄関で別れた
眞一郎に何も言わずに出てきた為、一人になる比呂美
一人になった事を幸いと思い比呂美はもう一度眞一郎の夢を邪魔するかもしれない不安に対して考えていた
校門まで考えて歩いていると後ろから眞一郎が息を切らせて近づき比呂美に声を掛けた
「はぁはぁはぁ間に合って良かった
比呂美、今日は部活無いよな
今から愛ちゃんの所にいかないか?
三代吉も愛ちゃんが会いたがってたって言ったし」
「そうね、私も愛ちゃんに会いたいし
 でも、部室に忘れ物があるから野伏君と先に行ってて」
不安ヘの考えが比呂美を一人になりたいと働きかけつい嘘を言ってしまう
「それなら俺も付き合うよ
 それに比呂美に話しておきたい事もあったし」
と眞一郎は比呂美を気遣う
眞一郎の話の事が気になり比呂美は一人になりたいと思いながらも付き添いを許してしまう
人気が無い体育館の横を並んで歩く二人
眞一郎は怪訝な顔つきで比呂美の横顔を見詰め口を開いた
「比呂美、部室への忘れ物ってのは嘘だろ」
え、と嘘を見抜かれた比呂美は驚く
「俺もここ数日考え事があって気付けなかったけど
 比呂美、何か悩み事があるんじゃないのか?」
眞一郎の言葉でもう一度驚く比呂美は逃げようとする
だが逃がさないように眞一郎は比呂美の手首を掴んでいた
「何で俺に言ってくれないんだよ
 前にも言ったよな俺を頼ってほしいって」
少し怒りが混じった言葉が自然と比呂美を握る力も強くなる
「痛っ、離して眞一郎くん」
比呂美は弱弱しく眞一郎に手を離すように頼む
しかし、眞一郎は離さず比呂美を睨み言う
「比呂美が何で悩んでいるかを話してくれるまで離さないからな」
その言葉に負けた比呂美は観念し告白する
「ごめんなさい、眞一郎くんの事で悩んでいたの
 でも、この悩みは私自身が答えを出さないといけないの
 お願い、だから少しの間だけ一人にさせて」
目線を逸らし全身から搾り出す様に比呂美は弱弱しく眞一郎に告げる
「わかったよ比呂美。ただ、一つだけ約束してくれ
 答えが出たら俺にちゃんと言ってくれ」
眞一郎は優しく言い比呂美の手を離す
愛ちゃんの所で待ってると付け足し眞一郎はその場を離れた

「わりぃ、覗き見つもりじゃなかたけど。いいのか?一人にさせて」
体育館横を出てきた眞一郎を三代吉が呼び止める
不意に呼び止められて驚く眞一郎
「見ていたのか三代吉
 比呂美は俺の事で悩んでいた。でも、俺が手を貸してはいけない悩みらしい
 だから比呂美の望み通りにした。それに約束もしたしな」
それを聞いた三代吉はふぅ、とため息を吐き真剣な顔になって眞一郎に言う
「眞一郎、もしそれで湯浅が別れるって言ったきたらどうするんだ?」
三代吉の真面目な問いに眞一郎も真面目に答える
「その時は俺の考えを比呂美に言うよ
 それでも駄目だったら比呂美の気持ちが変わるまで説得する」
眞一郎の答えに三代吉はニヤッと笑いいつもの顔になり
「言うようになったじゃねえか眞一郎
 わかった二人が遅れてくるのを愛ちゃんに話しておくから
 お前はここで待っていてやれ
 俺は先にいってるぜ」
眞一郎の肩をポンポンと叩きならが言う
ああ、悪いなといい眞一郎は比呂美を待つことにした

眞一郎の気遣いで一人になった比呂美
(こうやって眞一郎くんは私を気遣ってくれるのは嬉しい)
(けど、その優しさが今は辛い)
体育館の周りを歩きながら思っているとある場所が目に映る
そこは雷轟丸の墓とじべたが居る鶏小屋だった
