春雷-7


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――第七幕『あなたの大切って、なに?』――

 眞一郎と比呂美の『あの夜』からの数日間、眞一郎は、心と体の潤滑油が切れてしまっ
たように、ぎこちなかった。それでも、比呂美がいつも通りの笑顔を向けていたことで、
徐々に『なめらかさ』を取り戻していった。
 比呂美も、彼が自力で立ち直ることを期待していた。
 五日ぐらい経って、比呂美は、眞一郎に自分をぶつける頃合を計っていた。いつもの
『寒い冗談』が眞一郎の口から出はじめているのを確認すると、よし、今日よ、と比呂美
は『決行の旗』を心に掲げた。

 眞一郎と比呂美は、久しぶりに一緒に歩いて下校していた。まだ夕陽は落ちていなかっ
たが、空はきれいな茜色に染まっていた。比呂美は、夕陽が見たいと言って、眞一郎を
『あの砂浜』へ誘った。
 砂浜に二本の点線が徐々に伸びていく。
 比呂美は、スカートの裾を絞って握り『あの地点』へ向かって歩いていく。眞一郎は、
比呂美の後につづく。やがて、比呂美が足を止めると、眞一郎は、比呂美の右横に来て、
止まった。
「……この場所……覚えてる?」
「……うん」
「眞一郎くんと、私が、初めて……キスした場所」
「…………」
「初めてにしては、うまかったでしょう?」
 ふたりは並んだまま、海を見ていた。
「……わからないよ、そんなこと」
「もう、キスの感想がそれ?」
 比呂美は、正直に不満を漏らして呆れた。
「いや……その……や……温かかった」
 眞一郎は、やわらかかった、と言おうとして止めた。その言葉は使ってはいけないと思
ったのだ。
「ふ~ん、私は、冷たかった…かな……寒かったしね」
 沈黙。ふたりは、まだ手も繋がない。
 ふたりの間を、海風が疾走する。観客のカモメたちは、二人に演技のつづきを求めるよ
うに騒がしく啼いた。そんな観客に耳を貸したつもりはなかったが、ふたりの一騎打ちの
始まりのゴングが鳴った。

 ザッッパァァ――――ン

「…………ねえ」
「ん?」
 気持ちのない眞一郎の返事。
「これから、私の部屋行って……エッチする?」
「なっ!!」
 眞一郎は、すぐさま比呂美を見て、目を白黒させた。比呂美は、海を見たままつづけた。
「セックス、しようか?」
「な、何だよ、急に……」
 眞一郎は、比呂美と反対側の方へ体を向けた。眞一郎のそんな様子に比呂美は苛立ち、
眞一郎の正面へ移動して、射抜くような目をしてこう言った。
「私を……抱いてくれる?」
「比呂美、どうしんたんだよ」
 眞一郎は、すぐさま目線を逸らしたが、怒りのようなものが込み上げてきて、肩が少し
振わせた。
「私を犯して…」
「おまえ! 何言ってるんだよ!」
 比呂美を睨み返す眞一郎。しばらく、ふたりの睨み合いがつづいた。
 比呂美は、もうスカートも押さえていない、髪も気にしていない。比呂美の心情を表し
たように、長い髪が水平方向へ伸び、けたたましく揺れた。
 そして、この睨み合いに最初に折れた眞一郎は、とても『カノジョ』に対して相応しく
ない言葉を、我慢できずに発してしまった。
「お前って、いやらしい女だな」
 比呂美は、この言葉に反応して、目を見開いた。

……いやらしい、『女』……

 こんな言葉を、こんなに早く、眞一郎から引き出せるとは、比呂美は思わなかった。眞
一郎の『本音』に限りなく近い言葉。例え、自分のことを褒める言葉ではなくても、紛れ
もなく、眞一郎の比呂美に対する心象だった。比呂美のイメージの一面。比呂美は、芋づ
るの根っこをつかんだのを感じた。

……大丈夫、このまま吐き出させ、私にぶつかって来させればいい……

 だが、恋人としては、この発言を許さないフリをしなければいけない。

 パンッ!!

