ひみつ

負けるな比呂美たんっ! 応援SS第32弾

『ひみつ』




ふとある本が気になった

あの本はドコだっけ

本棚の…

上のほう

あった

久しぶりに手に取った

この本を買ったときのこと

初めて読んだときの事

昔の記憶がよみがえる

小さな頃から仲のよかった男の子と女の子が離れ離れにされる悲しいお話

女の子は男の子への接近を禁じられ

家のためだからと望まぬ結婚を強いられる

女の子は最後まで男の子への想いを胸に秘めたまま早くに亡くなってしまう

男の子が女の子の想いを知るのは女の子の死後の事

女の子は息を引き取るその時まで握り締めていたのは男の子の写真…

このお話を初めて知ったのは深夜ラジオの朗読

毎日少しずつ 何日かに分けての放送だった

中学の卒業を控えていた頃

ベッドの中で泣きながら聴いた

その女の子に自分を重ねた

いま、私はその女の子と同じ年齢になった

私も日々の切なさの中で押しつぶされそうになる

でも私のほうがはるかに恵まれている

久しぶりに読んでみる

この本はもう100年以上前に発表されたもの

その後 版を重ねたとはいえ

古い文体と小さな活字は変わらない

正直言って読みづらい

こんなときはケースからあるものを取り出して装着する

誰も知らない私の秘密





今でもはっきり思いだせる

人によっては笑われる

そんなお話

子供ってまるで天使のよう

だけど悪魔のよう

人を傷つける事の意味が分からない

もちろん自分もそうだった

小学生だった頃

少し目が悪くなった

左目だけが少しぼんやり

黒板の字が見えにくい

保健の先生の薦めもあり

眼鏡を作った

クラスの皆に笑われる

渋る私に

『大丈夫、ヘンじゃないよ』

お母さんは

そう言ってくれた

眼鏡をもっての初登校

恥ずかしかった

午前中は机の中にしまったまま

お昼休みの時間

友達にこっそり相談してから

午後の授業からかけてみた

そしたら男子達が大笑い

恥ずかしかった

一番ショックだったのは

その中に彼が居た事

結局その日限りで

私は人前で眼鏡かかけるのを止めた

その日の夜

お母さんに内緒で

お布団の中で泣いた

次の日からは

お母さんを心配させたくなくて

学校で眼鏡を使っている振りをした

大切な人に

嘘を吐いたのは

あれが最初…

その後は慣れのせいか

黒板の文字は見られるようになった

視力検査の結果は相変わらずだったけど…

人づてに聞いてもらった

彼の好みの女の子

髪は長めで

運動好きな元気な子

きっと眼鏡は好みじゃないに違いない





あの頃からずいぶん経った

相変わらず視力検査の結果は一緒

周りの目の悪い子たちはコンタクトを使ってる

でも私はコンタクトが使えない

お医者様のお話では

目への負担が大きすぎるのが原因のようだ

私が眼鏡を使うのは

お部屋の中だけ

朋与だって知らない

私だけの秘密

今の彼なら私の眼鏡を笑うだろうか

多分笑いはしないだろうけれど

あの日の記憶が邪魔をする

彼から受けたたったひとつの心の傷

もちろん子供の頃の話だし

彼に罪があるとは思わない

本当に些細な事

だけど

普通に眼鏡を掛けた私を

彼は受け入れてくれるだろうか

もし彼がほんの僅かでも眉を曇らせたなら

多分 私は耐えられない

今だ打ち明けられない秘密

もっともっと彼に近づきたい

でも 秘密を隠したまま近づく訳には行かない

それはホントの自分じゃないのだから

今はまだ

彼の前では怖くて眼鏡は掛けられない

いつの日か

彼に相応しい自分になれたと思うとき

その時こそ

私は彼の前で再び眼鏡を掛ける

そして今度は

「似合ってる」

彼はきっと

褒めてくれる

そう信じてる







●あとからあとがき
9話まで視聴済み

眼鏡っ娘シリーズ第2弾!
何を隠そう作者の高校時代、
1学年上にいた図書委員タイプのお下げ眼鏡っ娘に恋してて
廊下ですれ違うだけでドキドキだったのは内緒です。
ドキドキしてただけなんですけどね。

本作は「封印」の内容がもしこんな理由だったら… というIFネタです
ちなみに冒頭の小説は『野菊の墓』をイメージしてます
3話程度まで観た頃の展開予想では
眞ママにより比呂美に見合い話が持ち込まれて…
という古典的な展開予想してました

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最終更新:2008年04月05日 23:51
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