比呂美は鶏小屋に近づき屈んで今までの出来事をじべたを見つめながら思い出していた
石動乃絵と出会った事
嫉妬に駆られ続けた事
全てから逃げようとした事
眞一郎にやっと素直になれた事
眞一郎と乃絵の絆を認めた事
あの怒涛な時期をビデオの早送り再生のように思い出ていく
(もう何があっても大丈夫と思っていたけどつもりだったみたい)
(やっぱり、眞一郎くんと別れた方が眞一郎くんの為に…)
一番考えたくない選択肢を考えている比呂美に後ろから不意に声を掛けられる
「珍しいわね。あなたがここにいるなんて」
比呂美は後ろを振り向き声の主を確かめる
石動乃絵がそこに堂々と立っていた
「髪、伸ばしているのね」
「ええ、桜子と日登美が似合うって」
比呂美の何気もない問いに乃絵は肩まで伸びた髪を触り優しい表情で答えた
乃絵は屈んでいる比呂美に近づき隣に同じように屈む
「私、石動さんの言ったように眞一郎くんの邪魔になるかもしれない」
無意識に比呂美は乃絵に悩んでいた事を言ってしまう
「どうして?あなた達は向き合って付き合っているのに?
 何故そう思うの?教えて」
乃絵は不思議に思い比呂美を真っ直ぐ見詰め問う
以前のような剣幕な物言いとは違い優しい言い方だった
「眞一郎くんの絵本が人から認められた時に思ったの
 私が傍にいると眞一郎くんが絵本に打ち込めないかもしれないって
 石動さんの様に絵本を書いている眞一郎くんの力になってあげていない
 いっその事、石動さんといた方が…」
比呂美は自嘲気味に答えていると乃絵は断ち切るように言う
「それは違うわ」
え?と比呂美は言葉を止める。だが、乃絵はそれを気にせず言葉を続ける
「私は眞一郎が飛べるきっかけを作っただけ
 眞一郎を飛ばせれるのは湯浅比呂美あなただけなのよ
 あなたは私より器用だからもっと大きく眞一郎を羽ばたかせる事がでくるわ」
乃絵は自信に満ちた言葉を比呂美に送る
「あなた、雷轟丸とじべたの絵本の内容は知ってる?」
「あらすじ・・・程度だけど眞一郎くんからは聞いてる」
比呂美は二人の思い出を汚すかもと戸惑いつつも乃絵の問いに素直に答える
「雷轟丸はずっと、じべたを見ていたのよ。何故だと思う?」
まるで子供に問いかけるように乃絵は比呂美に問いかける
比呂美は少し考え自信なく答える
「じべたが・・・気になるから?」
乃絵はそうねと比呂美の答えを肯定して付け加えるように言う
「雷轟丸にとってじべたの隣が降り立つ場所だったのよ
 そして、じべたも雷轟丸が降り立つのを待っていた」
乃絵の言葉を聞いて比呂美は眞一郎と結ばれる前の状況を思い出した
(まるで付き合う前の私と眞一郎くんみたいだ)
比呂美の思いを見抜き、乃絵は少し寂しく言う
「そう、あの絵本にはあなたと眞一郎がいたのよ
 雷轟丸は眞一郎でじべたはあなた
 眞一郎は気付いていないけど・・・あなたへの想いがあったわ」
乃絵しか気付かなかった絵本の真意の言葉に比呂美は驚いていた
(あの本に私がいた?しかも眞一郎くんが無意識のうちに書いていたなんて)
(眞一郎くんすら気付いていないものを気付くのなら尚更、石動さんといた方が…)
比呂美の思いを察して乃絵は比呂美の思いを否定する
「だから、あなたは眞一郎が絵本が書ける場所と休める場所なのよ
 私はきっかけを与える事しか出来なかったから
 それに、眞一郎の心の底にはあなたがいる」
乃絵はじべたを見ながら話を続ける
「お兄ちゃんのバイクの事故現場で眞一郎があなたを抱き締めたのを見た時に気付いてしまったわ