「くッ」
 比呂美は、眞一郎の頬を叩いた。
 眞一郎は、すぐさま目線を比呂美に向け、そのあと斜めに向けさせられた首を、比呂美
の方へ戻し、睨み返した。
「なんで、俺が、叩かれるんだよ」
 眞一郎の右手が徐々に上がりはじめ、胸の辺りでピタッと止まる。
「なによ、叩きたいなら、叩きなさい。ムカついたんでしょ。」
「よせよ」
「遠慮することないよ。私が『女』だから? 『カノジョ』だから? 関係ないよ」
 眞一郎、右手を下ろし、横を向き俯く。
「そんなこと言うのやめろっ」
「あなたが言わせているんじゃない、私に、こんないやらしいこと」
 眞一郎、再び、比呂美を睨む。ここからは、怒涛の言い合いが始まった。

眞一郎「言わせてない!」
比呂美「言わせてる」
眞一郎「言わせてねーよ。お前、おかしーよ」
比呂美「あなたの方がおかしいよ」
眞一郎「どこが」
比呂美「押し倒した『カノジョ』を残して帰るってなんなの? バカじゃないの?」
眞一郎「はあ? 『あの夜』のことを言ってるのかよ」
比呂美「そうよ!」
眞一郎「したかったのかよ」
比呂美「そうよ」
眞一郎「そんなにしたかったのかよ」
比呂美「そうよ!」
眞一郎「じゃあ、怒ってるんじゃないか」
比呂美「怒ってるわよ」
眞一郎「じゃあ、そう言えよ」
比呂美「言う前に帰ったじゃない」
眞一郎「嬉しかったとか、嘘つくなよ」
比呂美「あなたが顔、真っ青にしてるからでしょ?」
眞一郎「やさしくしたつもりか?」
比呂美「いいえ、とんでもない」
眞一郎「じゃあ、なんだよ」
比呂美「おばさんにばれるからよ」
眞一郎「な!」
比呂美「あのくらいで動揺しちゃってさ」
眞一郎「動揺なんかしてない」
比呂美「びびって帰ったじゃない」
眞一郎「びびるとかそういうことじゃないだろう」
比呂美「あのとき、許してくれって言ったよね」
眞一郎「ああ」
比呂美「何を許して欲しいの」
眞一郎「それは……お前を……」
比呂美「はっきり言いなさいよ、誰も聞いてないんだから」
眞一郎「お前を犯そうとしたことだよ」
比呂美「ああ~そっち」
眞一郎「そっちって何だよ」
比呂美「てっきり、すごすご帰ることかと思ってた」
眞一郎「だってお前、あんな大声で、やめてって」
比呂美「眞一郎くん、何も分かってない」
眞一郎「は?」
比呂美「あのとき、自分でも分けわかんなくなっていたよね?」
眞一郎「…………」
比呂美「あのとき、私に何をしたか覚えてる?」
眞一郎「……ああ」
比呂美「なんで、あんなになっちゃうのよ」
眞一郎「それは……」
比呂美「なんで答えられないのよ」
眞一郎「お前が……あんなに」
比呂美「あんなに?」
眞一郎「さびしい思いを……」
比呂美「それは違うよ」
眞一郎「え?」
比呂美「ずっと自分に我慢して溜まっちゃったからでしょう?」
眞一郎「な!」
比呂美「性欲のことだけ言ってるんじゃないよ」
眞一郎「…………」
比呂美「あのとき、いろいろ限界だったんだよ、眞一郎くん」
眞一郎「…………」
比呂美「私も悪い。合鍵渡したり、家にまだ帰らないとか言ったり」
眞一郎「それは、お前にとって、心の……」
比呂美「要は、私のこと大切に思ってるのに、なんであーなっちゃうかってことよ」
眞一郎「…………」
比呂美「私のこと傷つけたくない、と思っているよね?」
眞一郎「ああ」
比呂美「私のこと大切にしなきゃ、と思っているよね?」
眞一郎「ああ」
比呂美「あなたの大切って、なに?」
眞一郎「え?」
比呂美「あなたの大切って、なんなの?」
眞一郎「…………」
比呂美「…………」

「比呂美が、悲しんだり、傷付いたりしないように、気遣う、こと」
 比呂美、そのあと、優しい口調になった。
「じゃあ、私が、笑ったり、喜んだりするように、気遣ってはくれないの?」

 あぁっ……!

