ある日の比呂美・大晦日編1


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年に数回ある『祭』と同様に、大晦日は仲上酒造にとっては書き入れ時である。
翌日に控えた新年の準備で、近隣の神社のほか、一般家庭からも大量の注文が舞い込む。
高校三年の眞一郎と比呂美は数ヵ月後に受験を控えた身ではあったが、
この日ばかりは家業を手伝わないわけにはいかなかった。
眞一郎は従業員たちに混じって配達に。
比呂美は眞一郎の母と共に、電話や店頭での応対に精を出し、忙しい年の暮れを送っていた。


そして、真冬の太陽が落ちはじめ、町中の新年の準備が終わった頃のことである。
眞一郎はようやく仕事から解放され、家に戻ってきた。
「ふぅ、疲れた~」
配達用の自転車を片付け、自室で仮眠を取るべく階段をふらふらと登る。
障子を開いて部屋に入ると、自らを操る気合の糸を切って、身体をベッドに倒れ込ませる眞一郎。
そのまま眠りに堕ちて行けば、ある程度の回復は出来るだろうと考え、瞼を閉じる。
だが、眞一郎の気配を追いかけるように階段を登ってきた足音に、その企みは敢え無く打ち砕かれた。
「眞一郎くん」
同じ様に仕事がひと段落した比呂美の影が、戸口から声を掛けてくる。
「……そっちも終わったのか?」
「うん。 注文の電話も打ち止めみたい」
そう言いながら、比呂美は眞一郎が突っ伏すベッドの縁に腰を下ろした。
「おばさんもね、おじさんに呼ばれて…公民館に行っちゃった」
視線を合わせないまま、比呂美は暗に、《今 この家にいるのは私たちだけよ》を告げてくる。
ポケットを弄り避妊具を取り出した比呂美は、眞一郎の視線の先にそれをちらつかせながら、
「しよ」と声を出さずに唇を動かした。
「ここでか?」
アパート以外の場所で『求めて』くる比呂美の積極性に、眞一郎は気圧されてしまう。
それに、今は体力もほとんど残っていないので、できれば夜まで待って欲しいのだが……
「嫌ならいいけど」
煮え切らない眞一郎に向かって、比呂美はプイと横を向き、拗ねたフリをして見せた。
だがそれは、眞一郎の性格を計算しての行動である。
……こういう態度を取れば、仲上眞一郎は湯浅比呂美の誘いを拒めない……
それを熟知してのアクション……恋人同士の遊びだ。
眞一郎もそれが比呂美の《サイン》であることは充分に承知している。
そして、彼女の望み……欲望を蔑ろにする選択肢は、仲上眞一郎の中には存在しなかった。
…………
「嫌だなんて言ってないだろ」
比呂美の手首を掴んでコンドームを取り上げると、
眞一郎はそのまま、比呂美の身体を巻き込むように寝具へと組み伏す。
「ちょっと……いきなりは……」
本心とは真逆の言葉を紡ぎだす比呂美の唇を、眞一郎は「うるさい」と優しく囁いてからキスで塞いだ。
そして、この数ヶ月で熟練の域に達した指使いを屈指して、比呂美の性感帯を刺激しはじめる。
「……ん………くっ……」
眉間にシワを寄せながら、くぐもった嬌声を漏らし出す比呂美。
その姿が、慣れない労働でクタクタになっているはずの眞一郎の身体から、疲労を一瞬で吹き飛ばした。


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