 眞一郎が本当に想っている人があなただって
でも、その時私は少なからずあなたへ嫉妬してしまったわ
嫉妬をしている自分がとても怖かった
そして、祭の時あなたが言った言葉でお互いが想い合ってるのがわかったわ
私は前まで嫉妬はしてはいけない事とずっと思っていた
けど、あなたが以前、ここで私に嫉妬をぶつけてくれた事で
今は恋をするのには必要な物だと思えるようになったわ」
乃絵は懐かしい思い出すように比呂美に語る
(あの時、私は辛かったけど、石動さんも私以上に辛かったんだ)
比呂美も同じように思い出す
「いろいろあったわね」
「ええ」
まるで、年季の入った親友のように受け答えする二人
「これからもあなたの心の底には眞一郎はいる?」
乃絵が比呂美に改めて眞一郎の想いを確認する
「ええ、私は眞一郎の彼女だから」
比呂美は自信を持って答える
その言葉には以前のような焦りや嫉妬は感じられない
乃絵は比呂美の『私は眞一郎の彼女』の言葉を受け取り比呂美に優しく告げる
「なら、あなたが悩んでいた答えはもうあるじゃない
 今のあなたはそれがまだ見えていないだけ
 よく考えてみて、あなたなら見つけれるはず」
比呂美は乃絵の言葉を受けもう一度考えてみる
(石動さんは私が眞一郎くんが絵本を書ける場所であり、休める場所と言った)
(そして、眞一郎くんの心の底に私がいて、私の心の底に眞一郎くんがいる)
あ! と声を漏らし比呂美は心で何かを掴み思う
(なんでこんな簡単な答えに気付かなかったんだろう)
その仕草を見た乃絵は見つかったみたいねと言い立ち上がる
つられる様に比呂美も立ち上がる
「石動さんありが・・・ごめんなさい
 眞一郎くんとの思い出の場所を汚すような事してしまって」
比呂美は周りを見て乃絵に謝る。しかし、乃絵から帰ってきた言葉は意外なものだった
「ここにはあなたとの思い出の場所でもあるわ
 あなたは雷轟丸の墓を作ってくれた
 私に嫉妬をぶつけてくれた
 そして、私が思ってたじべたへの見方を変えてくれた
 飛ばない事を選ぶのは飛ぶ事と同じ価値があるって事を教えてくれた」
次々と乃絵から出てくる比呂美ヘの感謝の言葉
(私も眞一郎くんと同じように石動さんの中に存在しているんだ)
比呂美はそう思うとかつて乗り越えた乃絵への恐怖心が嬉しさに変わっていく
乃絵は比呂美を尊敬する眼差しで見て言葉を続ける
「それに私、あなたが羨ましい。あんなにも眞一郎を愛する事が出来るだから
私にも素敵な異性が現れてあなたの様に愛せると思う?」
乃絵の問いに比呂美は優しく答える
「石動さんなら素敵な異性が現れるより見つけると思う。それに、私の様にその人を愛せない
 石動さんは私じゃないから石動さんなりの愛し方をすればいいのよ」
「そうね、確かに探すのが私らしいかも
 私なりの愛し方か…また探す物ができたわ」
ありがとうと付け加え乃絵は笑顔で言う
「私の方こそ石動さんのおかげで答えが見つかったありがとう」
比呂美はさっき言いかけた言葉を再び乃絵に送る
「私、石動さんと友達にはなれそうにないけどの嫌いじゃないわ」
「ええ、私もあなたの事は嫌いじゃない」
お互い優しく見つめ本音を言う
もう行くわと比呂美は乃絵に告げて立ち去る
乃絵は去っていく比呂美を優しく見守っていた

体育館横を通り過ぎた比呂美は待っていた眞一郎を見つけ駆け寄ってくる
「眞一郎くん、先に行っていたんじゃ・・・」
「ああ、やっぱり比呂美を待つ事にした