 眞一郎に衝撃が走る。
「……あのね、今の眞一郎くん見ていると、正直、つらいの」
「つらいって……」
「いつも、私にね、一生懸命なんだもん。見てらんない」
「おれ……」
 眞一郎から大粒の涙がこぼれる。

……眞一郎を私が泣かせてしまった。でも、これでいい……

「私のこと考えると、苦しかったんだよね? 悲しかったんだよね? 好きな女の子の両
親がいっぺんに亡くなって、その子から笑顔が消えて。それを間近で見てきたんだもんね。
一生懸命にもなるよね。何とかしてあげなくちゃって」
 眞一郎の足がガクッと崩れ、膝が砂浜に突き刺さった。
「眞一郎くん、言ってくれたよね、私が仲上家に来たとき。みんな、そばにいるからっ
て。」
「みんな……そばに……」
「その言葉が……その言葉をあなたが言ってくれて、どんだけ私が……私、あなたのそば
にいなきゃって思った。そうしなきゃ、生きていけないって。眞一郎くん、いま、こうし
て、そばにいるじゃない。もう、それだけで充分なんだよ…………充分なの……」
 眞一郎の両腕も砂浜に突き刺さった。
 比呂美は、そんな眞一郎に覆い被さるように優しく体を寄せた。

「もう……昔の私は見なくていいんだよ。……今の私だけ見てほしい」

……今の、比呂美?
  今、昔
  昔の、比呂美
  両親を亡くした、女の子
  両親を亡くした、俺の好きな子
  俺の、好きな人
  笑顔を失った、比呂美。まるで、死人のように。
  ビクビクしていた比呂美。
  ずっと、好きな気持ちを閉じ込めていた比呂美。
  …………
  ずっと、俺を好きでいた比呂美。
  ずっと、俺を待っていた比呂美。
  俺は、そんな比呂美を、好きになった?
  俺は、そんな比呂美を、好きになったんだ。
  今の、比呂美を……

 ぅうわああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー

 ぅぅぅああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー

 二度の慟哭。
 今、眞一郎の心の奥の『壁』が砕け、ずっと溜め込んできた、『欲心』が音となって全
身から放出されている。がんじがらめになっていた眞一郎の『心の光』が、ようやく全て、
外へ放たれ出したのだ。
『石動乃絵』は、持ち前の純真さで、このバリケードを天使の様に軽々とくぐり抜け、眞
一郎の『心の光』を感じては、彼の心を照らした。
『湯浅比呂美』は、眞一郎を想い続けた強固な気持ちでもって、このバリケードを一本一
本引き千切り、『心の光』を解放させた。
 お互いの『心の光』の全てを感じれるようになった今、眞一郎と比呂美は、一緒に笑い、
一緒に泣き、一緒に転び、一緒に立ち上がって、励まし合っていくだろう。どんなに悲し
い境遇であっても、お互いに好きでい続けたことが、『それ』を手にすることになったの
だ。『幸せ』を――。

 比呂美は、眞一郎が泣き止んでも、しばらく彼の体を包み込んでいた。
 冷たい海風が吹き込んでも、ふたりにはそれを通す隙間はもうなかった。
 比呂美は、眞一郎が落ち着いたのを感じると、肩に手をかけ、顔を上げさせた。ひどい
顔だったが、優しく笑っていた。
 比呂美も、顔に髪の毛が無茶苦茶に絡まっていた。眞一郎は、手に付いた砂を叩いて落
とすと、比呂美の髪を丁寧に直しはじめた。比呂美も眞一郎の触っていない部分を自分で
直した。ある程度、髪の毛が整うと、比呂美は、右手で拳を作り、眞一郎の口に近づけた。
テレビのリポーターつもりである。
「本当の眞一郎さん、今の心境はいかが?」
「…………」
 眞一郎は、そのまま黙っている。
「ん?」
 比呂美は、首を少し傾け、さらに覗き込む。
「お前の……裸が見たい」
 比呂美は、その拳を作っていた手で、眞一郎の鼻をつまみ、めっと睨んでこう言った。
「……まだ、だめ」
 ふたりは、睨めっこをした後、突然噴き出した。
 眞一郎が先に立ち上がり比呂美に構わず歩きだした。比呂美は、そんな彼をしばらく目
で追って立ち上がり、スカートを二、三度叩いて、後をついていった。

 砂浜へ下りる階段を上がり、歩道を歩き、三叉路の信号を過ぎる。
 しばらくして、竹林へ続く道に入った。あの『告白』の場所を過ぎ、右に折れれば、白
い長方形の建物が姿を現した。
 やがて、ふたりは、カンカンと鳴り響く鉄製の階段を上がり、扉の前に立った。
 比呂美は、ハートの『輪っか』の付いた鍵をポケットから取り出し、ドアを開け、カレ
を部屋の中へ誘った。カレの本当の思いを受け止めるために……。
 そのあと、一陣の温かい風が吹き込み、降り積もった桜の花びらを、一斉に天に向かっ
て舞い上がらせた。そして、それは、決して落ちることなく、宙に散った。


