ある日の比呂美・番外編2-2


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「二人で入るの、初めてね」
暖色系の明かりに照らされた浴室で、比呂美はタオルで髪をまとめ上げながら呟いた。
「そ…そうだ…な」
すっかり主導権を奪われてしまった眞一郎は、気分を落ち着かせようと深く息を吸い込んでみる。
だが、目の前に広がる夢のような光景に、呼吸器と心臓は暴走を続ける一方だった。
二人で入るには狭すぎる洗い場を、小物を片付けることで少しでも広くしようとしている比呂美の後ろ姿……
タオルに隠された髪の生え際と、柔らかさを増してきた肩から尻にかけての緩いライン……
確かな照明に彩られた世界が、もう見慣れたはずの比呂美の裸体を、普段よりも美しく、扇情的に魅せる。
(自分で誘ったんだろ。 しっかりしろ、俺!!)
視界を閉じて苦し紛れに入れた気合は、僅かに声になってしまった。
「え? なに??」
何事か、と訊き返してくる比呂美に視線を戻すと、すでに浴室の整理は終わっていた。
液状石鹸のボトルとバスマット、浴室用の小さな椅子以外は、お湯の入っていない浴槽に追いやられている。
そして片づけをした本人は、椅子を自分の前に置き、バスマットの上に正座していた。
問い掛けに答えられない恋人を無理に追及したりはせず、比呂美は「座って」と囁き、眞一郎を促す。
「う、…うん」
その言葉に吸い寄せられるように、眞一郎は椅子に腰を下ろした。
内心の動揺を悟られないように、わざと男性器を堂々と比呂美に見せ付ける。
だが、平常心と優位性を取り戻そうとする眞一郎の目論見は、比呂美が発した一言で脆くも崩れた。
「お客さん、外 暑かったですか?」
「……………………は、はいぃぃぃ???」
股を大きく開いたまま、それに負けないほど大きく両眼を見開く眞一郎を見て、比呂美はククッと笑い出す。
唖然としている眞一郎をよそに、比呂美はシャワーのコックを捻ると、お湯の温度を確かめながら言った。
「『エッチなお店』ではね、最初はこう挨拶するんだって」
自分と眞一郎の冷えた身体に温水を浴びせながら、比呂美はまだ薄く笑っている。
「な……何を言って……えぇ??」
眞一郎は心底、どう反応すればいいのか分からなかった。
確かに今の状況は、三代吉から聞いたことのある『エッチなお店』の様子に酷似しているが……
(なんで比呂美がそんなこと知ってるんだ……)
罠か…… 隠れて三代吉と『その手の』猥談をしている事がバレたのか……
眞一郎の背中に、冷たい物が駆け抜ける。
…………
陰部だけでなく、身体全体が緊張で固まってしまった眞一郎をよそに、比呂美はボディシャンプーを自分の身体に塗り始めた。
「な…なにしてんだよ……」
比呂美の理解不能な行動を目にし、思わず眞一郎の口が動く。
だが、比呂美はそれが聞こえないかのように作業を続け、身体の前面で石鹸を泡立てると、眞一郎の後ろに回り込んだ。
「……朋与がね…… マンネリにならないように、ちゃんとサービスしろって……」
「!」
二人にとって、かけがえの無い少女の名前を聞き、眞一郎は緊張が解けると同時に得心がいった。
ネットジャンキーの黒部朋与ならば、『この手の情報』に精通していても不思議は無い。
(朋与の奴……余計な事を比呂美に吹き込んで……)
そう内心で呟いたものの、眞一郎は朋与に感謝していた。
いつも自分たちを気に掛けてくれていること…… 
そして二人に新しい世界に踏み込むきっかけを与えてくれたことを……
…………
「うわっ!!」
刹那、思考を別のところに飛ばしていた眞一郎の背中に、比呂美の柔らかな乳房が押し付けられた。
甘美な刺激に声を上げた眞一郎の反応を楽しみながら、比呂美は手を前に回して眞一郎の上半身をギュッと抱き締める。
そして小さな唇を開き、前歯で眞一郎の耳朶に軽い噛み跡をつけてから、小声で囁いた。
「じっとしててね。……私が……きれいにしてあげる」
「……比…」
眞一郎の返事を待たずに拘束を解き、円を描くように自分の身体を動かし始める比呂美。
乳首の先端が背部を蠢くむず痒い感覚に、眞一郎は「うっ」と呻き声を上げた。

        [つづく]


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