ある日の比呂美・台風編5


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(もう、何か言いなさいよ……)
床についてから約十分。 眞一郎が眠っていないのは分かっている。
背後でたまにモゾモゾと蠢く気配の主は、きっと自分と同じことを考えているに違いない。

…………このまま眠ったら、明日の朝、たぶん喧嘩になってしまう…………

仲上眞一郎と湯浅比呂美は、はっきり言って素直な性格とはいえない。
本心とは真逆の行動をとることなど、日常茶飯事なのだ。
最初のボタンを掛け違えれば、元通りに修復するには、かなりの時間を要してしまう。
比呂美はそれを、《過去の経験》から嫌と言うほど理解していた。
それに、こうなった経緯はどうあれ、《初めてのお泊り》には違いないのだ。
しかめっ面で睨み合う、なんて最悪の目覚めは、絶対に迎えたくない。
(何でもいいの。何か話してよ)
きっかけが欲しい。 そう比呂美は思った。
二人が素直に口を開くことが出来る…きっかけが……
…………

          ドガアアアアアアァァァァァァン!!!!

「きゃああああああああッッッ!!!」
その凄まじい音が、台風により副次的に発生した落雷の音であることは分かっていた。
しかし、頭で分かっていても、思わず金切り声をあげて飛び起きてしまう……それが《女の子》というものだ。
「うおっ、凄ぇ音。 かなり近いな」
釣られて飛び起きた眞一郎が、これまた《男の子》らしい淡白な反応を見せる。
海岸の方に落ちたか?などと雷を楽しむような眞一郎の声に、ゴロゴロという地鳴りのような音が重なった。
その直後に窓の外がストロボのごとく発光すると、間を置くことなく、電気の塊が地面に叩きつけられる轟音が響き渡る。
(光ってから落ちるまでの間隔が短いってことは、雷の中心は真上にあるんだ……)
身体を縮こまらせながら、比呂美は脳内にある雑学的知識を検索して気を紛らわせようと試みたが、それは無駄な努力だった。
なにをしてみたところで、《怖い》ものは《怖い》!!
幼少の頃ほどではないが、本格的な……そう、頭の上を直撃するようなヤツは、やっぱり《怖い》し《嫌い》だ。
(あぁ、どうしよう……どうしよう!)
雷が……その原因である台風が通り過ぎるまで、震えているしかないのだろうか。
比呂美の心が恐怖と諦めに満たされたその時、眞一郎の両腕が静かに伸び、小刻みに揺れる身体を抱きしめた。

          ※
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