ある日の比呂美・豪雪編2


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「『お前のこと、なんか可愛いって言ってたぞ』……」
あの夜、眞一郎が言い放った言葉を、比呂美はそのまま再現してみせた。
《あの時の仲上眞一郎》になりきって、忘れることの出来ない単語の羅列を突きつける。
「『……嬉しくないのかよ……』」
鬼気迫る様子で間隔を詰めてくる比呂美に、眞一郎は完全に気圧されていた。
「ど、どうしたんだよ」
言葉と態度で古傷を抉られ、眞一郎の顔が歪む。
逃げ出したい、という気持ちが内心を満たしたが、寄りかかっている机が邪魔をして退くことも出来ない。
そんな眞一郎に構うことなく比呂美は前進を続け、遂に肌と肌が触れ合う寸前の位置まで、二人の距離は接近した。
貫くように見上げてくる、比呂美の真剣な眼差し。
「『……嬉しくないなら……ちゃんと言えよ』」
「…………え?」
……そんなこと……言っていない。
自分はあの時、比呂美の本心に気づくことが出来ず、混乱したまま逃げるようにこの部屋を出た……
「『4番なんか、本当は好きじゃないんだろ!』」
記憶との齟齬に対応できず、固まってしまった眞一郎を無視して、比呂美の一人芝居はつづく。
眞一郎の両肩を掴んで揺さぶり、本当の気持ちを聞かせてくれと迫る比呂美は、妙に格好良かった。
…………理想の仲上眞一郎…………
あの瞬間、比呂美が自分に求めていたのは『これ』だったんだ。
そう理解すると同時に、眞一郎は比呂美の真意に気づかされる。 
他人から見れば馬鹿馬鹿しい……意味の無いやりとり。
過去に戻れるわけでも、記憶を書き換えられるわけでもないが。
…………でも…………それでも…………
…………
逃げ腰だった眞一郎の全身に力がみなぎり、肩を掴んでいた比呂美の手が振り解かれた。
「……眞一郎…くん」
比呂美が『比呂美』に戻るのと同時に、眞一郎は素早く体勢を入れ替える。
今度は間違えない。
見当違いの『真心の想像力』ではなく、その先にあるものを示さなければ。
そんな想いを秘めながら、眞一郎は逆に追い詰められる形になった比呂美の肩をガッと掴み、
突然の変貌に驚いて大きく見開かれた瞳を射抜き返した。
そして、決して大きくはない、だがハッキリした口調で宣言をする。
「アイツじゃなくて俺を見ろよ! ……俺は…… 俺は…… お前が好きだっ!!」
告白が比呂美の全身を貫き通し、険しかった表情をぐしゃぐしゃに崩した。
眞一郎の視界に映り込む、しばらく目にすることがなかった比呂美の透明な雫。
「……私たち…………兄妹かもしれない」
時間をあの頃に巻き戻した比呂美が、頬に涙を伝わせながら寂しそうに呟く。
だが、そんなことでは眞一郎の突進は止まらない。
「それがどうしたっ!」と比呂美の弱気を一喝すると、力強い両腕が背中へと回された。
「お前が好きだ。それだけじゃ、不満か?」
身体と身体を交差させて、偽り無い本心を……あの時の秘めた気持ちを……眞一郎は告げる。
比呂美は「不満なんてある訳ない」とでも言いた気に、首を左右に大きく振り、眞一郎の胴を抱き返した。
バスケで鍛えられた、しなやかな二本の腕が背中に食い込む。
抱擁の圧迫感と比呂美の柔らかさ、そして心の奥に刺さっていた棘が抜け落ちたことが、
眞一郎の気持ちを落ち着かせ、安らがせていく。
…………
「ありがとう、比呂美。 なんか……スッキリした」
そう言いながら、儀式を終えた眞一郎は密着を緩め、再び比呂美の顔を見つめ直した。
良く出来ました、と語りかけてくる柔和な表情に、もう涙は無い…… 無いのだが……
「……本当に……スッキリ…した?」
「え?? どういう意味だよ……」
母性のような温かさに満たされていた比呂美の顔が、特に頬の辺りが見る見る紅潮していく。
俯くように落とされた視線。
その先には、肉体の接触に反応し、完全に硬化した眞一郎の下半身が捉えられていた。
布越しにもハッキリと分かる硬直が、比呂美の下腹部……子宮の辺りを『求める』かのように押している。
「あ… いや、これは……」
それまでのシリアスなやり取りに相応しくない陰部の変化に気づかされ、
眞一郎は慌てて掴んでいた比呂美の肩を離し、一歩後ろへと退がった。


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