――終幕『背中をポンポンしてくれて』――

 窓から差し込む懐かしい光、柱の木の匂い、微かな畳の匂い、優しくむ迎えてくれた机。
 ひとりの少女が、自分の背丈よりも大きい鏡に前に立っていた。服をまだ着ておらず、
下着のままで。肩まで伸びた栗毛色のサラサラした髪、胸を包む純白の羽衣、引き締まっ
た体、ぷっくり膨らんだ二つの丘に張り付いた水色の縞模様が、鏡に映し出されていた。
 少女は、目線を鏡に固定したまま首だけを横に向けた。そして、左手で後ろ髪の毛先を
つまんだ。こんどは首をさっきとは反対方向へ向け、右手で同じようにした。
 自分自身に何かOKを出したのだろう、少女は再び鏡に向き直り、両手で自分の頬を軽
く叩いた。
「よし」
 昨日とは違う自分に喝を入れると、その空間の外から、聞き慣れた声がやってきた。
「比呂美、朝飯できてるぞ」
「今着替えてるとこ」
 少女は、白いブラウスを体に引っ掛け、ボタンを留めると、スカートを胴にストンと落
とし込んだ。そして、左脇のファスナーを閉めた。
「いってきます」
 比呂美は、自分の思い出の存在にそう告げると、自分に向けてくれる温かかな笑顔の元
へ向かった。

 湯浅比呂美は、ゴールデン・ウィークに仲上家へ戻ってきた。
 そのこと自体、時間の問題だったのだが、もうひとつ、また、麦端の民を震撼させるこ
とをやらかしていたのだった。
 引越しの作業が終えた日、比呂美と眞一郎の母・理恵子は、美容室にきていた。比呂美
が中学に入る前から伸ばしていた髪をばっさり切るというのだ。そのことを告げられた仲
上家の人たちは、全身が凍りついた。そのとき、ヒロシと理恵子は、すぐに眞一郎の顔を
注視したが、眞一郎の顔は、穏やかだった。そんな予感をもうすでに眞一郎は感じていた
のだった。
 比呂美が美容室に出かけるとき、理恵子は一緒について行くと言って聞かなかった。

 鏡の前に座る比呂美。比呂美の長い髪がやさしく梳かされる。
 沢山の思い出が詰まった髪。いつも、どんなときも自分の傍らにいて、優しく頬をくす
ぐってくれた髪。でも、今の比呂美には、もう必要ないのだ。それに替わる沢山の愛情を、
手にしたのだから。
 比呂美の髪に、銀色の切っ先が近付いていく。切っ先が二つに分かれて開き、髪を挟も
うとしたとき……。
「待って!」
 それを制する声が、室内に反響した。
 比呂美は、ゆっくり声の主に振り返ると、理恵子の目から、涙が、こぼれていた。
 一筋の涙が。
 初めて理恵子の涙を見た比呂美は、急に罪悪感みたいなものを感じた。自分は何かとん
でもないことをしているのではないだろうかと。でも次の理恵子の言葉で、それが、幸福
感へと変わっていった。
「私くらい長くてもいいじゃない。髪、結んであげられなくなるわ」
「……はい……そうします……」
 比呂美は、そう素直に返事をした。

 ゴールデン・ウィーク明けの初日、眞一郎と比呂美は一緒に登校をしていた。
 いつもの変わらぬ景色、変わらぬ空気、変わらぬ道のりなのに、ただお互いの隣に大切
な存在がいるというだけで、それらの全てが塗り替えられた気がした。ふたりは、朝の空
気を胸いっぱいに吸い込みながら、今日一日の出来事の予想をしていた。

「また、髪、伸ばしていくんだろ?」
「ん~わかんない。髪長い方が好きだった?」
「まぁ~そのぉ~でも、今のもいいよ、比呂美らしくて」
「それに、エッチのとき邪魔にならないしね?」
「お、お前、外でそういうこと言うのは感心しないな~」
「ふふ、おじさんみたいな言い方」
「え、そうか?」
「みんな、なんて言うかな~わくわくしてこない?」
「いやーおれはなんだか怖い、もうすでに悪寒が走ってるし」
「ちょっと予想してみない?」
「ああ、いいよ」
 ふたりの横を、軽トラックが過ぎていく。
「朋与はね~先ずね、無言で私を抱きしめて、背中をポンポンしてくれて、急に鬼のよう
な形相になって眞一郎くんを睨むの。そして、仲上君、今からちょっと顔貸してくれる? 
って言うの」
「それで?」
「それでね、体育館裏に連れて行って、朋与が眞一郎くんに愛の告白」
「ないない」
「これだから男の子は……朋与、中学のとき眞一郎くんのことが好きだったのよ」
「え、マジ?」
「………………ウソ」
 眞一郎は、比呂美の肩をぺしっと叩いた。
「野伏君は?」
「みよきちは……ん~あいつは……いきなり殴りかかってきそうだな~」
「私、止めないね」
「止めてくれよー、お前しか止められないだろ?」
「自分でなんとかして」
 比呂美は、お高くいなした。すかさず次の人物へ。
「あさみはねぇ~」
……………………

