ある日の出来事


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

=比呂美が仲上家に来るよりも、しばらく前の話です。

ある日の出来事

「あっ、来た来たっ。眞一郎!こっち!」
愛子が手を振って呼んでいる。
「ちょっとさー、何だよ…いきなり呼び出してさ。何の用?」
眞一郎は近づきながら少し不機嫌そうに問い正す。
「どうせヒマなんでしょー?いいじゃん、買い物に付き合ってよ」
「あのねぇ、勝手にヒマって決め付けることないだろ?」
「彼女いないじゃん。休みの日にすることないでしょ?」
「そういう問題じゃなくて。そういう風に言われるのイヤなんだよ」
「はいはい、ごめんなさいね。じゃ、行きましょ?」
「どこ?」
「だから、買い物!はい!こっち!」
「おおっ、と…わかったってばっ…」
愛子は強引に眞一郎を引っ張って、歩き始めた。
(ん?あれは比呂美か?)
少し向うに、寂しそうにしている比呂美が見えた。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

(あっ!あれは眞一郎くんだ…)
愛子と眞一郎のやりとりを少し離れた場所で比呂美は見ていた。天気の良い日
なので、散歩がてら買い物にでも行こうかと友達に誘われ、待ち合わせしてい
た。そこで偶然眞一郎を見かけたのだ。しかし、当の本人は愛子に連れられて、
どこかに二人で行くようで、残念に思っていた。

(休みの日に眞一郎くんに会えるなんてあんまりないのに…)
比呂美は偶然見かけたチャンスを生かせず、気落ちしていた。携帯電話でメー
ルを打ち、友達との約束をキャンセルしてしまう。
(何だか、気晴らしっていうのもできないよなぁ。こんなんじゃ…)
とぼとぼと当てもなく、歩いていった。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

(あれ?どうしてこんなとこに?)
気付くと、小さい頃によく来た小高い丘に、比呂美は来ていた。自分でも何故
ここにたどり着いたのかはよく分からなかった。分かるのは、何となく足がこ
ちらに向いたんだろうなぁということぐらい。別にお気に入りの場所でも何で
もない、特に変わったとこもない普通の丘。

「おっ、やっぱり、ここだったか!」
「えっ!?」
突然少し上のほうから、眞一郎の声がした。振り向くと、微笑を浮かべた顔が
見下ろしていた。
「何だよー。見かけたんなら、声を掛ければいいだろ?…」
「えっ!?」
比呂美はどうして眞一郎がここにいるのか、検討もつかなかった。

「よし、ちょっと降りるから。待ってなよ、っと。て!、うわっ!」
「きゃっ!」
ひょいっと、飛び降りるように着地しようとして、眞一郎が転んだ。
「痛ってーっ!」
「だっ…大丈夫?」
「痛ったたたた。とくにケツが痛い。石があった。痛い」
「ぷっ」
「わ、笑うなよ!」
眞一郎は照れながら、自分の尻をさすっている。
「ぷっ…くっ…」
「笑うなってば!ほんとに痛いんだって!石だよ?ケツで石を踏んだんだよ?」
ちょっと真剣に抗議してしてみるが、その表情がさらに比呂美の笑いのツボに
はまったようで、堪えられない。
「くぷっ…くくくっ…」
「痛いんだって!笑うな!」
「だってっ…ぷっ…普通、そんな段差で転ばないでしょ?、くぷっ…」
「違う!足場がちょっと柔らかくて…って、笑うな!」
「あはっ…あはははっ!…」
「笑うなって!」
「あははははははははははっ…」
どうしても堪えきれずに、笑い出してしまう。さっきまで沈んでいた気持ちは、
知らない間にどこかへ行ってしまった。
「う~ん、せっかく来てやったのに。笑われるとは…」
「あははははははははははっ…」
眞一郎の言葉を聞き逃すくらい笑いが止まらなかった。嬉しさが止まらないの
で、笑いも止まらない。

