比呂美と眞一郎のどきどき初デート


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比呂美と眞一郎のどきどき初デート

比較的安定した天気の、ある冬の休日。
比呂美は通っている学校とは家と反対側にある小さな公園で待っている。
もちろん眞一郎を、である。しかも、初デート。
今日は幸運なことに一日中眞一郎の時間を確保することができた。既に昼過ぎではある
が、時間は十分にある。
眞一郎の母の監視があるため、休日に外出するのは簡単ではない。そのため比呂美はあ
る"手"をうっておいた…

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家の手伝いをしている間、"たまたま"眞一郎の母が近くにいる時、友達の朋与から電話
があったのである。
「あ、何?朋与?どうしたの?」
「うんうん、わかった。じゃあ、行くね」
「おばさま、すみません。ちょっと部活の事で集まりがあるので出かけます」
比呂美は精一杯冷静を保って、早口にならないように気を付けながら話す。
鋭い視線が探るように全身を突き刺してくる。眞一郎が2階にいるから一緒でないこと
は理解しているようだが、一切油断していないことはわかった。
「あ、そう」
その返答を得るまで、比呂美は身じろぎ一つできなかったが、動揺することなく返事を
待つのは至難の業だった。
「いってきます」

コートを着て、門の外に出た途端に安堵のため息が出てしまう。
「はぁぁ」(よかったぁ。なんとか出れた)
朋与にお礼のメールを打ちながら、待ち合わせの公園へ歩いていく。
実は"たまたま"電話がきたのではない。朋与へのメール送信の準備を行い、そのままの
携帯電話をポケットに入れて、家の手伝いをしていたのである。隙を見計らって素早く
メール送信を行い、それを見た朋与が電話してきたのだ。以前から"ここぞ"という時の
ために、事前に打ち合わせしていたことだ。何回も使える手ではない。
だが、今日それを使うことにためらいはなかった。何せ眞一郎の時間を独り占めである。
「よかったねー。じゃ、がんばんなさい! TOMOYO」
朋与から返事がきた。援護射撃をしてくれた友達の家の方へ向かって感謝する。
「ありがとう、朋与、次の時もよろしく」

比呂美は脱出の手を何通りか用意してある、今日はかなり上位に位置するものなので、
使うのは惜しかったが、成果を考えると満足していた。

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「もうちょっとかかるかな」
風は冷たくはないが、じっと待つのは体が冷えてくるので、我慢するのは難しい。
だが、今か今かと眞一郎を待つ比呂美にとって、その時間はとても楽しいものとなる。
心臓の鼓動が全身に響くように感じ、どうしても沸き立つ期待を抑えることができない。
それにしても、おしゃれな格好をしたかったが、部活の集まりに行くと言った手前、制
限された服装しかできないのは悔しいかぎりだった。そんなことを考えていると…

「ごめん、待った?」
声がまるで雷のように比呂美の全身を貫いた。
「はあ、はあ、はあ」
胸に手をあてて、眞一郎は呼吸を整えながら微笑している。
「う、うん。ちょっとね。でも短かく感じたよ」(どきどきどきどきどき)
眞一郎にはこちらの動揺は気付かれていないらしく、呼吸を整えることに専念している。
「走ってきてくれたの?」(どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどき)
「はあ、まあね。ちょっと、はあ、抜け出すのに時間かかっちゃったからさ」
だいぶ呼吸が整ってきたようだ。
「そんなに急がなくていいのに…」(ありがとう!眞一郎くん!)
口調はいつもどおりだが、比呂美の鼓動が速まっていく。
「どころで、その荷物は何?」(どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどき)
「あ、これ?抜け出しアイテム。ちょっと重かったよ」
眞一郎は何故か、ちょっと大きめのリュックを背負っている。
「何が入っているの?」(どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどき)
「ああ?これ?絵を描く道具とか、いろいろ」
「絵?」(どきどきどきどきどきどきどきどきどきどき)
「そう、抜け出すにはこれが一番いいからね。母さんは疑ってたけど」
「ありがとう。大変だった?」(どきどきどきどきどきどきどきどきどきどき)
先ほど心の中で言った、ありがとう、を声に出して言う比呂美。
「そんなでもないよ」
眞一郎はなんでもなさそうに話しているが、比呂美は鼓動を抑えることができない。
「…」(どきどきどきどきどきどきどきどきどきどき)
「?、じゃあ、行こうか?」
ぱしっ。
(え?ぱしっ?)
比呂美は一瞬何が起こったのかわからなかった。数瞬後、状況を把握した。
「…」
(どっくん)
本日最大級の心臓の鼓動、この鼓動をきっかけに心拍が落ち着いてきた。
(手を繋がれています、私)
「あ、ごめん。待たせたから寒いかなって思って」
眞一郎は少し視線を逸らして、ちょっと照れながら話している。
「走ってきたから、手、あったかいだろ?」
眞一郎のちょっとした優しさに比呂美は…
「…」(手を繋がれています、私)
「えーと、どうした?」
「え?え?何?」(手を繋がれています、私)
「あ、イヤだった?」
眞一郎の困っているような表情に比呂美は動揺してしまう。
「そんなんじゃなくて!」(どきどきどきどき)
今、比呂美は自分の全てをかけて、眞一郎の手を握り返す。そのため他のことは疎かに
なり、せっかく収まった鼓動が速まっていく。
「?」
「どこっ!行こうかっ!」(どきどきどきどきどきどきどきどき)
すっかり動揺しながら、話し初めてしまう。
(や、やばい。これはやばい)
実は眞一郎とて冷静ではない。手を握るのにも勇気がいるのだ、客観的に見れば明らか
に二人ともかなりぎくしゃくしているが、比呂美には眞一郎が落ち着いているように見
える。
比呂美はちょっとパニックになりそう。しかし、彼女に比べれば落ち着いている眞一郎
の話し方も…
「うーん、ちょっと何か食べたいかな」
「そっ、そうだねっ」(どきどきどきどきどきどきどきどき)
今の比呂美に効果はないようだ。
その後、ショッピングモールまで二人で手を繋いで歩きながら、色んな話をしたはずだ
が、比呂美には記憶がなかった。時折眞一郎は「?」と首を傾げている仕草が見受けら
れた、まあまあ話ははずんでいたと、彼女の為にもそのように思って頂きたい。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