 で、答えは見つかったのか?」
眞一郎は比呂美の話を遮り比呂美が出した答えを聞く
首を縦に振り、比呂美は答えを告げる
「私、眞一郎くんの夢を隣で見ていく事にしたわ
 眞一郎くんの邪魔はしたくないけど離れたくもないから
 邪魔にならない様にするから隣にいてもいい?」
比呂美の答えを聞いた眞一郎は安堵のため息を吐き比呂美に言う
「ただ、隣にいるだけでいいのか?」
眞一郎の言葉に比呂美は少し驚いていた
「さっき引き止めた時言ったよな俺も話があるって
 俺さ、大学に行く事にした。そして大学の4年間の間に絵本と決着をつけようと思う
 でもさ、その間また比呂美を待たせてしまうから一緒に居て俺を助けてほしい
 比呂美ともちゃんと付き合い続けたいから
 とても甘い考えなのは判ってる。でも、これが一番いい方法だと思うんだ
 俺、この数日間に比呂美がいない世界を想像してみたんだ
 驚いたよ。俺にとって比呂美はとてつもなく大きくて大切な存在なんだって改めて思い知ったよ
 だからもう、比呂美を迷わせたくない。俺も追い駆けたくはないから」
真剣な目で眞一郎は比呂美を見つめ告げる
眞一郎の答えに比呂美は嬉しくて涙を浮かべて意地悪っぽく言う
「これで二回目ねプロポーズみたいな言葉を言うの
 本当のプロポーズの時どうするの?」
「ほ、本当の時って…その時はまた・・・考える」
比呂美の意地悪な問いに眞一朗は照れながら答え比呂美を抱きしめ優しく頭を撫でる
そろそろ行こうと比呂美は眞一郎からゆっくり離れ歩き始める
眞一郎も合わせて歩き始める
「それでさ、さっき大学行くって言ったけど丁度、比呂美が行く大学と同じなんだ
 俺の絵本の弱い所は話が絵に負けてるみたいでそれを補うのに探していたら
 比呂美が行く大学の文系が良くってね」
嬉しそうに話す眞一郎を比呂美は意地悪っぽくツッコミを入れる
「でも、私の行く大学は今の眞一郎くんの成績だと少し厳しいよ」
それを聞いた眞一郎は歩みを止め、つられる様に比呂美も止まる
「比呂美」
その瞬間、眞一郎は真剣な顔で比呂美の名を呼び比呂美の両肩を掴む
いきなりの事に比呂美は裏返った声でハイと返事をしてしまう
「勉強を教えてくれ」
眞一郎の助けを求める声に比呂美は
「ふふ、絶対合格出来る様に鍛えてあげるね」
不適な笑みを見せつつ言う
「あの~比呂美さん、お手柔らかにお願いしますね」
その笑みを見た眞一郎は戦慄しつつ頼む
「ダ~メ、私達が幸せになる為なんだから少しは我慢してね」
今度は無邪気な子供のような笑みで眞一郎に言い、再び歩き始めた
そうだなと眞一郎も覚悟を決めて再び歩き始めた
午前の太陽の日差しと蝉の鳴く声が二人を応援するかのように包んでいた

おわり




最後まで読んでくれてありがとう
二人が付き合って大きな危機を考えたら進路かなと
比呂美の夢もうほとんどクリアーしているし、将来も実現できる範囲です
しかし、眞一郎の夢である絵本作家は実現するには難しいです
そのうち、お互い自分は邪魔をしてるのではと思って好きだけど別れるって事もありえると
眞一郎が文系に行くというアイデアは放送当時の考慮で自分も思っていた
「絵本の弱点は話の方では?」から来ています
まあ、大学でも一緒にしてあげたいという下心もありますが…
最近、他の人のSSに似ていく自分の力の無さに泣けてきます
ツールボックス

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