「で、笑い終わった?」
面白くなさそうな眞一郎の表情。
「くぷっ…、うん…」
我慢している比呂美。
「まだだな…ちょっと笑ってる」
「ぷっ…、もう大丈夫だよ?」
「信用ならない。あ~、ケツが痛てぇなぁ」
「くぷぷぷぷっ…」
「やっぱり!笑ってる!」
「違う!くぷっ…、眞一郎くんが…、ぷはっ、笑わせてるんでしょ?」
「ケツが痛てぇで笑うか?」
「くぷぷぷぷっ…」
「ムカツク」
「くぷっ…、もう大丈夫だから、はぁ」
「ケツが痛てぇ」
「ぶはっ、大丈夫でしょ、ほら?」
「う~ん…」
「くぷっ…」
「ううぅ~ん?」
「ぷっ…」
顔を覗き込まれたので、両手で口を覆って笑いを止める。ぎりぎりで成功した。
「まあ、この辺で勘弁してやるか」
「はぁ…良かった。ね?、もう笑っていないでしょ?」
「…」
「何?笑っていないでしょ?」
「あのねぇ、声に出していないかもしれないけど、顔が思いっきり笑ってるぞ」
「えっ?」
声を抑えることには成功したが、明らかに比呂美の表情は笑っていた。それも、
誰がどう見ても笑っている顔だ。弁解の余地はない。
「まぁ、いいや。ケツで石を踏んだから、しょうがないか…」
「ぶはっ!」
「…どうでもよくなってきた」
「ぶぶぶっ…、もう少し、くぷっ…、待って…、あははははははっ…」

「はぁ…はぁ…はぁ…、疲れたぁ」
ようやく笑いの衝動がおさまり、比呂美が一息ついた。
「…」
眞一郎は、じと目で見ている。
「もう大丈夫だよ、笑わない」
「疲れたからだろ?」
「笑わない」
「もう…いいや」
「どうして、ここに来たの?」
話題を変えるために、眞一郎が来た理由を聞くことにした。
「ん?なんか…比呂美を見かけた時に寂しそうな感じだったから、かな?」
「えっ!?私、そんな顔してた?」
「してたよ、ちょっとしか見えなかったけどな」
眞一郎は少し不機嫌な話し方になっているのは、仕方が無い。
「よくここだって、わかったね」
「え?どうしてだろうな?」
「まぁ、いいけどさ…。どこかへ行ったんじゃなかったの?」
(女の子に手を引っ張られてね…)
比呂美は先程のことを思い出してきた。面白くない。ちょっと拗ねた口調。
「あ?ああ…電話で呼び出されて、どっか行ってしまった」
「ふ~ん、フラれたんだ?」
「違う。愛ちゃんは幼馴染で、お姉ちゃんみたいなもんだから、違うね」
「同じようなもんじゃないの?」
何故か今度は機嫌のいい口調になってきた。
「違うね。姉弟みたいな場合はそれに当てはまらないね」
「ま…いっか。で、どうする?」
「どうするって?」
「ここでお喋りしてもしょうがないでしょ?」
「あ…そっか。天気いいし、歩くか?」
「うん!いいよ!」

その後、学校のことや色んなことを話しながら、ぶらぶらと散歩して夕方まで
二人は一緒に過ごした。
「じゃあね!また明日!」
「また明日」
比呂美の家の近くまで、送ってから眞一郎は自宅へ帰った。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

次の日、学校で。
「ねぇ、仲上君ってお尻にあざがあるんだって?」
「!」
「子供の頃から消えてないの?」
突然クラスの女子から言われても、眞一郎にとって犯人を特定するのは簡単。

「比呂美っ!」
「きゃぁーっ♪」

二人が平和に学校生活を楽しんでいた頃のお話。

END


-あとがき-
8話の「眞一郎くん…、置いていかないで…」の夢のシーンから作りました。

ありがとうございました。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。