 神社にある藤棚が見事に咲き誇っている。その横を肩を並べて通過するふたり。
 二人の予想は、半分くらい的中することとなった。

 彼らの物語は、つづく……


――『あとがき』――

「カカ」と申します。最後まで読んでくださり真にありがとうございます。
 生まれて初めて、文章というもので創作をしてみました。はっきり言って技術もセンス
もありませんが、素人となりに勢いだけで突っ走って書き上げました。何か一つだけでも、
皆様の心に残ってくれるものがあれば幸いです。
 スレッドの皆様の妄想が発想の原点となっておりますので、この作品は、皆様との合作
だと思っております。そういう意味で最後にこう書き記します。

 お疲れ様です!


――『おまけ:実録、髪を切った比呂美への反応』――

1)朋与の場合

「仲上君、ちょっと顔貸してくれる?」
「なんだよ」
……体育館裏。
「比呂美、髪、切ったってことは別れたってことよね?」
「違うって、あれは……」
「ウソ!」
「なんで嘘言わなきゃいけないんだよ、あれはな」
「好きなの」
「え?」
「ずっと、好きだったの、仲上君のこと……」
「からかうなよ」
「からかってなんかいない! 比呂美のそばに居て、ずっと仲上君のこと見てた……中学
のときから……」
「!! ……うそだろ? ……まさか……参ったな……」
「どうしたら信じてくれる? キスしたら信じてくれる?」
「ちょ、ちょっと待てよ。比呂美とは別れていないって」
「それでもいい……私、もう止まらない」
 朋与、目を閉じて顔を寄せてくる。
「わっ」
「眞一郎くん!」
 比呂美が大学ノートを開いて立っていた。「ドッキリ」とマジックで書かれたノートを。
 比呂美と朋与が、前日から考え、仕組んだドッキリだった。
 比呂美はこのため、朋与の演技料の替わりに一週間、朋与のパシリとなった。
 眞一郎も一日、口を利いてやんなかった。

2)愛ちゃんの場合

「いっらしゃい! ひ!比呂美ちゃん!」
 悲鳴に近い声を上げながら愛子は、急いで比呂美のところに駆け寄った。
「どうして……」
というと大粒の涙をボロボロ流して泣きだした。そして眞一郎にこう言った。
「あんた、1年間出入り禁止!」
 もちろん、すぐ解かれることになったが……。

3)三代吉の場合

「眞一郎!!てめーーー!」
 案の定、三代吉は眞一郎の胸倉をつかみ、床に押し倒した。
「落ち着けって!」
「お前、さんざん湯浅さんのこと泣かしておいて、何も学ばなかったのかよ。こんな奴を
親友と思っていた自分が情けねーわ」
 売り言葉に買い言葉、この取っ組み合いが意外と長くつづいた。周りに居た男子生徒五、
六人でもなかなか二人を止められず、先生に見つかり、二人は生徒指導室送りとなった。

4)あさみの場合

「私、やっぱり仲上君のこと見損なっちゃった」
 その日の午後。
「私、やっぱり仲上君のこと見直しちゃった」
 なんなんだ。

5)石動乃絵の場合

「あなた……仲上君と、エッチしたでしょう?」
 比呂美、全身赤面。


――『続編予告』――

 愛子と眞一郎は「ファースト・キス」を隠したまま、
 それぞれの恋愛模様を描き続けていた。
 ある日、乃絵から呼び出された眞一郎は、
 心揺さぶられる事実を知ることになる。
 いずれ直面するはずの試練に、悶える眞一郎。
 二人の居場所を侵されたと、苛立つ比呂美。
 まだまだ大人になりきれない二人に、母・理恵子は……
「あなた、カノジョ、失格よ」
 今だからこそ、眞一郎は、比呂美にラブ・レターを出す。

「トゥルー・ティアーズ・アフター ~ファースト・キス~」

「春雷」続編。本編のその後を描いた、こころ温まる物語。
……どうしても、最初に、見せたかったんだ……
ツールボックス

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