ショッピングモールのコインロッカーに眞一郎の荷物を預け、二人は軽く食事をした。
ロッカーに荷物を入れる時、"ゴトッ"といういかにも重そうな音が響いた。比呂美はそ
の音ですらうれしかった。
食事の後、いくつかの店を見て周り、色んな商品についてあれこれ話していると時間は
あっという間に過ぎるものである。比呂美にとって、すばらしい時間になった。
帰りの時間をずらす必要があるので、比呂美が先にショッピングモールを出ることとな
り、コインロッカーの方へ向かっているとある人物が目に入った。
(えっ!?あ、愛子ちゃん!?)
あろうことか、こちらへ向かって歩いてくる。一人で何か大きめの紙袋を手に下げてい
るから、まだこちらには気付いていない。ここで見つかってはせっかくのデートが台無
しである。比呂美はこの時ばかりは動揺せず冷静に事を運ぶ。
「あっ!ちょっと見たいものがあったんだっけ」
「?」
「もうちょっといいでしょ?」
「ああ、いいけど。何?」
「あっちなの、行こうっ」
ぱしっ。本日比呂美から手を握った瞬間である。実はチャンスを狙っていた比呂美。
「!」
「行こうっ」
比呂美の声に力が満ち、眞一郎を導く。
視界の端に捕らえたかぎりでは、どうやら愛子は帰りのようである。少し安心しながら、
眞一郎を引っ張っていく。
「?、この辺って、改装中で店ないぞ」
「あっ、あれっ!?おかしいなぁ、って!」(どっくん)
「?どした」
今度は石動乃絵が視界に飛び込んできた。連続する遭遇に比呂美は今度こそ動揺してし
まった。自分でも訳もわからず、眞一郎を引っ張ってしまう。
「!!!」
「!!!」
(あ…)
思わず眞一郎に抱きついてしまった、しっかりと、密着して。
(ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ)
左側を向いた比呂美には、走り去っていく石動乃絵が見えた。その方向は出入り口近く
にあるコインロッカーとは逆方向なので、安堵しようとした。しかし、抱擁しているた
めに高鳴る鼓動がそれを許さない。
(ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ)
(あれ?さっきよりもさらにドキドキしてるどうして?)
眞一郎の顔を見上げると、もの凄く照れた顔が間近に見えた。
(私だけじゃないんだ…)
比呂美はうれしさに全身が包まれていく、たとえようのない気持ち。
(ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ)
二人の鼓動がコート越しに伝わっていく。比呂美は勇気を搾り出す。
「もうちょっと、このまま…」
比呂美の瞳は潤んでいます。
眞一郎は何も言わず、そっと比呂美の背中に手を回して…

<この後はお好きなようにご想像下さい>

END

-あとがき-
どうでしょう?比呂美のドキドキ加減が伝わりましたでしょうか?
眞一郎と比呂美にかなり補正をかけました。SSなんで許してください。
このSSは、5話の海岸でマフラーを巻いてあげるシーンから作りました。
「私よりきっと眞一郎くんの方が寒いから」
比呂美のセリフ、結構気に入っています。
おそらくかなり心臓は高鳴っていたはずです。
いつも長めですみません。

最後に、読んで下さってありがとうございました。
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